真・恋姫†無双 北郷史 9.5
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拠点;月 侍女の一日

 

 私、元董卓こと月はご主人様、北郷一刀様に救われて今は侍女としてご主人様の元で働かせてもらっています。

 侍女の仕事は大変だけれど、仕事をしてると洛陽に行く前の平和な日常を思い出せてとても楽しいです。

 ……それに、ご主人様も優しくしてくださるから……。こんな私の為に有名銘柄の服を特注で作ってくださったりして感謝しきれません。詠ちゃんは嫌がってたけど誰もいない時、鏡の前で嬉しそうに服を見てたの私は知ってるんだからね?

 ただ、ご主人様はとても変わった方です。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「月、お茶をお願い出来るかな?」

 

「はい」

 

 お日様が頂上まで昇り切ったポカポカ陽気な昼頃、ご主人様は今日も忙しそうに政務に励んでいます。ご主人様の仕事のしてる時の横顔は見てると胸がドキドキしちゃいます。

 

「あ、それと服の方の進度はどうだい?」

 

「あ、はい。これくらいならすぐに終わります」

 

「本当に助かるよ。時間に追われているとどうしても仕事が雑になっちゃうから。それに月の仕事はとても丁寧だ」

 

 へぅ……。ご主人様の言葉に頬が上気するのを感じます。お茶を淹れご主人様に渡すと私はまた服を縫う作業に戻る。これが私のもう一つの仕事。ご主人様の作られる服の作成の手伝い。

 こうしてると詠ちゃんの服をよく縫ったのを思い出すなぁ。こうしてご主人様の側で仕事が出来る時間が月のささやかな幸せです。でも本当にささやかな時間です。

 

「あ、また月にこんな仕事させて!!このバカ!!」

 

詠ちゃんは私が裁縫してるのを見るやいなやご主人様に詰め寄る。

 

「え、詠ちゃん……私は好きで仕事してるから大丈夫だよ?」

 

「月ー……。くっ、従順な月に浸け込んでこんな重労働を!! この腐れ外道!!バカ!!無能太守!!」

 

「そーですねー。そーですねー。そーですねー」

 

詠ちゃんの辛辣な言葉にもご主人様はまるで堪えておらず何処吹く風です。

 

「くっ、少しは堪えなさいよ!! それとも苛められて快楽を得る変態なの!?」

 

「いや、俺知り合いにもっと酷いこと平気で言う奴知ってるからこんな程度悪口にも入らないよ。例えば……【ピーーー】または【ピー】もしくは【ピーーーー】ってことを平気で口にする」

 

「……それ、私だってさすがに口にすることを躊躇うわよ」

 

さすがに詠ちゃんもご主人様の知り合いの言葉に引いてしまう。私もその人が凄いと思ってしまう。

 

「ついでに普段は人を苛める奴なのに一瞬で罵倒されることを快楽に変えることが出来る器用な奴だ。詠、多分職業と性格からいってお前とは気が合うと思うぞ」

 

「あんた私を何だと思っているのよ!!」

 

ご主人様には変わった知り合いが居るんだなぁ……。そしてその人と気が合いそうというのは私も同意です。

 

「よし、終わった。 じゃあ俺はこれから店の視察に行ってくるよ。じゃあ仕事頑張ってな、月」

 

「あ……はい」

 

 こうして今日も幸せな時間が終わっちゃった。

 ご主人様はいつも動きまわっている印象しかないです。仕事が終わればあっち、また終わればこっちにと……。それも物凄い速度で終わらせるからまるで嵐が通っていくみたいです。……もう少しゆっくりして側に居て欲しいというのは我儘なのかな?

