虚々・恋姫無双 虚点3 霞黙
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一刀ちゃんが記憶を失って一週間が過ぎました。

 

その間一刀ちゃんにこう言った変化はあらず。記憶が戻ってくるような様子もまったくあらず。

一刀ちゃんは元が気の弱い子です。自分から言ったこともあるように一刀ちゃんは本来とても我侭で自分のことしか考えない子です。

だけど、それが少し頭が回るようになって周りの状況や、子供だから、と逃げていた現実の厳しさに立ち向かわなければならないという悩みがありました。

それが華琳さまとの出来事から恐怖と化し、一刀ちゃんはその重圧感に耐え切れず、自分の記憶を封じました。

 

派手なように言いましたけど、ぶっちゃけ言うと幼児退行です。

 

でもまぁ、僕は別に心配してません。

ええ、心配していませんとも。

別に以前の一刀ちゃんに戻ってしまっただけですし、可愛さときたら以前の一刀ちゃんの方が遙かに上でしたし?

えー、だから僕に負になることなんて………

 

「……」【さっちゃん、どうしたの?】

 

え?あ、ああ、ごめんなさい、何か言いました?

 

「……」【ううん、別に話したことはないんだけど…何か、最近のさっちゃんってちょっと変】

 

……それは逆に『元が変(通常運転)』って意味ですか?

 

【どうしてそうなるの……もういいよ。それよりも疲れたよ。何か皆凄く張り切ってたし。やっぱりアレかな、一年も顔が見なかったからかな】

 

ええ、そういうわけでしょうね……

 

先まで街で子供たちと遊んでいました。

この前まで警備の仕事を手伝っていましたので、子供たちと一緒に遊ぶ暇はありませんでした。街の子たちが張り切ったのはそのせいですけど……まぁ、一刀ちゃんが言ったことも間違いはありませんからね。意味合いはちょっと違うでしょうけど。

 

【あー、早く寝台に飛び込みたい】

 

そんなに疲れたらスッとして行ったらいいじゃありません?

 

【……その手があったね】

 

忘れてたのですか。

 

【だって今まで仕えなかったもん。いつの間にかまた使えるようになってボクビックリしちゃったんだから】

 

………

まぁ、何はともあれ使える能力を必要な時に使わないことは損でしかありませんよ。

 

【そうだね……じゃあ】

 

スッ

 

一刀ちゃんの瞬間移動も久しぶりに見ますね。

じゃあ、僕も。

 

――瞬速

 

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ふー、やっぱいいですね。太平要術書は。

一刀ちゃんはこんなのがコストほぼ無しで使えるのですからどれだけチート……

 

ってあれ?

一刀ちゃん、部屋に居ない……

どこに行ったんでしょう。

 

………

 

……

 

 

「ぐあああああああああああ!!!」

 

まさか、一刀ちゃん……

 

・・・

 

・・

 

 

 

この前こういう話がありましたね。

一刀ちゃんと僕が消えた後、一刀ちゃんの部屋は他の人に渡されました。

それで、一刀ちゃんが来た初めての日に、桂花さんの部屋で一緒に寝てましたね。

 

だからつまり、今の一刀ちゃんの部屋は、一年前の部屋とは違うわけなのですが……

その記憶がない一刀ちゃんはそれを知らずに元の部屋に行った。

そしてそこは……

 

今霞さんの部屋です。

 

 

「な、なんやねん!」

「????」

 

窓を開けて腕を窓枠に置きながら月見をしていた霞さんも、突然自分の部屋の布団だと思って飛び込んたつもりが、見知らぬ人の部屋だったということにびっくりしているようです。

 

「か、一刀やん?いきなりどっから出てきたん」

「………?」

 

あ、ヤバい。

霞さんに一刀ちゃんのことちゃんと説明していないから、下手をしたら一刀ちゃんの記憶を戻すような言葉を言うかも知れない。

 

『……張遼……お姉さん?』

「うん?あ、ええわ、ええわ、真名もうあげったやろ、霞でええって」

「……」『霞お姉ちゃん?』

「そう、そう……ってか何で書いて言うねん?」

「……?」

 

ああ、不味い。

こうなったら霞さんを気絶させてでも……

 

