真・剣帝夢想〜魏の章〜 第7話
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「………」

 

 

指定された集合時間は、午後。自分は待ち合わせ時間はきっちり守る性分だ。なので午後きっかりに来た。

 

 

「…………」

 

 

が、ここには時計がないらしく細かい集合時間が決まってるわけではないので、集まりが悪いのは仕方ないのだが。それから少し経った後、春蘭と桂花が集まって来た。

 

 

「なんだレーヴェ、随分早いな」

 

「………ああ、時間はきっちり守る性分なのでな。それより華琳達は食事でもしているのか」

 

「うむ、食事は済んだのだが……なにか髪のまとまりが悪いとかでな。今、秋蘭に整えさせている」

 

「そうか……」

 

 

どうやら髪をまとめているらしい。そういう事なら仕方ないのだろう。それからまた少しして華琳たちがやってきた。華琳の髪はいつも通りくるくるだった。

 

 

「……何?」

 

 

視線に気づいた華琳が何事かとレーヴェに話しかけた。

 

 

「いや、春蘭から髪の事を聞いていたからな……」

 

「雨でも降るのかしらね? いつもと違うようにしかまとまらなかったのよ。……どう? あなたから見て変じゃないかしら?」

 

「……大丈夫だ」

 

 

一応そう言っておいたが、レーヴェはもう一度髪を見たが、どこが違うのかさっぱりわからなかった。華琳なりのこだわりがあるのだろう。と思う事にした。

 

 

「ならいいわ。それに、州牧になったおかげで季衣との約束を守ることが出来たわけだもの。言うことはないわね」

 

 

そう、この間の戦いの後、華琳は陳留の刺史から、さらに広い地域を治める州牧へと昇進していた。慌ただしく引き継ぎ手続きを済ませて、ひと段落付いたのがつい先日のこと。落ち着いたのを機に、一度、みんなで賑やかになった街の様子を見て回ることになったのだ。

 

 

「そうだな……。ん? その季衣がまだ来てないな……」

 

 

その問いには秋蘭が答えた。

 

 

「今朝、山賊のアジトが分かったという報告が入ってな。討伐は私か姉者が出るから街を見てこいと言ったのだが、聞かなくてな」

 

「そうか……」

 

「ああ。自分の村と同じ目に遭っている村を見ていられんのだろう。はりきって出掛けていったぞ」

 

 

自分の村と同じ目、レーヴェにとってその気持ちは痛いほどにわかった。

 

 

「そう、か。ならお土産でも買って帰るとしよう」

 

「なんだ、考えることは同じか……」

 

 

春蘭はそう言った。春蘭も季衣のことを気にかけていたのだろう。

 

 

「あんたたち、観光に行くわけじゃないのよ?」

 

 

二人のやりとりに桂花がくぎを刺した。

 

 

「視察を怠らない。その上で季衣にお土産を買うだけだ。そうだろう?春蘭」

 

「仕事をちゃんとするならね」

 

 

華琳は春蘭の方を見て言った。心配なのだろう。

 

 

「はいっ!」

 

「……返事だけにならなければいいけど」

 

 

桂花も心配なのかはわからないが、気になっているのだろう。

 

 

「さて、揃ったのなら出掛けるわよ。桂花、留守番、よろしくお願いね」

 

「はぁい。………」

 

 

華琳達が出掛けて行く。

桂花はこっちを睨んでいる。まあ、自分が好きな相手が自分を残して嫌いな相手と出掛けるのだから、気分はよくないだろう。と判断した。

 

 

「……桂花も何かいるか?」

 

「アンタに買ってもらっても嬉しくないわよ!……覚えてなさい……!」

 

「………」

 

 

これは相当根に持ってるようだ、帰ったら部屋に罠でも仕掛けてあるかもしれない。やはり何かお土産でも持っていこうとレーヴェは思い、華琳たちの後に続いた。

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「狭い街ではないし、時間もあまりないわ。手分けして見ていきましょうか……」

 

