彼の手料理 |
「姉上。ここが明久の家じゃ」
「へ、へぇ〜ここが吉井君の家なんだぁ〜」
さっきから心臓の鼓動がうるさいくらいに音を立てている。
「……姉上?」
「な、何でもないわよっ! そんな事より早く呼び鈴を鳴らしなさいよ」
「わ、わかったのじゃ」
訝しがる秀吉を牽制しつつ吉井君が出てくるのを待つ。
「はーい、どちらさまで……って、秀吉?」
玄関を開けた吉井君が秀吉の顔を見て驚く。
何? そんなに驚く事なの? そんな事よりアタシの方を見てよ。
「な、何で秀吉が?」
「ああ。それはの、姉上に無理やり……」
ギロリ……
「な、なんでもないのじゃ……」
「変な秀吉」
秀吉。あまり変な事を言うんじゃないわよ。
「ところで吉井君。あがってもいいかしら?」
「あ、うん。どうぞ」
「……じゃ、お邪魔しまーす」
ドキドキしながら吉井君の家にあがる。
へぇ……吉井君ってこんな所に住んでいるんだね。
ちょっと予想と違ったかな。
「あ、あの……あまりジロジロ見られると……」
「あ、ごめん。それより今日は宜しくね」
「うん。あまり自信はないけど、頑張って作るよ」
そう。今日は吉井君の家に彼の手料理を食べに来たのだ。
決して、変な事をしにきたわけじゃない。
「じゃ、待っててね。すぐに作るから」
「うん……」
ソファに腰をかけ料理が出来るのを待つ。
え? 秀吉はどうしたのかって? もちろんアタシの横にいるわよ。
まぁ――
「うぅ……理不尽じゃ……」
余計な事を言ったりしないように先制攻撃はしておいたけどね。
料理を作っている吉井君の姿。
普段のバカっぽさは消えてすごく真面目に見える。
「へぇーこんな表情も出来るのね」
「え? 何か言った?」
「いいえ。何も言ってないわよ」
「そう……?」
再び調理に戻る吉井君。
うん。少しカッコよく見えるかな。
普段は可愛いけど、今はカッコイイ。
「ふふっ♪」
「姉上が気持ち悪いのじゃ……」
「ふんっ!」
「うぐっ!?」
死になさい秀吉。
「料理が出来たよ――って、秀吉どうしたの?」
「な、なんでもないのじゃ……」
「ええ。なんでもないわ」
「だったら、いいけど……」
少し不審に思いつつも料理を並べる吉井君。
へぇ……見た目はすごく美味しそうね。
「じゃ、木下さん。どうぞ」
「……いただくわ」
恐る恐る吉井君の料理に箸を伸ばす。
「……ん」
「ど、どうかな……?」
「お、美味しい」
本当に美味しい。お世辞とかじゃなく本気で美味しい。
悔しいけど、文句のつけどころがないくらいに美味しい。
「よかった。喜んでくれて嬉しいよ」
「〜〜〜〜〜〜っ!」
い、今その笑顔は反則じゃない。
美味しい料理が作れて、更にその顔はズルい。
そんな事をされて落ちない人なんていないわよ。
なによ。吉井君なんてバカのくせにアタシにこんな感情を抱かせるなんて最低だわ。
ほんと、最低よ……
説明 | ||
シリーズ続編ですよ。 毎回毎回、秀吉が可哀想な事になってますね。 |
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コメント | ||
毎回楽しみに読ませて頂いています。短い文章の中に原作6.5巻の優子の雰囲気がよく出ていますね(枡久野恭(ますくのきょー)) 優子が出ると秀吉が酷い目にあう不思議(nao) 今回の優子はかわいいな〜 てか最後なんでツンデレキャラ?(VVV計画の被験者) |
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