おとなりの嵐さん 5話 |
6月が始まった。
大学の構造もだいたい理解し、授業のサイクルも把握できた。
マンション「花畑」この部屋もだいぶ住み慣れてきた、クーラーも新調してキレイだ。
今俺はマンションの1階廊下を歩いている。
ここに来てから全く忘れていた・・
大家さんに挨拶することを
「ぼっさん、何が入ってるんだその袋?」
そういって俺が手にぶら下げている袋を見つめながらついてくる男、五十嵐 嵐・・
「ちょっとした土産物ですよ、土産」
「そうかタオルか!!」
「タオル貰って喜ぶのは嵐さんだけですよ」
雑談をしながら一階の廊下を歩く。
思えばここに移住することになった初日、大家が偶然留守だった、
日を改めて行こう行こうと思っていたが家具の設置やクーラーの爆発等でなかなか行けなかったのだ。
そうこう行っているうちに大家の部屋の前に着く。
目の前にはそれなりに上質な物で作られたようなドアがあった。
「そういえば嵐さんは大家さんに会った事ありますよね、どんな人なんですか?」
予習程度に聞いてみる、すると
「すごい人だ」
の一言
「すごい人・・?」
説明が大雑把すぎてよく理解できなかったが多分かなりのエリートとかそういう意味だろう。
ここは天道町、土地を買ってマンションを建てるぐらいだからどこかの企業の社長とか・・?
様々な妄想を膨らませながら俺は大家の部屋のドアをノックした。
コン…
バキッ
ガシャーン!
「・・・・・・・」
ドアがそのまま前に倒れた。
しばしの沈黙・・・・
少ししてやっと口が開いた。
「あの・・・嵐さん・・?」
「俺は帰る!!!!」
「見捨てないでエェェ!!!」
一目散に逃げ出そうとする嵐さんを必死に引き止める。大家を知ってる嵐さんがこれだけ焦る人物なんて洒落にならない予感しかしない、どうせなら道連れだ!
「馬鹿野郎その手を離せ!俺は関係ねぇ!!俺は悪くねぇ!!!」
「どうせだから人生の最期を共に噛み締めて逝きましょうよ!!」
「俺は生き残らなければいけないのだああぁぁ!!!」
倒れたドアの前で大騒ぎしてる間に部屋の奥から物音が聞こえた。
「「はっ・・」」
自然と汗が滴る
ドアの奥の暗い部屋からもぞもぞと何かが蠢いている、よく見ると布団っぽい。
「誰だ・・?」
喋った!・・と驚いたがそれが普通か・・
布団らしき物からずるずると這い出てくる大家さん(らしきもの)
電気がついてない真っ暗な部屋から一人、こちらに近づいてくる。
大きめのジーンズ
黒いシャツの上は青色のジャケット
そして顔は・・・
ネコだった。
いや、ネコに近いマスクというべきか
フルフェイスどころかフルすぎて完全に顔全体がマスクな顔面
ネコミミのようにとんがった頭に二つあるでっぱり
顔の部分には眉毛と筆で一筆したような糸目
そして万遍の笑みを見せる口
その人が・・いやそれが「大家さん」だった。
「あぁ嵐君、家賃払いに来てくれたの?」
「いえいえいえいえいえいえ今日はそうじゃなくてししし新入り君の付き添いででででででddd」
明らかに嵐さんの言動がおかしい、何かあったんだろうか?
・・それにしても
・・・すごい人だ・・。
説明 | ||
6月の上旬、雨が振り続ける中 平一はマンションの大家にちゃんと挨拶をしていないことに気付く。 大家の家に土産を持って訪ねるが・・? | ||
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