、キミのとなりで三話
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 俺達はリビングに入りそこに広がる光景に愕然とした……。

 

 部屋一面を折り紙やモールで見事に飾られ、テーブルにも可愛らしい飾りがされていた。

 

 極めつけはリビング中央に吊り下げられている横断幕。

 そこにはでかでかとそして達筆な字で『熱烈歓迎! 羽賀武弥君』と書いてあった。

 

 正直気遣いは嬉しいのだがここまでされてしまうとなんだが気恥ずかしい。

 

 

「希咲もいっぱいお手伝いしたの、

 あのオーダンマク?も手伝ったんだよ!」

 

 

 嬉しそうに話す希咲ちゃん。

 えぇ、あの達筆な字は希咲ちゃんのが書いたの!?

 

 

「ちなみにあの字を書いたのは私だ!

 どうだ、すごいだろう!

 なかなか達筆であろう!」 

 

「あ、そうですよね……。

 すごいですね……」

 

 

 いきなり現れたギンジさんが横断幕を指さして豪快に笑いながら己が書いたという横断幕の字を自画自賛していた……字だけに。

 

 まぁ陽炎ができてしまうようなギャグは置いといて……。

 

 よく考えれば、そんな訳無いよな……。

 

 

 そんなやり取りもあったが、住人の人達はどうやら本当に俺の為に用意していたサプライズパーティだったみたいだ。

 

 その為か唐揚げやポテトなどの摘み易いものから、散らし寿司等の本格的な料理がいくつも並んでいる。

 

 これはなんとも有り難い、時計を覗けばお昼過ぎ。

 

 少しだが酒やその肴を中途半端に入れたところ俺の胃袋はもっと寄越せ! ときりきりと訴えている所だったんだ。

 

 それに何よりも一食分の節約になるし、なんといっても疲れて料理どころか買いに行くのも億劫だったんだ。

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 なんて考えていると、突然ちいさくて温かい手が俺の人差し指を握る。

 

 

「――ん? あ、ありがとう。」

「えへへ……」

 

 

 どうやら希咲ちゃんは主賓である俺を席までエスコートしてくれるようだ。

 

 言うまでもないが、エスコート希咲ちゃんに熱いまなざしを愛梨さんが送っていた。

 

 

「アパートの皆さん、美雪ちゃんのお店結構行かれるんですね」

 

 

 席に着くと先に座っていた琴音達は会話に花を咲かせていた。

 どうやら美雪ちゃんも家に確認を入れ許可をもらえたらしく、一緒に休憩をしている。

 

 

「しかしタケちゃんがクラシコでバイトしていたとはおどろきだ〜ね〜?」

 

 

 実は何度かお店で会った事があるのに全く持って覚えられていなかったという実に悲しい事実……。

 

 大学もあるし土日に何度か会ったくらいで、現に俺もあと後気付いた事なのだが何故か寂しい……。

 

 

「も〜クサカベっちが〜そう言ってたじゃ〜ん!!」

 

「そうだよ! 

それに希咲、

タケヤお兄ちゃんの事前から知ってたよ。」

 

「そうそう、覚えてるよね〜。

ほら〜……え〜……とー……。

そう、毎朝お店の前掃除とかもしてた!」

 

 

 いや平日大学あるんで無理です姉さん――

 

 どうやら知子さんは希咲ちゃんが俺を覚えている事実に対し対抗意識を持ったらしく、覚えのない事で張り合ってきた。

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「……してるよね、タケちゃん!!!」

「うっ……あ、いや……、その――』

「「「ジー」」」

 

 

 知子さん迷いの無い眼差しと、背中から感じる琴音、愛梨さん美雪ちゃんの重圧に俺から『NO』という言葉を消し去った。

 

 

「そっ、そう……です……ね!! 

はっはい、してます、してます。」

 

 

 駄目だ……結局否定できなかった……。

 

 

「ほら〜ねっ!!知ってるんだから〜〜。」

 

 

 知子さんは、自分が言った事が事実だと思い気が高々だ。

 これでよかったのかな……?

