恋姫コマンドー 前編 |
それはとある世界の話であった。
その世界の現代はなんの変哲もない普通の世界である。
その世界のアメリカの軍にはかつて特殊部隊が存在していた。その名も『コマンドー』。
この物語はかつてコマンドー部隊に所属していた大佐、シオン・コーチーと呼ばれる女性の戦いの物語である。
恋姫コマンドー
ここアメリカのとある山奥ではある親子がひっそりと暮らしていた。
「ふぅ……」
山の中で矢を用いて動物を狩る女性、名前をシオン・コーチーと言った。
この女性はかつてアメリカの軍で存在していた特殊部隊『コマンドー』の隊長であり、階級は大佐であったが、今は軍を止め、娘のリリー・コーチーと一緒に暮らしている。
「こんなものかしら」
シオンが狩った動物の数はざっと20匹。しかも30分の間である。
「ひとまず帰りましょう」
シオンが狩った獲物を背中のカゴに入れて、そのまま家に帰る。
その一方では……。
「え? シオンが狙われている?」
アメリカ軍本部では将軍であるカリン・ソーレーがとある情報を耳にした。
「はい、どうも最近不審な死を遂げてる者達が皆、コマンドー部隊の人間だったものなんです」
ここアメリカでは最近になって不審な殺人事件が頻繁に起こっている。
そしてその殺害された人間達は皆、コマンドー部隊の人間だったと言うこと。
「コマンドーはもう解散して、皆隠れ家とも言える場所で住んでいるはずよ。
簡単に見つかるわけ……」
「まさか裏切り者がいるのでは?」
「いえ、今のところシオン以外の人間は皆死んでいるわ。戦死した人間も含めてね……」
そう言いながらもカリン将軍は少し不審に思っていた。
「とにかく、シオンに連絡を! しばらくしたら、私も行くわ!」
「分かりました!」
軍本部は慌しくなっていた。
シオンは家に帰ってきた。
しかし家の周りが荒らされていることにシオンは気付いた。
「これって……」
シオンは泥棒の仕業だとは思わなかった。
何故ならこんな山奥で泥棒なんてしてもあまり得になることは無い。
しかも泥棒にしては荒らしすぎているのだ。
「まさか!?」
シオンは慌てて、隠し武器庫に行く。
そこは荒らされておらず、誰も来た痕跡が無かった。
シオンは暗証番号を入力し、そこからライフル銃を持ち出して、荒らされている家の中へと入る。
シオンが警戒しながら居間に行ってみると、そこには見知らぬ男が一人、座っていた。
「あなたは?」
「まあ、落ち着きなって」
「……リリーはどこ!?」
娘のリリーは家にいるはずなのに、何の返事も無い。
シオンはすぐにリリーのことをその男に尋ねる。
「まあ、落ち着けって。銃を突きつけられたら落ち着いて話も出来やしねえ」
そう言いながらも男の足はとても偉そうに組んでいた。
「娘は無事だ大佐、今のところはな……。
この先どうなるかはあんた次第だ」
シオンは男の話を聞きながらも窓から外を見る。
すると外には見たこと無い車が2台走っている。
「娘を無事に助け出したいのなら、俺達に協力しろ。OK?」
「OK!」
シオンはそう言うとその男に向かって発砲し、男を射殺した。
シオンはすぐに家から出て外にある自分の車の方に行く。
しかし車は案の定、エンジンが破壊されていてまともに動かない。
そんな状態なのにも関わらずシオンは車を押し、下り坂まで運ぶ。
そして下り坂の力を借りてシオンは車に乗り込み、2台の車の後を追った。
その様子は逃げている車の方でも確認されていた。
「追ってくるぞ、あの女」
シオンが乗る車は2台の車に追いつこうとしたが、エンジンが壊れてるためブレーキも効かず、通り過ぎてしまう。
とは言ってもこの山の通り道の関係上、シオンの車と敵の車は再び接触することが出来る。
2台の車はシオンの車が再び近づいてくることに気付く。
「まだ追いかけてきやがる」
「ぶつける気だ」
シオンは車をぶつけようとするも失敗。
シオンの車は横に倒れてしまう。
2台の車のうちの1台はそのまま走り去っていき、もう1台の車は止まり、そこからシオンを引っ張り出した。
「私をどうしようと……」
そこにある一人の男がやって来る。
シオンはその男を知っていた。
「チョウセ、殺されたんじゃ……」
男の名はチョウセ・ワカン。かつてコマンドー部隊でシオンの下で働いていた男であった。
しかしとある作戦でチョウセは殺されたとされていたが……。
「残念だったな、トリックだよ。
あんたにタイを追い出されてからずーと、復讐の機会を待っていた。
ようやくその時が来た。待ってたぜ」
チョウセはそう言うとシオンに向かって麻酔弾を撃ち、シオンは眠ってしまう。
その頃、シオンが住んでいた隠れ家では心配になってきたカリンがやってきていた。
「シオンは見つからないの?」
「いえ、一人の死体だけです」
「まだ他にもあるのですか?」
「シオンが生きていればまだ死体が増えるはずだ」
カリンはそう言ってその場を後にした。
それからしばらくしてシオンは空港にいた。
何故かと言うと、リリーを人質にとられ、シオンはある仕事をさせられるところだからだ。
その仕事とは、かつてチョウセが滞在していたタイの現大統領を暗殺するとのこと。
チョウセの雇い主は元タイの大統領であるが、あまりの非道政治のためにリコールされてしまったのだが、再び大統領に戻ろうと言うのだ。
「あの人にいくらもらったの?」
シオンがチョウセに雇われた金額を尋ねてみる。
「10万ドル、ポンとくれたぜ。だけどな大佐、あんたをぶち殺せと言われたらタダでも喜んでやるぜ」
そう言いながら、チョウセはシオンの監視役に一人、連絡係に一人残して車に乗ってどこかに行った。
連絡係の男は航空機のチケットをシオンに渡す。
「ビールでも飲んでリラックスしな。娘の面倒は俺がしっかり見てやるよ」
「ふへへへ」
「面白い人ね、気に入ったわ。殺すのは最後にしてあげるわ」
シオンは危ない状況でありながらも脅すほどの度胸があった。
シオンは監視役とともに飛行機に乗り込む。
監視役は窓側、シオンは通路側に座る。
「今度余計な事を言ったら口を縫い合わすぞ」
「………」
スチュワーデスが発進前のアナウンスをし、シオンが毛布の準備をし、監視役も準備をしていると……。
(ふん!)
