真・恋姫無双 呉に降り立つ天女と御使い 第五話 |
「ったく、酷い目にあったわ・・・」
私は首を擦りながら屋敷を歩いていた。
周瑜の『楽しい』勉強から開放されたのがつい先程。
時刻は日がもうじき暮れそうだから午後五時位だと思う。
私は両手にズシリと乗せられた宿題に目を移し、そして深く溜息を付いた。
「・・・・・・にしても多すぎよ。一刀の分もあるとはいえ、結構な量よこれ?」
一人でブツクサ呟いていると、向こう側から陸遜が歩いてきた。
「あぁ〜、一香さんじゃありませんか〜。どしました?」
ポワポワした口調で話しかけられたので、私もそれに答えた。
「どうしたもこうしたも無いわよ。見て判らない?この両手に抱えるモノが」
「・・・・・・あぁ〜もしかして、冥琳様から貰ったんですか?」
「そうよ。さっきまで勉強を教えてもらってたところなの。んで、これは一刀の分と私に課された宿題ってこと」
「そうなんですか〜。あ、そうでした。文台様が中庭にお呼びになられてましたよ?」
「ん、判ったわ。これを自室に置いてきたら行くって伝えておいてくれない?」
「了解しました〜♪」
そして大きな胸を揺らしながら陸遜は歩いていった。
それにしてもあの大きさ。爆を通り越して魔ね。
あんなものぶら下げて肩とか凝らないのかしら?
「・・・・・・私ですら凝るってのに」
あんまり大きいのも苦労するわね。ホント。
「さて、あんまり待たせるのも悪いし、さっさと置いてきましょうか」
私は少し歩調を速めて自室へと向かって行った。
中庭に行くと、既に孫堅が瓢箪片手に座っていた。
「あれ?孫策はどうしたの?」
私の問いに孫堅はあぁと答えた。
「あの娘ならまだ執務室で書簡とにらめっこしてるよ。」
「孫堅は終わったの?」
「私のなんてとっくに終わってる。あの子は要領が少し悪いからね。遅れるのも無理は無いわよ」
そこで孫堅はグビッと瓢箪から何かを飲んだ。
恐らくはお酒・・・だと思う。
「・・・ふぅ。ところで一香、何時になったら体が入れ替わるんだい?」
「日が沈んだらすぐよ。・・・もしかして見たいの?」
「ん?ダメなのか?」
首を傾げるその姿は少し可愛らしかった。
「ん〜・・・あんまり見せたくは無いんだけど、孫策達はもう見ちゃってるしね。別にいいわよ」
「そう?ありがと♪」
こちらに来てからまだ数日しか経ってない私なのに、よくそんな笑顔が出来るわね・・・
・・・・・・ま、こっちとしててみれば嬉しいんだけどさ。
空を見上げると既に日があとちょっとで隠れるところだった。
「そろそろかな・・・」
そして完全に隠れきった時、私の体が淡く光りだした。
「一香?なんだか光って・・・」
少し不安な顔をして此方を見る孫堅に、私は苦笑交じりに言った。
「大丈夫よ。少し気持ち悪いと思うけど、我慢してね?」
そして私は目を閉じ、意識を体の奥底へと沈めていった・・・・・・
一刀、あと宜しくね・・・?
俺は一香の呼びかけに反応して、ゆっくりと目を開けていった。
すると最初に目に入ってきたのは、少し驚きながらも笑みを浮かべている孫堅だった。
「・・・・・・不思議なものを見たわね。あんな風に体が変わっていくなんて・・・・・・」
その言葉に俺は苦笑した。
「大体のことは俺も起きてたから分かるんだけど、これから俺はアンタと戦うのかな?」
「そうねー・・・雪蓮に任せようかと思ったけど、まぁいいでしょう。一刀は私と勝負ね」
孫堅は立ち上がりながらそう言った。
「話によれば、一刀は一香のような力は出せないって聞いたんだけど、どうなの?」
「えぇ、俺は外力を使ったものは殆ど出来ませんよ。恥ずかしいけど・・・」
一香には出来て俺は出来ないって最初思ったとき、物凄く悔しかったなぁ・・・
俺達二人は中庭の近くにある倉庫に歩いていった。
「それで?一刀はどんな武器を使うの?」
孫堅が奥から剣やら槍やら取り出しながら言ってきた。
「いや、俺は武器は使わないよ」
「え?」
俺の答えに孫堅が振り向いた。
「俺に武器は必要ないんだよ」
「それじゃあ貴方丸腰じゃない。どうやって私と勝負するつもり?」
そしてニヤリとしながら孫堅は続け様に言ってきた。
「もしかして、素手でやるとか言わないわよね?」
