剣帝?夢想 第二十話 |
集合地点決定からおよそ一月、蜀呉の二国は夏口に集合していた。総計八十五万の兵力が集合し、多くの仮設兵舎が立てられている。そしてその中でも一際目立っているのが、レーヴェの乗ってきたドラギオンだった。戦闘で使うつもりは全くないが、味方の士気向上と敵の威圧くらいにはそこにあるだけで利用できるだろうと思い持ってきたのだ。事前に呉には説明しておいたので、一般兵士が少々ざわついただけで大きな混乱はなかった。
「は〜い、久しぶりね。レオンハルト、劉備」
「あ、孫策さんもお久しぶりです」
「そちらも元気そうで何よりだ」
集結してすぐに、蜀呉両軍の王はこれからのことを話し合うために集まっていた。それぞれの後ろには主だった仲間、家臣たちが揃っている。
「時間もそうあるわけではない。早いところ話を始めよう。そちらに向かって魏が動いたという話を聞いたが、どうなった?」
「話が早いな。我々が同盟の再確認を行っていたのとほぼ同時期に魏の先遣隊…といっても数は多いがな。それと江陵で交戦し、我らは時をおかずして撤退した。あとのことは…周泰!」
「はっ!!」
周瑜の声に一人の少女が進み出る。そしてはきはきした声で報告を始める。
「曹魏の軍勢は現在江陵に留まり、送られてくる物資を受け取っています。同時に、近くの軍港にて多数の船を用意しているようです」
レーヴェはその情報を聞きながら、影が鳩で送ってきた情報と照らし合わせ、差異を探る。今のところは違っているところはなく、静かに周泰の報告を聞いておく。
「船か。だとすると決戦の場はまた違うところになるか。周瑜殿、決戦の場としてなりうるところの目星はついているのか」
愛紗が顎に手を当てながら周瑜へと問いかける。周瑜は少しの間だけ考え込んだ後、口を開いた。
「…赤壁だろうな。おそらく船の上での戦いになるだろう」
その言葉を聞いて蜀の面々は顔を険しくする。蜀の軍は船の上で戦うことを想定しての訓練はしていない。そもそも船での戦いの経験すらない。レーヴェの部隊だけはどんな状況、場所でも戦えるように訓練を積んでいるので他よりかは動けるだろうが。
「結局はなんとか接近戦に持ち込むしかないだろう。そのためには何重にも策を巡らせねばならないが。救いは魏のほうも船には慣れていないところだろう。策のほうはお前たちのほうに任せてもいいか?オレは少しでも兵を船に慣らしておこう。鈴々、星、交代で兵たちを船に乗せてくれ。周瑜、お前たちのほうから船での戦いに精通している人間をよこしてくれると助かる。さてと、その前に・・・」
そういうがはやいか、レーヴェは一つの天幕に向かって剣を振り下ろした。直後、天幕が切り裂かれ、一人の兵士がその場に倒れていた。その兵士は、恐れを含んだ視線をレーヴェに向け、事切れた。桃香は突然のことに何がなんだか訳がわからずにあたふたしている。呉の面々は驚いた顔をしている。斬撃を飛ばすなどというような芸当は初めて見たからだ。
「さて、一つ忘れていたが、とどめをさす策はどうする。足止めだけでは勝てんぞ。曹操を倒すだけならばオレ一人でも、殺すことなくやれるが、それでは意味がないだろう?」
何事もなかったかのようにレーヴェは話を戻した。敵諜報員の遺体はレーヴェの部隊の隊員が片付けていく。しかしレーヴェの疑問も当然。足止めだけではただの時間稼ぎにしかならず、じり貧になるだろう。
「策か…孔明よ、お前たち二人に策はあるか?」
「はい。二人で相談してひとつだけ。周瑜さんは?」
「わたしも一つだ。さて、同時に見せ合うとするか」
そういうと三人は掌に何かを書き、見せ合った。そしてどちらもやはりか、というように笑いあう。
「え、なになに?私にも教えて!」
「桃香はだめだ。態度とか言動で絶対ばれる。鈴々もだ」