「うおっ!」
シオンは監視役の隙を見て、エレボーを監視役の顔面に命中させ、ふらついた監視役の首をへし折った。
シオンは殺した監視役を寝ているように見せかけるため毛布をかぶせ、枕で頭の後ろを支え、帽子で顔を隠した。
「あの、到着までどのくらいかかるのでしょうか?」
シオンが近くにいるスチュワーデスに尋ねる。
「飛行時間は11時間を予定してます」
「ありがとう、あと頼みがあるのだけど……。
こちらの方…私の連れなんですけど、起さないでもらえないでしょうか、死ぬほど疲れているので……」
「かしこまりました」
それからしばらくして飛行機は飛び立った。
その様子は連絡係も確認でき、連絡係は電話をした。
「コーチーは飛びました。荷物も一緒です」
連絡係は電話をし終える。
しかしその男は気付かなかった。シオンが飛行機の貨物室からこっそり脱出していた事に……。
空港近くにとある女性がいた。
その女性の名はトウカ・リュビー。ただの一般人である。
その女性はたまたま連絡係の男の近くにいた。
そこにシオンがトウカを後ろから脅すように近づく。
「動かないで」
「!」
「ちょっとどいて」
「でも動かないでって…」
「今は少し動いて…車に乗って」
シオンはトウカに車に乗るように言う。
トウカは車に乗る。そしてシオンは本来一人乗りの車のシートを思いっきり引っぺがす。
「きゃあ!」
シオンは車に乗る。
「私の言うとおりにして」
「ダメよ、これから空手の稽古が……」
「今日は休んで。とりあえずあの黄色の車を追って」
トウカに車の運転を指示し、トウカは車を走らせ、連絡係の後を追った。
「後で私を殺すつもりですか?」
「いいえ」
「殺すって言うわけないわよね」
「何もしないわよ」
「本当に?」
「信じて」
「でも何でこんなことするの?」
「今はちゃんと言えないわ。ただ信じてっていうしか…」
「でも私達知り合って五分しか経ってませんよ〜」
連絡係の車は一つのデパートに入って行き、トウカの車も入っていった。
シオンの追跡は今の所ばれてはいない。
シオンはトウカを連れて、連絡係の男を追う。
「ねえ、私がいると足手まといに……」
「もう少し付き合って」
連絡係がエスカレーターに乗って上に行き、シオン達もエスカレーターで追った。
シオンは連絡係に見つからないように柱に隠れてトウカに事情を話す。
「ここならいいわね。実は、私の娘が誘拐されたの」
「え?」
「あの男が唯一の手がかりなの。私の姿が見られたら娘が殺される。
だからあなたに頼むしかないの。あの男を甘い言葉で誘ってここまで連れてきて、後は私がやるわ。
それであなたは自由よ。頼むわ」
「そんな事急に言われても…」
「頼むわ。私達を助けて、あなただけが頼りなのよ。残された時間は早くても10時間だけなのよ。そうでないと娘が殺されるの。頼むわ」
「……分かりました、やってみます」
トウカは何とか連絡係の男に接触しようとする。
しかし隠れているシオンを見かけた警備員は怪しいと思い込み、仲間に連絡してしまう。
「頭のいかれた女がいるみたいだ。なんか強そうだから、手におえそうにない」
「分かった、すぐ確認する」
連絡を受けた警備員がシオンを確認し、他の警備員に連絡する。
「全警備員へ、3階で非常事態だ。
容疑者は女性、180cm、髪は紫、胸がボインの変態だ」
トウカは何とか連絡係の男に接触しようとしていた。
しかしその間にシオンは警備員に接触されてしまった。
「ここで何をしているのです?」
「友人を待っているのです」
トウカが心配してシオンの方を向いてみると警備員に捕まった事を知る。
「いけない」
「俺をお探し?」
そこにタイミング悪く、連絡係の男が来てしまう。
シオンもそれを見て、まずいと判断した。
「一緒に来い」
警備員がシオンを取り押さえようとしたが、シオンはそれよりも先に攻撃する。
「あれは…」
シオンの暴れている様子は連絡係の男にも知られてしまう。
「コーチー! 小銭だ、小銭を出せ!」
男は携帯電話を持っていなかったため、近くにいたトウカに小銭を無理矢理要求し、トウカから小銭を取り出し、急いで電話ボックスに向かう。
「いけない!」
シオンは自分の近くにいた警備員達を倒し、電話ボックスのある方へと飛び移る。
男は銃を取り出し、シオンに向かって発砲する。
