江東の覇人 拠点4
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「・・・・・・なぁ雪蓮?」

 

「ん〜?どうしたの〜?」

 

「いやさ、普通よぉ、これ逆じゃねぇの?」

 

暖かな日差し、ほのぼのとした空気。

 

そんな中、俺と雪蓮は日向ぼっこをしていた。

 

反董卓連合の戦が終わり、孫呉独立前の小休止。

 

雑務に追われた俺達は冥琳の目を抜け出し、休んでいる。

 

直に見つかるだろうが、その時はその時だ。

 

今は、ゆっくりと休みたい。

 

「ふふ、いいじゃない。偶には逆でも・・・」

 

「ん〜、まぁ悪い気はしねぇが・・・俺はお前の膝の方がいいんだがなぁ・・・・・・」

 

己の膝に頭を乗せる雪蓮の美しい長髪を撫でながら、俺はのんびりと欠伸した。

 

所謂、膝枕。

 

普段は俺が膝枕してもらう方なのだが、何故か今日は逆だった。

 

まぁ雪蓮は気紛れだから珍しくはないが。

 

にしても・・・いい天気だなぁ。

 

お昼寝日和とはこれの事か。

 

まぁ、俺としちゃあまだ気が抜けないんだがな。

 

「そろそろだなぁ・・・」

 

「そうね・・・私達の悲願が叶う・・・・・・」

 

孫呉の独立。

 

俺達の、願い。

 

それが叶うまで、あまり気は抜けない。

 

「ま、今はのんびりしましょ・・・それぐらい、母さんも許してくれるわ」

 

「そんな事言ってよぉ・・・休みてぇだけだろぉが・・・」

 

そう言いつつ、その意見には大賛成。

 

休息は取れる時に取んないとな、うん。

 

勿論気は抜かないぜ?

 

だが休む。

 

気は抜かずに休む。

 

・・・・・・矛盾してるなぁ。

 

「んぅ・・・・・・」

 

身を捩り、頬を俺の太腿にすりよせる雪蓮。

 

「兄さんて・・・良い匂いよね・・・・・・」

 

「そうかぁ?汗臭ぇだけだろ?」

 

「それがいいの。小奇麗な匂いがするよりよっぽどいいわ・・・何より、血の匂いが少し混じってるしね・・・」

 

うぉい・・・と、雪蓮の頭を小突く。

 

確かに、俺の体には血がこびりついている。

 

洗おうとも洗おうとも、その臭いは消えない。

 

もう気にもしなくなった。

 

「お前なぁ・・・血で興奮するとか何処の戦闘凶だよ」

 

「兄さん興奮しないの?こう、何と言うか・・・胸の奥に熱が溜まるというか」

 

「・・・そう言われるとなぁ・・・・・・ないとは言えんが」

 

でしょー?と、さらに体を寄せる雪蓮。

 

溜息をもらしながら、その髪を優しく撫でる。

 

安らげる時間。

 

こんな時間を・・・妹達と暮らすこの時間を、どれだけ欲したのだろうか。

 

あれから約9年。

 

いいのだろうか・・・と、今でも思う。

 

ここにいて。

 

俺には、ここにいる資格がない。

 

そも、こんな場所で安らいでいる暇があるならば、行動しなければいけないのに。

 

でも・・・安らぎに負けてしまう。

 

安らぎを求めてしまう。

 

「弱ぇなぁ・・・」

 

「え?何か言った?」

 

「うんや・・・ん?おぉ、ありゃ一刀じゃねぇか」

 

誤魔化す為に視線を逸らすと、その先に一刀の姿があった。

 

隣には蓮華の姿もある。

 

散歩中のようだ。

 

2人共楽しそうに微笑んでいる。

 

「そういやぁ・・・最近蓮華の笑顔を見てないなぁ・・・・・・」

 

笑顔自体は見てても、俺に向けられる笑顔は余り見ていない。

 

「そういえば、兄さんて蓮華が苦手だったわよね」

 

「泣いてる時はな。それ以外は苦手じゃねぇよ・・・むしろ好きだ。ま、蓮華自身そうじゃなかったみたいだがなぁ」

 

例え俺自身が苦手としてなくとも、幼い時に避けられた蓮華の記憶は違う。

 

蓮華は取分け気の弱い少女だった。

 

優し過ぎる・・・のかもしれない。

 

辛い時や悲しい時、決まって蓮華は兄姉や母に縋る。

 

母さんや雪蓮は優しく快方したが、俺はそれが出来なかった。

 

蓮華の泣く姿を見る度、体は硬直し、胸が痛くなる。

 

その呪縛から逃れる為、俺は泣きわめく蓮華に気付かないふりを続けた。

 

以来、蓮華は俺と一線を置くようになった。

 

母さんに言われて妹達のお守をするようになり、ようやくその差は埋まり、俺が孫呉を離れる頃には、蓮華との仲も良好だった。

 

が・・・また裏切ってしまった。

 

 

『早く帰ってきてね!今日は私と遊ぶんだから!』

 

 

それは、小さな約束かもしれない。

 

だが、蓮華にとってはどうだっただろうか。

 

