〜真・恋姫?無双 魏after to after preludeU(桂花)
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〜真・恋姫?無双 魏after to after preludeU(桂花)

 

 

 

 ――北郷は天に帰った。

 

 華琳様が告げられた言葉は、私が待ち望んでいた事だった筈なのに、私の心はちっとも弾んではくれなかった。

 それどころか、ぽっかりと穴が開いてしまった感覚が生まれたほどだ。

 正直に言うなら、華琳様がご冗談を仰ったとしか思わなかったのだけれど、あの場に北郷がいなかった事、少し前から感じていた不安がそれをすぐに冗談ではないと、真実であると答えを導いてしまっていた。

 凪の様に錯乱してしまう事が出来たなら、もしかすると幸せだったかもしれない。

 でも、私は軍師。冷静に物事を受け止めることが出来てしまうわけで、この時ばかりは、そんな自分を心底恨んだ。

 

 北郷一刀――華琳様が拾った天の御遣い。

 私がこの世で最も忌み嫌う男=A華琳様の御命令がなければ、真名を預けたいとさえ思わない存在。

 私にとって、男なんて使い道のない役立たず以外の何物でもなく、それは北郷も例外ではなかった。

 真名を呼ばれるだけで怖気が走り、言葉を交わそうものなら孕まされるのではない事さえ思うほどに、私はあの男が嫌いだった。

 にも拘らず、あの男はちっとも堪える素振りを見せず、馴れ馴れしく接し続けた。

 そうしてとうとう私はあの変態に抱かれた。

 思い出すだけでも身の毛がよだつ。

 

 だから、北郷が天に帰ったというのなら、私は喜ばないといけない筈だった。華琳様を誑かし、穢す存在がいなくなった事に歓喜しなければいけない筈なのに、私はちっとも喜べなかった。

 

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 それからも、私は自身の心に出来た穴を埋める事が出来なかった。

 「ちょっと!!どうしてこの程度の事がこなせないの!!あの屑ならしっかりこなしていたわよ!!」

 屑というのは、言うまでもなく北郷の事だ。文官に出した仕事が全く進んでいなかった事に私は怒りを立てる事が多くなった。

 そして、何かと付けて比較の対象に北郷を持ち出す事が多くなった。

 期限までにこなすよう指示を出して部屋から追い出した後、私は自身を心から嫌悪した。

 「どうして・・・この私が、北郷の事をいつまでも引きずっているのよ」

 不思議で仕方がなかった。

 他の将たちもそうだが、まさか自分までとは思っていなかった。

 

 武官としての仕事に一心不乱に打ち込むようになった春蘭。

 

 そんな姉を諌めつつ、自身は文官としての仕事に没頭するようになった秋蘭。

 

 見るからに以前までの明るさを失ってしまった季衣。

 

 華琳様の舌さえ唸らせた料理の腕を陰らせてしまった流琉。

 

 真桜と沙和、この二人に関しては例外中の例外、凪の事でそんな暇がなかった。

 

 霞は体を壊すほどに酒を呷り続けた。

 

 華琳様も、以前のような凛々しさは影を潜められていた。

 

 以前にも増して居眠りをするようになった風。起こせば起きるのだけど、みるからに表情が暗かった。

 

 稟は全く鼻血を噴かなくなった。いい事である筈なのに、私はそうは思えなかった。

 

 張三姉妹は、長女の天和が歌おうとすれば、声が出なくなる始末、そして、活動を無期限で休止してしまう。

 

 そして、一番酷かったのは間違いなく、凪。北郷がいない事に耐えられなくなったあの子は、とうとう選んではいけない選択肢を選んでしまった。

 自害してでも、凪は北郷に会いに行こうとしたのだ。

 

 愚かしい事この上ない選択である筈なのに、それを馬鹿にする気は全く起きなかった。

 

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 それからまた暫くの時が流れたある日の事。

 「・・・北郷の仕事だったわね、確か・・・」

 書庫でふと、あの男がこなしてきた仕事の書簡が目に留まった。

 私はそれを抱えれるだけ抱え、無意識のうちにとある部屋まで歩を進める。

 「・・・なんで私がアイツの部屋にいるのよ」

 気が付けば私は北郷の部屋の机に座っていた。今すぐに出ていこうかとも思ったが、持ってきた書簡は意外と量があり、また持って歩くのは億劫だったから、仕方なく北郷の机で持ってきた書簡に目を通すことにした。

 