「あぁ、もしかしてあれなん?ノドでもやられたん?」

「……」『良く分からないけど、頭がやられたかそういうアレだよ』

「頭!?そんな大変なことあったん?!」

『……霞お姉ちゃんだったよね。ちゃんと見たことなかったからちょっと混乱する』

「まぁ、無理せへん方がええんよ。他の子たちは皆一刀のこと心配してるみたいやから。ゆっくり休んだ方がええわ」

『それほどじゃないんだけど…とにかく心配してくれてありがとう』

 

何気に話しが噛み合う。

 

「…そういえば最初挨拶しとってから話したことなんてなかったやからな」

【ボクは寧ろ挨拶すらした覚えないんだけど】

 

いいえ、してました、一刀ちゃんが忘れちゃっただけです。気絶してる間ちょっと忘れちゃったみたいですね

 

【え、そうだったの?…そうする時間なんて】

 

実は倒れたのって連合軍から帰ってきた後ですよ

 

【そうだったんだ……】

 

記憶捏造しまくりです。

 

まぁ、それは相手も似たようなものですし、せっかくだからこの度に仲良くなってください。

 

「で、何でいきなりウチの部屋にきとるん?」

『あれ?ここボクの部屋じゃないの?』

「いや、ウチの部屋やろ。あっちに酒樽とかあるし。自分の部屋間違えるとか惇ちゃんじゃあらへんし……」

 

春蘭さんでも自分の部屋は間違いません。

もし間違ったとしてもそれはそれからそこが春蘭さんの部屋になるだけです。

 

「…………!」『あ、ボクの部屋変わったんだった。ここじゃなかった』

 

そしてこの子は自ら春蘭さん以下ということを認めちゃいました。

 

 

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『じゃあ、ボクは帰るね。驚かせて御免』

「ええよ、ええよ。あー、ちょっといかへんで」

「?」

 

誤解が解けて今度こそ自分の部屋へ戻ろうと思った一刀ちゃんを霞さんは止めました。

 

「もうちょっとここに居てもええんやけど?」

「……?」

 

一刀ちゃんはキョトンとした顔で霞さんを見つめました。

 

『何で?』

「いやー、ちょっとな?一刀とは色々話がしたいと思ったんや」

『お話?何の?』

「あのな?……ああ、とりあえずちょっとこっち座ってみ」

 

と、言いながら霞さんは自分の膝の上をポンポンと叩きました。

 

「…………」

 

いや、いくらここに来て人に接するに負担がなくなった一刀ちゃんですけどね?

そんな会ってあまり立ってもいない相手の膝の上にぽつんと座ったりはしませんよ。

 

 

「………」

「あぁ……やっぱ駄目なん?」

『どうして、ボクのこと膝の上に座らせようとするの?』

「何でってそれはなー…うーん」

 

何か怪しいですね……

 

「………」

 

スッ

 

一刀ちゃんは何か嫌な予感がしたのかそれ以上黙々とする霞さんに反応せず帰ってしまいました。

 

「ああ、ちょっと……あーあ」

 

霞さんはガクッて頭を落としました。

 

………何なんでしょうね?

 

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僕は次の日、紗江に昨日一刀ちゃんと霞さんの間にあったことを話しました。

 

「霞さんですか?……そういえば、以前こんなことがありましたね」

 

――どんなこと?

 

「ほら、霞さんって良く凪君と仲良くしていたではないですか」

 

――ああ、そういえば……凪君がどうかは分からないけど、取り敢えず霞さんは間違いありませんね。

 

ほんと、凪君の場合はどうなのか分かりませんが。

 

「それが、最近一刀ちゃんはずっと警備の仕事で凪君と一緒にいたじゃないですか。そのせいで霞さん、凪君のところに近づけなかったのだろうと思います」

 

――それはまたどうしてです?彼女の性格から察しても、別に一刀ちゃんが居るからって凪君に近づけないはずはないと思われるのですが

 

「それはそうですけれど、知ってます?凪君は一刀ちゃんと一緒に居るといつもと顔が違うのですよ」

 

――ええ、凄く穏やかな顔になりますね。いつもの彼女ならもっとびっしりとした顔なのに。…あ、もしかして

 

「多分、そんな凪君の姿を見て、一刀ちゃんに興味が湧いてきたのだろうと思います」

 

――ふーん……

 

しかし、それだとしてもやはり昨夜のようなことは霞さんらしくありませんね。

 

 

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そして同じ日の昼、

 

「あ、おおい、かずッチ―!」

「?」

 

街をふらふらしていた一刀ちゃんは、聞き慣れぬ声に呼ばれてあんまん屋の方を振り向きました。

 

