、キミのとなりで四話
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第二章   公園デビュー?

 

 

 

――朝。

 

 妹のマナの声で目が覚める。

 

 ベットから離れられないでいると、ドタバタとうるさい足音とドアが開く音。

 

 いつものように布団を引き剥がされると、頭の上でなにやら騒ぐ。

 

 そして、俺はその騒音に耐えかねて、恋しいベットから泣々離れる。

 

 まだ眠い目をこすりつつリビングに降りれば、みそ汁の香りが広がり、目の前には朝食が並んでいる。

 

 テーブルには祖父母の優しい顔。

 

 何不自由のない生活。

 

 不満なんて何一つ無いんだと思う。

 

 それが昨日までの自分

 

 

 そして……

 

 カシャ―ッ!!

 

 窓から太陽の光が差し込む。

 

 春風に誘われ春の香りが桜の花びらと共に部屋へと迷い込んできた。

 

 どうやら窓が開かれ流れ込んできたようだ。

 

 

「さー目覚めよ諸君!!」

「んっ!?」

 

 爽やかなこの部屋にやけに暑苦しい声が響く。

 突然の声に驚き俺は半身を起こし声の主へと顔を向けた。

 

 

「ぬわっははは……起きたかタケっち」

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「あれ……銀治さん??」

 

「うむ、良く眠れたようだな!」

 

「え……っと、もう……朝ですか?」

 

 

 朝だと認識しながらも目をこすり窓の外へと視線を移す。

 

 

「そのとーりッ太陽サンサン、溢れよパワー!!」

 

「ぬわっ……え、何、何!?」

 

 

 両手を広げ更に声を張るギンジさん。

 

 すると、その声に驚いたのか優斗が飛び起きる。

 

 

「お前な……って言うか今何時ですか?」

 

「6時だが?」

 

「はやっ!!」

 

 

 そして――

 

 これが今日からの自分

 

 

 

 ジュ―……。

 

 朝食を作ろうと台所に立っていた。

 

 眠い目を擦りながら、それでも暖かな春の日差しに心を躍らせ「あぁ〜、一人暮らしを始めたんだな」と実感する。

 

 ご飯を茶碗によそいテーブルへと運ぶ。

 あ〜なんて清々しい朝なんだ……。

 

 って、現実逃避だぞこのやろー! 

 

 だいたい……。

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「うむ、ご苦労。

なかなか美味だぞタケっち」

 

 

 だいたい、ろくに寝もせず朝六時に他人の朝食まで作っているって……。

 

 そもそも何故ギンジさんに起こされ、朝早く飯を作ることになったのかと言うと。

 

 昨夜の歓迎会は22時過ぎくらいでお開きなったのだが、それから後片付けやら俺達で琴音達女性陣の送迎、などで気がつけば深夜の12時を過ぎていた……。

 

 結局優斗は結局俺の部屋に泊まった。

 

 優斗が止まることは知らなかったが……ここまでは良い。

 だが何故かギンジさんまで部屋に戻らず一日過したのだ。

 

 何と言うか「隣なんだから戻れよ」と突っ込みたくなったが、銀治さんの終始高いテンションに飲み込まれてしまい言えなかったのだ。

 

 挙句2時位まで呑み続け、6時に起こされるって……。

 そして起こされた後は……。

 

「で……そんな朝早くからどうしたんですか?」

「どうもこうも、朝の挨拶ではないかー!」

 

 うん、挨拶はされてないな。

 

 

「そんな事より、腹が減った!

飯を作るぞ!!」

 

 マジっすか……

 

 カーテン開いて叫んだと思えば飯っすか?

 

 

「……ZZZzzzzz〜」

 

「って寝るな優斗!