 知子さんも気を良くしているのだから。

 しかし、そう思えたのは一瞬の事だった。

 

 自分が知子さんに合わせた事をすぐに後悔する事になったのだ。

 

 それは――

 

 

「これから、毎朝関心関心。」

「これから、毎朝助かります。」

「これから、いや〜武弥毎朝大変だね。」

 

 

 知子さんに合わせる為に嘘をついた俺に、真実を知しる愛梨さんや美雪ちゃん、更には琴音が小言で痛いところを突いてくる。

 

 こう言われた以上これからほぼ毎日掃除を強制されたような物ではないか?

 

「何〜〜〜〜!!!

タケ毎朝そんな事してたのか!?

あれ、でもよく朝いっ」

 

ゴンッ!!

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「いぃっっ」

 

 

 言葉を遮るような鈍い音、そして睨みつける琴音。

 その方向にはさっきまでノーテンキ騒いでいた優斗が苦悶の表情でうずくまっていた。

 

 『口は災いの元』を体現してくれている馬鹿はほっといて……。

 

 せっかく1人暮らしで、大学も近くなったのに毎朝の日課ができてしまった……。

 これでは近くなった特権が意味を持たないな。

 俺がやるせなさ肩を落している中、更に話が盛り上がり会話が弾んでいった……。

 

 

「えっとでは、私はそろそろ戻りますね。」

「あっ長くまでつき合わせちゃってごめんね。」

 

 

 話がある程度区切りがつくと、まだこれから仕事が残っている美雪ちゃんが時間を見て帰り支度をする。

 

 

「いえ、楽しかったですから」

「みーちゃん、みーちゃん。あのね、今度ラスクい〜い??」

「うん、じゃ〜いっぱい用意しとくね。」

 

 

 立ちあがった美雪ちゃんの元へ、まるで行きつけのお店で『いつもの』と注文するかのように美雪ちゃんにねだる希咲ちゃん。

 

 

「ラスク……?」

 

 

 つい俺は『ラスク』と言うフレーズに聞き返してしまった。

 と言うのもクラシコではラスクを販売していないからだ。

 

 

「うん、幸せの味なんだよ〜! タケヤお兄ちゃんにもあげるね?」

 

 

 何故ラスクなのか、幸せの味とはどういう意味なのか気になる事はあるものの……。

 

 

「そっか、ありがと。」

「えへへ……」

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 うん! 可愛いから何でもいいや。

 

 

「では、引っ越し頑張ってくださいっ!」

「おうッ!」

 

 

俺にエールを送ると美雪ちゃんはクラシコへと戻って言った。

 

 

 

「……って、ん……引っ越し?」

 

 

 改めて時計へと目を移す。

 

 

「四時……!?って荷解き!」

 

 

 琴音や優斗、更にアパートの住人は、その後も世間話に花を咲かせる中俺は自室へと慌てて戻って行くのであった。

 

 戻るなりゴミを片づけたのだがやはりというかなんというか……。

 

 部屋は相変わらずゴミが散らかり、段ホールに入っていた荷物は床に広がっていた所を何とか片付け出していた。

 

 後は小物の整理位しかないとはいえ、優斗や琴音は今だリビングでくつろぎ中。

 流石に寂しい物を感じる。

 

 だがそれも……。

 

 

「よし……これで最後だ〜!!」

 

 

 俺は最後の荷物である洗顔や歯ブラシ等の洗面用具を洗面所に並び終える。

今だ琴音達は戻ってこないな。

 

 俺は今引いたばかりの布団に飛び込んだ。

 そして一旦眼を閉じて今日の事を思い返してみた。

 

 優斗と琴音まだリビングで騒いでいるのだろうか……?

