真・恋姫無双〜妄想してみた・改〜第五話
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洛陽よりいくらか離れた山林で一人、北郷一刀はいた。

恋や張遼と予定が合わない時は、こうしてセキトと遠乗りがてら素振りをするのが習慣となっている。

今日もまた、そんな日だったらしく木漏れ日の中、素振りを繰り返していた。

型の反復練習ではなく、相手を想定しての剣を振り続ける

誰に教えられたか、現実世界からこのやり方が一番しっくり来ていた

 

 

 

「―――――――――フゥ」

 

 

 

乱れた息を整え、再度仮想の相手を見据える。

道場でも何度も繰り返した攻防の数々。

 

(………)

 

基本、弓・槍を多用する戦場では刀のリーチ差は致命的だ。

一方的に射程外から攻撃されては為す術も無い。

唯一のアドバンテージ、密接時の斬り合いの優位も接近ありけりだ。

 

「―――――――――ハッ!」

 

先日の張遼との訓練では、ある裏技を使ったおかげで一本取れたが、それでムキになったのか、

「なんやねん今の!?ずっこいわ、もういっぺんや!!」

なんて文句を付けられ、ボコボコになるまで扱かれた。

やはり奇を突かなければ、名立たる武将達への勝機は無い。

ただなにか感じるものはあったのか、彼女は俺に真名を預けてくれた

その日から一刀、霞と呼び合う仲になり、訓練によく付き合ってくれる。

基礎鍛錬は欠かさず、実力さを覆す為の奇策、戦法も練っておかないと……。

 

「……ふぅ」

汗だくになった顔を胴衣を拭い一息つく。

太陽は既に、頭の上を追い越しておりさんさんと輝いている。

昼過ぎになったのかちょうど腹が減ってきたな。

 

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「んーそろそろメシ食いに帰るか、セキト」

「ぶるるるる」

小川で遊んでいたセキトは待ってましたと言わんばかりに嘶(いなな)く。

「あはは、大きくなってもセキトはセキトだな」

濡れたままじゃれつく体を撫でる。天下の名馬もその持ち主と同じく、日常生活ではまったく警戒心が無い。

元が犬だったせいか、尻尾を振ってぐるぐる回っている。

「よしよし、じゃあまた背中に乗せてもらうよ?」

「ひひーん!」

馬具を着せて、いざ出発しようとしたその時。

 

「北郷殿!北郷殿はどこに居られる!!」

 

静かな木々を割って、自分の名を叫ぶ声がした。

「ん?なんだいったい」

「ひひん?」

ずいぶんと焦った声色だ、馬轍の音とともに真っ直ぐこっちに向かってくる。まあここに居る事は伝えてあるから洛陽の関係者みたいだけど。

ハテナマークを浮かべる俺とセキトの前に、馬に乗った兵士が一人現れた。

「!!やはりここに居られましたか!訓練の最中申し訳ありません。ですが急ぎの用件がありまして」

「急ぎ?」

何だろう、腹の減った恋でも暴れ始めたかな?

 

 

 

「洛陽にて謀反で御座います!!」

「……は?……は!?」

 

 

 

一瞬、思考がぶっ飛んだ。

「えっ、ちょっ、どういうこと!?」

「先程、宮中にて薫卓様が拘束されたのです。犯人は全武将を集結させよ、との事です。

さもなくば薫卓様の命は無いと脅され………」

待て待て、なんだそれ。内乱?いやそれはおかしいだろ!?

 

ねね達によれば、袁招の奴がでっち上げの戦を起こすまでたいした事件は無いはずだ。

むしろ謀反なんて大事件黙ってるはずがない!

「急ぎ入城を!張遼様はすでに向かわれています」

っと今は疑問に思ってる場合じゃない。

「よし! 行くぞセキト!」

「ヒヒーーーーン!!!」

ともかく現状把握だ、ひらりと馬体に跨り、全速力で林を駆け抜ける。

さすがは赤兎馬。こういう時は心強い、ものすごい速度で景色が流れていく。

すでに遠くなった兵士さんを置き去りに、真っ直ぐ洛陽を目指す。

 

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あっという間にたどり着いた目的地、洛陽。

厩にセキトを繋ぎ、急いで玉座の間に向かう。

突然の異変に城内は大慌ての様子、長い廊下の中動揺する女中や怒号を飛ばす兵士に、さっきから何度もすれ違う。

なんだかんだで一度も会う機会が無かった董卓ちゃんにまさか、こんな形で再会しようとは思っても見なかった。

焦る気持ちを抑えきれず走ってたどり着いた扉に触れる。

 

 

 

その先で最初に目に映ったのは……。

焦点の合わない瞳で玉座にうなだれる少女と、その首に閃く銀色の光だった。

 

「月!!」

 

咄嗟に声が出る

月。これが彼女の真名。そうだ俺は彼女を護ると誓ったんだ。なのにこんな危険な目に合わせているなんて!