ずるいぞー!」

 

 

 俺の泣き言よそに寝た振りを決め込む優斗。

 何としても起きたくないようだ。

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「まータケちゃんだけでもよかろう。

レッツクッキングッ!」

 

 

 どうやらギンジさんは俺だろうが優斗だろうが自分の空腹を満たしてくれるならばどちらでもいいようで、起きない優斗を気にする様子もなく俺をリビングへと連行したのだ。

 

 俺はといえば、腕を捕まれ「俺も眠いから寝てます」なんて言える訳も無く、共用のリビングへと連れて行かれた。

 

 そのような経緯があり今こうして飯を作るはめになった俺がいる。

 あぁー断れない自分が情けない……。

 

 もうあれだ、今年は、今年こそはNOと言える自分になろう。

 

 

「それにしても、朝からよくそんなに食べますね……」

 

 

 実は今作っている食事といってもギンジさんの五杯目の食事……。

 五杯もお代わりされた上、オカズが無くなったからと作らされているのだ。

 

 タコさんウィンナーを……。

 

 もちろんウィンナーだけでは味気ないので、俺はフライパンの上に卵を落とし、塩コショウで味付けしながらタコさんウィンナーを二炒めだした。

 

 ちなみにギンジさんが食べているお米やウィンナーは共用部にある業務用冷蔵庫にあったものだ。

 

 なんでもギンジさん曰く、定期的に皆でお金を出し合って買い揃えているそうだ。

 

 

「しかしタケちゃんは、

クラシコでバイトしているだけあってなかなかの物だ」

 

「いや、作ってる側から食べないで下さいよ……。

後は皿に乗っけるだけでしたけど。」

 

「良いではないか良いではないか!

それより今日からクラシコの前を掃除しないのか?

そろそろ7時半になるが?」

 

 

 ……ん?

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 そうじ……?

 

 

「あっ……そう言えば、そんな約束したような?」

 

 

 いや……忘れていたわけではないが、まさか引っ越した次の日に言われるとは思いもしなかった……。

 

 さらに言えば部屋に足りない日用品や、昨日すべて空にされてしまった部屋の冷蔵庫を充実させる為、食料品を買いに行くつもりだったのだ。

 

 

「7時から開店であろう?」

 

うっ……。

 

 クラシコは喫茶店ではあるが自家製パンも売りの一つで、朝にサンドイッチ等の販売も行っている。

 

 しかしどうするか、昨日の今日というのもあり疲れが残っている。

 さらに言えば無理やり朝早くから起こされ寝ていない……。

 

 って、考えるまでもないよな……。

 

 ギンジさんのニヤリとしたその顔には明らかに「行くのであろう」と物語っている。

 

 どうやらその為に起こされたいたようだ。

 何というか、会ってまだ一日しか経っていないが喰えない人だ。

 

 

 ふー……。

 

 正直何時もお世話になっているから、掃除する事に嫌悪感は無い。

 しかしこれが毎日続くかと思うと先が思いやられる……。

 

 クラシコの掃除の前に俺はリビングを出て、部屋へ戻った。

 

 さて、行くにしてもまずは……。

 

 

「ほら起きろ、俺出掛けるから!」

 

 

 未だにぬくぬくと狸寝入りを決め込んだ優斗を叩き起こすという作業が残っていた。

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「えぇぇ〜、もう少し寝てる。」

 

「おぉぉーぃ〜!」

 

「ZZZZzzzzzー……。」

 

 

 こいつ……。

 あくまで寝た振りを決め込むつもりらしい。

 

 

「起きろってーの!」

 

「かぁぁー……。」

 

 おいおい……。

 

 支度をしなければならないため、服に着替えながらとりあえず足で突いて起こしてみたが……起きる気なし!

 

「ったく、もーいいや……。

取りあえずバイト行って来るから、

帰る時にでも鍵持ってきて!」

 

 

 何をしても起きる気の無い優斗を前にこれ以上やるのは時間の無駄だと判断し、結局は俺の方が折れた。

 

 

「あーぃ」

 

 コイツは……。

 

 眠ると言う行為を勝ち取った優斗は実に気持ちよさそうに布団にくるまる。

 

 起きる気ないがため仕方なしに鍵を頼んだが、寝たまま俺の方を見ずに返事とは良いご身分だ。

 

 あっ……

 

 

「そうそう、朝食置いといたから食べたきゃ食べて」

 

 

 ギンジさんの朝食を作る際についでに作っておいた御握りが目に入り、ついでのように付け足す。

 

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「おぅ!!」

 

 

 朝食と言う言葉に、先ほどとは打って変わって声のトーンを上げ親指を立てる優斗。

 

 人の部屋で狸寝入りを決め込み、食事だけは素直に受け入れるとは現金な奴だ……。

 

 まあいいや、取りあえずもう出なければ。

 

 

「んじゃー行ってきー」

「行ってらー……ZZZzzzzzz」

 

 