 でも去り際に頭を撫でられるとそんなことも言えません。……へぅ。

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 廊下の掃除は朝の内に終わらせてしまったのでこれからご主人様の部屋の掃除です。詠ちゃんは「月はあんなすぐに物を散らかすバカの部屋の掃除なんかしなくていい!!」って言うけどこれだけは譲れないよ、詠ちゃん。

 

 ご主人様の部屋に入ると相変わらずの散らかり様。裁断した布の切れ端に絡繰の部品が足を付ける場所が無いくらいに床を占領している。ここはまるで別世界だ。私達が生きる時間とは別の、独立した時間の刻み方をしているかのように感じさせる部屋。そしてやさしい職人さんの仕事場のように暖かい雰囲気に包まれている。

 私は少しの間部屋の空気を感じると仕事に入る。

 まずは絡繰の部品の仕分けだ。床から拾い上げて種類事に分けると指定された棚の中に仕舞まっていく。絡繰に詳しくないけど日常的にこんなことをしている内にすっかりと部品の名前を覚えちゃった。

 次に私は布の切れ端を拾ってまだ使える物なら布入れの中に仕舞う。

 それが終われば後は拭き掃除で終わりです。

 

仕事を終えるとご主人様の寝台が目に付く。

 

「やっぱり今日もだ……」

 

毎日のようにこの部屋に来る私でもご主人様が寝台を使った形跡は一度も見たことがない。何時も布団は皺一つ無く清潔を保ち続けている。

 ご主人様は寝ない人なのかな?だとしたら心配です。あれだけ動いてるのに寝ないなんて普通の人なら倒れちゃいます。

 

「……私も何時か閨に呼ばれるのかな」

 

 ご主人様はかつて俺は種馬と呼ばれていたって自分で言ってた。そんな想像をしてたら顔が赤くなってきちゃった。

 でもご主人様は一度も私を……布団の様子からして多分誰も閨に呼んだことはない。

 

「……私って魅力が無いのかな……?」

 

 自分でそう呟くと余計に凹んじゃった。

 

「あ、あれって新作かな?」

 

 壁に掛けてあった二着の服が目に付いた。小柄な服で落ち着いた色合いの綺麗な服だ。

 

「かわいいなぁ……」

 

いつもご主人様の作る服の手伝いをしてるけど一際目に付く可愛いらしさだ。

 

「あれを着られる人は幸せだろうなぁ」

 

あれ……なんか眠くなってきちゃった。いけない、まだ仕事中なのに……。

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ーーーーーえーーーー月ーーー。

 

「ん、あれ……私、寝ちゃってたんだ」

 

心地良い声が耳を擽る。まだ思考を蕩けさせる眠気を振り払い目を擦るとご主人様の顔が近くにあった。

 

「あ! すいません、私ご主人様の寝台を枕にして寝ちゃって」

 

「いや、それだけ疲れさせた俺の責任だ。月は悪くないよ」

 

ご主人様は笑って私の頭を撫ででくれる。

 

「それに探す手間が省けたからちょうど良かったよ」

 

するとご主人様は壁に掛けてあった服の一着を私に差し出した。

 

「いつも俺がやりたい放題部屋を散らかすから掃除大変だろう?だからこれは日頃の感謝ってことで」

 

「あ、ありがとうございます……」

 

するとまたご主人様は私の頭を撫ででくれる。……へぅ。やっぱりご主人様は優しい。どんなに忙しくてもちゃんと気遣ってくれる。

 

「あ……」

 

気が付くと私が寝てしまったせいで布団の隅に皺が出来ていることに気付く。それが何だかとても嬉しかった。

 

 そして密かに最初に閨に呼ばれよう、と密かに誓いました。

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拠点;詠 侍女の一日アナザー

 

 気に入らない。あのバカにはこの言葉で充分だ。

 大体月にひっつき過ぎなのよ!!大体月に服の仕事までさせるなんて外道よ外道!!……でも月は喜んでやってるし……。しかもあのバカはいくら罵倒しても平然としてるし。ああ、気に入らない!! ……でもあいつがいなければ今頃私達は生きてなかったかもしれないのよね。  

 

「あっ!? ……またやっちゃった」

 

 これで何個目だろう。僕は割れた湯呑みをボーっと見る。僕は元軍師、賈?。今はただの侍女、詠になってるけど。

 僕はこんな仕事はやったことがないので失敗ばかりだ。軍師をやる前は月が身の回りの世話をしてくれたので本当の意味でやったことがない。

 別にただ不器用なわけでは決してない。決して。

 

「ハハ、まだ仕事には慣れてないみたいだな」

 

 気が付くと件のバカこと北郷一刀が厨房に入って来た。

 

「何? 僕を見て笑いに来たの?」

 

「いや、これから昼飯でも作ろうかと思ってね」

 

そう言うとバカは僕が湯呑みを割ったことをまったく気にせず調理を開始する。少しは咎めるとかしなさいよ。このお人好しめ!!