桃香が顔を輝かせて二人に尋ねるが、レーヴェは一言で切り捨てた。そしてのぞき見ようとしていた鈴々の首根っこをつかみ、後ろに下がらせた。そして桃香が不満たらたらの顔をしながら後ろに下がる。
「お前は見るだろう?」
周瑜の言葉にレーヴェは彼女の掌を見て頷いた。しかし、
「…どうやって仕掛けるつもりだ?生半可な策では、その策を使う間すら与えられないぞ」
「私に考えがある。…雪連。この戦いが終わるまで何も言わずに、私のことを信じてほしい」
「良いわよ」
一切考えることすらなく、孫策は即答した。しかし、それは何も考えていないのではなく、どう見ても周瑜のことを信頼しているからで…。
レーヴェたちは黙ってそのやり取りを見守っていた。そして、周瑜振り返り口を開いた。
「では部隊の編成に移ろうか」
「はい。まずは敵と一当てする先陣の編成ですね。これは最強の部隊を当てるのがいいかと思います」
「その通りだな。呉からは私と孫策が出よう。そちらは…」
「オレと愛紗、華苑と朱里で出よう。他のものは待機だ。いいな、愛紗、華苑」
「御意。その任、見事努めて見せましょう」
「レーヴェ様のご命令とあらば」
愛紗は真面目な顔で頷き、華苑は片膝をつき、頭を垂れた。
「いいわね、剣帝レオンハルトに軍神関羽、そして剣帝の懐刀華雄。いいわね、たっぷりと暴れられそうじゃない」
そういいながら孫策は舌舐めずりをする。それを華苑は特になんの感情も見えない顔で見ていた。以前の自分ならば孫策と共闘、それも同じ戦場でなど断固反対しただろう。だが、レーヴェに敗れ、その近くで戦い、桃香たちとともに過ごすうちに変わっていった。過去の因縁にとらわれるのではなく、まだ見ぬ未来を。そして、自身の周りにある日常の幸せを守る。それが今の自分に課した天命。そう考えていた。
そんな華苑を見て孫策は驚いた顔をする。何か言うことはなくとも、顔か態度にこちらに対する嫌悪なりなんなりが浮かび上がると思っていたからだ。しかし、華苑は平穏そのもの。怒りや嫌悪を無理やり押さえつけているわけでもなく、本当に特に何も感じていないようだった。
(あの華雄がここまで変わるなんて…。一体何があったのかしら?)
孫策は一人物思いにふけっていたが、話はどんどん進んでいく。そして、
「我らはお館と桃香様の命令にのみ動く!他軍の貴様にとやかく言われる筋合いはない!」
いきなりの怒声に我に返った。何事かと視線を向けると怒声を上げた魏延をはじめとして、蜀の武将の幾人かが険しい顔で周瑜を見ていた。どうやら、周瑜が自分の指示に従え、と言ったことに対し反対しているようだ。それに桃香はおろおろしているようだったが、レーヴェがすぐにその場を収めた。
「いいだろう。今のところは従っておこう。しかし、本格的に戦闘になればこちらはこちらで指揮を取らせてもらう。桔梗、焔耶、蒲公英、今はそれで我慢しておけ」
「しかし、お館様よ。お館様の訓練により、我らの戦い方は他軍とは異なっておる。それをよくも知りもせん輩に動かせるとなれば、被害を受けるのは一般の兵たちだ。お館の部隊ならば、たとえ誰が上におっても自身らの実力を発揮できるだろうが、我らの兵はそこまでとはいかん。だからこそ簡単には受け入れられん」
「オレは自分の兵たちを信頼している。それに桔梗たちのこともだ。それではいけないか?」
レーヴェが桔梗の眼をまっすぐに見ながらそう言い放つ。その言葉に桔梗は渋々と頷き、それを確認すると、他の面々に視線で確認を取る。それに対し、皆は渋々と頷いていた。
「そういうことだ。序盤は周瑜に一任しよう。しかし、任せろと言ったからにはお前の考えている策を確実に実行してみせろ」
「任せておけ。雪連、呉の武将も同じ配置にし、本陣には蓮華様をおく。いいな?」
「分かった。言っとく」
「頼んだ。それでは、これで軍議は終了だ。各々、いつでも動けるようにしておいてくれ」
