真説・恋姫演義 〜北朝伝〜 幕間の五
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 「……侍女の服?」

 

 「うむ。おぬしの知識の中に、良い意匠の物はないかとおもうてな」

 

 それは、虎牢関を出る少し前のこと。突然、夜中に劉弁に呼び出された一刀は、彼からある相談を持ちかけられた。

 

 侍女用の、良い意匠の服の案。そんなのが無いかというのである。

 

 「……そりゃ、無いことは無いけど。どうすんだい?そんなもの」

 

 「……月じゃ」

 

 「月?」

 

 月、とは、先の相国である董卓のこと。その彼女が、侍女の服と何の関係があるのか。

 

 「洛陽を奪還した後、月には朕の側仕えをして貰おうと思っておる。とはいえ、今までの衣装は何かと目立つでの。かと言って、普通の侍女の服ではつまらん。そこでじゃ、一刀の天の知識で何か新しいものをと、そう思うてな」

 

 少々長い台詞を、早口で一気にまくし立てる。……すっごく生き生きした顔で。

 

 「ん〜。……侍女ってことは、ようはメイドさんだよな……。何か、書くものってある?」

 

 「おう。引き受けてくれるか。ちと待っておれよ」

 

 一刀の返事に嬉々とし、劉弁はいそいそと机のほうに向かう。その引き出しの中から、何枚かの紙と、筆と硯を一刀に渡す。

 

 「ありがと。ちょっと待ってくれな。すぐにいくつか描いてみるから」

 

 「うむ」

 

 サラサラと。

 

 手馴れた感じで服のデザインを描き始める。それを見た劉弁が、

 

 「……随分手馴れておるの。天界でもやっておったのか?」

 

 「……デザインそのものは、子供のころから好きで描いていたからね。さすがに、造ったことまでは無いけど」

 

 別にレイヤーってわけじゃないし。と、そんなことを言いつつ、それを書き上げていく。レイヤーという言葉が何のことかはわからなかったが、劉弁はとりあえず、黙ってそれを見守る。そんな劉弁の視線を気にしつつも、半刻ほどして、一刀は四・五枚のデザイン画を描きあげた。

 

 「……この位、かな?うん。我ながらいい感じのメイド服だ」

 

 「めいど……?侍女のことか?」

 

 「そだよ。……じゃあ、はい。後はここから、白亜が好きなのを選んでくれ」

 

 「おう。すまんの、時間をとらせて」

 

 ホクホク顔でそれを受け取り、一刀に礼を言う劉弁。

 

 (……月に着せるって割には、なんか、随分嬉しそうだけど……。実は自分で着てみるつもり、とか?……ふむ。白亜のメイド姿か……やべ、ちょっと、可愛いかも)

 

 劉弁が、自身のデザインしたメイド服を着ているところを、その脳内で再現してそれに思わず萌える一刀。だが、その頭に浮かんだ姿を、あわてて脳内から消し去る。

 

 (いや、まてまてまて!白亜は男!そう、男なんだ!断じて俺には、”そっち”の趣味は)

 

 「……どうしたのだ、一刀?急に一人で悶えおって」

 

 「いへ?!いや、なんでもない!なんでもないよ!うん!じゃ、じゃあ、俺はこれで!うん!おやすみ!」

 

 そそくさと。挨拶もそこそこに部屋を出て行く一刀。それを見送った劉弁はというと。

 

 「……どうしたのじゃ、一刀のやつ。顔を真っ赤にして。……熱でもあるのかの?」

 

 一刀の苦悶など知る由も無く、ただ、首をひねるのであった。

 

 

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 それから数日後。

 

 

 炎上した洛陽から、旧都・長安への遷都が決まり、劉弁は妹の劉協や、元・董卓軍の将兵たちとともに、そちらへ遷ることとなった。

 

 

 連合諸侯も解散し、それぞれの領地へと戻っていく。そこにはもちろん、一刀も含まれる。その一刀と硬く握手を交わし、次の再会を約して、劉弁は長安へとその歩を進め、二日後には新都に入った。

 

 そして、その日の深夜。

 

 

 「ふ〜む。こっちが良いかのう……。いや、こちらもなかなか……いや待て、これも捨てがたい……」

 