「もちろん素手だけど」
「・・・・・・ハァ?」
いや、ハァ?って言われても実際そうだし。
「まぁ、私は貴方が素手だろうが何だろうが別に構わないけどさ。・・・ホントにいいのね?」
「ああ。いいよ」
俺は上着を脱いで(一香と交替したときに服も変わる)、半袖になって準備運動をした。
「1、2、3、4・・・っと。体も暖まったし、いつでもいいよ」
「一応言っとくけど、やるからには実践を考えて真剣だからね?そこのところ宜しくね」
「わかった」
そして俺達は中央へと進み、構えた。
一陣の風が二人の間を流れていく。
「じゃ、いざ尋常に・・・」
「勝負、よッ!!」
そして俺と孫堅との勝負が始まった。
「先手必勝ッ!!」
まずは孫堅が素早く前に出てきた。
手には名匠の手で作られただろう見事な剣が握られていた。
「ハアッ!!」
左肩からの斬撃に加え、更に追い討ちをかける様な鋭い横一閃。
流れるような動作で繰り出され、常人ならば目で捉えることは無理だろうその速さに、俺は改めてこの人物が江東の虎と呼ばれる孫文台であることを再認識した。
(流石は孫文台。伊達に江東の虎と呼ばれるだけはあるな・・・けどッ)
俺は右へと避け、一閃をしゃがんでかわした。
そこに勢いが付けられた膝蹴りが顔面目掛けて飛んだ来た。
「っぐ!!」
咄嗟に両腕を盾にしたが、その威力に腕が痺れた。
「これも取っとけ!!」
そこに再び空中で左の回し蹴りが飛んできて、俺は後ろへ吹っ飛んだ。
両足で何とか倒れずに済んだが、ガードを解くと、すぐ目の前に孫堅が剣を此方に向けて突っ込んできていた。
「ッチ!!」
俺は連続で繰り出される突きを見切りながらかわしていく。
「どうした一刀ッ!!ちっとも攻撃してこないじゃないのよッ!!」
息切れを起こすことなく孫堅は尚も鋭い斬撃を放ってくる。
「これならまだ一香の方が手ごたえがありそうだったわよッ?」
「アイツはホントは遠距離タイプなんだけど・・・なッ!!」
大きく後ろへ距離を取ると、孫堅も追いかけては来なかった。
俺は少し乱れた息を整えた。
「まぁこれで大体アンタの動きは判ったよ。」
「・・・・・・へぇ、判ったねぇ〜?」
俺の言葉を明らかに馬鹿にしているようだった。
・・・・・・少しムカついた。
「ていうかアンタまだ本気出してないでしょうよ?」
「!!・・・・・・どうしてそう思うの?」
惚けようとしてるけど、逆にそれが確定的だよ・・・
「俺自身わざと隙を作ったのに、明らかにそれを無視して攻撃をしてきただろ。江東の虎と呼ばれるほどの実力を持つアンタなら、まずそんな隙を見逃すわけ無いだろう」
「買いかぶりすぎよ、一刀は。でも貴方も何度か私の隙を狙わなかったわね。ということは貴方もまだ本気じゃないんでしょ?」
「・・・・・・」
それに気付いてるだけでもアンタは相当の実力の持ち主だよ。
「・・・それじゃあお互い腹の探り合いは止めようじゃないか」
「アハハ、そうね」
すると先程とは打って変わって、孫堅の纏う空気がガラリと変わるのが判った。
この背筋が引き攣りそうなほどの感じ・・・・・・殺気が。
肌がピリッとするほどの殺気を当てられては、こっちも本気を出さなきゃだな。
「フゥー・・・・・・・・・」
俺は左足を後ろへ、右足を前に出し、左手を横腹に、右手を前に突き出した。
「これからアンタは一香とは『別の』恐怖を味わうことになるけど、覚悟はいいか?」
「へぇ・・・いい顔つきになったじゃない。でもその前に『虎』の餌食になると思うけどね」
「・・・・・・北郷流無刀ノ型。押して参るッ!!」
「望むところよッ!!」
再び俺達は激突した。
「はぁ〜やっと終わった〜・・・」
私は首をパキポキ鳴らしながら執務室を出た。
既に月は高く昇っていて、夕食時はとっくに過ぎてしまっていた。
あぁーお腹減ったわー
などと思っていると、離れの中庭からなにやら騒々しい音が響いてきた。
ん?そういえば一香と何か約束してたよううな・・・
「・・・・・・あー!!そういえば一刀と勝負するの忘れてた!!母様ったら何で知らせに来てくれなかったのかしらッ!!」
私はお腹が鳴っていることを忘れて、中庭へと走りだした。
どうか私が着くまで勝負が終わらないように・・・!!