 

「詠もどうだい? ついでだから詠の分も作るよ」

 

「要らないわよ」

 

「まあそう言わずに」

 

バカは僕の言葉を無視して調理を続けてしまう。だったら質問するんじゃないわよ!!

 

バカの手つきは認めたくないけど鮮やかの一言に尽きる。そもそもこいつは何でこんなに多芸なのだろうか? 戦闘力は謙虚な物言いな割に華雄を倒す戦闘力は備えている。内政面でも軍師の僕が思いつかない奇抜な案を出すし、何よりこいつの文化面での力の入れようは半端じゃない。

 

「ねぇ、何でアンタってそんな何でも出来るワケ?」

 

バカの料理を待っている間何もすることが無いので質問してみる。

 

「……? 俺は何でも出来なんてしないよ」

 

「……それアンタが言ったら嫌味にしか聞こえないわよ」

 

こいつの場合嫌味とかではなく本気で言ってるからタチが悪い。

 

「そんな完璧超人俺は一人しか知らない」

 

「……居るんだ。っていうか知ってるんだ」

 

 毒舌の奴の時といいこいつの人間関係はどうなってるんだ……。

 

「ま、それは俺のもと主なんだけどね。本当に多芸でどんな方面でも頼りになる存在だったよ。それで飛び切りの美少女ときている。俺なんてそれと比べれば月とスッポンさ」

 

「そいつがいて今のアンタがいるわけね」

 

 こいつの秘密が少しわかった気がする。それにしても本当にその主のことを嬉しそうに喋るわね。まあ僕が月のこと喋るのと似たようなことだろうから分からないでもないけど。

 

「はい、出来たよ」

 

 そんな会話をしている内に出来立ての料理が僕のもとに運ばれてきた。とてもいい匂いだ。私は渋々といった表情をしながら料理を口にする。

 

「どう、味は?」

 

「……美味しいわよ」

 

こいつの料理は大陸を轟かせるほどだ。文句の付けようがない。

 

「それは良かった」

 

バカは無邪気に笑う。

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「詠に頼みごとがあるんだ」

 

「頼みごと?」

 

昼食を食べ終えるとバカが突然僕にそう言ってきた。

 

「ああ、詠には適任な仕事なんだけど。詠は立場上軍師の仕事は出来ないだろう?だから侍女の立場になっている。で、今から頼むのは俺の店の会計処理なんだけど……得意な方面の仕事をしたほうが負荷が減ると思ってね。それに月と一緒に出来る仕事だ。勿論侍女としての仕事はその分減らすよ。……どうかな?」

 

「どうって……」

 

 確かに軍師の仕事を見ていて自分は出来ないのは歯痒いものがある。だがそれ以上に自分の得意としていることが出来ないのが何よりも歯痒い。

 軍師をやっていた時に確かに会計処理の仕事はやった。今の僕にとっては魅力的な提案だ。

 

「頼む、これは詠にしか出来ない仕事だ」

 

「……分かったわ、やるわよ」

 

 やっぱりこいつはとんでもなくお人好しだ。月は勿論僕に対してもこうやって気を遣う。

 

「侍女の仕事は減らさなくてもいいわ。月はそれでやっていってるんだから僕だけが負担を減らすなんて考えられない」

 

「ん、わかった。じゃあこれはそのお礼と日々の感謝を込めて」

 

そう言うとバカは一着の服を差し出した。それは所々違うけど最近月が嬉しそう私に見せた服によく似ていた。

 

「これ……月が貰ったっていう服によく似てる」

 

「ああ。 月と詠は仲良しだからね。だからそういう意匠にしてみた」

 

本当にこいつはお人好しだ……。

 

「貰ってくれるかな?」

 

「フン、アンタにしては中々考えているみたいだし貰っといてあげるわ!!」

 

どこまでも素直じゃない僕にやはりこのバカ……一刀は優しく笑うだけだった。

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拠点;星 二人の華蝶仮面

 

カッ!! フオオォォ!!