 クラシコへ走る最中、自分の行動を思い返してみると、起きない息子を起こしつつも食事を用意するって……。

 

「俺は優斗のカーチャンか!」

 

 と、ツッコミを入れたくなったがそこは深く触れないように部屋を後にした。

 

 

 クラシコはアパートから目と鼻の先ぐらい近い。

 近いのは分かっていたが、実際こうして来てみると改めてその楽さを実感する。

 正直実家からだと、行くまでが面倒だった。

 

 何せ家から大学まで徒歩、電車ならば一時間。

 

 50ccのバイクならば30分かかっていたのだが、大学とさほど変わらない距離を位置するクラシコは、家からだと流石にバイクでも面倒だったのだ。

 

 カラカラ―ン……。

 

 ドアを開けると鈴の音が店内に響き渡った。

 

 クラシコには入口が二カ所備えられていて、今入った正面に位置する入り口と、裏側にあたる桜木公園と隣接したテラス側の入り口だ。

 

 

 どちらのドアにも鈴が付いており、御客様が来るとすぐに分かる仕掛けになっている。

 店内からは香ばしい香りが誘い、正面には焼きたてのパンが並んでいる。

 

 

「おはようございまーす。」

 

「いらっ―‐あっ武弥さん!? 

おはようです、正面から入って来るのなんだか新鮮ですね」

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 店内に入るとそこにクラシコの制服に身を包む美雪ちゃんの姿があった。

 

 

「でしょ、俺もなんか変な感じ」

 

 

 今までは大学側である桜木公園を通ってテラス側から入っていた為、何とも不思議な感覚だ。

 

 

「それで今日はどうしたんですか?」

 

 

 俺が今日はバイトでは無い事を知っている美雪ちゃんは、客としてきた可能性すら考えていないらしく、朝早く訪ねてきた事に少し不思議そうな顔を浮かべている。

 

 流石に美雪にしても昨日の事(朝の掃除)は冗談だったのだろう。

 

 

「ほら……ちょっと掃除をね!」

 

「……あっホントに来てくれたんですね!」

 

「うん、偉いべ」

 

「はい、偉すぎなのです」

 

 

 二カっと表情を明らめる美雪ちゃん。

 思いのほか美雪ちゃんも喜んでくれている。

 ギンジさんに無理やり起こされはしたものの、これだけでも来て良かったように感じる。

 

 

「ちょっと待ってて下さいね!!」

 

「あっ、うん」

 

 

 どうしたんだろう? 一言掛けると厨房へと入っていく美雪ちゃん。

 

 

「――お父さーん!」

 

 あっ……。

 

 どうやら美雪ちゃんはここの店長であり、美雪ちゃんの父である朝岡 東(あさおか あずま)さんを呼びに行ってくれたようだ……。

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「どうでもいいことだが、レジ空……」

 

 

 ふと店内を見渡す。

 

 ブロッサムの心地よい香りをただ寄せながら、奥の数人の客がパニーニを口いっぱいに頬張り、話を弾ませている。

 

 

 注文しに来る雰囲気もなさそうだ。

 

 外は外で静かな日曜の朝。

 仕事が休みの人がほとんどの中、通勤途中に買いに来る客も居ない。

 

 厨房も直ぐだから問題ないと思うが、万が一客が来たら俺が対応しろという事なのだろうか。

 

「おうハガっちー! 

掃除しに来てくれたんだってなー?」

 

 

 そんな事を思っていると案の定直ぐに店長が顔を出した。

 

 東さんは長身でメリハリのある顔立ち、竹を割ったようなハッキリした性格でとても良い人なのだがかなりの親バカだ。

 

 美雪ちゃんと奥様の紗由里(さゆり)さんに手を出そうものなら客だろうがなんだろうが蹴り飛ばし、風邪を引こうものなら店を閉めこもりっきりで看病するほど前が見えなくなる。

 

 

「はい――流れで……今日は一応引っ越しの挨拶も兼ねてるんですけどね」

 

 

 実際挨拶に来なければと思っていたのでちょうど良かった。

 本来は昨日挨拶に来るつもりだったが、バタバタして来る事が出来なかった。

 

 まぁ……あれだ、あれだけ色々あったのだから仕方がないと言えば仕方がない。

 

 

「まーどんな理由にしろサンキューな!

