真説・恋姫演義 〜北朝伝〜 第三章・序幕『改訂』
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 「ふ〜む。中々に栄えた街ではないですか。ふむ、城を中心に三本の大路、その脇には人が歩く専用の道。商業区画は業種ごとに分割され、どの一帯にどの種の店があるかが一目瞭然。……人々も活気と笑顔に満ち溢れている。ん、いい街ですね」

 

 ?の街の、ほぼ全体を見渡すことのできる、大路の三叉路に立ち、三百六十度ぐるりと見渡しながら、その様子を観察しているその人物。

 

 背丈は170センチほどだろうか。その赤みがかった長髪を、二つに分けて三つ編みにし、その服装は白い上着にミニスカートといういでたち。顔にはビン底眼鏡をかけているので、その細かな表情はわからないものの、口元の緩みがその機嫌のよさを表している。

 

 時折、わずかな風を受けてはためく、そのスカートから伸びる白い脚が、なんともいえない色気を醸し出しており、道行く男たちが思わずじっと見つめるほど。

 

 そんな男たちの視線をまったく気にせず、その女性は視線を城の方へと転じる。

 

 「……北郷一刀。天の御遣い、ですか。さて、どんな人物なのか見に行くとしましょうかね。……”私の”輝里が、全てを預けているという男……もしつまらない男なら……うふ、うふふ、うふふふふふ」

 

 少々怪しげな笑みを浮かべながら、その女性は城の方へと足を踏み出す。

 

 「……待っててね、輝里。今から私が、あなたの下に行くから。そして、目を覚まさせてあげる。男なんていうくだらない生き物なんかじゃなく、貴女”が”愛しているのはこの私、伊機伯なんだってこと、ちゃ〜んと、思い出させてあ・げ・る」

 

 

 ちょうどその頃、城中の太守執務室にて。

 

 「(ゾクゾクッ!)……なんか、今、すっごい寒気が……」

 

 定例会議の最中、突然身震いをして怪訝そうな表情になる徐庶。それを見た一刀と姜維が、心配そうな顔で彼女に声をかける。

 

 「……風邪かい?気をつけなきゃ駄目だよ、輝里」

 

 「せやで。ちょうど季節の変わり目やし、体調管理はしっかりせな」

 

 「……ん〜。特に熱とかないんですけどね〜」

 

 自分の額に手を当て、徐庶はその首をかしげる。

 

 「……今輝里さんに倒れられたら、その影響はかなり大きいですから。……今日のところは、もう休んだほうがいいんじゃないですか?」

 

 「そうだな、無理は禁物だぞ、輝里」

 

 「……ありがと、瑠里ちゃん。それにねえさんも。でも大丈夫ですよ。今は大事な時ですから、少々の事で休んでなんかいられませんよ」

 

 無表情ながらも、徐庶を心配して休むように言う司馬懿と、それに同調した徐晃に対し、笑顔でそう返す徐庶。

 

 

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 「……で、話を元に戻しますけど、”紙”の生産のほうがようやく軌道に乗りました。これから随時、竹簡や木簡からの移行を、進めて行きたいと思います」

 

 「ん、了解」

 

 当時、紙は大変に貴重なものであった。何しろ、作るのに結構な手間がかかり、大量には生産できないのである。当然、値のほうもそれなりに高くなる。

 

 しかし、紙のほうが何かと便利なのは、それこそ周知の事実である。そこで、一刀の天の知識を生かした、半自動の紙すき機を考案した。今まで人の手で行っていた紙すきを、その作業の大部分をからくり仕掛けにすることで、効率を大幅に上げようとしたのである。もちろん、紙の質も落とさないように、十分な設計がなされていた。

 

 そうして出来上がった”それ”を、今度は何十台と作って、紙の大量生産を開始したのである。

 

 結果、それは大成功した。

 

 手間が大幅に減り、製作時間もかなり短縮された事で、紙の流通量は一気に増大し、その分、値も大きく下がった。しかも、これまで流通していたものより、はるかに質のいい物が、である。

 

 「……いっそのこと、交易品目の中に入れてみましょうか。良い財源になると思いますけど」

 

 「……そだね。輝里、手配の方頼むよ。とりあえず、来月分から含めてみて」

 

 「わかりました。……で、その材料を伐採した跡地のほうですが、こちらの開発もすでに着手しております」

 