見放されたと・・・思ってしまったのではないだろうか。

 

それが真実でなくとも、そう思ってしまったのではないだろうか。

 

再び、溝が広がった気がした。

 

避けられている・・・とまではいかない。

 

が、何処か距離を置いている気はする。

 

「当然の報いだなぁ・・・こりゃ」

 

約束を破ったのは事実。

 

甘んじて受けよう。

 

「大丈夫よ・・・兄さん」

 

「・・・何がだ?」

 

「蓮華の事・・・確かに、あの子は兄さんと一線距離を置いてるけど、あの子には一刀がいるもの。一刀が、あの子の心の支えになってるわ。最近じゃあ2人きりで西の森に行ったりしているらしいし」

 

再び、一刀たちに視線を向ける。

 

楽しそうだ・・・実に。

 

「兄さんが気病まなくてもいいの・・・兄さんは、もっと自分を大切にしてよ・・・・・・」

 

自分を・・・大切に・・・・・・か。

 

つい、そんなもの関係あるか・・・と答えたくなる時点で、俺は己より妹達を優先してるという事だろう。

 

雪蓮はもう立派な王だ。

 

俺なんか必要ないほどに。

 

蓮華も一刀という心の支えを見つけた。

 

あいつらなら、互いを支え合って立派に成長するだろう。

 

「・・・そう・・・か。もう・・・必要ねぇのかもな・・・俺は」

 

9年という年月。

 

そんな年月を放って置いていきなり湧いて出て・・・

 

そんな男が必要とされる訳がない。

 

「はっ・・・・・・俺も歳かねぇ、こんなグダグダ悩むなんざ」

 

そう・・・関係ない。

 

どんなに虐げられようと。

 

どんなに必要とされなかろうと。

 

俺は、この場を離れる訳にはいかない。

 

もう猶予がないのだ。

 

大陸を探す暇はもうない。

 

だから・・・ここで迎え撃つ。

 

奴を。

 

憎むべき奴を。

 

「兄さん・・・殺気を漏らさないで。こっちまでその気になるじゃない」

 

「ん・・・おぉ、悪ぃ悪ぃ」

 

雪蓮に言われ、慌てて眉間を解す。

 

奴の事になると感情を制御できなくなる。

 

気をつけなければ。

 

そんな俺を、雪蓮は諭すような目で見つめた。

 

「・・・・・・兄さん・・・別にね、強制する訳じゃないわ・・・でも、あまり私に隠し事しないで」

 

・・・・・・やはり・・・気付いていたか。

 

流石は俺の妹・・・って所か?

 

そう・・・俺は、雪蓮達に嘘をついている。

 

俺が、孫呉を離れる理由についてを。

 

だが・・・・・・

 

「何の事だ?」

 

言う訳にはいかない。

 

巻き込む訳にはいかない。

 

「・・・・・・そうね。そういう事にしとく」

 

何かを察している雪蓮。

 

恐らく、俺が嘘ついている事を気付いているのはお前と祭ぐらいだろうな。

 

重苦しいのはご免だ。

 

話題を変えよう。

 

「そういやぁ、シャオはどうしてっかなぁ」

 

「元気にしてるって聞いたわよ・・・勉強せずに遊んでばっかりらしいけど」

 

「くく、そうかそうか。ま、シャオは元々王としての器がお前らより劣ってたからなぁ・・・それでも、シャオにはシャオの道がある。あいつはそういう方がいいかもな」

 

まだ赤子と言えど、その器を見極める事が出来る。

 

シャオは王家の中でも後継者と言うには少々器が足りなかった。

 

しかし、もし雪蓮と蓮華の身に何かが起きた時、シャオの存在は必要となる。

 

「そうね・・・・・・もうすぐ、皆揃う・・・やっと・・・・・・」

 

遠い目で、雪蓮が青空を見上げた。

 

その視線を追うように、俺も青空を見上げる。

 

もうすぐ。

 

もうすぐだ・・・孫呉の悲願もそうだが、俺の復讐も果たせる。

 

ふと・・・思った。

 

その後は・・・どうする?

 

復讐を終えたら・・・?

 

また・・・旅にでも出ようか。

 

ゆっくりと・・・のんびりと。

 

あいつらと一緒に・・・それも、アリかもしれない。

 

「・・・あれ?兄さん、一刀達なんか揉めてない?」

 

「んあ?」

 

思考を一旦中断し、一刀達の方を見やる。

 

あー、ホントだ・・・なんか揉めてんなぁ。

 

「大方、一刀が蓮華の神経逆撫でするような事言ったんじゃねぇの?」

 

「はぁ・・・あの子達、両想いなんだから仲良くしなさいよねぇ・・・」

 

「それも青春ってな」

 

どうやら蓮華が一方的に一刀を攻めてるようだ。

 

一刀は必死に宥めようとしている。

 

ダメだなありゃ・・・火に油ぁ注いでるようなもんだ。

 

あ、平手で叩かれた。

 

「・・・うわ、いったそー」

 

「実際ありゃ痛ぇわなぁ」

 

肉体的というか精神的に。

 

うん、俺なら死ねる自信ある。

 

一刀が放心する中、蓮華は屋敷から走り去っていった。

 