桜並木があるのは良いが今の時期掃除が大変でな〜」

 

 カッカと笑う東さん。

 

 実際、今朝店に入る時も周辺の道には散った桜の花びらが積り、まるで桃色の絨緞の様だった。

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「それじゃー、着替えて掃除してきちゃいますね」

 

「おう、頼んだぜ」

 

「ありがとうございます、行ってらっしゃい」

 

 着替えに行こうとする俺に対し笑顔で手を振る美雪ちゃん。

やはり今日は来て良かった。

 

 

ガチャ……。

 

 しかし何だ……こう朝から何かするというのも悪くない。

 うららかな日差しはとても心地よく、空気は澄んでキラキラと輝いている。

 花壇や公園に咲く花は柔らかくそよいでいた。

 春だからというのもあるのだろうが、とても清々しい気分だ。

 

「あら、武ちゃんじゃない?

今日は早いのね。」

 

「おはようございます、そしていらっしゃいませ。

ええ、近くに越してきた物で……」

 

 

 声を掛けたのは、常連おばさま方の一人だった。

 

 

「あらまそうなの!?

じゃぁ今度の日曜に買い行こうかしら。」

 

「はい、その時はお待ちしております!」

 

 

 どうやら家族の朝食を買いに来たようだ。

 その後も客の出入りが思いのほかあった。

 

 正直休みの日は何時も11時頃にINすることが多かったので朝早くからもそこそこではあったが客の出入りが多いのに驚いた。

 

 さらに言えばここは大学の近く。

 

ヴゥォォン……

 

「あれ、タケじゃん!」

「マジじゃん、タケここでバイトしてんだ?」

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しばらくするとまた知った顔に声を掛けられる。

いきなりのバイク音で現れた男ども。そう、一応紹介しとくと大学の友達だ。

 

「まあな、バイク好きの友達AとBこそどした?」

 

 俺はそいつらの質問に答える。

 

「どうしたも何も客だよ!」

 

「ってかAとBってなんだよ!? 

これからツーリング行くからその前に腹ごしらえにきたんだよ。

一応言っとくと他にも来るがな」

 

 どうやら金蔓が、面倒な事に来てくださったのだ……って!

 

ヴゥォォンヴゥォォン……。ヴゥォォンヴゥォォン……。

 

おぃおぃ!

 

シグナスにシャドウ、CRFにBMW……って来すぎだろ!!

 

ってか一人ママチャリがいるぞ!?

たしかにあれもバイクといったらバイクだけど……。

 

 一貫性のないバイクが続々と駐車スペースに止められていく。

 これでは窓拭きとかやっている場合では……。

 

 今日はバイトに入っていたわけではないので、のんびり仕事をしていたのだがそれどころでは無いようだ。

 

 俺はすぐさま掃除道具を片付け店内に戻る事にした……。

 

 

 

「ありがとうございました。

またのおこしをお待ちしております。

……お待たせいたしました。

お会計1200円でございます。」

 

 

 カウンターでは美雪ちゃんがレジを打ち。

 

 

「すいませ―ん」

「あっはい、お待たせいたしました――」

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 俺はフロアーで出来上がった料理を運んでいた。

 

 店内に戻った俺は、急いでカウンターに付き大学の奴ら相手に美雪ちゃんと二人でレジを打つことになった。

 

 しかし残念な事に、客足はそれだけで留まる事はなかった。

 

 大学の奴らがバイク仲間と帰った後も、何故か次々とお客様が来て下さったのだ。

 その御蔭で俺はレジからフロアーに回るなどし、普通にバイトをしてしまったのだ。

 

 

「……やっと落ち着いた。」 

カウンターの陰にある椅子に座り一息つく。

 

「しかし混んだな……」

 

 

 お店的には嬉しい事なのだろうが、俺としては全くもって望まぬ展開だった。

 途中優斗が鍵を渡しに来た時に、あいつも働かせればよかったか……。

 

 大学の奴らが帰ったすぐ後に優斗が鍵を返しに来ていたのだ。その時ちょうど混んでいた為そそくさと鍵を返した優斗は帰ってしまったのだ。

 

 

「はい、お水です。」

「あ……、ありがとう!!」

 

 

 一息入れていると美雪ちゃんが水を持ってきてくれた。

 

 

「今日はホント忙しかったですもんね。」

 

 

 疲れた様子の俺に共感する美雪ちゃん。

 

 

「武弥さんお休みだったのにありがとう。」

 

「これくらい良いってことよ!!」

 

「でもまさか掃除に来てくれただけじゃなく手伝ってまでくれて。」

 

 

 お礼を言われ調子に乗った俺は、疲れた表情を隠し格好つける。

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「全然気にしなくてい言って!