 

華琳は街につくなりそう言った。

 

 

「では、わたしは華琳さまと……」

 

「春蘭あなたは右手側、秋蘭は左手側よ。私は市場よ。いいわね?」

 

「え……、は、はい……」

 

「承知いたしました。」

 

「オレは大通りということか」

 

 

春蘭は華琳といっしょに回りたかったようだがくぎをさされ落ち込んでいる。

 

 

「ええ。では、突き当たりの門の所で落ちあいましょう」

 

 

レーヴェはさっそく大通りに行くことにした。

 

大通りは見る限りかなり賑わっている。食べ物屋が多く、他にも本屋、服屋、小さな露天やらなんでもある。という感じだ。

 

 

「ちょっとちょっと。そこのカッコいい兄さん」

 

(なんだ?)

 

 

レーヴェは呼ばれた方に振り向くと、露天商らしき女の子とそのスペースに竹カゴがずらりと並べられていた。それと……。

 

 

「……これは何だ?」

 

 

店主らしき女の子の脇に置いてある木製の物体。それは箱状のフレームの中に、木や金属で作られた歯車がごちゃごちゃと突っ込んである。

 

 

「おお、兄さん、なんともお目が高い! こいつはウチが発明した、全自動カゴ編み装置や!」

 

「全自動……?」

 

「せや! まあ、百聞は一見に如かず、ちゅうことで……兄さん、こっちの取っ手を持って!」

 

 

そう言って女の子は謎の機械を差し出してきた。

 

 

「……ああ」

 

 

言われるがままに、機械のハンドルを手に取ってみる。

 

 

「でな。こうやって、ぐるぐるーっと」

 

 

言われるとおりにハンドルをグルグル回していくと、セットされた竹の薄板が機械に吸い込まれていって……。

 

「………」

 

 

しばらくすると、装置の上から編みあげられた竹のカゴの側面がゆっくりとせり出してきた。

 

 

「ほら、こうやって、竹カゴのまわりが簡単に編めるんよ!」

 

 

(………手動だな)

 

 

「……底と枠の部分はどうするんだ?」

 

 

レーヴェはひとまず思いっきり手動なのは置いておくことにした。

 

 

「あ、そこは手動です」

 

 

「……そうか。まあ、便利ではあるな」

 

 

思いっきり手動だったのは置いて、一応褒めることにした。この世界でこういう類のものはたぶん画期的であろう。

 

 

「せやろ! って兄さん、危ないっ!」

 

「……っ!?」

 

 

レーヴェが機械から手を離した瞬間、木製の歯車や、竹カゴの材料が周囲に吹き飛んだ。

 

 

「あー。やっぱだめやったかぁ……」

 

「……なぜ爆発したんだ?」

 

「まだそれ、試作品なんよ。普通に作ると、竹のしなりに強度が追い付かんでなぁ……こうやって、爆発してまうんよ」

 

「……なぜそれを店に置いてるんだ?」

 

「置いとったらこう、目立つかなぁ……て思てな」

 

「……ならここに並んでいるカゴは、この装置で作ったものじゃないのか?」

 

「ああ、村のみんなの手作りや」

 

「………」

 

 

いろいろ言いたいことがありすぎて、レーヴェは唖然した。

 

 

「なぁ、お兄さん」

 

「………」

 

 

呼ばれてもう一度女の子に視線をあわせた。

 

 

「せっかくの絡繰をこわしたんやから、一個くらい買うて行ってぇな」

 

「………」

 

 

レーヴェには珍しく相手のペースに呑まれっぱなしだ。その後結局レーヴェは竹カゴを一つ買っていった。

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集合場所は、突き当たりの門の所。いろいろと面倒があって遅くなったと思ったが、集まったのは華琳が一番でレーヴェがその次に来た。その後それほど待つこともなく、二人とも合流したのだが……。

 

 

「……で?」

 

「「「………」」」

 

 

華琳以外の三人は無言になっている。

 

 