『きゃああああああ!』
銃声は当然回りに響き、デパート全体が混乱する。
シオンは男の電話ボックスに近づき、電話ボックスを揺らし、電話ボックスを持ち上げ、男の連絡を阻止した。
シオンは男を取り押さえようとしたが、他にもやってきた警備員達に取り押さえられそうになる。
シオンは何とか警備員達を振りほどき、エレベーターで逃げる男の後を追う。
シオンはバルーンを利用して、ターザンのようにぶら下がり、下へと降りた。
男は何とか自分の車に乗り込み逃走をはかる。
シオンもトウカの車を無理矢理動かし、男の後を追った。
「待って!」
トウカは何とか自分の車に乗り込む。
「あなた、何ですか?
車は盗む。シートは引っぺがす。私はさらう。
娘を探してって言い出す。人を撃ち合いに巻き込む。
挙句の果てには電話ボックスを持ち上げる。
あなた、何者ですか? その次はターザンですよ。
何があったのか、もう少し詳しい説明して下さい!」
「今はダメよ」
「ええ〜」
そんなこんなでシオン達は男の後を追った。
シオン達は街中を爆走し、とうとう山道まで追い詰め、トウカの車を前にして相手の車にぶつけ、相手の車は歩道を乗り上げて停止した。
シオン達の方はスピードに出しすぎで前にあった電柱にぶつかり、停止した。
「きゃっ! 死んでるんじゃないの?」
「大丈夫、生きてるわよ。ここで待ってて」
シオンが倒れた男のほうに行き、服をあさる。
すると服にはどこかの宿泊施設の鍵が入っていることを知る。
「これは……」
その鍵にはどこの宿泊施設なのか書かれていた。
シオンは鍵を取り上げると男の襟を掴んで、車に押し付ける。
「娘はどこ?」
「このくそったれ……」
「どこよ! 答えなさい!」
シオンが男の体を揺らしながら、車にたたきつける。
「誰が言うかよ」
「見上げた忠誠心ね。でもね、あなたの命をささげるほどの値打ちのある相手かしら?」
シオンはそういうと男を抱えて崖の方へと行く。
「頭を冷やしてよく考えて見なさい」
シオンは男を宙ずりにするかのように、男をさかさまにして頭が下になるようにし、シオンは左手で男の脚を持つ。
「ひぃひぃ……」
「支えてるのは左手よ。利き腕じゃないわよ」
男は命の危険を感じておびえる。
「お、俺を殺したら…娘は見つからんぞ」
「じゃあ、どこにいるの?」
「し、知らねえよ。知ってる奴と会う約束はしてるんだ…」
「ソリーで?」
「な、何でそれを……」
シオンは先ほど抜き取った鍵を見せる。
「この鍵がそうよ」
シオンは鍵を引っ込める。
「うう……あ……あ」
「あなたは最後に殺すと約束したわね」
「そ、そうだ、大佐……た、助けて…」
男は命乞いをする。
「ごめんなさい、あれは嘘よ」
シオンはそう言って左手を放した。
「うわあああああああああ!!!」
男は崖から落ちていった。
シオンは男の最期を見届け、トウカの所に戻った。
「あの〜車が、なくなっちゃんですけど……」
シオンはそう言われて少し困る顔をするが、すぐにいつもの顔になる。
シオンは考えたのだ。先ほどまで男が使っていた車は歩道を乗り上げていただけで、まだ動く事に気付いた。
シオンは車を歩道に戻した。
「これでいいわ」
シオンとトウカは直した車に乗り込む。
「さっきの人はどうしたの?」
「解放してあげたわ」
シオンはそう言うが、きちんと言えばこうなる。
「(この世から)解放してあげたわ」
とても怖い台詞であった。
シオンは車を走らせ、男が別の人間と待ち合わせる宿泊施設へと向かった。
後編へ続く
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年末映画系小説SP「恋姫コマンドー」 この作品はハリウッド映画「コマンドー」を恋姫キャラに置き換えた作品です。 性格や口調に変更がある部分もあるかもしれませんが、ご了承下さい。 |
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シュワちゃんが主役のアレですな?見た事ありますよ。強烈な作品でしたね〜。(frauhill0314) なぜこの設定を思いついたw(yosi) |
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