 

何処かでそんな音が響いた。

 

 

ーーーーーーー〜〜

一刀の治める街は今日も平和である。昼間近のポカポカした陽気、民達の活気が街の雰囲気を明るくする。

 だがこの街もいつも平和なわけではない。

 

「また引ったくりが出たのか……」

 

一刀は頭を悩ませる。

 最近街では引ったくりが多発している。もと警備隊長である一刀がこれを見逃す筈がない。現に一刀は今再び警備魂が再燃しているところである。

 

「俺が直々に警備隊を率いたいところであるけど時間がないしな。星や華雄に頼もうにも兵の調練があるし。恋は……最後まで仕事してくれそうにないや」

 

一刀は思案顔になる。

 

「まあ、仕方が無い。店の視察をしがてら一丁警邏もやっとくか」

 

そうと決まると一刀は政務室の椅子から立ち上がった。

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一刀が街を歩くと沢山の民が一刀に声を掛ける。常日頃店の視察で街を回っている一刀にはこれが日常風景である。

 

「しかしお腹すいたな……。かと言って自分の店で食べるのも味気ないしなぁ……」

 

一刀は視察を後にして昼食を店で摂ることにした。

 

「おや、主殿ではないか」

 

一刀が通りにある飯店を適当に選んでいると聞き覚えのある声がした。声のもとを辿るとラーメンを啜る星がいた。

 

「やあ、星。 今昼食かい?」

 

「ええ、宜しければ主殿もご一緒しませんか」

 

「じゃあお言葉に甘えようかな……何だい、それ?」

 

一刀は星の持つ丼ぶりを見て唖然とする。

 

「何と、主殿はメンマを知らぬのか!?」

 

「いや、そうじゃなくてその量に驚いたんだよ」

 

星の丼ぶりには山盛りのメンマが積まれている。

 

「フッ、主は分かっておらぬな。メンマは副菜と見られがちだがそれは否!!職人の血の滲むような仕込みを経て我らに届けられるメンマ。食す者達はその本質を見落としがちだがあえて言いましょう!!メンマは人の命より重い!!」

 

「じゃ、食うなよ」

 

一刀は冷静にツッコむが語り始めた星の耳には届かない。

まあ人の趣向は人それぞれ。と一刀はこの話題に終止を打つとラーメンを注文した。

 

「時に主よ」

 

「ん、何だい?」

 

「この前の曹操殿の件、結局はぐらかされてしまったがあれは何だったのです?」

 

「ぶっ!!」

 

お冷を飲んでいた一刀は盛大に吹いてしまう。

 

「いやー、ハハ……ほら、あんなこと言われたらああ返すしかないだろう?」

 

「この趙子龍に嘘はつけませんぞ。主殿と曹操がぶつけ合った覇気、天幕の外にいてなお鳥肌を立たされました。あのやり取りにそのような軽率な気持ちが入り込むとはとても思えません」

 

一刀は呻き声を上げて狼狽える。何を言っても透かされてしまう。星の目からはそんな輝きがある。

 

「まあ、主殿に女性関係をとやかく言うのもやぶさかと言うもの。主殿は種馬を豪語する者ですから懐の深さも大丈夫でしょうし。……ですがあまり自分の近くにいる女子を放っておかないで頂きたい。主殿はいつも動きまわっていてあまり構ってもらえませぬゆえ」

 

「……星」

 

一刀は星の頭を撫で始めた。

 

「む……。別に私は幼子のように扱ってほしいとは言ってませんぞ」

 

星は少し恥ずかしがりながら反発する。だが一刀の手を振り払おうとはしない。そんな星の態度が

可愛らしくて今度はポンポンと頭を軽くたたきながら大きく笑った。

 

「なーに言ってんだよ。俺からしてみりゃ道を歩いてる爺さんだってガキだっての」

 

「……ふむ、やはり直接体に訴えかけるほかなさそうですな……」

 

星は静かに呟いた。

 

「ん? 何か言った?」

 

「いえ、何でもございません」

 

星は一刀を見て妖艶に笑う。密かにこれからの策と立てて。

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「引ったくりだぁ!!」

 

突然街に大きな叫び声が響く。

 

「……!?」

 

一刀は声を聞くや否や鋭い目付きに変わる。一刀の見る先には必死に走る男。武器を持っているので早く捕らえなければ民が危ない。

 

(運が悪かったな。この魏の都の警備隊長を前に逃げられると……「待てぇい!!」……あら?)