彼女の首元にある銀、つまりは刃の持ち主を視認してさらに驚く。

 

「……なんで……詠が」

 

詠。それは彼女の真名。月を護る為なら、その命さえなげうつ覚悟を持った少女。

 

(いったいどうなってるんだよ)

謀反だけでも驚きで頭がいっぱいなのに、更にはその首謀者が人質の親友なんて意味が判らなさすぎる。

 

「北郷!こっちに来るのです!」

 

呆然とする俺に掛かる声、前には恋、ねね、霞がいた。

正面に向かう途中、玉座の間を確認する。人は少なく、十数人。人払いをしているようだ。

「これはいったい………大体なんでこんな事が!」

 

 

 

そんな興奮する俺に諭すように霞が、

「気持ちは分かるけど、一刀。ようく見てみい、詠の目を」

「目?」

「…………………………………………正気じゃ、ない」

確かに、月と同じくくすんだ瞳だ。まるで人形のよう。

「ねね達が玉座に来てからずっとあのままなのです、こっちの声に動かず、反応もしない。あの体勢で立ち尽くしたままなのです」

「……なら誰が俺達を……」

正気じゃないとしたら、誰が召集の号令を出したのか?他に首謀者がいるのか?

 

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「揃ったようだな…………」

「!?」

 

 

 

突然の声、それは玉座の後ろからした。気配は一人じゃない!?

湧いて出たように気配は増え、数は二十人程、全員が白装束を纏っていた。

 

「要求は三つ。逆らえば董卓とこの文官の命は無いと思え」

 

こちらの意見は聞かないといった声色で話しかけてくる白装束。

「ひとつはこれから起こる戦に全力をもって迎撃せよ、逃げる事は許さん」

これから起こるって……なんでそんな事知ってるんだ。

 

「二つ目、北郷。貴様には最前戦にて戦ってもらう」

 

「なっ!?」

 

「!?」

 

「なんですと!?」

 

「三つ。呂布、張遼、陳宮。この三名は北郷に力を貸す事まかりならん」

俺一人って事か!?

 

「以上だ、三つが守られれば二人は解放しよう」

「ちょ、ちょっと待たんかい!これから始まる戦?一刀が前線に出る事が条件?いったい何者やお前ら!!」

怒号する霞だが、

「質問は受け付けぬ、ただ履行せよ、我らはいつでも監視している」

言うと姿が消えていく。

「……なんやねんほんま、これは夢か?」

「……そうだったらいいな」

本当に姿が消えた白装束。残ったのは依然と動かない月と詠。

 

「妖術使いなんて初めて見たのです」

「…………まあそう考えるしかないよな」

 

突如現れ、人を操り、姿を消す。どう考えても常人の及ぶところじゃない。

ただ、なぜだろう?これをどこか見たような――――――

 

「奴らのいない今のうちに、どうにか出来ませんか恋殿?」

「…………………………………………駄目、気配だけ残ってる」

「姿だけ消して近くにおる、いうことやな。うちと恋でも目に見えんのはきついで」

 

確実に救うとしたら、危ない事はできない。

やっぱりこのまま従うしかないのか……。

 

「これからの戦ってのはやっぱり袁招の事やろうな」

「あ、ああ、そうだろうな」

 

洛陽の事件は歴史に残る程のものだけど、霞は当然知らないよな。袁招が準備しているってのは以前から軍議で聞いていたし。

「でも、一刀をわざわざ指定してくるなんて……なんか心当たりでもあるか?」

「……ないよ。妖術使いに知り合いなんていないから」

 

「………………………………………………ご主人様」

心配してかきゅっと袖を掴んでくる

「大丈夫、なんとかしてみせるさ」

こういう事の為に、修練を積んできたんだ。それを生かせる時がきた。

 

 

 

彼女達を守るために……。

 

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「ならば私が力を貸してやろう!!」

 

 

「戻って早速軍議を開くのですよ」

「せやな」

「………」

「ってまてい!!無視をするな!!」

 

やたら声を上げる女性がいた、実はずっとここに居たのだが誰も触れなかった。

……白装束さえも。

 

「なんや華雄、いたんか」

わざとらしく聞く霞。

「おったわ!!ていうか一度目あっただろ貴様!?」

「そうやったけ?まあそれは置いといて、なんか用?」

「だから力を貸すといっておるのだ!!北郷に!!」

 

「………」

「………」

「………」

「………」

 

「な、なんだその反応は、私は力を貸すなとは言われなかったぞ」

……まあそうだな、気配も変化ないからOKみたい?だけど。

なんだろ?すごい噛ませ犬臭がする。正直ありがたいけど……。

そこまで思って、三人の沈黙が俺に向かっているのに気が付いた

 

「……なにか怖いですよ?御三方?」

「あの華雄が助力するなんてなあ……」

「普通だったらありえないのです」

「………………………………………………………………手篭め?」

 

直球すぎる!?

 

「ちっ。ちがっ……」

「なにをいう!!私と北郷の間には愛がある!!手篭めなどではないわ!!」

嫌な意味でキラーパスがきた!?

 

「……ほう?」

「……やっぱり、なのです」

 

やっぱりとか止めて!

 

「お前を守る為なら、この華雄、全力を掛けよう!!」

「………」

「………」

「………」

 

意外な助っ人は頼もしいが、現状の修羅場に援軍は来ない。

かくして、北郷一刀の戦いはすでに始まっていた……。

   

説明
第五話をお送りします。

洛陽で起きた異変。
それは白き装束を身に纏った者達が引き起こしたものであった。

開幕。
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コメント
PONさん>続きをお楽しみくださいませ……全ての答えはそこにあります!(よしお)
なんですべての記憶があるのに無印の記憶だけはないのかなぁ…(PON)
320iさん>このTINAMIでの華雄人気は目を見張るものがありますねw(よしお)
タケダムさん>うpしました!一刀はやっぱりどこも一緒ですね><(よしお)
wwww続き早く読みたいです!!どこに行っても一刀は一刀だなww(タケダム)
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