真・恋姫†無双〜恋と共に〜 #21
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#21

 

 

 

 

俺はその日、勉強の為に書庫に来ていた。時間が合えば、冥琳に師事して教えを乞おうかとも思ったが、俺が先日教えた政策関連で、最近は忙しいらしい。先ほど別の用事で冥琳の執務室を訪れた時も、細々としたことを質問された。

 

 

 

「さて、先日は孫子を読んだからなぁ。今日は、と………」

「………んん………はぁ………………」

「………?」

 

 

 

俺が書棚の間を歩いていると奥の方から、微かな呻き声が聞こえてくる。

 

 

 

 

 

――――――ダメだ。

 

 

 

 

 

頭の中で警鐘が鳴る。

 

 

 

 

 

―――――――――近づくな。

 

 

 

 

 

声のする方から、耐え難い氣が伝わってくる。

 

 

 

 

 

―――後悔するぞ。

 

 

 

 

 

どう表現すればよいだろうか。なんというか………色で表すなら、そう、ピンク色の氣が漂ってくるのだ。

 

 

 

 

 

俺は、意を決して足を進めた。

 

 

 

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「はぁ〜ん、やっぱり孫子はよいですねぇ。………読み返すたびに新しい発見があって、身体が疼いちゃいますぅ〜」

「………………何やってるんですか?」

 

 

 

そこには、緑色の綺麗な髪をした少女が頬を赤らめて、床にぺたりと座り込んでいた。その手に持つのは少女の言葉の通り、孫子の兵法に関する書物。………………文官か何かだろうか?

 

 

 

「あらあら、恥ずかしいところをお見せしてしまいましたねぇ………あら?貴方、城では見たことのないお顔ですが、新しく入った方ですか?」

「読書をしているだけなら恥ずかしいこともないとは思うんだが………。俺は北郷一刀。先日から雪蓮のもとで客将をしている者です」

「あら、もう真名を許されているとは………信頼されているんですねぇ」

「信頼されているかどうかはわからないけど、気に入られているとは思いますよ」

「謙遜なさってぇ。私は陸遜伯言。雪蓮様の元で軍師をしておりますぅ」

「へぇ………貴女があの陸遜か」

「ご存知なんですか?嬉しいですぅ」

「まぁね。それより、さっきから顔が赤いけど、大丈夫ですか?」

「あぁ、これはそのですねぇ………あら、よく見るとなかなか良いお顔立ちですね」

「へ?」

 

 

 

 

 

突然の話題の変化に、思わず変な声をあげてしまった。そして―――

 

 

 

 

 

「私のことも気遣ってくれますし………気に入りました。北郷さん………………私のこの疼き、鎮めてくれませんか?」

 

 

 

 

 

――――――とんでもない爆弾発言が投下された。

 

 

 

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「ちょ、何言ってるんですか!?身体を鎮めろとか―――」

「だって、もう疼いて疼いてどうしようもないんですよぉ。お願いしますぅ………北郷さんは何もしなくていいですから、ね?」

「『ね?』じゃないです!」

「だってぇ………」

「(くそ、埒が明かない。こうなったら………)」

 

 

 

 

 

か ず と は に げ だ し た !

 

 

 

 

 

「扉だ!あと少しで………」

 

 

 

 

 

俺は書庫の扉を開け、外に飛び出した。

 

 

 

 

 

「捕まえましたぁ〜」

 

 

 

 

 

と思ったら、腰に陸遜が抱きついてきた。

なんだと!?こいつ、ニュータイプか!?武に関してはまったく相手にならないと踏んだ少女が、俺の脚に追いつくだと!?

 

 

 

「ダメですよ、北郷さん?私のお相手をしてくれるんでしょう?」

「そんなこと言ってないです!いいから話してください!!」

「い・や、ですよ〜」

 

 

 

俺が悪戦苦闘していると、後ろから視線を感じた。

 

 

 

 

 

「………………………………」

「れ、恋………」

 

 

 

なんという修羅場………なのか?恋の眼は俺と俺の腰に抱きつく陸遜をずっと捕らえて離さないが、その視線からは、感情を読み取ることができない。

と、恋の足元にいたセキトが、面白いものを見つけたというように、こちらに駆け出そうとした。

 

 

 

「(ナイス、セキト!!)」

「ダメ、セキト。…お邪魔虫」

「わふぅ……」

 

 

 

 

 

セ キ ト は つ か ま っ た !