 

突然の静止の声が一刀の思考を遮る。

見ると誰かが引ったくりの道を通せんぼしていた。

 

「やい!痛ぇ目見たくなかったらそこをどきやがれ!!」

 

「貴様のような者に譲る道など無い!!」

 

一刀を置いてけぼりにどんどん展開が進んでいってしまう。

 

「舐めやがって! テメェ何者だ!?」

 

「私か? 私は華蝶の意思に誘われやって来た正義の使者、華蝶仮面!!」

 

突然現れた者はそう高らかと名乗った。

 

「……星、何やってんの?」

 

一刀は誰にも聞こえない突っ込みを入れる。そう、あれはどっからどう見ても仮面を付けた星だった。そして懐から星が顔に付けているのとよく似た仮面を取り出す。

 

「まったく星の奴め……」

 

一刀は溜息を付く。

 

「そんな面白いこと……俺も混ぜろっての!!」

 

一刀は仮面を付けると駆け出した。

 

「待て!!」

 

「……何奴!?」

 

「今度は何だぁ!?」

 

一刀の声に対峙してた両方が一刀のほうを向く。

 

「華蝶の意思に誘われやって来た……。女の子の味方、華蝶♂仮面見参!!」

 

 一刀は高らかとそう名乗りを上げた。

 華蝶仮面と華蝶♂仮面の登場により引ったくりは完全に退路を塞がれてしまった。だがそのまま引ったくりを捕らえるのではなく仮面を付けた二人は双方を見つめ合ったままだった。引ったくりの男も展開について行けずその場から動くことが出来ない。

 

「…………」

 

「…………」

 

 そして次の瞬間、二人は同時に駆け出した。そして両方とも引ったくりに跳びかかる。

 

「我が神鎗、受けてみよ!!」

                     「ひでぶ!?」

「南斗○屠拳!!」

 

華蝶仮面は槍の石突きを引ったくりの男の腹部へ。華蝶♂仮面は飛び蹴りを引ったくりの男の顔面に炸裂させた。二人とも男を降すと同時に華麗に地面に着地した。

 

「「華蝶の意思に死角なし!!」」

 

二人は決めポーズを合体技でとると颯爽を去っていった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「おや、主殿。今まで何処におられた?」

 

「そういう星こそ」

 

すると二人は息ピッタリで「ちょっと野暮用に」と答えるのであったとさ。

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拠点;華雄 華雄、修行するの巻

 

昼下がりの中庭で今一刀と華雄の鍛錬が行われていた。

 

「はぁ!!」

 

「どやぁ…」

 

「はっ!!」

 

「そんな大振りで大丈夫か?」

 

「大丈夫だ、問題ない!!」

 

とても一方的な光景だった。華雄の大振りな一撃を一刀がただ避ける。本当にそれだけだ。しばらくすると一刀は動きを止めた。

 

「あー、華雄。ここまでだ」

 

「私はまだやれる!!」」

 

「俺がバテるわ!! 何時間やってると思ってんだ!!」

 

一刀はその場に座り込んでしまった。

 

「くっ、何故私は一刀に一撃も当てられんのだ……」

 

「華雄は血を昇らせ過ぎだよ。もっと選んで攻撃すればちゃんと当たるよ」

 

その言葉に華雄は苦い顔をする。

 

「……私だって分かっている。だがこれは私の性みたいなものだ。言われた程度じゃ治らない」

 

「うーむ、性か……」

 

一刀は考える。

 

(本当は華雄はもっと強い。もともと洛陽を守る関、水関の守護を任されていたくらいだからそれは間違いない。だが性格がどうも邪魔をして彼女の能力を出し切れていないといったところだ。……多分、華雄はその気になれば関羽と春蘭にだってタメを張れる)

 

春蘭の場合は秋蘭という優秀な保護者がいたからなぁ……と一刀はそう思いながら悩む。

 

「よし、華雄。お前は明日から特別な特訓をしよう」

 

「特別な特訓?」

 

こうして華雄の修行は始まった。

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翌日、華雄は城の中の一室に呼び出されていた。

 

「一刀の奴、一体私に何をしろというのだ?」

 