「了解です。雛里ちゃん」
「うん。操船のほうは呉の人たちにお願いして、私たちは白兵戦に集中します。皆さん、準備のほうをよろしくお願いします」
そういいながら、雛里が帽子を押さえながら頭を下げる。
「了解した。右は私が指揮を執ろう。左は紫苑、お主に任せてもいいか?」
「了解よ」
雛里の言葉に答えた星の言葉に紫苑が頷く。そして愛紗が引き締まった顔で華苑をともなって先陣へと向かった。
「レーヴェ隊ボウガン班、操船に合わせ、弓を射ろ!弓を撃てないものはボウガン班の護衛にあたれ!オレは敵の船に移り、沈めてくる。あとは任せるぞ!」
「はっ!いってらっしゃいませ!レオンハルト様!」
レーヴェは簡単に指示を出しつつ、魏の船と最も近づいたときに飛び移る。そして着地すると同時に、身近にいた、驚いた顔をしている兵士を切り捨て、艪を握る兵へと接近し、すれ違いざまに斬っていく。そして、頃合いを見計らってクラフトで船体に穴をあけ、水の中に沈めていく。そして、援護しようと接近してきていた魏の船に移り、同じ工程を繰り返していく。
そして、いくつかの船を沈めた後、大きな木片の上に発ち、発煙筒で合図を送る。そして近寄ってきた自分の船に飛び移ると、合流の指示を出した。
「おかえりなさいませ。首尾のほうは?」
「それなりに沈めてきた。だが、残念ながら主だった将の姿はなかった。ここで何人か生け捕ることができていれば少しは楽になったのだろうが」
「いないものはしかたがないでしょう。それより、孔明様より、黒の煙のあとに白の煙、つまり撤退の合図がありました」
「分かった。これより整然と撤退する!オレたちは最後尾を行き、敵の追撃から味方を守るぞ!最後まで気を抜くな!」
レーヴェの乗っている船は最後尾を行き、追いすがってくる敵船に向かい、ボウガンの矢の嵐を降らせる。連射式かつ高性能のボウガンは、コツをつかまなければまっすぐかつ距離を飛ばせない弓と違い、少々の訓練である程度正確に、遠くの敵に向かって矢を放つことを可能にしていた。
敵兵はといえば、自分たちの知らない武器に翻弄され、満足に動くこともできずに、その手足を撃ち抜かれていた。そしてしまいには追撃の手を止めて諦めて引き返すしかなくなっていた。
「曹魏は進軍を停止し、味方は無事帰還。作戦は成功ですね」
雛里は曹魏の動きと、味方の損害を確認したうえで安心したように呟いた。
「あ、あれってご主人様の船じゃない?よかった〜、無事に戻ってきたよ〜」
その隣では、開発研究部の作製した双眼鏡を使って桃香が戻ってくる船を眺めていた。微妙に遠くから、正確にいえば研究開発部の天幕のほうから爆発音が聞こえてくるが気のせいだろう。桃香は全く気がつかずに、雛里は帽子で顔を隠しながら、レーヴェたちと合流するために陣地へと向かった。
「敵の主力は予定通り、いや、予想した以上にうまく戦場に釘付けになっている。これは予想以上に時間が稼げそうだ。しかし、時間がないのには変わらんがな」
「そうですね。このあと、どう策を仕上げるかによりますね」
周瑜の言葉に朱里が真剣な顔で同意する。その頭の中では、いかに自身の策を形にするか、ということを高速で組み立てているのだろう。
「今の状況をさらに混乱させないと、策を実行してもおいしくないし、あまり意味がないですぞ〜」
ねねがそれに続くように厳しい顔をして唸っている。軍師一同がああでもないこうでもないと話し合っているところに、少々馬鹿にしたような笑みを浮かべて黄蓋がやってきた。
「なんじゃ、また軍議か。下手な軍議、休むに似たり、じゃな」
「黙れ黄蓋。たかが一武将が偉そうなことを言うな」
「…儂に喧嘩を売っているらしいな?」
さっきまでの雰囲気が急変し、相当に険悪な雰囲気になる。そして二人はいささか過度にお互いを罵り合い、さらに険悪な雰囲気へともっていく。