これくらい朝飯前だから。」

 

「じゃ給料は別に要らないってことで。」

 

 

 突然厨房から顔を出す店長。

 どうやら俺と美雪ちゃんのやり取りを聞いていたようだ。

 

 

「いやそれは……」

 

「もう、お父さんッ!」

 

「冗談だよ冗談。

今日はサンキューな……というかグラッチェ」

 

 表情を買える事無く冗談を言う店長……。

 本気なのか冗談なのかが分からん。

 というかわざわざ言い変えなくても……。

 

 普段はほとんど使わないのだが急に思い出したかのようにイタリア語を使って来る時があるのだ。

 

 

「いぇいぇ……っあ、それと遅くなりましたが無事引っ越しもすみました。

この度はご紹介いただきありがとうございます。」

 

 

 俺はここだとばかりに引っ越しの挨拶へと話を持って行く。

 客も引いた今が一番のチャンスと踏んだからだ。

 

 

「おう気にすんな。」

 

 

 俺の言葉に気さくに返しながらも菓子折の包みをビリビリと破る店長。

 

 

「それ家の近くのだんご屋で買った奴なんですが、

これがなかなかうまいって評判なんで良かったら食べてください。」

 

 

 俺は更にお礼の気持ちを表す為、美雪ちゃんを含め家族そろって好きだと聞くアイテム『串団子』をレジ裏に忍ばせすぐに渡せるようにしていたのだ。

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「お団子!!」

「わるいなーありがた頂戴するよ!」

 

 

 案の定喜んでくれたようだ。

 

 

「ちなみに何団子ですか!?」

 

「みたらしも入ってるよ。」

 

 

 ビシッと親指を立てて見せる。言うまでもないがそれぞれ好きな味も調査済みだ。

 

「ありがとうです!」

「――では俺はこれで上がりますんで」

 

 今はまだ落ち着いているがオープン中。

 これ以上長いしていても仕方ないだろう。

 

「おうお疲れさん!」

 

「お疲れ様〜」

 

 労いの言葉を掛ける二人。

 

「お疲れ様です。」

 

 同じように俺も二人に労いの言葉を残しクラシコを後にする。

 

 しかし思ったより働いたな。

 朝から働いて、今では時計の針は四時を指していた。

 

 正直帰るタイミング自体は何度かあったのだが、その度に会話を楽しみタイミングを逃していた。

 

「武弥さーん!」

「ん……?」

 

突然の声に振り向く。声の先を見ると、お店から美雪が歩いてくる。

 

「ハァハァ……よ、良かった〜。

間にあいました!」

 

「ど、どしたの!?」

 

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「えっとですね〜、これを渡そうと思いまして」

 

 向こうから慌てて走って来たのだろう、そう言いながら、美雪ちゃんは俺に手提げ袋を手渡してくれた。

 

 

「これ……?」

 

「クラシコ特製のマグカップで〜す!

お父さんが持ってけって」

 

 

 美雪の言葉道理、袋の中には紙に包まれたマグカップが入っていた

 

 

「ありがとう。しかも三客も!!」

 

武弥はマグカップを手に入れた。

 

 

「ホントつまらない物ですが……」

 

「いやいや助かるよ、実用的だし!!」

 

 

 実際クラシコのマグカップは大きく量も結構入る。

 コップ自体二個くらいしか持ってきていない武弥にしてみればかなりありがたい。

 

 

「わざわざありがとね。っとそうだ!

これから食糧買いに行きたいんだけど、何処かいい店知ってる? 

出来れば日用品とかも買っときたいんだけど……」

 

「お店ですか?