「こっち、こっちー」

「……?」

 

霞さんが屋台の席に座っていました。

 

「……」『おはよう、霞お姉ちゃん』

「おはよう、一ッチ」

「……」『何、そのかずッチって』

「うん?一刀やからかずッチって。どや?」

 

本当にドヤ顔しないでください。

おかしいです。

 

『ちょっと無理がある』

「あ、あれ?そ、そうなん?」

『……別に、霞お姉ちゃんがそう呼びたいのだったら駄目とは言わないけど』

「いや、かずッチ、いや、一刀が嫌と行ったら呼ばへんけど……」

 

……何?このグダグダな雰囲気。

 

「そ、それより一刀、あんまん食べんか?ここのあんまんすっごくうまいで」

「……」『そうだね。せっかくだし食べて行こうかな』

「おうよ、おばさーん、ここあんまん二個追加やでー」

 

しばらくしてあんまんが出て、霞さんはその中一つを一刀ちゃんに渡しました。

 

「はい、ウチが買うで」

「?」『どうして?』

「え?どうしてってそりゃ……うーん……えっとー」

 

……一刀ちゃん

 

【うん?】

 

そんな人が困るような聞き方はよくありませんよ。黙って食べてあげてください。

 

【……】

 

僕の話を聞いて一刀ちゃんは言葉に困っている霞さんの手からあんまんを受け取りました。

 

「……<<モグモグ>>」

「……おいしいなん」

「……<<コクッ>>」

 

まぁ、食べろって言われて食べるのですから、あまり爽やかな顔ではないですけどね。

 

「あのな、一刀」

「?」

 

あんまんを食べていた一刀ちゃんはあんまんを口に咥えたまま上目つきで霞さんを見上げました。

 

「一刀は、どうしてここに居るん?」

「………」

 

それは、今まで一刀ちゃんが散々聞かれてきた言葉なんですけどね。

 

「……」『霞お姉ちゃんは、ボクがここに居るのが似合ってないって思うの』

「いやいや、そういうのはちゃうけど……何か、不思議だなぁと思うんや」

「……?」

「ウチは、一刀のこと良く知らへんけど、一刀と一緒に居る凪や華琳を見るといつもよりもずっと優しい顔になる。他の皆だってそう」

「………」

「一刀は一体、ここでそんな存在なん?何で一刀と一緒に居ると、皆そんな顔になるん?」

「………」

 

一刀ちゃんは何も言わずに霞さんを見ているかと思ったら、

 

ガタン

 

座っている椅子から降りてきました。

 

「あー、一刀?また行くん」

 

また昨日みたいに一刀ちゃんが消えるのかと思った霞さんは一刀ちゃんを止めようと席から立とうとしました。

だけど、

 

スッ

 

ぽつん

 

「……へ?」

 

霞さんの膝の上に現れた一刀ちゃんによって、その行動は行われませんでした。

 

 

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「え、ちょっ、一刀?」

「………<<モグモグ>>

 

自分の膝の上に一刀ちゃんが座ったことに慌てている霞さんとは対照的に一刀ちゃんはまだまだ小さな口でもぐもぐとあんまんを食べていました。

ってかいつものことながら食べるの遅いです。

 

「ちょっ、ちょっと降りてな」

「……?」

 

上を見て霞さんと一度目を合わせた一刀ちゃんは霞さんの要望を無視してそのまま座っています。

 

「いや、ちょっ、こんな人周り多いところで……」

 

そして、何かテレてます、この人。

 

「あ、一刀ちゃーん」

「え?」

 

あそこから沙和君が一刀ちゃんをこっちに来ています。

警邏中だったでしょうね。

そして、その隣には

 

「こら、沙和!またそうやって……って、霞さま?」

「な、凪」

「うー、霞お姉さま一刀ちゃんと遊んでるのー。沙和も一刀ちゃんと遊びたいのー!」

「……」『沙和お姉ちゃんは仕事でしょ?』

「うぅ………」

 

沙和君と一刀ちゃんが話してる間、凪君は霞さんを見ていました。

 

「霞さま……」

「な、凪、何か目が怖いんやけど」

「そうですか?霞さまは私の目が怖いと思われているのですね………」

「ど、どうしたん?」

「いいえ、別に………嬉しそうですね」

「え?」

「それでは、我々はこれより警邏を続かねばなりませんので、霞さまは一刀と一緒にへにゃへにゃしながら遊んでいてください」

「え?ちょっ……」

「ほら、沙和、行くぞ」

「ああー、一刀ちゃん、後で一緒に服屋いくのー」

「………」【是非断りたいの……】

 