「ったく・・・何やってんだか・・・・・・女心がわかってねぇなぁ」

 

「兄さんが言える事じゃないわよね・・・」

 

酷ぇなぁおい。

 

「つか、あいつらの仲が悪ぃと色々面倒だよなぁ・・・」

 

何れは孫呉を背負って立つ2人だからな・・・今から亀裂が入ったら不味いだろ。

 

「大丈夫でしょ・・・お互い惹かれあってんだから、時間が仲を戻すわよ」

 

「ならいいけどなぁ・・・」

 

2人とも不器用だからなぁ・・・

 

「しゃあねぇ、ちっとばかし手助けしてやっか」

 

「えー、せっかくの休みなのにー」

 

実際は単なるサボりだけどな。

 

「まぁまぁ、いいじゃねぇか。いつでも付き合ってやっから」

 

ぽんぽんと頭を撫で、ゆっくりと立ち上がる。

 

渋々雪蓮も頭を上げた。

 

そして、唐突に動きが停まる。

 

 

「あら、孫覇様との楽しい時間は終わったの?」

 

 

いつのまにか、冥琳が俺達の後ろに現れていた。

 

「・・・・・・あ、あれー?何でこんなとこに冥琳がー?」

 

鬼のような形相の冥琳に、雪蓮が怯える。

 

・・・・・・いや、俺もビビったんだが。

 

え、何?

 

武人の俺達に休んでいたとはいえ気配を感じさせないって・・・

 

ちょっと余計な能力開花してねぇか?

 

「しぇーれ―ん・・・言ったわよねぇ、私。あの仕事が終わらないと、総ての仕事が進めないって・・・あなたのせいで文官達が文句を言ってるのだけど」

 

「え、えーと・・・で、でも兄さんもー・・・」

 

「雪蓮・・・『呉王』であるあなたと『客将』である孫覇様の仕事の差ぐらいわかるでしょ」

 

「ちょ、兄さんてまだ客将扱いだったの!?」

 

「知らなかったのかよ・・・」

 

まぁ、俺は王になる権限を捨てたからな。

 

いくら王族とは言え、流石に元には戻れんし。

 

「孫覇様たっての希望だと、この前説明したでしょう・・・孫覇様が自由に行動できるよう、客将の方がやりやすいからって・・・」

 

「で、でも・・・」

 

「心配すんな、今度の戦じゃあ客将っつう身分は捨てるからよ」

 

対、袁術。

 

我らが孫呉の悲願を叶える戦。

 

「袁術戦じゃあ、俺が大将をしてやる。そん時にゃあ俺が正式な将軍だ」

 

「そういう事・・・それ以降なら孫覇様にも相応の仕事をしてもらうわ・・・という訳で」

 

「え・・・あ、ちょ、や・・・・・・兄さん、助け・・・・・・いやあぁぁあぁぁあぁあっぁあ!!」

 

連れ去られていく雪蓮を見送り、俺は静かに嘆息する。

 

「さて、行きますかね」

 

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「おーい、一刀〜」

 

「え・・・あ、蓮聖・・・・・・」

 

俺が話しかけると、半ば放心したような一刀が反応した。

 

あー、心がどっか逝っちゃってんなー。

 

「どうしたどうした辛気臭い顔しやがってー」

 

「・・・見てたんだろ?」

 

「・・・・・・え、あれ?何で?」

 

「お前がそんな楽しそうな顔してんのはそれぐらいしか考えられない」

 

ちっ・・・俺の性格よくわかってんなー、こいつ。

 

「まぁまぁ、んで、どうすんだ?このまま放って置くなんて言わねぇよなぁ言ったらぶっどばす、つか殺す」

 

「・・・その台詞の後に放っておくなんて台詞が言える奴がいたら見てみたいよ」

 

はっはっは。

 

「探すよ・・・勿論。責任は俺にあるから・・・」

 

「つかよ、お前蓮華に何言ったんだよ?」

 

「・・・ちょっと、ね」

 

詳しくは言いたかねぇか・・・ま、しゃあねぇ。

 

「お前らは将来、呉を背負って立つんだぜ?今からシコリを残すんじゃねぇぞ」

 

「あぁ・・・わかってる」

 

そう言い、一刀は走り去っていった。

 

んー、ま、手伝っておくかな。

 

恩は売るに限るからなぁ。

 

「さて、まずは蓮華を探さねぇとなぁ・・・・・・ん?」

 

ふと、訓練場で兵達が集まっているのが視界に入った。

 

率いているのは・・・劉雷と思春か。

 

訓練・・・にしては殺気立ってんなぁ・・・・・・

 

ちょっと話を聞いてみるか。

 

「おー・・・」

 

「敵は黄巾党が残党!!近頃近辺で民を苦しめる逆賊なり!!!恐れる事はない!!貴様らは厳しき訓練を積み重ねた孫呉の兵である!!だが油断もするな!!弱き者は、窮地に追いやられた時、予想もし得ない反撃に出る事がある!!全力を以て蹂躙せよ!!!」

 

『はっっ!!!』

 

「いー・・・・・・」

 

うおー・・・凄ぇなぁ。

 