しばらく待っていると一刀が部屋にやって来た。何故か僧衣を着て、極めつけはハゲかつらを被って。

 

「ブッ……!!」

 

華雄は思わず吹き出してしまう。

 

「華雄、アウトー」

 

すかさず一刀は華雄のお尻を棒で叩いた。それが直撃した華雄は悶え始める。

 

「華雄、こちとらガキ使やりに来たワケじゃないんだ。真剣にやれ」

 

「お前に言われたくないわ!! 大体何だ、「がきつか」って!?」

 

「そんなことより修行の説明をしよう」

 

 

修行の内容は坐禅だった。

華雄は坐禅を組み目を閉じて集中する。

 

「華雄、お前には忍耐が足りない。今日はそれを鍛える修行だ。少しでも雑念が見えたら俺はお前を叩く。叩かれたら礼だ。いいな」

 

「それは本当に役に立つのか?」

 

「ああ、天界の由緒正しき修行だ。心してかかれ」

 

「ああ……わかった」

 

華雄は意識を沈める。だがすぐに体がモゾモゾと動き始めた。

 

「喝!!」

 

一刀はすかさず華雄に喝を入れる。

 

「何をする!?」

 

「華雄、礼だ」

 

一刀の言葉に渋々華雄は礼をする。そして再び意識を沈める。そして数秒が過ぎた頃に華雄はまたモゾモゾしだした。

 

「……駄目だ!!私の性には合わん!!」

 

すぐに華雄は立ち上がってしまった。

 

「いや、これその性を治す為の修行なんですけど」

 

 一刀は開始わずか数秒で集中の途切れた華雄に呆れてしまう。そうしてると華雄は一刀のほうを向き晴れやかな表情を見せていた。

 

「一刀!! 私は落ち着いて考えてある答えに行き着いた!! ようはこの性を抱えたままでも強ければ何の問題もない!! 礼を言うぞ一刀!!ハァーハッハッハッ!!」

 

 それだけ言うと華雄は部屋を飛び出していった。ポツンと一刀は残された部屋に佇む。

 

「…………………ああ、そうか。そういやそうだったな」

 

 一刀の頭には春蘭の笑顔とある言葉が浮かんでいた。

 

バカは死んでも治らない、と。

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拠点;風 風の枕探し日記

 

風にはある願望があります。しかしそれは簡単に見えて中々辿り着けません。

それはズバリ……………………

 

「お兄さんという枕で寝ることですー」

 

「風、何度も言わなくてもわかるから」

 

呆れたふうに稟ちゃんは書簡を整理しながら言う。そうは言いつつもいつも稟ちゃんは話を聞いてくれます。流石は天界の言葉でいう「べすとこんび」ってやつですー。

 風は今日非番なのでいくらでも時間があります。

 

「と言う訳で早速ですがお兄さんのいる政務室に突入ですー」

 

「はあ、あまり一刀殿の仕事を邪魔しては駄目ですよ」

 

「いいですよー稟ちゃん。むしろお兄さんは働きすぎなくらいですから風の枕になって少しは休むべきですよー」

 

それに星ちゃんから聞いた話によるとお兄さんは他国の女の子にうつつを抜かしている様子。ここは一回風の魅力を思い知らせないといけないですー。

 

政務室に突入するとそこは既にもぬけの殻。机を見ると確認済みの書簡の山。相変わらずお兄さんの仕事は早いですー。

 

「むー、やはり一筋縄ではいきませんかー」

 

しかし風はこれを予測済みですー。今までのお兄さんの行動から推測して次に向かうのは街。まずは服屋から行ってみましょうー。

 

「へい、いらっしゃい」

 

服屋さんが威勢よく挨拶してくれますが残念ながら風の目的は違います。お兄さんは店の裏にいるかもしれません。早速服屋さんに質問してみますー。

 

「お兄さんを知りませんかー?」

 

「北郷おーなーですかい? それならついさっき出て行かれましたよ」

 

むぅ、やはりお兄さんはとっても動きが早いですー。ならすぐに場所を替えましょう。

 

「ああ、程c様。 北郷おーなーを捕まえたいなら動いたって無駄ですよ。あの方はとにかく動くのが早いから逆に何処かで待機してたほうが無難ですよ?」

 