 紙の材料―――それはもちろん、木である。?郡は、大陸でも有数の森林密集地帯である。その一部を切り開いて紙の材料を集めても、数十年はその材料に事欠かないほどに。

 

 「開いた土地は遊ばせず、新たな耕作地にする。……一石二鳥っていうのは、こういうことやな」

 

 うんうん、と。腕組みをして一人うなずく姜維。そこに、

 

 「失礼します!当方に仕官を求めている者が来ておりますが、いかがいたしましょうか?!」

 

 と、兵の一人がその場を訪れ、そう報告をしてきた。

 

 「仕官希望か。そりゃありがたいな。人材が多いのにこしたことはないし」

 

 「そうですね。……その人のお名前は?」

 

 「はっ!伊籍、字を機伯と名乗っております!」

 

 「…………え゛」

 

 仕官希望者の名前。それを聞いたとたん、徐庶はその場でピシッ!と固まった。

 

 『??』

 

 その様子を見て首をかしげる一同。

 

 で、それから少しして、件の人物が、城の謁見の間に姿を見せていた。

 

 

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 「姓は伊、名を籍、字を機伯にございます。まずは、お目どおり許されたこと、深く御礼申し上げます」

 

 ビン底眼鏡をかけたその人物―――伊籍が、一刀に対して深々とその頭を下げる。

 

 (う〜む。見事なほどのビン底眼鏡だ……。こんな眼鏡、ほんとにこの世にあるんだなあ)

 

 と、伊籍のかけているその眼鏡をみて、一刀はそんな感想をもつ。

 

 「……始めまして、伊籍さん。北郷一刀、?郡太守を勤めさせていただいています。それで、本日のご来訪は、仕官を求めてとのことですが」

 

 「はい。是非とも、北郷様の幕下にお加えいただきたく、荊州よりまかりこしました。どうか、お認めくださいますよう(ちらり)」

 

 一刀の問いにそう答えつつ、その視線を、一刀の隣に立つ徐庶へと送る伊籍。……何故か、口の端を吊り上げながらの、笑みを向けて。

 

 「う。……その、私的意見は、いろいろとありますが、朔耶はその能力”だけ”みれば、優秀な、良き人材です。……採用、するんですか?」

 

 その顔を引きつらせながらも、伊籍をそう評して、徐庶は一刀に進言する。

 

 (……なんか、含みのある言い方やな)

 

 (……ですね。それに、ずいぶん複雑そうです。どうやら、お知り合いのようですけど)

 

 徐庶のその様子を見た姜維と司馬懿が、ひそひそとそんな会話を交わす。

 

 「輝里がそう言うんなら、間違いはないだろうしね。……伊籍さん、貴女の仕官、喜んで認めます。これから、よろしくお願いします」

 

 「御意」

 

 その頭を再び下げ、一刀に答える伊籍。

 

 そしてその翌日、早速彼女は文官として働き始めた。その能力は徐庶が話したとおり、とても優秀なものであった。これまでは気づかずにいた、細かな見落としなどが彼女の指摘によってみつかり、それを修正することで、政務はさらにはかどるようになった。

 

 そうして、一月もたった頃。

 

 ある日の昼下がり、一刀と徐庶が政務を終え、昼食を採りに行こうとして、廊下を歩いていたときだった。

 

 

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 「輝里、ご飯食べに行かない?」

 

 と、談笑しながら歩いていた二人の下に、突然伊籍が現れて、徐庶を食事に誘ってきた。

 

 「あ、朔耶。ん〜……いまから、一刀さんと食事に行くところだったんだけど、あ、朔耶もよかったら、一緒にどう?」

 

 「……太守さまと?」

 

 「うん」

 

 「……」

 

 徐庶のその台詞に、黙りこくる伊籍。……その目は、完全に否と言っている。その気配を察した一刀が、

 

 「……えと、前から聞きたかったんだけどさ、おれ、伊籍さんに何か嫌われるような事したっけ?」

 

 と、問いかける。すると、

 

 「……してませんよ?……強いてあげるなら、”私の輝里”を独占しすぎ、というぐらいでしょうか」

 

 「え?」

 

 にっこり笑顔のまま、伊籍がそんなことを言った。

 

 「……朔耶?」

 

 「……ず〜っと、今まで我慢してたんですが、今日こそは言わせていただきますね」

 

 ぐい、と。徐庶の腕を唐突に掴み、自分の方へと引き寄せる。そして、それは始まった。

 