 その手に”例の”侍女服の試作品をいくつか持ち、姿見の前で自身の体に当てて悩んでいる、劉弁の姿があった。なお、それらの試作品を作ったのは、王凌である。……夜な夜な夜なべしての、力作だそうである。

 

 「どれもなかなかに可愛らしいの〜。一刀の話では、これを普段着にしておる者たちも、天の世界にはごろごろしておるらしいが。……気持ちはわからんでもないの」

 

 注(一刀の捏造です。

 

 「どれ。こうして眺めているだけもなんだしの。実際に着てみるとするか」

 

 そう言って試作品のメイド服を寝台の上に放り投げ、自身の着ている衣装をするすると脱いでいく。

 

 すらりと伸びたその手足。背はさほど高くないものの、均整の取れた、細身のその体。そして、胸に巻かれた”さらし”を、しゅるりとほどく。すると、その下から、豊かな二つのふくらみが現れる―――。

 

 「……また少し、大きくなったきたの。まったく、背は伸びんとこんなところばかり大きくなりおる」

 

 そう。

 

 劉弁、彼は、いや、”彼女”はれっきとした”女”であった。なぜ、男の姿をし、男として振舞っているのか。それは一重に、周りに侮られないため。

 

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 彼女の父である霊帝、さらにはその前の、前の皇帝の代から、宮内にはびこりだした、宦官という名の寄生虫たちにより、皇帝は名ばかりの”お飾り”にされてしまった。

 

 権威はあっても、権力は無い―――。

 

 後世になって成立する、立憲君主、などといういいものではなく、君主という名のただの人形。

 

 ましてや、次期皇帝たる皇太子が女人とあっては、それこそ利用される存在以外の何者でもなくなってしまう。

 

 彼女はそう考え、女であることを隠して、今まで生きてきた。この事を知るのは、母である何太后と、妹の劉協、そして幼馴染である王凌の、三人のみ。

 

 「……なぜ、朕は女子に生まれてきたのかの……。一刀のいうように、”向こう”の朕のように、男として生まれておれば……」

 

 と、そんなことを考えいると、頭の中に、一刀の姿が浮かんできた。

 

 「……いや、まあ。……男子であったなら、こんな気持ちも味わえなんだか。そこのところは、女子であることに感謝すべきかの」

 

 一刀のあの笑顔。

 

 それを見た瞬間、劉弁は思わずどきりとした。平静を保つのがやっとという位に。”それ”が、世間で言うところの”一目ぼれ”というものだったと気づいたのは、洛陽に戻ったその日の夜のこと。

 

 「……いつか、この事を打ち明けることのできる日が、来るといいがな……。ふふ。これを知ったときの一刀の驚く顔が、目に浮かぶようじゃ」

 

 くすくすと。

 

 目を見開いて唖然とする、一刀のその顔を想像しつつ、劉弁はほほを紅くして笑う。

 

 「……くしゅっ!……いかん。よく考えてみたら、素っ裸のままだった。ま、今日のところはこのまま寝るとするか。あれは明日にでも、月に渡すとするかの」

 

 寝着に袖を通し、寝台へともぐりこむ。そして仰向けになって目を閉じ、そのまぶたに一刀の顔を思い浮かべる。

 

 「……おやすみ、じゃ。一刀」

 

 劉弁は夢の中へと入っていく。”友”であり、”最愛の人”である一刀と、その中で楽しく語らう。そんな、ささやかな幸せに包まれた、その夢の中に。

 

 

 いつかそれが、現実のものとなることを願って……。

 

  

                              〜了〜

 

 

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 てなわけで、ちょっと短いですが、白亜の拠点をお送りしました。

 

 輝「なんか、すごいこと思い切りぶっちゃけてるけど」

 

 由「ちょっと早すぎちゃう?ばらすん」

 

 そーおもったんだけどね。まあ、読者の皆様は、大体予測済みだとおもうし。

 

 瑠「いいですけど。・・・・・で、白亜さん、これからどうなるんでしょう?」

 

 それは今後の展開をお楽しみに、ってことで。一刀に食われる日が来るかこないか。おたのしみにww

 

 