 

 

 

 

 

「ちょ、恋さん!?」

 

 

 

セキトを抱き上げた恋は、そのまま歩き去っていく。

 

 

 

「ほらほら、北郷さん。これでもう、私たちを止めるものはありませんよ〜」

「いーやーだーーー!」

 

 

 

俺も年貢の納め時か………そんな風に思っていると、今度こそ救いの女神が現れた。

 

 

 

 

 

「何をやっているんだ?」

 

 

 

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声をかけてきたのは冥琳だった。………よかった。これが雪蓮や祭さんだったら、事態が悪化の一途を辿ることは想像に難くない。俺は縋るように、冥琳を見た。

冥琳も事態を察してくれたのだろう。眉間を軽く押さえながら、陸遜を俺から引き剥がした。

 

 

 

「穏。お前はまた勝手に書庫に入ったりして………雪蓮か私の許可なしに、書庫には立ち入るなと言ってあるだろう。それに、戻ってきたのなら、まずは挨拶に来ないか」

「あらぁ、冥琳様ぁ。お久しぶりですぅ。侍女の子に聞いたら、雪蓮様は賊の討伐に向かわれたし、冥琳様も最近はお忙しいと言われたので、控えていたんですよ」

 

 

 

陸遜の口調が段々とまとも(?)になっていく。どうやら窮地は脱したようだ。

冥琳はこちらに向き直ると、頭を下げた。

 

 

 

「すまなかったな、一刀。この娘は、本を読むとその………」

「いや、だいたい分かるよ。なんというか、大変だね」

 

 

 

そう俺は苦笑した。冥琳も溜息を吐きながら、ずれた眼鏡を戻す。と、陸遜がずっとこちらを見ていることに気がついた。

 

 

 

「あの、何か………?」

「本当にお優しいんですね。普通の方だったら、私のこの悪癖を見たら距離をとろうとするのに………」

「悪癖、ですか?まぁ、体質とかなら仕方がないじゃないですか」

「………冥琳様。私、北郷さんのこと気に入りました。先ほど客将ということはお聞きしましたが、ぜひとも、北郷さんを呉に引き入れるべきです!」

「おやおや、もう惚れたか?残念だが穏よ、私や雪蓮、それに祭殿がそれをしなかったと思うか?」

「ということは………いずれは出ていってしまうんですね」

 

 

 

そう言って陸遜さんは悲しそうに俺を見る。少し申し訳ない気持ちになるが、既に決めてあることだ。

 

 

 

「俺と、あとさっきいた女の子、呂布って言うんですが、二人で旅をしている途中なんですよ。だから、その申し出は、すみませんがお断りさせていただきます」

「はぁ〜残念ですねぇ。でも、しばらくは居てくださるんでしょう?先ほども言いましたが、私の名前は陸遜、真名を穏と申します。これからはそう呼んでくださいね?あと、言葉遣いも気にしなくていいですよ」

「わかったよ、穏。あいにく、俺に真名はないんだ。姓が北郷で名が一刀。字もないんでね。よかったら他の皆みたいに名で呼んでくれるとありがたい」

「わかりました、一刀さん。これからよろしくお願いしますね」

 

 

 

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話によると、穏は実家に一時帰省していたらしい。道理でこのひと月会わなかったわけだ。穏は恋にも挨拶をすると、冥琳と共に執務室へと向かっていった。

 

残された俺は、若干緊張しながら隣にいる恋へと口を開く。

 

 

 

 

 

「なぁ、恋………」

「………」

「怒ってるか?」

「………………なんで?」

「なんで、って………その、俺が穏と抱き合ってるように見えただろ?」

「…(コク)」

「別に、何もなかったよ。だから―――」

 

 

 

俺が無様に言い訳をしようとすると、恋から予想外の言葉が出てきた。

 

 

 

「………なんで?」

「だから………って、え!?」

 

 

 

何かあって欲しかったのか?………いや、そんな筈はない………………と思う。

恋は言葉が見つからないのか、しばらく考え込んだ後、言葉を続けた。

 