 「……いーですか?政務以外では、今後一切、輝里に近づかないで欲しいんです。まあ、真名については、輝里本人の判断ですので、私はどうこう言う気はありません。けど、私は貴方に真名を預けたりなんかしませんので。それと、もし、輝里に手を出そうものなら、私は絶対許しません」

 

 『……』

 

 笑顔のまま早口で、一気に一刀に向けてまくし立てる伊籍。

 

 「まあ、太守としては、有能で尊敬してもいい方だとは思いますが、こと、輝里に関しては、私は絶対に譲りませんから。……輝里を一番、愛しているのは、私、なんですから」

 

 と。

 

 それは、完全に、一刀に対するライバル宣言であった。

 

 「……えっと、要するに、同姓あ」

 

 「違います!私と輝里の愛は、そんな下世話なものじゃありません!この愛は、もっと純粋で、崇高なものなんです!それ以上でも、それ以下でもないんです!」

 

 完全に、自分に浸っている伊籍を、ただ唖然と見つめる一刀。で、その伊籍に掴まれている徐庶はというと、

 

 「一刀さん!誤解しないでくださいね!?朔耶が言っているのは、友情の延長みたいなものですから!そこから先は無いですから!」

 

 「……いや、みなまで言わなくていいよ、輝里」

 

 「え?」

 

 その徐庶の言葉を聞いた一刀は、伊籍に対し、こんな事を言った。

 

 「……伊籍さん。先の貴女の台詞、そっくりそのまま返しますよ。……あなたの優秀さは、この一月で十分理解しました。けど、それはそれです。……輝里についてだけは、絶対負けませんから」

 

 『!!』

 

 ライバル宣言返し。それを聞いた徐庶が、その顔を真っ赤にするのを見た伊籍は、ふっ、と。軽く笑って次のように返した。

 

 「……私だって、絶対負けませんよ?輝里の貞操は、絶対に守って見せますから」

 

 と、そう胸を張って。だが、

 

 「……朔耶、そこは勝負にならないわよ?……てか、もう手遅れ」

 

 「…………え?」

 

 徐庶の言葉で、全身からその力が抜ける伊籍。その瞬間、徐庶は伊籍の腕から離れ、今度は一刀の腕にしがみついた。

 

 「じゃ、そういうことだから、今後の勝負、楽しみにしてますよ。……不毛な愛には、まけませんから。じゃ、いこうか、輝里」

 

 「はい♪」

 

 と、呆然とする伊籍をその場に残し、一刀と徐庶はその腕を組んだまま、テクテクと歩いていく。

 

 暫くして。

 

 「……そう。そうなの。……いいわ。なら、あたしも本気で、輝里をこの手にしてやるわよ!……見てらっしゃいよー!男なんかに負けてたまるもんですかー!!」

 

 と、高々に宣言をし、なーっはっはっは!と。大笑いをする伊籍であった。

 

 

 

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 とにもかくにも、そうして見事な三角関係が、この日を境にして、北郷軍の中に確立され、それが元でのどたばたが、今後たびたび繰り広げられるのであるが、それについては、また後に語りたいと思う。

 

 何はともあれ、そうして騒々しくも穏やかな日常が、一刀を中心にして繰り広げられていき、瞬く間に、一年という月日が流れていった。その間に、?の街は大陸でも五指に入る大都市へと、成長していった。

 

 

 この安寧が、永久に続いて欲しい。

 

 

 一刀たちのみならず、大陸中の全ての者が、そう願っていた。

 

 

 しかし、その願いもむなしく、安穏とした日々は、唐突に打ち砕かれる。

 

 

 都から届けられた、その、一通の書簡。

 

 

 それは、大陸に、再びの嵐を呼び込む。

 

 

 新しい春の、その訪れを告げる、雪解けとともに……。

 

 

                                〜続く〜

 

 

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 というわけで、三章・序幕、改訂版をお届けします。

 

 

 いやもう、今日コメを見てびっくりしました。思った以上に、アンチ朔耶なコメがたっぷりと。

 

 輝「ある程度予測はしてたんですよね?」

 

 ・・・・ある程度は、ね。

 

 由「で、その予想をはるかに上まったと」

 

 はい。で、コメの意見を参考に、こんな風に書き直してみました。ご満足いただけたら幸いです。

 