 

霞さんが反論する前に凪は沙和を連れて街のあそこに行ってしまいました。

 

「あーー……」

 

霞さんは凪君が消えてしまった方を見ながらガクンと頭を落としました。

 

「………」

 

そして一刀ちゃんは霞さんの膝から降りてきました。

 

「……」『どうだった?』

「どうやったって……一刀のせいで凪に嫌な目されたやんか……うぅ……」

「……」『霞お姉ちゃんがボクを膝の上に乗せてへにゃへにゃしてたからでしょ?』

「一刀が自分で勝手に乗ったやろ!しかもウチへにゃへにゃしてあらへんわ」

「……」『でも凪お姉ちゃんにはそう見えた』

「うぅ………」

 

霞さんは口を出して恨みを込めた目で一刀ちゃんを見ました。

 

『ボクは魏の皆のことが好き。でも、皆がボクのことをどう思ってるかは、正直にどうでもいいよ』

「へ?」

「……」『ボクが膝の上に乗ると、凪お姉ちゃんや秋蘭お姉ちゃんみたいに喜ぶ人もいるし、霞お姉ちゃんや桂花お姉ちゃんみたいに嫌がる人もいるし、春蘭お姉ちゃんみたいにわけわからない顔いる人もいるよ。でもボクは皆の膝の上に乗ったり一緒に居ることが好き。だから、ボクは皆がボクを自分の膝の上から押し落とす前まではずっと膝の上に乗ってるの』

「どういうことなん?」

『……ボクはしたいことをするだけ。皆がどうしてそんな反応をするのかは、ボクは良く分からない。ただ、ボクがそうするのが絶対嫌といったらボクもそうしない。ボクは皆のことが好きだから』

「……うーん」

 

要は、「ボクが知るか。ボクはしたいからするだけ」という、凄く利己的な話ですが、実際、嫌でもそんな一刀ちゃんを無理矢理膝の上から押し落とす人なんていませんしね。

不思議なものです。

 

「じゃあ、どうして昨日はウチが膝に座ってて言ったのに、すわらんかったん?」

『あまり座りたくなかったから』

「そんな勝手やんか」

『子供の特権だからね』

「むむむ」

「………<<ぺこり>>」

 

突然、一刀ちゃんはそう霞さんに挨拶をしました。

 

「何や?」

「……」『あんまん、ありがとう』

「ふえ?あー!!」

 

霞さんはキョトンとして屋台をみたら、自分の分のあんまんがありません。

そして、一刀ちゃんの手には食べてないあんまんが一つありました。

 

「それウチのじゃん!」

「……」『罰金』

「意味わかんないわー。かえせー」

 

スッ

 

そして次の瞬間、一刀ちゃんはその場から消えてました。

 

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その日の夜、一刀ちゃんに昼のことを聞きました。

 

――どうして霞さんにそんなことしたんですか?

 

「……」【あのお姉ちゃん嫌い】

 

ー―へ?

 

【………】

 

いや、……珍しいですね。一刀ちゃんが嫌味を言うなんて。

 

ーーどうして、嫌いなのですか?

 

【だって……最近凪お姉ちゃんを見ると、霞お姉ちゃんのことばっかり言うんだもん】

 

………

 

――じゃあ、昼に霞さんの膝に乗ったのも……

 

【わざと】

 

この小悪魔めが……

 

 

 

・・・

 

・・

 

 

 

説明
個人的に霞に恨みはありません。
はい、ありませんとも…………………………関西弁難しすぐる。もう出番なくてもいいんじゃね?

ところで今日アジアcup韓日戦です。
今から見にテレビの前に行きます。
皆さんも応援しますか?本国(こっちの応援してくださいとは言いません)
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コメント
これぐらいはかわいいもんですねえ。(ZERO&ファルサ)
小 悪 魔 め!♪(運営の犬)
嫉妬かわいいな。次回楽しみにしてます。誤字、そんな存在→どんな存在(VVV計画の被験者)
関西弁は難しいですよね。わかりますわ。(きの)
嫉妬とは可愛らしいですね。霞さんはまだまだいるでしょう。(山県阿波守景勝)
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真・恋姫無双 恋姫 虚々 一刀ちゃん   沙和 韓国人 

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