デペイズマン・シード 4th season;I
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今回の場合、最も不運だった、というか「巻き込まれた」と言っていい少年の報酬は料理班班長の手料理夕食だった。

これがかわいい女の子のそれならばときめいただろうが、腕を振るったのは見慣れた上にぶっちゃけ食べなれた野郎作品だ。

言うまでもなく、単なる誤魔化し以外の何者でもない。

 

「まぁいいんですけどね」

 

全くその発言らしからぬ表情のままの男は泉 光子郎。

デジ班最高の(別の意味で)マルチタスク保有者である。

因みに本当にほんのさっきまで、彼は普通の休日を過ごしていた。

 

「全くそう想ってる顔じゃないよな、光子郎」

 

巻き込んだ側……少し距離を置けば彼らもまた巻き込まれたと、この場合は言ってもいいだろう……の先輩二人は、言ってることと表情が全くかみ合っていない情報戦担当者に腰が引けている。

例えばそっとお茶を足してみたり、メニューは彼の好むものを

だってこの後輩を怒らせたら、あっという間にこの団地中に「幼女とデート」が広まる。

嘘じゃないだろうが、付加される「かもしれない」あることないことが怖い。

どだい、あんな物騒なお姫様とかマジ勘弁です。

 

「それにしても今回驚いたよ」

「え?」

「俺たちってモラリストだったんだな、と」

 

色々常識を放置した人生を送っている自分たちから言っていい科白ではない気もするが、光子郎は中途参加だったゆえにそれを強く感じたことを否定できなかった。

その脇でうんうん、と太一の言葉に同意するヤマトの姿。

 

「あぁ、荒事担当だと想っていたんだが、上には上がいるもんだ」

「まぁいいですけどね……で、結局、本人たちはそのまま帰宅。

車椅子……預かったままだったんですか?」

 

最初顔を合わせた時に引っ張っていた不釣合いなアイテムを思い出す。

一瞬何かと思ったものだが、普通の家庭ではやはり持て余す代物だ。

乗っていないのに電車で運んでも周囲の奇異の目は避けられないだろう。

こればかりは仕方ないが、届けに行くとなると一苦労なのでそう聞くと、太一がひょいと肩をすくめて苦く笑った。

 

「いや。シャマルさんの、転移魔法っての?アレで回収してった。手だけ空中にうぞーって」

「はい?転移魔法っていわゆるテレポートですよね?」

「それの簡易版、ていうか手抜き版ていうか」

「あぁ。手のみ版?」

 

一応電話しながらだったんだけど、綺麗な女性の手が空中に突然現れて、がっしりと車椅子を掴みあげる光景。

って、それはオカルトの分類では?

うん、ビジュアル的にははっきりと。

当然のコトながら自分たちとは疎遠な魔力の話題をこれ以上しても仕方がない。

興味がないわけではないが、すっかり魔法不審になってる彼らは話題を切り替えることにする。

 

「それにしても実際にあった誘拐をでっち上げるって便乗犯?それとも模倣犯?」

「っつーか詐欺だろ。狂言誘拐なんだし、一応。未遂だけどさ」

「犯行理由が暴行事件を隠すため、か。わらえねぇ」

 

「巻き込まれた僕が一番笑えませんけどね」

 

・・・・・・・・・・・・

 

「とりあえず、食え!光子郎」

「ごまかし方に殺意を覚えますよ、それ」

 

そんなつもりは無かったのだが、そんな感想らしい。

はぁとあからさまなため息をされても、いや俺らのせいじゃないんだぜ?今回は。

 

「なんにせよ助かったよ。経費はクロノに」

「アリサさんが用意してくれるそうです。今回はクロノさんは全く関係ないんですから」

 

本人が聞いたら寝耳に水もいいところの提案に、先に光子郎が拒否を口にした。

半ば同情じみた口調は仕方ないだろう。

それにしても誘拐された本人から経費とは。

っていうか経費ってなに。

 

「えー、でも部下の暴走の尻拭いは上司の役目だろ」

「暴走しまくったリーダーが何か言ってますよ」

「なんかさっきからつっかかるな」

 

ツッコミレベルだろうが、いつもより辛辣に聞こえないわけではない。

まぁそれは当人たちの後ろめたさも伴っているのだろうが……

はぁ、とこの場一番年下のはずの少年はじろり、と先輩かつリーダーたちを睨みつける。

こんなふうに嫌味をずけずけ言われても対応できるのが彼だけというのもいささかなさけないがこればかりは仕方ない。

 

「いかんせん、聞けば聞くだけ問題だらけなお嬢さんたちですから。

特になのはさんという方が選ばれていたら、あくまで個人的な見解ですが、暗黒進化ルート一直線ですよ?

ヤマトさんくらいヘタレでタケルくんみたいなストッパーがいたならともかく、スタンドプレーディフォルトで、力で相手を屈させてからお話とか、どこの大国ですか彼女」

「そういう意味ならまぁ立場はまちがっちゃいねぇんじゃねぇの?あの組織に属するってならさ」

 

時空管理局。

ご大層な名前と、ご大層な大義名分。

あれだけ自我をはっきり行動に移せるくらいじゃないと、あの組織で「ほんとうにやりたいこと」はできないのだろう。

とはいえ。

 

「っていうか俺評価の部分は気にしていいか?今の何」

 

聞き捨てならない気がした話を流されて、シェフがどことなくヤサグレ気味に呟いたが勿論フォローがあるはずもなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい、はやてちゃん」

「ただいま〜、シャマル、みんな」

「はやて、車椅子ー」

「あ、ありがと。ヴィーダ。助かったわぁ」

「主はやて、御無事で」

「平気やで、シグナム。っかし疲れたわぁ。お台場っから飛び通しやもん」

「怪我とかねぇか?はやて。主になのはの流れ弾とか」

「ないない。大丈夫」

「ならいいけどよ」

「心配性さんやなぁ、ヴィーダは。なのはちゃんは怪我させる下手はせんで?」

「そーか」

「そこじゃないと想うけど」

「どの道あたらんやろ。さ、ごはんのしたくといこかー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばいっこ足りなかったな」

「…………あえていうなら、俺らの出会いそのものとかじゃねぇの?」

「うまいこというな、ヤマト」

「流してくれ。いや、実際には俺分を引いてくれているなら、それはそれで全然OKなんだけど」

「なんの話です?」

 

 

 

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というわけでラストでした。

ぬぅ、駆け足感が拭えない

 

説明
忘れられてるかもしれないけれど今年中には、今年中には終らせたかったんだ……というわけでデペイズマン・シード4thシリーズラスト。完全空気だった男子組メイン、のはず。今後ちまちま番外編やってその後4月までには5th完結させて、オリ主×2再編成シリーズ(http://www.tinami.com/view/176428)にはいるんだー(というと大概目標を明確化すると失敗するの法則。
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コメント
韻さま>どちらかというと02タケル的な?(待て。はい、こちらこそ来年もよろしくです。(ほうとう。)
よーぜふさま>どうひっくり返してもその流れ以外に発想が出てきませんでした。何故だろう?(ちょ。 ヤマトは弄られて何ぼだと思います。(ほうとう。)
なのはの暗黒進化?・・・Bウォーグレイモン的な? えーと、来年もよろしくです。。(韻)
そうか・・・なのはは暗黒進化なのか・・・はっ、はははっ・・・ とりあえずヤマトきゅん、がんばれw(よーぜふ)
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デジモン なのは クロスオーバー 連載 太一 ヤマト 光子郎 鳴海矢神家 

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