 瑠「・・・けど、人の意見に左右されすぎるのも、正直どうかと思いますが」

 

 輝「ですね。・・・そこに関して、何か反論は?」

 

 ・・・・・・・無いです。ほんと、申し訳ありません。今後、二度とやらないようにするつもりです。

 

 由「話の大筋さえ変わら無い範囲なら、まだ、許容範囲やとは思うけどね」

 

 話の筋道を変更するようなことは、絶対しません。不足分の追加ぐらいで、今後はとどめられたらと思っております。

 

 

 

 

 瑠「じゃ、あらためて、次回予告と行きましょうか。・・・都から送られてきた、ある一通の書状。それにより、時代はふたたび動き出します」

 

 由「ウチらはこれからどうなっていくのか?カズは、白亜はんは、そして、諸侯は?」

 

 瑠「次回、真説・恋姫演義 北朝伝、第三章・第一幕」

 

 由「期待したってな〜。・・・ほんならいつもどおり、コメント等、ぎょうさん待っとるで」

 

 これからも、懲りずに付きあってやって下さると、うれしい限りです。

 

 輝「とりあえず、見捨てないでやってくださいね。・・・あ、作品以外に関する誹謗中傷だけは、ご遠慮ねがいますね」

 

 瑠「それではみなさん、また次回で」

 

 

 

 『再見〜!!』

 

 

 最後に、改訂前のに支援とコメを下さった皆様、ほんとにありがとうございました。あっちは削除しました。本当に、申し訳ありませんでした。

 

 では。

 

 

説明
え〜、ごほん。

先日投稿した同タイトルの回ですが、

あまりにも朔耶に対する風当たりが強かったのと、

確かに一刀たちの反応が淡白すぎたと深く反省し、

少しばかり修正して再投稿いたします。

・・・朔耶のあの性格は変わってませんが、

厚生、とまではいかないものの、フォローみたいなものを、

足しました。では、とりあえず、見てみてくださいませ。
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コメント
そして毒は薬になる?w(RevolutionT1115)
なんか読み返してるとジワジワくるなwww(M.N.F.)
猛毒から普通の毒へと変わったかな?読んでいてもキチンと会話の流れでおかしなところもなかったですし。(東方武神)
だいぶマシになったと思います!これなら読んでいても不快な思いをしません!!(タケダム)
…改訂前は静観に徹してましたが、読んでみて「コレはヤバイ!?」と思ってました。この性格のままだと、国一つどころか、作品その物をも滅ぼす(打ち切りに至らせる)猛毒になるだろう、と。ですから、毒性の薄まった現状で丁度良いのだろうと、そんな感想を抱きました。(クラスター・ジャドウ)
確かに前のは灰汁が強かった。これくらいの修正は全然OK!!むしろ大歓迎!!!てか前より可愛く感じる。(kabuto)
前に比べてずいぶん大人しくなっちゃたな朔耶・・・桂花レベルから焔耶レベルまで下がった感じ。(hokuhin)
改定前コメでは書いてませんでしたが・・・確かに一刀がどうにか容認出来ても側近(由さん達)・臣下が納得出来ない状態でしたでしょうしw ナイスフォローになっているかとw(村主7)
このまま負け続けてくれるならこのキャラでもいいかな?(poyy)
まあうん・・・がんばってくださいなw(よーぜふ)
まあ前よりは気分良く見れました。後は朔耶の百合を一刀の種馬スキルで凌駕するのみ!(mokiti1976-2010)
話が変わっちゃいましたか。 多少横暴でも、恋姫の世界なら許されると思うんですがね。一度できたものがなかったことになったのは残念です。(きの)
少なくとも前よりははるかに好印象。(龍々)
前回とずいぶん違うなぁ・・・・・前回のはかなりきつかったけど今回は幾分かやんわりな感じ、これポジションで言うなら、曹操=伊籍、楽進(まあ一途な意味で)=徐庶みたいな。(ポジションはどうか微妙だけど)(黄昏☆ハリマエ)
いいんじゃない?前のより・・・(運営の犬)
なんだろう・・・、以前の徹底っぷりはどこへ・・・。 あの桂花1.5割増はどこへ・・・orz(M.N.F.)
・・・・・・・・・どの道、不安要素である事はかわらず・・・・魏に利用されて終わりな性格だ。(大ちゃん)
タグ
恋姫 一刀 徐庶 姜維 徐晃 伊籍 

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