「そもそも、貴様のような体で王に取り入ったような売女ふぜいの脳でいったいどんな策が出せる?そんなお粗末な策ならば、我らが一気果敢に攻め入ったほうがよほど戦果が上がるわ!のう、そうは思わんか?剣帝よ」
そしていきなりレーヴェへと黄蓋が話を振ってくる。レーヴェは内心ため息をつきながら口を開いた。
「確かにそうだ、といいたいところだが今回は相手が相手だ。ただの力押しが通用するような相手ではない」
「ほう、剣帝ともあろうものが臆したか?所詮は名前だけか」
「貴様!我が主を侮辱するか!」
黄蓋の暴言に愛紗が武器を構え、他の面々も殺気立つ。だが、蜀の将が動くよりも先に周瑜が黄蓋を一喝した。
「言うに事欠いて私を売女呼ばわりし、蜀王であるレオンハルトを臆病者呼ばわりか!!黄蓋!貴様の役を剥ぐ!ただの一兵士として戦場で散るがいい!」
その言葉に血相を変えたのは黄蓋と、それを聞いていた呉の面々で、黄蓋以外は真っ青な顔をしていた。
「儂を一兵卒に落とすじゃと?これまで呉に忠を尽くし、身を、魂を削ってきたこの儂を!?」
「上官に対する侮辱、命令不服従、それに同盟相手である蜀王を貶す発言。役を剥ぐどころか処刑されても文句は言えん理由だ!未だに命があるだけ感謝しろ!失せろ黄蓋!天幕に戻り謹慎しているがいい!この戦いが終わった後、蜀との相談により貴様の正式な罰を通達する!」
「勝手にせい!!」
黄蓋が顔を怒りに歪ませたまま荒々しくその場を後にする。それを冷たい目で見送る周瑜に対して桃香が躊躇いがちに何かを言おうとして、レーヴェにそれを止められた。
「ご主人様?」
「お前たち、陣に戻っていろ。このような状態では軍議をしてもいい策など浮かばないだろう。また後で集まるべきだ」
「しかしお館!こんな大事な局面で仲間割れする奴らを信用してもいいのですか?それに…」
焔耶が納得いかないというように、そしてその場にいる蜀の皆の気持ちを代弁するように詰め寄るが、レーヴェに正面から見つめられ、何も言えなくなる。
「…抗議の方はオレの方からしておく。今は陣に戻っていてくれ。朱里、雛里、陣に戻った後のことはよろしく頼む」
「「はいっ!!」」
二人は真剣な顔でレーヴェに対して返事をすると、皆を促してその場を立ち去っていく。その反対側、呉の方でも孫策が呉の武将たちを宥めつつ立ち去ろうとしていた。
「…レオンハルト、なにかまだ用があるのか?」
周瑜は不機嫌そうな顔をしつつもレーヴェに対して問いかける。レーヴェはそれに対し、薄く笑うと周瑜に近寄り、小さく囁いた。
「この時期でしか仕掛ける機会はないというのは分かるが、もう少し演技の練習をしておくべきだな。先程立ち去って行った普通の密偵程度なら大丈夫だろうが、見るものが見ればあの諍いはいささか不自然だ。打ち合わせてやったわけではないだろうが…あれでは互いが互いの功績などを全く知らないとしか思えないぞ。お前たちの不仲を喧伝するためでも、少し違和感があったぞ。まぁ、こちらの武将たちはその僅かな違和感に気づいてはいなかったようだがな」
「…どこまで読んでいる?」
「さてな。こちらの軍師の方がさらに深く理解していそうだがな。オレも陣に戻る。近いうちに忙しくなりそうだからな」
そう告げるとレーヴェは悠然と歩き去って行った。周瑜はその背を見送ると、幾度か頭を振り自らもその場を後にした。
その夜、突然呉の陣地が騒がしくなり、慌てた様子で伝令がレーヴェたちのところへやってきた。
「ほ、報告です!呉の黄蓋が自分の隊の兵士を連れ、脱走したとのことです!」
「なんだと!?だからいわんこっちゃない。周瑜め、自分に従えと言っておきながらこの体たらくとは…ご主人様!我らは魏の強襲に備え臨戦態勢を整えます!」
「頼んだ。愛紗と星、それに翠の三人を中心に動いてくれ。ただし、黄蓋の追撃をする必要はない。自分たちの不始末だ。自分たちで処理してもらおう」