ん〜〜……」

 

 

 左に首をかしげながら考える美雪ちゃん。

 

 

「近くだと桜木デパートですね」

 

「桜木デパートね……確かにデパートなら日用品も売ってるしね。

ありがとう、 じゃ明日バイトでかな?」

 

「はい、ではまた明日バイトで」

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「うん、また明日」

 

 俺は美雪ちゃんの質問に答え、名残惜しいが別れの挨拶を交わし美雪ちゃんの後姿を見送る。

 

「さてと……って……あれ、場所聞いてなくね!?」

 

 気付けば美雪ちゃんは店内の中……。

 ただ茫然とたたずむ俺。

 

「あ〜……やっちゃったなこりゃ……」

 

 わざわざクラシコへと聞きに戻るのは恥ずかしいと言う物。

 

 取りあえずギンジさんか誰かに……。

 いや、周辺を探索しながら見つけた店で買いそろえた方がいいだろうか……。

 

 アパートを横切り、足を止めた。

 実際クラシコから大学まで以外、ほとんどこの周辺に付いては知らない。

 

 先へと続く道を見つめ改めて思う。

 いい機会といえばいい機会だ。

 

 本当はさっさと買い物を済ませてゆっくりしたかったのだがどうした――。

 

「つんつん」

「のわっ!!?」

 

 突然背後から脇下あたりに刺激が走る。

 俺は声をもらし思わず飛び跳ねてしまった。そう脇への刺激に反応してしまったのだ。

 

 というか反応してしまうのは仕方のない事なのだ、人間の反射なのだから!! 

 だから今の自分の反応が恥ずかしいという訳ではない!

 ましては弱いという……。

 

 いや、第一「生命にとっての危機かもしれない」と錯覚された状態から逃れようとする自律神経の過剰反応が「笑い」にあたるが、今突発的ではあったが、声をもらし飛び上がるという行動になったのだ……。

 

 って俺は何を一人で! 

 ハッと頭の中にめぐる言い訳を抑え同時に脇をつついてであろう人物へと振り返る。

 

続く

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あとがき

 

 

初めまして、KADENです。

 

まずは、私の作品に目を通していただきありがとうございます。

 

物を書く事自体初めてで、実質この作品が私の処女作となります。

 

ここまで読んでいただいた皆様にはホント感謝です。

 

ただ、お見苦しい物をお見せしていたら、そこはごめんなさい。

 

まだ右も左も分からぬ新参者……この作品を通して、また皆さまよりいろいろと学んでいけたらと思っています。

 

 

 

さて、本作では要約武弥の引っ越しも終わり、2日目を迎える事になりました。

 

次回からはいよいよ武弥、そして武弥を取り巻く愉快な住人や友人が物語りを彩ります。

 

私自身、どのような物語になって行くのか楽しみです。

 

どうなって行くんですかね?

 

思えば私は友達に……

 

友「絵描けるの!?

それなら今ゲーム作ろうとしてるから、絵描いてくんない?」

 

K「え、遊び程度だけど……?」

 

友「あ、全然良いよ」

 

K「わかった〜、いいならいいよ」

 

 

と軽い気持ちで引き受けたことから始まり、何故か原画家からシナリオを描くようになり、それを小説に……。

 

人生って不思議ですね。

 

私がPCで絵やら背景やら描けてたら、実はこの作品がゲームになってたかもなんですけどね(笑)

 

 

それでは、ここまで読んで下さった皆様方に無上の感謝を感じつつあとがきも終えさせていただきたいと思います。

 

最後にライレンのショートコントで絞めていと思います。

 

それではライレンのショートコントです

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あとがきというか編集後記

 

どうも、らいれんです。

 

ライレンではなくらいれんです!

 

つかショートコントってwww

 

無茶振りだなぁおいw

 

 

まぁ、それはさておき皆さん聞いてください!

 

らいれんはやっとKADENさんにあとがきを書かせる事に成功しました!

 

もうね、作者のくせにあとがき書きたがらなかったんですよw

 

やっぱ、作品を知るためには作者の生の声って必要だと思うんですよ。

 

作品を読んで作者の人となりを知って初めてその作品を理解できるモノだとらいれんは思ってます。

 

 

なのにね……

 

KADENさんときたらメンドイだの、何書いたら良いか分かんないだのと散々ごねて4話目にしてやっと書いてくれたわけですよw

 

なに書いたらイイか分からないのはまだアレとして「メンドイ」は無いでしょう!?

 

メンドイは!

 

と散々説教もといOHANASIもとい説得しまして今日に至りました。

 

まぁこれ以上ごねても仕方がないのでこれまでにします。

 

最後に、支援してくれた人有難う御座います!

 

作者に代わりまして御礼申し上げます。

 

それでは御機嫌ようノシ

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