 

 

「一刀は、すごい。………誰とでも、すぐ仲良くなる。………………一刀は、穏と、仲良くなってない?」

「いや、仲良くはなったけど………」

「なら、いい。………恋も、一刀といると、誰とでも仲良くなれる。………………一刀のおかげで、みんな仲良し。嬉しい」

 

 

 

俺は恋の言葉の意味が分からず、しばし考えたが、すぐにその言葉の意味を理解した。

 

 

 

 

 

「………………………く、くくく………あっははははは!」

「………?」

 

 

 

 

 

なんてことはない。恋は俺が悩んでいたようなことなど、歯牙にもかけないのだ。もちろん、その意味を知らないというのもあるだろうが、そんなことよりも、皆仲良し、それだけで恋は幸せになってくれるのだ。

 

 

 

俺は………ようやく、呂奉さんが言っていた『恋の純粋さ』というものを理解した。

 

 

 

 

 

「………おかしい?」

「いや、おかしくないよ。嬉しいんだ。………恋、大好きだよ。ずっと大好きだ」

「ん…恋も、一刀、好き。………おそろい」

「あぁ、おそろいだな」

 

 

 

 

 

俺は、恋の頭をいつものように撫でながら、笑う―――

 

 

 

 

 

―――恋ただ一人を愛すると、再度、心に誓って。

 

 

 

 