「「「御意」」」
三人は頷くと、軽く頭を下げてその場を慌ただしく去り、兵に指示を出しに行く。そしてそれと入れ替わるように朱里と雛里が前に出てくる。
「…この黄蓋の脱走、どう考える?」
「これも周瑜さんの策の一つかと。詳しいことは分かりませんが、先程の争いとこの脱走が曹操さんを出し抜くための布石かと」
朱里の言葉にレーヴェはそうか、と頷くと、紫苑と桔梗を呼びよせた。
「紫苑、桔梗は火矢の準備をボウガン部隊にも同じく火矢を用意するように言っておいてくれ。桃香はそう多くはないだろうが、動揺している兵士たちの統制を取ってくれ。何も心配することはない、落ち着いて持ち場につけと言っておいてくれ」
「分かった。言ってくるね」
桃香と桔梗が去った後、雛里が口を開いた。
「あの、ご主人様。ここは私たちもこの混乱に乗り、黄蓋さんを混乱しつつ追撃した方がいいと思うのですが。呉が慌てていて、こちらだけ落ち着いていれば曹操さんもおかしく思うと思うのですが…」
「いや、ここはオレたちは落ち着いていたほうがいい。曹操はオレのことを随分と高く買っている。それは影の報告からもわかるし、奴の態度を見て、オレも確信している。だからこそ、オレたちの軍は落ち着いていなくてはならない。身内である呉は別だが、同盟国であるオレたちは、同盟国の将が一人脱走した程度では揺らがないというところを見せなければならない。そうすれば、曹操も、黄蓋の脱走は呉にとっては大変なことだが、蜀にはかかわりのない、捨ておいていいことだと思い、黄蓋への関心も多少は薄れるだろう。それに、魏には呉の周泰やオレたちの影のような、ここぞというときに頼りになる情報源がいない。そして、曹操は自身で確認を取りに向かうということはしない。その時点で、情報の精度に差が出る」
そこまで言ったところで、愛紗たちの向かった方角が騒がしいことに気がついた。そして
その場所に駆けつけてみると、なぜか混乱した愛紗たちがいた。レーヴェはそれをため息をつきながら見やり、声をあげて叱咤し、その場を治めるのだった。
「さて、そろそろすべてを話してもらおうか。黄蓋の脱走、そして魏への寝返りは策の一環にして、獅子身中の虫を曹魏に送り込むため。このあとはどうする」
黄蓋が魏に降ってからすぐに行われた軍議において、レーヴェは真っ先に口を開いた。一部の将を除き、何も知らなかった将たちはその内容に驚きの言葉をあげていた。
「流石だな。孔明と鳳統も気づいていたようだな。さて、情報によれば黄蓋は前線に配置されたようだ。覇王としての風評がそうさせるのだろうがな」
「風評?」
周瑜の言葉に鈴々が首を傾げる。
「そうだ。覇王としての風評があるからこそ、曹操の下にはすべてが集う。そして、風評があるからこそ、それだけで我々を牽制できる。剣帝のようにな。しかし、レオンハルトの場合はそれが戦働きの中で、その無双の技、力から広まったものだ。だから剣帝の名はレオンハルト個人が大敗を喫するまでは地に落ちん。しかし、曹操は違う。少しでも覇王らしからぬ行動を取れば、たちまちその覇王という名の刃は錆ついてしまう。そこが弱点だ。その点では策ではどうにもならんレオンハルトは相当に厄介だと言えるな」
周瑜は苦笑をレーヴェに向けるが、レーヴェはそれを涼しい顔で受け流した。
「そして、黄蓋を前線に配置、自らの中に取り込んだところから我らの反撃が始まるのだ。我らは精鋭を率いて曹操軍に接近し、黄蓋が曹魏内部で火を放つと同時に本陣に奇襲をかける」
「そして、時間差で私たちが奇襲を仕掛けます」
「船戦に慣れていない私たちでは呉の方と同じような隠密行動はとれませんから」
「では我々は小舟で部隊を編成しましょう」