何つうんだろう。

 

あいつは武将でもねぇのに、どっかの王みてぇな覇気を出しやがる。

 

指揮するの苦手とかぜってぇ嘘だろ。

 

詳しくは知らんが、かなりの修羅場を潜ってきたんだろうなぁ。

 

そういや、劉雷のおっさんの事あんま知らねぇなぁ・・・・・・

 

俺が生まれた時にゃあ孫呉にいたし。

 

まぁいい。

 

「思春、どうした?」

 

部隊の傍で待機している思春。

 

「あ、孫覇様・・・いえ、お聞きにはなっておられるでしょうが、近頃近辺にて賊が出没しておりまして。ようやく袁術の許可も得、討伐に向かう所です」

 

「・・・・・・何?・・・賊・・・・・・」

 

それも、劉雷の演説からして黄巾党の残党。

 

何か、嫌な予感がする。

 

「場所は?」

 

「西の森です・・・そこを中心に、被害が広がっておりますので」

 

「・・・・・・マジかよ」

 

確か、西の森には一刀と蓮華が2人っきりで入り浸っているんだったよな。

 

今まで遭遇しなかったのがせめてもの幸運か。

 

というか、もしかして蓮華の奴そこに行ったんじゃ・・・・・・

 

つまり、一刀もそこに向かう筈だよな・・・

 

まだ間に合う。

 

「討伐隊を急がせろ、俺は先に行っている!」

 

「え・・・どういう事で?」

 

「蓮華と一刀だ・・・お前ならわかるだろ」

 

「・・・・・・御意!」

 

事態の深刻さを察し、思春の顔が引き締まる。

 

「劉雷!事は聞いたな。お前んとこの隊長の不始末、連帯責任だ!」

 

「はっ!全体、装備を確認次第、出立する!!」

 

『はっっ!!』

 

これでいい。

 

さぁ・・・さっさと行かねぇと本当に取り返しのつかん事になるな。

 

急ぐか。

 

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「・・・・・・・・・ふぅ」

 

冷たい小川に足を浸してしばらく・・・日が没しそうな所を見れば相当な時間そうしていた。

 

既に感覚が失いかけている。

 

何でこんな事をしているのか。

 

考えるのも億劫。

 

ただこうやって、木漏れ日を眺めていたい。

 

「・・・一刀・・・・・・」

 

ぽつりと、頭から離れない男の名を蓮華は呟いた。

 

天の御遣いとして、孫呉にて重大な役を担った男。

 

その正体は未来から来たという、一般人。

 

その歳は自分とそう変わりない。

 

王になる役目を担う自分と、御遣いとして役目を担う一刀。

 

重大な役目を持つ者同士、どこか通じ合っていると思った。

 

だけど・・・・・・実際は違ったようだ。

 

一刀と自分の求める理想像は、異なっている。

 

その亀裂が、今回のような事態を招いた。

 

ちょっとした会話の亀裂。

 

普段なら、すぐにでもそれは修復されるものだけど・・・

 

今回は、そうはいかなかった。

 

軽くではあったが、お互いの理想を否定されたも同然。

 

一刀はすぐに謝ったが、蓮華は認める事は出来なかった。

 

怒鳴り散らし、暴力をふるって・・・挙句の果てに、逃げだした。

 

「最低よね・・・私・・・・・・」

 

いざ冷静になれば、後悔のみが思考を埋める。

 

大人げない以前の問題だ・・・己の言いたい事だけ言って、己が傷つくのを恐れる・・・子供。

 

駄々をこねる子供。

 

醜い。

 

醜すぎる。

 

「・・・・・・そろそろ、行かないと」

 

謝罪しなければ。

 

一刀に・・・一刀に謝らなければならない。

 

立ち上がり、履物を履く。

 

 

瞬間、何かを感じて背筋が凍った。

 

 

「・・・・・・っ!?」

 

近くに置いてあった剣を取り、抜き放つ。

 

辺りを警戒し、静かに己を叱咤する。

 

迂闊だった。

 

何故、ここまで接近に気付けなかったのか。

 

これだから未熟だと言われるのだ。

 

見つめる先・・・木々の影から、卑しい笑いと共に何かが出てくる。

 

「よぉ姉ちゃん。ダメだよなぁ、こんな所で1人でいちゃあ」

 

身につけるは黄巾の装束。

 

「そーそー、悪ぅい盗賊に襲われちゃうぜぇ?」

 

あの戦の残党。

 

「くく、久々の上玉だぁ、先走りすんじゃねぇぞてめぇらぁ!!」

 

数は3。

 

この程度の数ならば・・・何とか・・・・・・

 

その時、その賊共の背後が動いたような気がした。

 

まさか・・・もっといるのだろうか。

 

いや待て・・・そもそも、何故こんな所に残党が?

 

そう言えば、思春が部隊を率いて賊を討伐するという話を聞いた。

 

つまりは・・・その一味か。

 

討伐隊が編成されるという事は、少なくとも20はいる筈。

 

1人で敵う数ではない。

 

こんな偶然・・・考えたくもなかった。

 

と、その時、もっと恐ろしい事が頭を過る。

 

敵は自分を殺すつもりはない。

 

嬲り、慰みものにでもするつもりだろう。

 

そんな時、討伐隊が来たら?