説明
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コメント
一刀が純愛だとーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!???????????????(心は永遠の中学二年生)
種馬じゃない一刀ってのもなかなか珍しい・・かな?(Alice.Magic)
こういう一途な一刀も新鮮ですね。(ハーデス)
>>Roco様 この頃は少しキャラが定まってない感が出ていると、最近気づきましたorz(一郎太)
一刀さんが武力と知力を手に入れた!代わりに種馬度を失った!!(Roco)
>>nameneko様 うん、市んで欲しいw(一郎太)
リア充ちね(VVV計画の被験者)
>>クラスター様 胃腸関係はストレスが大抵原因だと聞きます。 ぜひご自愛ください。 よい年始を迎えられるよう祈ってます (一郎太)
…あぁいや、生憎と俺は下戸でしてね。お酒を飲んだのは、今までの人生で一度だけ。御屠蘇すら飲むのを拒否する性質なんで。 …入院原因は、胃酸過多による内出血(と、それに伴う貧血)でした。年内に退院出来たのは、まだ幸いでしたよ。(クラスター・ジャドウ)
>>クラスター様 マジっすか!呑みすぎはよくないです…←と決め付けるのもよくねいですねw  お大事になさってください。(一郎太)
まぁ、個人的な愚痴になりますが、クリスマスイブから今日まで、入院する羽目になった俺よりはマシですよ。クリスマスイブやクリスマスに御馳走どころか、点滴打つ事になって食事が取れない虚しさと言ったら…。(クラスター・ジャドウ)
一刀が穏に絡まれましたが、嫉妬と言う感情とは無縁な、恋の純粋さが眩しいです。…恋姫無双シリーズって、ヤンデレ多いからなぁ。(クラスター・ジャドウ)
>>ZERO様 ………?(一郎太)
ええ〜。一刀が一人だと?ありえん!(ZERO&ファルサ)
>>320i様 ぜひ頑張って欲しいと思います!!(一郎太)
>>M.N.F.様 年越し?俺もバイトでカウントダウンですよwww(一郎太)
リア充氏ねwww イブ〜年越しまでずっと仕事の俺に隙なんぞなかったw 年越し?会社で迎えますが何か?(M.N.F.)
>>O-kawa様 電車の中で見ました。高校生カップル。マジ消えろ。どうせ2ヶ月もしたら分かれるんだろww(一郎太)
>>りゅうじ様 とりあえずみんな氏ねばいいのに(一郎太)
>>BX2様 一人暮らし(ルームシェアだけど)の作者は人のヌクモリティに飢えてますwww(一郎太)
>>2828様 俺も消えてそのまま二次元の世界に入りたい(一郎太)
>>ヒトヤ犬 とりあえず漢女道を究めてこい(一郎太)
>>夜一様 金曜日ですもんね。リア充士ね(一郎太)
>>ロンロン様 作者的には貂鮮より卑弥呼だと嬉しいですね(一郎太)
>>sai様 いい娘ですよね。リア充市ね(一郎太)
>>kabuto様 このクソ寒いなかご苦労様でした(一郎太)
>>シン様 それが一番幸せだって誰かが言ってた気がする(一郎太)
>>森羅様 ん?貴方もバーチャルの口ですね。もちろん作者もですwww(一郎太)
>>神龍白夜様 可愛いですよね。みんな氏ねばいいのに(一郎太)
>>sink6様 2828してくれるのなら嬉しいです(一郎太)
>>yosi様 男友達と徹夜でサシ飲みしてましたが何か?(一郎太)
>>よーぜふ様 うん、それはリア充じゃなくてバーチャルが充実してる感じですねwww(一郎太)
>>ヒトヤ犬 お前雌だったのか・・・とりあえず虚勢してくれ(一郎太)
リア充というか人前で不必要なまでにくっつくカップル滅べ(O-kawa)
投稿おつかれさまでしたw リア充( ゚Д゚)<氏ね!(りゅうじ)
昨日?いつものように過ごしました・・・家族の団欒は重要だろ(BX2)
6回wwとりあえず・・・・・・・・リア充市ね・・・・とは言わん・・・体残さず消えろ(2828)
アッ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
今日は仕事でした>< リア充氏ね(藍鵡)
・・・・・・ガシッ(ヒトヤ犬を掴む ポォン(適当に投げる ガシッ(偶然通りかかった漢女がキャッチ タッタッタッタッ(お持ち帰り  ・・・・相手が欲しいなあ。(龍々)
恋いい子やなぁw ほんとリア充市ね(sai)
今日?・・・友達とソフトボールです。こんな日は恋を見てればいいや・・・。(kabuto)
今日?いつもと変わらない毎日だった。(シン)
今日? 仕事してたよ(強制的に)  リア充氏ね よーぜふ様>激しく同意!!!!(森羅)
恋可愛い!!!!リア充師ね(リンドウ)
いつよんでも2828がとまらんなw    リア充サイコー(泣(sink6)
今日?  普通に残業してたよ   リア充氏ね(yosi)
恋・・・いいこすぐる! んっ?リア充ですが何か?もちろんすばらしき一郎太様他すばらしき作者様の作品が読める以外にナニで充実しろというのですか!えぇっ!?(よーぜふ)
俺ならこんな性癖の女いたら「ヤれる女」だとむしろ近づくのに・・・(ヒトヤ犬の性別は女です)(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
フヒヒW面白ぇことヤってんじゃねぇかリア充ども、俺も混ぜr 「ダメ、セキト。・・・お邪魔虫」 ちょ恋!力入れ過ぎだ内臓出る!分かった自重するから!え、俺のクリスマス?恋なら俺の横で寝てるぜ♪(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
ここまでリア充のコメントがない件について(一郎太)
>>だる様 あ、コーラですか。CMでもたまに赤白の服を着た爺さんを見るけど、あれってコカコーラの衣装なんですね。安心しました (一郎太)
>>はりまえ様 滅びてしまえばいいのに………(一郎太)
>>名無し様 これで裏切っていたなら袋叩きに合うと思っていてくださいw(一郎太)
>>闇羽様 ホンマええ子やわぁwww(一郎太)
>>きのすけ様 サンタってあれですか?サタンの親戚か何かですか?w(一郎太)
>>poyy様 オブラート……カタカナはよくわかりませんwww(一郎太)
>>砂のお城様 え、年末の挨拶しか書いてないですよね?www 誤字直しました!!(一郎太)
純粋な恋ちゃん、可愛いです。紅白の服な人たちは、コ○コーラのイベントなんですよ。リア充史ね(だる)
みんな大好き恋ちゃん!リア充死んでしまえぇ・・・・!(黄昏☆ハリマエ)
みなさん同士なんですね? なら私も、リア充氏ね(名無し)
恋が可愛いなぁ…  リア充SINE(闇羽)
ローソンの店員がサンタ(女)とトナカイ(♂)だった。リア充誌ね(きの)
もう少しオブラートに言いましょうよ………リア充死ね。(poyy)
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