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 手伝ってくれた奴らに文句を言っても仕方ないけどな。

 

 今日は、思えばあっという間だったが長かった気もする……。

 とりあえず精神的にも肉体的にも疲れたのは間違いない。

 

 後半ほとんどギンジさん達に振り回されていたのが大きいが、ただ……。

 ただ正直ほっとした。

 

 両親が死んでからと言う物、じぃちゃんやばぁちゃんに甘えっぱなしだった。

 しかし、いつまでも甘えてはいられない。

 

 そう思い家を出ると決意した物のかなり不安だった。

 その一つとして自分はあまり社交的では無い事は自覚している。

 

 なのにも拘らず1人は嫌いだ。

 さすが1人でトイレにいけないとか、寝れないとかそういうのではないが……。

 

 実際美雪ちゃんの紹介でバイト先の近くのアパートに決めたのだし……。

 

 

「――また、それも自分が自分であるための手段、ですわ」

「ぬわっっ!!おまっ、いつからいた。」

「ふふ、さぁいつからでしょう?」

 

 

 聞きなれない声に驚き一気に飛び起きた。

 そして瞼を開くと俺の反応を楽しむように微笑む少女。

 その顔は昔から……と言っても高校からだが、知った顔だった。

 

 

「――ってか、琴音は他の部屋にいるぞ?」

 

「あら、そんな事は分かっているわ。

 一応武弥の引っ越しなのだから、先に顔を出すのは当たり前のことではなくて?」

 

「そいつはどーうもー。」

 

 

 一応説明しておくと突然現れたこいつは高校からの友達で同じ大学に通う城嶋 彩華(きじま あやか)。

 

 見た目は背筋が伸び、ボヘミアンウエーブの長い髪が上品な雰囲気を醸し出し、外見はどこぞのご令嬢のようだ。

 

 その見た目、雰囲気から少なくとも高校の時から男女問わず密かなファンが多数存在するくらいだ。

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 実際立ち振る舞いにいたっても申し分ないのだが、俺や優斗など古い付き合いの男友達には意外にキツく棘がある。

 

 

「はぁ〜……『一応』や『こいつ』等とはレディーに対して失礼では無くて? 

それに綺麗な花には棘があるのは当然ですわ?」

 

 

 その棘が俺らにとっては深く傷つけると言う事を自覚してもらいたい!

 そうすればもうちょっとは……。

 

 

「もうちょっとは……? なにがもうちょっとなのかしら? 

 もしかして、私を使ってめでたくドーテー卒業できるのに……なんて思ってるのかしら?」

 

「ちょッ!? 何故そうなる――!!」

 

 

 駄目だ、着いていけない。

 そもそも昔から俺の何歩も先を行っており着いて行く事自体難しい。

 

 

「ふっ、逃げたわね。

 このヘタレ」

 

 

いやいや、だからどうしろと!?

 

 

「別にどうこうしろと言うわけではないですけれど……フッ」

「『ふっ』ってなんだよ!? というか何か言ったところで倍になって帰ってくるだろ!!」

 

 

 事実彩華に口で対抗した所でかなう要素など俺には無い。

 さらに言うならば他の奴でさえ、かなう奴など俺の知る限りでは存在しない。

 

 

「あら、嫌だわ。

 この私を見損なわないで頂きたいですわ?」

 

 

じゃぁ……なんだっていうんだよ?

 

「三倍返しですわ!」

「尚やだわ!!

そもそも声なき声と当たり前のように会話をしないで頂けますか!?」

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「何の事でしょう?

 私にはわかりかねますわ。

 ハッ、もしやドーテーを拗らせてついに……」

 

 

 こらこら……

 

 一応説明しておくと、彩華はいわゆる電波少女……。

 しかし俗のそれと違うところがあり、本物の電波を扱うのだ。

 

 その電波は相手の考えている事を拾い、感覚的に流れ込んでくるらしい。

 感覚的な為、人の喜怒哀楽等の感情で細かい内容までは分からないとの事なのだが……。

 

 

「フフ、武弥は単純ですから。」

 

 

 さいですか……。

 と言うかまだ何も言って無いんですが……。

 

 嫌駄目だ。

 

 これ以上何かを言返した所で、倍以上になって自分に襲いかかってくるだけだ。

 

 取りあえずざっと説明すると、今ではオン・オフと使い分ける事が出来るようになったと聞く。

 

 以上。

 

 