 

もし、自分が人質となったら?

 

無理だ。

 

殺せない。

 

思春に自分は殺せない。

 

次期呉王である以前に、思春に蓮華という人間は殺せない。

 

となれば、待ち受ける未来は・・・全滅。

 

あってはならない。

 

そんな未来は・・・

 

ならば、ここで取る行動は・・・・・・

 

「っ・・・!!」

 

「逃げたぞ、追えぇぇえ!!」

 

踵を返し、全速力で駆けだす。

 

討伐隊が来るまで時間を稼ぐ。

 

だが・・・いつまで?

 

こいつらから、いつまで逃げればいい?

 

少なくとも数刻はかかるだろうか・・・

 

そこまで体力に自信はない。

 

もう少し人数が少なければ・・・・・・

 

考え出したら止まらない。

 

自業自得。

 

「考えるな・・・」

 

そう、今は考えなくていい。

 

ただひたすら、逃げ続ければいい。

 

討伐隊が来るまで。

 

「一刀・・・」

 

彼が・・・来るまで。

 

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「不味ぃな・・・」

 

森の中を疾走しながら、俺は背中に汗が伝うのを感じた。

 

事はかなりの急を要する。

 

下手すりゃあ国家規模の大問題だ。

 

王家の後継者が賊に囚われるなど・・・

 

いや、そんな事よりも蓮華自身の安否が気にかかる。

 

蓮華が一刀と別れてからそれ程の時は経っていない。

 

そこまで奥には進んでない筈だが。

 

クソが・・・

 

「事が済んだらたっぷり扱いてやっからなぁ・・・一刀ぉ!!」

 

そう叫び、俺は速度をさらに上げた。

 

つっても、森の中じゃあんま速度上げられねぇが。

 

「・・・・・・・・・あ?」

 

不意に、何かを感じた。

 

違和感。

 

とてつもない・・・違和感。

 

足を止め、思考する。

 

何だ?

 

何だこれは?

 

何かがおかしい。

 

敵・・・?

 

いやいや、気配なんざ何処にもない。

 

そう、何処にも。

 

盗賊も、一刀も、蓮華の気配もない。

 

そして・・・俺の思考は到達したくない結論へと至る。

 

 

「あれ、迷った?」

 

 

あんれー?

 

確かに西に向かってる筈だよなぁ。

 

西の森つっても、そこまで広くない筈なんだが・・・・・・

 

そもそもこれぐらいの森なら、しばらく走ってれば何かしらの気配を感じる筈なんだが・・・

 

あんれー?

 

どうしよう。

 

いやいや、どうしようって。

 

妹の危機にどうしようってないだろ!?

 

つうか30過ぎて方向音痴能力とかいらんから!

 

・・・・・・・・・・・・

 

マジでどうしよう。

 

このまま走り続けるか?

 

確かに現状打破の手の1つだが・・・闇雲に走ってどうなる。

 

蓮華と一刀は馬に乗っていたそうだ。

 

走りと比べれば、明らかに距離は離された。

 

つまり、既に一刀や蓮華は敵と交戦状態にある可能性があるっつう事。

 

急がんと不味い。

 

・・・・・・何で俺、馬に乗って来なかったんだよ。

 

というか喧騒1つ聞こえんてどういう事だよ。

 

本当に方角が合ってるんだろうな・・・・・・

 

どうする・・・どうする・・・・・・

 

「・・・・・・―――」

 

「っ!!」

 

・・・・・・聞こえた。

 

聞こえたぜぇ・・・やっとなぁ!!

 

耳を澄まして聞こえたのは明らかな人の声。

 

こんな人里離れた森で声がするなど、殆どあり得ないだろう。

 

つまり、一刀、蓮華、盗賊の誰か。

 

どれにしろ向かわない理由はない。

 

最悪の場合など考えたくもない。

 

俺にやるべきなのは・・・少しでも、少しでも速く蓮華の下に辿り着く事。

 

もしくは、蓮華に危害を与える者総てを・・・抹殺する事。

 

大地を蹴り、風を斬り、森を駆け抜ける。

 

聞こえてくるのは喧騒。

 

戦闘に入った・・・?いや・・・それならもっと大袈裟な声が聞こえてきてもいい筈。

 

いや待て・・・喧騒・・・・・・?