おお、これは良い事を聞きましたー。なら風はお兄さんの飯店でゆっくりしてお兄さんが来るのを待ちましょうかねー。

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お兄さんの飯店はとても変わった装飾です。確か天界の言葉で「もだん」って言うんでしたっけ。

机から椅子、壁紙。何から何まで見慣れぬ物ばかりですー。と言っても風含めたここにいる街の人達には既に見慣れた物と化してますけど。

 

店員さんに聞くとお兄さんはもう行ってしまったようです。

流石の風も疲れました。

 

何だかとても眠くなってきてしまいました。

お兄さんは酷い人です。風がこんなにも探しているのに何処にもいないのですから。

……もう不貞寝を決め込んじゃいます。お兄さんが悪いんですよー。風をほっといてこんなに寝心地の良い店を作ることばっかりしてるんですから…………ぐぅ。

ーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

 

…………おおっ?何だか浮遊感と心地良い揺れを感じます。それに何だかとても安らぎますー。

 

「あれ、お兄さん?」

 

「お? 風、起こしちゃったか?」

 

目を開けるとお兄さんの顔が間近にあります。それに確認するとどうやら私はお兄さんにお姫様抱っこされているみたいです。ちょっとお顔がポカポカしちゃいます。

 

「お兄さん、どうして?」

 

「さっき忘れ物に気付いて服屋に戻った時に風が俺を探してるって聞いてね。位置的に多分飯店にいるんじゃないかと思って来てみたら寝ている風を見つけた。だからこうしてるってわけ」

 

どうやらお兄さんは風を抱いて城に帰ってるみたいです。みんなに見られてちょっと恥ずかしいですねー。

 

「で、俺に何か用があったのかい? 風は今日非番だから仕事の話ではないと思うけど」

 

「いえ、別に何でもないですよー」

 

「……? 相変わらず気まぐれな奴だな」

 

いいんですー。風の願望はこうして叶ったわけですから。

 

「それより風はまだ眠いです。もうしばらくこうして頂けると嬉しいですー」

 

「ああ、いいよ。おやすみ、風」

 

そう言うとおでこに柔らかい感触を感じます。

欲を言えばまだ物足りないですけど今日はこれくらいで勘弁してあげましょうー……ぐぅ。

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あとがき

 

まず最初に言わせてください。

 

調子こいてサーセン。

本当は全員の拠点を一気にあげようと思ったのですが……いかんせん明日から学年末考査の時期なので一旦切らせてもらいます。

……ちゃんと全員書くから睨まないで!!

 

説明
全員…………だと? 

俺を殺す気かあああぁぁぁ……………………大丈夫だ、問題ない
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11273 7366 84
コメント
星ー頑張ってアタックするんだ!星かわいいよ星(シロクマ)
華雄…、口説き落とせば少しは変わるんじゃない?と言ってみるw 冗談はおいておいて、好きなキャラなので覚醒して欲しいですけどねw(Raftclans)
一刀さんホントノリノリだな・・・。華蝶♂仮面www(burugurahu)
GJ!(アンプレゼント)
学年末考査ですか〜、私も実力考査がありますw お互い頑張りましょう!(十狼佐)
星拠点の一刀は実にノリノリだなwその内、華蝶戦隊でも結成しそうだww 華雄拠点は、その猪っぷりが際立っちゃったなぁ。覚醒すれば、かなりの高スペックを期待出来るのに、勿体無い…。いっその事、華蝶仮面と手合わせさせてボコボコにして、強引にでも覚醒を促してみては?(クラスター・ジャドウ)
いやいや、お答え頂き、感謝感謝ww・・・残りも待ってますね^^。(狭乃 狼)
いやむしろ忙しいのにしっかりこれだけ書いてくださってありがとうございます。次も期待してます。(鬼間聡)
需要の貯蔵は十分か? ですかwww(ロンギヌス)
いい仕事ですねぇ・・・!(よしお)
某弓兵の名言が・・・(きの)
タグが死亡フラグの筈なのに一刀爺さんなら当然ぽくて怖いwww(O-kawa)
あ、すいません(たくろう)
「あ、また詠にこんな仕事させて!!このバカ!!」、月では?(KU−)
ところどころにあるネタで吹いちゃうんですけどwww(poyy)
タグ
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