 さて、次回から物語りは第三章に入ります。

 

 輝「それぞれの領地へと戻った諸侯」

 

 由「それぞれの今後はどうなるのか?」

 

 瑠「それでは次回、真説・恋姫演義 北朝伝」

 

 第三章、序幕にて、お会いしましょう。それではみなさん、

 

 

 『再見〜!』

 

 

 

 

 

説明
北朝伝拠点、第五弾。

今回は白亜こと劉弁のお話です。

明かされる衝撃(?)の事実とともに、

たんまり、にやにやして見てください。

では。
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コメント
しかし劉弁自体死亡フラグと言えんこともないが>最後の一文(M.N.F.)
kabutoさま、さ〜て、どうなるやら? 真のヒロインの座をつかむのは、果たして?! ・・・な〜んてwww(狭乃 狼)
そろそろ白亜がメインになるころですね。ほかのヒロイン蹴散らして一気に…(kabuto)
ヒトヤ犬さま、男の娘要員は別にいますのでw いつ出るかはひ・み・つww(狭乃 狼)
2828さま、多分入っているでしょうw で、ついでに自分用もひそかに作ってたり・・・したりして^^。(狭乃 狼)
ハセヲさま、うちの娘はあげませんww(狭乃 狼)
東方武神さま、種馬に身分の壁は無し。あと、年も下から上まで幅広く・・・www(狭乃 狼)
namenekoさま、はい、ご想像通りの女の子です。 一刀はまさしく、そんな顔になるでしょうな^^。さて、いつの事やら。(狭乃 狼)
mokiti1976−2010さま、輝里たちがそっちにお邪魔するそうです。・・・釘バットとか持って出てましたから、気をつけてくださいねww(狭乃 狼)
はりまえさま、旧バージョン、もっとよく見てみましょう。あっちも女の子です。 一刀との結婚・・・ありますかね?くすwww(狭乃 狼)
ku−さま、おそらくそうでしょうwやつの本能が獲物を感じ取ったのかと^^。(狭乃 狼)
hokuhinさま、実はその時だけ、”例の”姿に戻ってたり・・・なんてww 中を見てはいけませんよ、みたいな^^。(狭乃 狼)
紫電さま、ちなみに、詠は”まだ”着ませんw月だけの分です。 次章については、暫しのお待ちを。・・・暇が無いです、はい。(狭乃 狼)
etyudoさま、問題は時間がないことですが・・・まあ、のんびりお待ちくださいww(狭乃 狼)
よーぜふさま、×××の部分、詳しく教えてくださいww(狭乃 狼)
poyyさま、それは白亜のことですか?だとしたらその通りですね。時代も時代だしw(狭乃 狼)
別に男でも・・・・(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
ちょ〜せんが〜夜なべ〜をしてメイド〜(服)を作ってた〜〜〜〜なんかぶるぁの趣味も入ってそうな気がするのは何故だw(2828)
白亜に惚れた!(ハセヲ)
あはー。白亜の今までの仕草からなんとなくそうだとは思ってましたけどね。しかし皇帝さえも笑顔一つで堕とすとは・・・流石は北郷クオリティ、恐るべし。(東方武神)
ヤッパリ女だったか。一刀が知ったら(*_*)物だな(VVV計画の被験者)
よし!ここは白亜さんがメインヒロインだ!!とかいったら一刀配下の四人に殺されそうな気もする・・・。(mokiti1976-2010)
あぁやっぱりかぁ。前のは男?だったから今回は女の子にしたんだなぁ。でも将来娶ることになったら真っ先に思い浮かぶのはやっぱり一刀だろうな。(黄昏☆ハリマエ)
種馬の本領発揮での直感ですねw(KU−)
王凌が女の姿でよかったな・・・元の筋肉だるまの姿で夜なべする姿だったらw(hokuhin)
さあ、次からの新章!期待しています!な〜に征さんならちょちょいのちょいですよ(さあ、ハードルが一つ高く!(笑))。(etyudo)
そして一刀は、冥土服な白亜さんに×××なんですねw(よーぜふ)
普通メイド服の知識なんてありませんよねぇ。(poyy)
タグ
恋姫 北朝伝 一刀 劉弁 メイド 

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