 

少し速度を落とし、木々の間に隠れつつ音源へと近づく。

 

そして、喧騒の正体を見た。

 

「・・・・・・ハズレかよ。いやぁ・・・アタリか?」

 

そこにいたのは例の賊。

 

数は・・・ざっと100ってとこか。

 

まぁ、討伐隊が編成される規模だわな。

 

つうか、あいつらこんな時間から酒盛りかよ・・・まだ日ぃ沈む前じゃねぇか。

 

目の前に広がるのは飲んで騒ぐ黄巾党の残党。

 

どうやらどっかの村でも襲ってきたばかりのようだな。

 

女に酒に食糧に・・・・・・

 

ちっ・・・胸糞わりぃ。

 

どうやら蓮華は・・・まだ捕まってないようだ。

 

一先ず安心か。

 

いや・・・ここまで規模が膨れて、尚且つ討伐隊が編成される程の奴らなら辺りを偵察している奴もいるかもしれん。

 

まだ安心は出来ない・・・か。

 

ま・・・まず俺がやるこたぁ決まってる。

 

無造作に、宴会の中に入り込む。

 

堂々と入れば意外と気付かねぇもんだからなぁ。

 

周りには浮かれる100人の逆賊共。

 

急いで出てきたから、俺は一切武器を所持していない。

 

・・・・・・はっ、上等。

 

「殺戮の始まりだぁ・・・」

 

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「・・・あー、だりぃ」

 

ったく、手間かけさせやがって。

 

賊なら賊でもっと根性見せろっつうの。

 

たかだか数十人ぶっ殺したぐらいで逃げやがって・・・

 

散り散りになった奴らを残らず殺すのに時間がかかっちまった。

 

「てめぇらも遅すぎだぁ・・・劉雷、思春」

 

「はっはっは、まぁ良いではないですか。無事賊を討伐できた事ですし」

 

「・・・申し訳ありません・・・もっと調錬を積んでいれば、孫覇様のお手を煩わせる事なんてなかったのに・・・」

 

あー、これが『ぽじてぃぶ』と『ねがてぃぶ』って奴かぁ・・・どっちにしろうぜぇな。

 

「劉雷、お前はもっと反省しやがれ・・・思春は反省し過ぎだ・・・まだ蓮華の無事がわかってねぇだろうが。総てが終わったらたっぷり叱ってやるから」

 

ぽんぽんと俯いている頭を撫でると、思春は顔を真っ赤にし、静かに頷いた。

 

んー、可愛いなぁおい。

 

散り散りになった盗賊共は討伐隊の到着により殲滅された。

 

首領格を軽く拷問すると、偵察は3人いたそうだ。

 

報告じゃあまだ捕まっていない。

 

蓮華や一刀と接触している可能性が高いだろう。

 

「んじゃあ、手分けして探すぞ・・・優先は蓮華。己。一刀の順だ」

 

「隊長は3番目なんですね・・・」

 

「たっりめぇだ。今回の元凶だろうが・・・まぁ、盗賊程度に殺られる奴じゃねぇよ」

 

みっちり鍛えてんだ・・・盗賊程度で殺られちゃあ困る。

 

少なかれど実戦経験もある・・・大丈夫だろう。

 

というか、蓮華1人でも3人ぐらいなら殺れると思うんだが・・・そこは念の為。

 

「んじゃあ、俺はこっちだ・・・見つけるまで帰還する事は許さん・・・いいな」

 

『御意』

 

2人の返事と共に、俺は走り出す。

 

捜索は森の奥深く。

 

既に日は没し、辺りは闇に包まれている。

 

クソが・・・視界が効かない分、他の感覚を強めるしかない。

 

まぁ、いつもやってる事だから苦労はせんが。

 

義眼になった当初なんざ、目ぇつぶってても行動出来るよう訓練したしな。

 

んで・・・索敵範囲を広げている訳だが・・・・・・後ろの方で部隊が行動してるせいかどうも気配が多い。

 

「1人でやった方がマシだったか・・・」

 

いや、数は多い方がいい。

 

広い森ならともかく、この程度の森ならば特に。

 

「進むしかねぇ・・・速く見つけねぇと・・・・・・」

 

万に1つ蓮華の身に何かあったら・・・母さんに顔向け出来ん。

 

それ以上に、俺は己を許せなくなる・・・

 

「・・・・・・ちっ」

 

心臓が落ちつかん・・・30過ぎた俺には少しばかり辛いぜ・・・・・・

 

下手すりゃ戦場より緊張してるんじゃねぇだろうか。

 

あー、ったく・・・マジで落とし前つけさせっからな一刀ぉ・・・・・・

 

義弟の顔を憎らしげに思い浮かべながら、俺は森の奥へ奥へと進んでいった。

 

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思春達と別れ少し・・・俺は森の奥にある小川に到着していた。

 

「・・・・・・こいつぁ蓮華の馬だよなぁ」

 

小川の近くで蓮華の馬を発見する。

 

興奮してるのか、俺を見るとさらに暴れ出した。

 

木に繋がれ、身動きが取れないらしい。

 

「どうどう・・・主人の場所がわかるのか?」

 

人間の言葉がわかるとも思えんが、長年、蓮華と共にいた馬だ・・・人間の意思疎通も多少なれど出来る筈。

 

思った通り、ぶんぶんと頷く・・・というか、案内すっからさっさとこれ外しやがれ変態兄貴という声が聞こえたような気がしたのだが・・・気のせいだろう、うん。

 

俺が縄を外すと、木々の間を凄い速度で駆けていく。

 

・・・って待てやコラ!

 

人間の足と馬の脚を比べるんじゃねぇぞ!!

 

あっという間に見えなくなる馬・・・クソが、足跡追いかけるしかねぇじゃねぇか!!