 「下手な字ね・・・どうにか読めるけど、酷いものだわ」

 そう言いながら、あの馬鹿が華琳様に拾われた時は全く字の読み書きが出来なかったと聞いた事を思い出した。それを考えれば、コレは物凄い進歩と言える。

 最初からこうだというのなら、救いようがないが零からはじめて僅かな機関でここまでかかるのならば、褒めるべきなのかもしれない。

 

 そうして読んでいく内に、また字の下手な書簡がでてきた。

 「なによ、今度のは・・・下手以前の話じゃない。・・・読めないって、幾らなんでも酷すぎよ」

 書簡の字が滲んでいて全く読めなかった。その事に呆れているとぽたりという小さな音が耳に届いた。

 なんだろうと思ってそこでようやく気が付いた。

 

 「なん・・・で、私・・・泣いてる、のよ」

 

 頬を熱いものが伝う。その正体は私自身の涙。

 

 ――私は、泣いていた。

 

 ああ、そうか。

 私は、北郷がいなくなった事をずっと悲しんでいたのね。だけど、それを認めるのが嫌で・・・ 結局は私も他の子たちと同じだった。

 認めたくない、けどここまできたら認めるしかないじゃない。

 

 私は、北郷の事が――好きだったのね。

 

 だから、私は何かとあいつを引き合いに出していたんだ。

 アイツの事を忘れないようにするために。

 「ふっ、く・・・うわあああああああああああん」

 自分の気持ちに気が付いた私は、とうとう声をあげて泣いてしまった。

 今まで積もっていたモノを溶かすようにただひたすら、泣き続けた。

 

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 その後、五胡が大軍を以って侵攻してきたへど、凪の鬼神のごとき活躍、そして、三国の協力もあって五胡を徹底的に痛めつけ大敗させることに成功した。

 その頃には、殆どの将がある程度は立ち直っていて以前ほどではないにしろ、魏は再び活気を取り戻した。

 話は少し戻ってしまうけど、五胡との決戦に当たっては私たち魏の三軍師は持てる知恵の全てを以って策を練った。

 それは当然のことだけど、それ以上にアイツが体を張ってまで導いた泰平を乱す連中の事が心底許せなかったから。

 

 五胡の決戦が終わって、再び平和を取り戻した大陸。

 そんなある日のこと。

 「・・・いい天気ね」

 柄にもない事を口にしたかしらとも思ったけれど気分が良かったから別に気にはならなかったわ。

 「早く帰ってきなさいよ」

 アイツが聞いたら目を点にするかもしれないけど、この言葉は私の心から出た私自身の正直なキモチ。

 

 北郷が帰ってきたら、たった一度だけ、そう・・・一度だけあの日気付いたこの気持ちに正直になってみよう。

 正直になって甘えてみよう。

 北郷はどんな顔をするか想像しただけで笑ってしまいそう。

 だけど、一度だけなら別に構わないでしょう。

 

 アンタが想像もできない私を見せてあげる。

 

 だから――。

 

 「早く帰ってきなさい、北郷!」

 空に向かって、私はそう言った。

 

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〜あとがき〜

 

 

 えーっとですね、この作品は、詰まっていた最中、気分転換に書いていたものです。

 凪ほど長くはなりませんでしたが、桂花のお話です。

 こんな桂花も充分にありではないかと思います。

 皆さんがお気付きかどうか別として、一応。

 この話はただいま・・・おかえりなさい魏 end after に繋がるお話ですので、此方の方も以降の作品を楽しみにしていただけたら私としては嬉しい限りです。ただ、以前から言っているように、孫呉伝がメインですので待たせることになると思いますが、気長にお待ちいただけたら幸いです。

 それでは次回の作品でまた――

 kanadeでした

 

説明
連続投稿です。
このお話は桂花の視点のみとなっております
若干、キャラに無理があるかもしれませんがおどうぞご了承ください
それではどうぞ
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コメント
3Pの「僅かな機関」→「僅かな期間」かな(紅羽)
碌にコメントの返事を書かない私ですが、この作品を含め、沢山の方にコメントを頂けることは非常に励みとなっいます。これからも皆様に気にいられるよう頑張りますので、これからも私の作品をよろしくお願いします(kanade)
桂花・・・・・あ、ダメだ。もう画面が滲んで見えねぇ・・・(泣)(takaya)
もちろん充分ありです!!(mokiti1976-2010)
この桂花はありだ。間違いない(きの)
あれ、涙が…。(poyy)
タグ
 アフター 桂花 

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