「まぁ、ベラベラと余計な事を……これだからドーテーは……。」

「そりゃどうも。」

「それでは、私はそろそろ、琴音ちゃんの元へ参りますね。」

「はいはい、行ってらー……」

 

「………」

 

 

 行った…かな?……よし見えなくなった。

 それにしても彩華は――

 

 

「呼ばれて飛び出てみました。」

「ぬわぁっ!いや、呼んでないから!!」

「あら……、残念。」

 

 

 残念と言う彩華の表情は口だけの用に聴こえるが……。

 

 

「あ――……いやっ……。」

 

 

 実際に忘れていた事を思い出す。

 彩華にとってどうでもいいことかもしれないが……。

 

 

「今日は来てくれてありがとな。」

 

 

 数少ない女友達である彩華、何だかんだ言っても来てくれるだけでありがたい物だ。

 

 

「――では、私は琴音ちゃんの元へ参ります。

それと、そんなんだから何時まで経っても三流のドーテーなのよ、

せめてドーテーでも一流になりなさいな、このヘタレ」

 

 

 こ、この……最後の最後で……ッ!

 

 それはともかく満足げに部屋を音にする彩華。

 

 何だったのやら……。

 

 彩華について補足すると可愛い女の子が好きで、可愛い子が近くを通ると電波で察知するという羨ましい特技をもつとの伝説がある。

 

 ちなみに彼女は百合の花が咲いている訳では無いらしい、まぁ実際はわからんがな……。

 

 特に琴音に関しては半径100メートル内に入ったとたん敏感に察知し、大よその位置を特定することが出来るのだ。

 

 まっ、正直俺や優斗には口調はきついがかなり良い子だ。

 現にわざわざ来てくれたのだから。

 とりあえず今日の引っ越しはこれにて終了……だな。

 

 

 

 

 

もずく……もとい続く

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あとがき

 

 お久しぶりですらいれんです。

 今日もKADENさんはおやすみです。

 

 つかあのひとあとがき書きたがらないんだよねぇ……。

 

 それは兎も角ちょいと投稿が遅れてしまいました!

 サーセン。

 

 ちなみに何故かというと……。

 

 

 親戚とそのガキが居座って作業どころじゃなかったんじゃぁぁぁぁ!

 

 あれが、最近の教育の仕方なのでしょうか?

 

 集合住宅で平気でドンドンと足音を立てるわ、行っても聞かないわ、そもそも親は酒かっくらって注意もしねぇ……。

 

 しかも目上の人間に平気でナメた口きくし……。

 

「ねぇきいてんの?」

 とか言われたときには思わず三歳児ながらそのドタマを引っぱたきそうにそうなりましたw

 

 つかウチの親だったらぶん殴ってるガチでww

 

 

 それにくらべてウチの妹様はとっても良い子でした。

 いや良い子というか、かぁいい子でした。

 

 今年で11才になるけど未だに夜一人でトイレ行けないし、たまに私の布団に潜り込んできたりします。

 

 いやこれマジで、ホントガチで!

 

 そんなかぁいい奴にお願いされたらそりゃぁ……

 『よ〜しおにぃちゃん頑張っちゃうぞ!』

 なりますよ、これもガチで!

 

 俺の妹がこんなに可愛いわけがない?

 

 ( ゚д゚)ハァ?

 なにいってんの、妹だからかぁいいんでしょ!

 

 妹がいるから妹萌は解らない?

 かわいそうに……。

 

 妹だから、萌えるんだぜ……?

 

――はッ!

 

 私は何をしていたんだ!

 あとがきといいながら自分の性癖をばらしてるだけじゃん!?

 

 もうお婿にいけない〜〜〜!?

 

 だれかこんな私をお婿に貰ってくれる人もしくは感想とか書いてくれる人なんでもいいからコメントいただけると幸いです。

 

 それではまた!

 

 

説明
少し投稿が遅れてしまいました。
ごめんなさい!

あと今回はやや少なめです。

理由はあとがきにて
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、キミのとなりで オリジナル 恋愛 家族愛 幼女 

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