 

追いかける途中、一刀のらしき馬も発見する。

 

こっちは繋がれてはいなかったが、追いかける気もないようだ。

 

信頼薄いんだなぁ・・・と思ったが、その足元に賊が2人倒れているのを見つける。

 

どうやら見張っているようだ。

 

動物にまで慕われるとは・・・やっぱ見込みがあるなぁ。

 

・・・賊は後1人。

 

あそこにはいないという事は、一刀が賊を見つけ2人は倒したが1人を逃がした・・・と言ったところか。

 

まだまだ爪が甘いな・・・いや、2人倒せただけでも僥倖か。

 

軽く足を止め、その2人を確認する。

 

「・・・・・・殺しては・・・ないな」

 

良かった・・・あいつにはまだ殺しは早い。

 

覚悟は出来てるだろうが、状況が状況だ。

 

誰かを護る為に殺す・・・というのは一見、聞こえはいいが結局は言い訳の対象にしかならない。

 

だからこそ、一刀が人を殺す時・・・それは何よりも己の意思と覚悟が必要だと考えている。

 

ま、緊急の場合は致し方あるまい・・・つうか、余計なおせっかいかねぇ?

 

これだって俺の自論だし・・・むしろ護る為に殺したという意義が生まれた方が、あいつにとっては荷が軽いかもなぁ。

 

・・・って俺は一体何を・・・・・・

 

今は蓮華の方が重要だろうが・・・・・・!!

 

己を叱咤しつつ、再び走り出す。

 

どうやら方向は合ってるようだ。

 

人が通った跡がある。

 

心配なのは所々に血痕がある事。

 

誰の血痕なのかはわからない。

 

まぁ、致死量でもなさそうだし・・・蓮華でない事を祈ろう。

 

「・・・・・・―――!!!」

 

怒号が正面から聞こえた。

 

一刀の声ではない。

 

賊の野郎か・・・!!

 

察するに、蓮華と接触したのか・・・

 

クソが・・・間に合えよ・・・・・・!!

 

走り抜けた先に、少し開けた場所があった。

 

明らかな戦闘痕。

 

「何処だ・・・蓮華!!一刀!!」

 

辺りを見渡す。

 

がさっ・・・という物音が聞こえた。

 

振り向く・・・瞬間、思考が止まる。

 

そこに1人の賊が背中を見せて立っていた。

 

問題なのは・・・その奥。

 

木にもたれかかるように俯く蓮華。

 

 

動かない。

 

 

動いて・・・いない。

 

 

そして・・・男が剣を掲げる。

 

瞬間・・・俺の、思考が途切れた。

 

「・・・・・てめぇえぇぇぇぇえ!!!」

 

ざけんな・・・ざけんじゃねぇぞ。

 

賊風情が・・・・・・俺の妹に何をしたあぁぁっぁああ!!!!

 

激昂そのままに、俺は男の懐に入り拳を振り上げる。

 

「っ!!」

 

男は急に現れた俺に驚いたのか、息を飲む・・・が、そこからの行動は早かった。

 

即座に下がり、手に持つ剣で斬りつけてくる。

 

「ちっ・・・!」

 

無駄のない動き、無手では不利と悟り死角へ回り込む。

 

が、それにすら反応してきた。

 

いや、死角だからこそ反応したのか。

 

無駄に力量がありやがる。

 

本来ならこいつとの勝負を楽しむ所だが・・・・・・

 

てめぇなんぞと競う武なんざ持ち合わせてねんだよ!!

 

「らぁぁぁ!!」

 

拳を放つがかわされる。

 

と同時に放つ上段蹴り。

 

「がっ・・・!」

 

肩で防御してくるが、その上から叩きつける。

 

・・・咄嗟に顎を守ったのか。

 

こいつ・・・闘り慣れてる?

 

まぁどうでもいい・・・俺はこいつを殺すだけだ。

 

「死ねぇぇっぇええ!!!」

 

乱打。

 

ただひたすら拳を振り上げる。

 

多少戦闘に心得があるようだが・・・賊に身を落とした獣風情が、俺に勝てる訳ねぇだろ。

 

身の程を知れ・・・クソ野郎。

 

「っ・・・っ!・・・がっ!」

 

渾身の拳が、男の脇腹に突き刺さる。

 

吐血と共に、男は蹲った。

 

「これで終わりだぁ・・・賊・・・・・・俺の妹に手をかけた事、あの世で後悔しな」

 

完璧な踏み込み。

 

全体重と共に、爪先と喉へと叩きこもうとする。

 

 

「止めて兄様!!」

 

 

「っっ!?」

 

突然、耳を叩いた声。

 

咄嗟に打撃点をずらし、俺の蹴りは男の後頭部を掠めた。

 

「・・・蓮華・・・お前・・・・・・」

 

無事だったのか・・・という俺の言葉を遮るように、蓮華が男に駆け寄る。

 

「・・・おい、危ねぇぞ・・・・・・」

 

蓮華が男の顔を上げさせる。

 

「一刀、一刀!しっかりして!」

 

 

・・・・・・・・・・・・は!?

 

 

え、ちょっと待て。

 

今何て言った?

 

一刀・・・一刀だと?