私が着くころには、既に音がしなくなっていた。
既に決着が付いたようね・・・
息を弾ませながら中庭に出てみるとそこには・・・
「ゼェ・・・ゼェ・・・ゼェ・・・ゼェ・・・」
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
ボロボロになりながら芝生で寝転がる一刀と母様の姿があった。
すると母様は私に気付いたみたいで、此方に顔を向けた。
「やぁ・・・雪蓮・・・遅かった・・・じゃない・・・の・・・」
「え・・・?」
一刀もそれで気付いたようで、此方に顔を向けた。
「二人ともどうして私を呼んでくれなかったのよ!!」
憤激しながら私は言うと、母様がいやぁと顔をポリポリ掻きながら言ってきた。
「だって・・・私だって勝負したかったんだもの。しょうが・・・ないでしょ?」
「しかし時間を忘れるほどの・・・勝負だったなぁ。師匠ぶりかも・・・」
ああ!!一刀との勝負やりたいなぁ!!
「ねぇ一刀!!今から私と勝負しよ!!」
その言葉にエッ!?と一刀は驚いた。
「きょ、今日はもう無理だよ。疲れたし、それに腹も減っちゃって動けないよ・・・」
「むー!!じゃあ明日!!」
「それも無理そうなんだよ。周瑜から宿題をたんまり貰ったみたいだから、それをしなくちゃ・・・」
もうッ!!それじゃあ何時になったら出来るのよ!?
「・・・・・・でも、少し位だったらいいかな?」
「ホントッ!?」
「ああ。じゃあ明日ここでまたいいかい?」
もちろんよ♪
「一刀ってば大好きッ!!」
私はギュッと一刀を抱きしめた。
「ちょ!?孫策!?」
「雪蓮よ」
「へ?」
「私の真名、貴方に預けるわ♪」
それを聞いて驚いたのか一刀はアタフタとし始めた。
「で、でもそれって大切な人にしか呼ばせないんじゃ・・・」
「いいの!!一刀なら許しちゃうわよ♪」
それに一刀のこと気に入っちゃったしね♪
「一刀、私の真名も受け取って貰えるかしら?」
横で私と一刀のやり取りを見ていた母様が言ってきた。
「孫堅までいいの!?」
またもアタフタし始める一刀。もう一香とはまた別に可愛いわね〜♪
「えぇ。私を最終的に打ち負かしたんだし。それにかっこよかったしね♪」
母様も認めるなんて・・・。一刀ってばそんなにも強いのかしら?
「私の真名は花蓮よ。一刀、これからも宜しくね♪」
そういえば母様が男に真名を教えたのって、これって父様以来ってことかしら?
「花蓮、雪蓮・・・これからも宜しく!!」
「「えぇ!!」」
その後私達は一刀の部屋に行って、一刀は冥琳に出された宿題をやりながら、私と母様はそれを見ながらお酒を飲んだ。
一刀はなんだか苦笑していたけど満更でもなさそうだったわ。
私達三人は、お互いいつの間にか眠るまで飲み続けた・・・
機「機神と〜」
雪「雪蓮の〜」
機・雪「あとがきコ〜ナ〜」
機「というわけで今回も始まりました。」
雪「今回は一香と違って一刀の力は書かれなかったわね。」
機「まぁな。書いても良かったんだが、そこは一香と勝負した雪蓮との時に書こうと思ったわけで。」
雪「ふーん、まぁ私としても楽しみだし、なんだか母様と勝負してるときのあのセリフがかっこよかったわね。」
機「一応この一刀にはあるモデルとなったキャラがいるわけだが・・・まぁ察してくれ。」
雪「作中に二人とも師匠がいるみたいなことが書かれてあったけど、あれはどうなの?」
機「あれを作品中に出すのはもっと後だな。今出しても面白みに欠ける。」
雪「そう。でも一刀の過去って事で言いワケなの?」
機「そうだな。今の一香と一刀の元になった出来事でも書こうかと思ってる。」
雪「へ〜、それは興味深いわね。」
機「だろう?楽しみに待っていて欲しいんだぜ。」
雪「それはさておき。アンタ今仕事の会議中なのにこんなことしていていいワケ?」
機「良くないに決まってるだろうが。今も本文コピペしてこうやってあとがき書いてるんだ。上司からさっきからチラチラと此方に目線が飛んでくる状況だ。」
雪「自宅に帰ってからやればいいのに。」
機「仕方ねぇだろ!?会議中暇なんだもん!!」
雪「アンタねぇ・・・」
機「いいアイディアはこういう時に生まれやすい。これ、高校から学び取ったことの一つね。」
雪「アンタ何しに学校行ってたのよ・・・」
機「ん?暇つぶし。」
雪「親が泣くわね、これ聞いたら・・・」
機「まぁそろっと会議が終わりそうだから今回はこんな感じで。」
雪「ハイハイ、それじゃ皆また会いましょ♪」
機「さらばだッ!!」
説明 | ||
仕事の会議中にうp。 はっはーなんか上司から怪しまれてらー ばれなきゃおk精神でGoだZE☆ |
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コメント | ||
「おしてまいる」ってのは『推参!』のことなので、正しくは『推して参る』だったと思いますよ。・・・多分。(FALANDIA) ようやく真名を許したか(VVV計画の被験者) あはは・・・、まぁ暇だよねww(運営の犬) |
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