「そうじゃな。この戦のキモは火じゃ。機動力の高い小舟であれば効率よく火がつけられるじゃろうからな」
そして次々とこれからの行動が決まっていく。そして、最後まで方策が決まった後、孫策が声をかけてくる。
「劉備、レオンハルト。私たちの背中、あなた達に預けるわよ」
「はい!私たちの背中も預けます。頑張って曹操さんをやっつけちゃいましょう!」
「そうね。…では出る!各員迅速に用意せよ!」
「はっ!!」
孫策の鋭い声に呉の武将が揃って返事をする。そしてレーヴェも声をあげた。
「オレたちも動くぞ!先鋒に愛紗、星、華苑、雛里の四人!第二波が紫苑、桔梗、蒲公英。本隊が桃香、朱里、鈴々、翠、白蓮、焔耶、恋、ねね、オレだ!たんぽぽの船に『ヤマアラシ』を積み換えておけ!」
「え、あれ使っちゃうの!?」
蒲公英は驚きつつも新しいおもちゃをもらった子供のようにわくわくした顔つきになっている。
「ああ。出し惜しみはなしだ。この一戦にすべてがかかっている。使えるものはすべて使う。ドラギオン以外はな。そして影に伝令を出せ!…皆、気を引き締めろ!」
「おー!!」
皆が声を張り上げる。とうとう赤壁での総力戦が始まろうとしていた。
あとがき
改めてあけましておめでとうございます。そして久しぶりの投稿かつあとがきです。まずは前回のおまけのネタばらしを。
前回の「給料分!給料分!給料分!」というのはソフトハウスキャラさんの巣作りドラゴンというゲームのおまけにあるネタであり、あの一連の流れはフルメタでおなじみですね。そして技術士官と女兵士のやり取りは同じくソフトハウスキャラさんのゲーム、王賊の一イベントです。一体どれくらいの人が分かったんでしょうね?多分あまりいないと思いますが。
実はこの二十話は一月一日、つまり元旦に上げる予定でしたが、帰省先である実家のPCがデストロイしておりまして、投稿できませんでした。無念です。そして新年早々走りこみのしすぎで足を悪くし。医者からドクターストップがかかってしまいました。去年は風邪をひいた記憶がありますがorz
なにはともあれ、ようやく終わりが見えてきたので頑張りたいと思います。三月までには書き終えたいなぁ。
そしてひとつアンケートです。本編終了後に個別エンドなるものを書こうかなと思っていますが、このキャラの個別エンドが見たい、という方はリクエストお願いします。
なかった場合は…自分の好きなキャラをやろうかなと思っていますが。
それではまたの機会にお会いしましょう。
説明 | ||
あけましておめでとうございます。走りこみのしすぎでドクターストップのかかったへたれ雷電です。今年も一年よろしくお願いします。 | ||
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なっとぅ様>修正しました(へたれ雷電) 6p周湯→周瑜(なっとぅ) 出し巻き卵様>再戦ネタもいいですね〜。レーヴェ蜀編も残りわずか、頑張っていきます(へたれ雷電) 更新乙です!個人的には恋とレーヴェの再戦とか見たいですね。自分も頑張るのでへたれ雷電さんも頑張ってください!(出し巻き卵) タタリ様>対戦はトーナメントで一まとめ…みたいな感じになりそうです。一回戦春蘭、二回戦凪…みたいな(へたれ雷電) 2828様>修正しました。自分って誤字多いですねorz(へたれ雷電) ユウ様>やってはいけないミスを…orz 修正しました(へたれ雷電) mokiti1976-2010様>ふむふむ、桃香と華苑ですね。リクエスト承りました〜(へたれ雷電) 2p敵と人当てする→敵と一当てするかな? (2828) 誤字 8p蓮→恋 では?(ユウ) 桃香と華苑は外せないでしょう!(mokiti1976-2010) |
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