 

「・・・・・・マジかよ・・・」

 

確認するまでもない。

 

そこにいるのは一刀だ・・・・・・

 

「な、何で賊の格好してんだよ・・・あ、油断させる為か・・・・・・」

 

そう言えば、さっき見た2人のうちの1人の服が脱がされていたような気がする。

 

あー・・・蓮華が倒れるのを見て気が動転しちまったか。

 

うーん・・・えーと・・・・・・反省。

 

「か、一刀ー・・・おーい?だ、大丈夫かー?」

 

何も言わずに蹲る一刀へと声をかけるが、返事がない。

 

「・・・あ、気絶してる・・・・・・」

 

やっべー。

 

どうしよ・・・マジでやっべー。

 

あー、お願いだからそんな親の敵を見るような目で俺を見ないでくれ蓮華ぁ〜。

 

とにかく、俺が殴った脇腹を確認する。

 

どうやら折れてはいないようだ。

 

まぁ、俺が何回か折って太くなってるからだろうなぁ・・・とりあえず良かった。

 

「とにかく城へ帰ろう・・・蓮華・・・・・・蓮華?」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

え・・・無視ですか蓮華さん。

 

「あ、お、俺、一刀持つから・・・な!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

手を貸そうとする俺を無視し、すたすたと一刀に肩を回して歩き出す蓮華。

 

気絶している一刀をずりずりと引きずりながら。

 

どうしよう。

 

嫌われた?余計嫌われた?

 

距離というか線引きというか何か崖出来てませんか!?

 

「・・・っしょ・・・・・・と」

 

何時の間にか控えていた馬に一刀を跨らせ、蓮華も跨る。

 

え・・・ちょ。

 

最後に、馬がこちらを見て鼻を鳴らした。

 

要約。

 

はっ、ざまぁ。

 

「・・・・・・ふん」

 

明らかに怒りを表し、蓮華はそのまま駆けて行ってしまった。

 

「・・・・・・・・・終わった」

 

うん。

 

色んな意味で。

 

肉体的には何ともない。

 

だが、精神は木端微塵に破壊された。

 

「・・・・・・帰ろう」

 

うん。

 

もう、帰ろう。

 

帰って・・・どうしよう。

 

あはは。

 

あははははは。

 

-7ページ-

 

それから1週間、蓮華は口も聞いてくれない話も聞かない俺を避ける・・・と、散々な日々が続いた。

 

結局蓮華が口をきいてくれたのは、一刀が許してやりなよ・・・と同情を示してくれてからだった。

 

と言っても。

 

『今日はいい天気だなぁ』

 

『そうですね』

 

『あ、でも何か雨の匂いもするなぁ』

 

『そうですね』

 

『今日は早めに調錬を終わらすかぁ』

 

『そうですね』

 

うん。

 

やっぱ許してないよなー。

 

・・・・・・散々だ・・・

 

だが・・・まぁ、収穫はあったか。

 

代償はかなり大きかったが。

 

一刀。

 

俺は、容赦はしなかった。

 

本気で・・・潰しにかかった。

 

なのに・・・あいつは数合なれど耐えてみせ、それどころか反撃してきた。

 

見事。

 

いや、むしろ出来過ぎだ。

 

華雄の一件もあるが、どう考えても戦争など関係ない国・・・ぬるま湯なれど平和な国。

 

そんな国の学生とは思えない。

 

聞けば古くから伝わる武術を習ってたそうだが・・・・・・それでも・・・だ。

 

これを・・・喜ぶべきか、恐れるべきか。

 

1人の義兄としてなら、喜ぶべきだ。

 

現に、義弟の成長は嬉しい。

 

だが・・・1人の武人としては・・・・・・恐ろしい。

 

正体が一刀と判った瞬間、全身に鳥肌が立った程に。

 

異常。

 

成長速度で言うならば昔の蓮聖を超えている。

 

強くなるのは構わない。

 

むしろ歓迎しよう。

 

だが・・・・・・一歩道を誤れば、それは堕落への道となる。

 

それだけは・・・防がねばならない。

 

導かなければ。

 

支えるのではない。

 

俺自身が先導し、一刀に背中を見せるのだ。

 

我が覇道は民を、仲間を、家族を導く道となる。

 

導く己が堕ちては話にならないが、愛する者達が堕ちるぐらいなら己が堕ちよう。

 

一刀・・・力に溺れるんじゃねぇぞ・・・・・・

 

後・・・・・・

 

 

お願いだから蓮華を説得してくれ・・・

 

 

説明
どうも、クリスマスですねぇ

友達とカラオケ行って喉潰してきましたアクシスです

今回は2部作・・・蓮聖視点からになります

次の投稿は一刀視点

重なる部分もありますが、初めての試みということで大目に見て下さい

途中、蓮華視点というか3人称入ってます・・・すいません


ほのぼの書くつもりがこんなことに・・・どうしてこうなった
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コメント
続きが気になるwwwwww!?(劉邦柾棟)
オリキャラと一刀をいっしょに出すのはどうかと思います。(黒い稲妻)
確認しなかった己が悪いので、よって自業自得。(黄昏☆ハリマエ)
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真・恋姫無双 恋姫無双 孫呉 江東の覇人 一刀 蓮聖 

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