「どうして貴方達は、揃いも揃って竹カゴなんて抱えているのかしら」

 

 

なぜか華琳以外の三人は竹カゴを持っていた。

 

 

「はぁ。今朝、部屋のカゴが抜けているのに気付きまして……」

 

「……まあ、なら仕方ないわね。で、春蘭は? 何か山ほど入れているようだけれど……」

 

 

秋蘭はまともな理由だが問題は春蘭だ。

 

 

「こっ、これは……季衣の土産にございます!」

 

 

そう言って春蘭はカゴの中に入っている物を見せた。

 

 

「何? 服?」

 

「はっ! 左様でございます!」

 

 

華琳はその土産にしては多すぎる中身を見て少し考えた後に。

 

 

「……そう。土産もいいけどほどほどになさいね」

 

「はいっ! ほどほどにしますっ!」

 

「……で、レーヴェもどうしてそんなカゴを背負っているの?」

 

 

レーヴェは少し考えた後。

 

 

「……オレも季衣への土産をこれに入れようと思ってな……」

 

 

後桂花の分も忘れないようにと、レーヴェは思った。

 

 

「……そう」

 

「「………」」

 

 

春蘭と秋蘭も何か言ってくるかと思ったが何か思うところがあるらしく沈黙していた。

 

 

「それで、視察はちゃんと済ませたのでしょうね。カゴなり土産なりを選ぶのに時間をかけすぎたとは、言わせないわよ」

 

「はいっ!」

 

「無論です」

 

「ああ」

 

「ならいいわ。帰ったら今回の視察の件、報告書にまとめて提出するように」

 

 

華琳がそう言って、歩いて行ったとき、その声は、唐突に掛けられた。

 

 

「そこの、お主………」

 

「……なんだ」

 

 

レーヴェが声の方へ振り返ると、そこには目深に布を被った誰かがいた。低くしわがれた声は、お婆さんのようにも若い男が無理に声を作っているようにも聞こえる。

 

 

「……占い師か。すまないがそんな時間はないのでな」

 

 

そう言ってるうちに華琳達は先に行ってしまっている。声に気付いたのはレーヴェだけのようだ。

 

 

「……お主は負ける」

 

「……なに?」

 

 

その言葉にレーヴェは動き出していた足を止め、もう一度占い師の方に振り返った。

 

 

「負ける、とはどういうことだ」

 

 

自慢ではないが自分は『剣帝』と呼ばれるようになる前から負けたことがほとんどない。負けたのはあのときのヨシュアくらいだからだ。だからかその言葉が気になった。

 

 

「……いずれお主は大きな困難に道を塞がれ選択を迫られる。行く先は光か闇か。お主は悩み、傷つくだろうがどちらを選んでもお主は負けるであろう」

 

「……どちらを選んでも負ける、というのか」

 

 

レーヴェは自分の武に絶対の自信を持っている。占い師の言葉など戯れ言にすぎないのだが、何故か占い師の言葉を邪険にすることができなかった。

 

 

「道はお主の内にあり。……それを忘れるな」

 

「………そうか」

 

 

レーヴェは懐から少しばかりのお金を置かれている茶碗に入れた。

 

 

「オレは負けない。この世界に平和をもたらすため自ら覇を唱える彼女のために。オレは自分に出来ることをやると、守って見せると、この『剣帝』という名に誓った」

 

 

レーヴェは静かに拳を握り、そう言った。そしてその場から立ち去り、先に行った華琳達を追いかけた。

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出し巻き卵です。

 

クリスマスはさみしくこれ書いてました。

 

ちなみに黄巾党の話はしません。

 

なぜならその話の元はすでに解決してますので。

 

楽しみにしてた方はすみません。

 

次からは反董卓連合軍編です。

 

楽しみにしていてください。

説明
遅くなってすみません

今回は次の話への繋ぎみたいな回です
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恋姫無双 真・恋姫無双 剣帝 レオンハルト レーヴェ  真・恋姫†無双 恋姫?無双 

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