黒子……ですの。 |
「はぁ……結構、遅い時間になりましたわね」
まったく、初春のせいでこんな時間になるとは思いませんでしたの。
これは、初春にお仕置きをしないといけませんわね。
初春の我儘を聞かなければ、お姉さまとのアツアツな時間を過ごす事が出来たというのに。
「はぁ。なんてもったいな――」
「ふ、不幸だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「――っ!? な、なにごとですの!?」
誰かの叫び声が聞こえましたが、何か事件でもあったのでしょうか?
疲れているのも忘れて、声のした場所へと移動する。
そう。移動したわけなのですが、そこにいたのは――
「ふ、不幸だ……財布を落とすなんて……」
憎っくき類人猿が自動販売機の前で、唸っていたんですの。
お姉さまを誑かす類人猿の不幸。
他人の不幸で喜びを感じるほど、黒子は性格が悪くはないので少しからかってあげましょう♪
「あらあら、どうしたんですの? こんな所で頭を抱えて♪」
「どうもこうもジュースを買おうとしたら、財布を落とした事に気が付いて……って、誰?」
「な――っ!? わたくしの事を忘れたんですの!? この類人猿は脳みそまでお猿さんだったんですの?」
何度も会っているというのに、わたくしの事を覚えていないとは……
「ひぃっ!? す、すす、すいません。上条さんがバカなのは認めますけど、そこまで酷く言わないで
下さいっ!」
必死に謝る類人猿。まったく、どうしてわたくしがこんな相手に自己紹介をしないといけないのでしょう。
「わたくしは白井黒子ですわ。御坂美琴お姉さまに身も心も捧げる事を誓った乙女ですの」
「…………」
「な、なんですの……?」
どうして、そんな冷めた表情をしているのですか?
「あ、いや……別に女の子同士を否定するわけじゃないけど……わざわざ俺に言わなくても……」
「貴方だから言ったんですの!」
貴方がお姉さまに手を出さないように、先に釘をさしておきたかったんですの。
「そ、そうか……ところで俺に何か用か?」
「あら、用事が無いと話しかけてはいけないのですか?」
「いや、そういうわけじゃないんだが……俺と白井はほとんど接点がないだろ。それなのに話かけてきたから
少し珍しいなと」
「まぁ、わたくしだって、余程の事がない限り貴方に話しかけたいとは思いませんの」
ですが今回は特別ですわ。
「何やら、貴方から面白そ……いえいえ、可哀想な空気を感じとったので♪」
「言葉の訂正が出来てないし、そもそもそんな嬉しそうな顔で言われても、説得力がねぇよ」
「あら、わたくしとした事がとんだ失礼を」
悪いとは思っていませんが、形のうえだけでも謝っておきましょう。
「くそぅ……絶対にバカにしてるだろ」
「うふふっ♪」
もちろん、バカにしてますの。それほどまでに貴方が愉快ですから。
「ふ、不幸だ……」
あらあら、落ち込んでしまいましたの。
「…………」
どんよりとした空気を醸し出す類人猿。
「はぁ……仕方ありませんの。ジュースを奢ってあげますから、落ち込むのを止めてくださな」
「し、白井……?」
元々わたくしのせいで落ち込んでいるのですが、ここまで辛気臭い顔をされるとは思いませんでしたの。
「どのジュースがよろしいんですの?」
「あ、えっと……」
「早くしないと変なジュースを選びますわよ」
「それだけは勘弁してくれ!」
そこまで必死に言うのであれば、勘弁してあげますわ。
「――ぷはっ。ありがとな白井」
「何ですの急に」
ジュースを飲みほした類人猿が感謝の言葉を述べる。
「ジュースを奢ってもらって凄く嬉しかった」
「そ、そうですの……」
たかがジュースを奢っただけでここまで真剣に感謝をしなくてもいいのですが。
「あ、そうだ。今度お礼をさせてくれよ!」
「は? そんなの必要ありませんの」
感謝して欲しくてジュースを奢ったわけではありませんの。
「いや、それだと上条さんの精神衛生上よろしくないので、お礼をさせてくれ」
「わたくしは……」
「頼む! 白井」
土下座でもするかのような勢いで頼みこんでくる。
「はぁ。分かりましたの。お礼を受けさせていただきます」
「サンキューな白井。じゃ、色々と連絡先を知ってた方が便利だから連絡先を教えてくれ」
「はいはい。分かりましたの」
本当はこんな相手に連絡先なんか教えたくないのですけどね。
まぁ、仕方ありませんわよね。
「よし、じゃあ白井。後で連絡するわ」
「期待しないで待っていますの」
嬉しそうな顔で帰っていく類人猿。
最初とは逆のテンションで見ていておかしい気分になりますの。
類人猿……いえ、上条当麻……さんでしたか。
少し……ほんの少しだけ、興味が湧いてきましたの。
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ふおぉぉぉぉぉぉっ!? 黒子〜〜〜っ! はい。そんなわけで再び上条さんと黒子の話です。 前回のシリーズとはまた別物です。 |
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