転 恋姫?無双 第弐話
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 「桔梗様、ただ今戻りました!」

 「おお、焔耶か。なんだ遅かったではないか」

 

 そう言うと、桔梗と呼ばれた妙れ……美しいご婦人はカッカと豪快に笑いながら酒を煽った。

 

 「して焔耶、お主何故こんなに遅れた? それに、ふむ…何やら嬉しそうじゃのう」

 「あ、そうなんです桔梗様!実は帰路の途中でクマに襲われまして」

 

 ふむ、と眉を上げるが桔梗は端っから心配などして無い様子で焔耶に尋ねる。

 

 「無事に帰ってきたということは撃退したんじゃな」

 「はい、もちろんです!それと、ワタシ初めての人が出来ました!」

 

 桔梗が吹いた。豪快に煽った酒は、豪快にその口から飛び出し虹を創った。

 『それはどういう意味じゃ焔耶!』

 と、桔梗が質問をするまでも無かった。態度でその答えは明白に桔梗に語られた。

 眼前で愛弟子焔耶は頬を染め、恥じらうかの様に視線を反らす。

 

 その様は誰がどう見ても恋するソレ。

 館を出るまでそんな様相全く見せていなかったのに。

 

 「けほっ、して焔耶…お主……」

 

 まだ若い故、其方には疎いと思っていた愛弟子は、立派に大人の階段をすっ飛ばしている。

 恐らく10人にこの焔耶の反応について尋ねれば、10人共同様の答えを導き出すだろう。 

 

 「その相手とは?」

 

 先程の戸惑いを露ほどにも見せず、焔耶に正面から尋ねる。

 この辺りが桔梗から、熟ね……お姐さんキャラクターの風格が漂う所以だろう。

 

 「はい!北郷と甘寧という者です!」

 

 訂正、愛弟子は大人の階段を5段飛ばしで昇っていた。もはや昇天である。

 初体験から3人と言う焔耶を、ある種の羨望と将来を不安に思う母お……姉の目で見る桔梗。

 しかし名前を知っていたり、嬉々として話す様子から強姦では無かったのだろうと若干の安心をおぼえる。

 

 ん……、北郷…北……。

 引っかかりを覚えるその名に、しばし思考に沈む桔梗。 

 もしや、と思い当たる節を見つけ、焔耶に尋ねる。 

 

 「その者たち、近くの邑に住んでおるのか?」

 「はい、その様です!それで、桔梗様……」

 「ん、どうしたのじゃ?」

 

 「近いうちに皆で遊ばないかって誘われて、あの、半日お暇を頂けませんか?」

 「っ!」

 

 何を曲解したのか、桔梗の額に青筋が走る。

 手に持っていた杯を砕かんばかりに握り締め、その肩は怒りに震える。

 

 「あ、あの桔梗様?」

 

 焔耶が不安そうに声を掛けるが、桔梗は思考を巡らせている為に聞こえていなかった。

 

 

 

 北家の性に、近隣の邑、そして一緒に出た甘家の性。

 将来を有望視され有名な少年が、まさかこの様な行いを……

 

 何も知らない焔耶に漬けこみ、初体験を奪いそれに飽き足らず、

 “輪姦”しようと企むとはな……いい度胸だ。

 この厳顔の愛弟子を手籠にし辱めようとはな、舐められたことよ。

 

 

 

 恐ろしいまでに誤解される一刀であった。

 

 

 「ふむ、良いだろう」

 「本当ですか!? じゃあ早速」

 「但しその前にだ」

 

 桔梗がニヤリ、とほくそ笑む。

 

 「儂も一度その“初めての人”とやらに会ってみたいのじゃが……」

 

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 「う、うう……よしっ、さあ行くぞ!」

 「一刀ぉ……いまさらだけどさ、なんで私達呼び出されてるの……?」

 

 立派な城門の前に佇む一刀と思春。

 気合を入れ直したものの、既に青い顔に戻りつつある一刀。

 思春に至っては完全に半泣きで一刀の腕に掴まっている。

 

 「本当いまさらだな……もう此処まで来たんだし、行くよ思春!」

 「あ、待ってよー!」

 「一刀様、落ち着いてください」

 

 

 

 事の発端は4日前。

 焔耶と出会った翌日の事だった。

 

 紫苑より課された通常の3倍の課題にひいひい言いながら取り組んでいた時の事である。

 

 「認めたくないものだよ、若さゆえの過ちという奴を」

 「突然どうしたのですか一刀様?」

 「ん、なんとなく言わなきゃいけない気がしてさ」

 「……はぁ?」

 

 その時だ。どたばたと騒がしい足音が近づき、部屋の前で止まったかと思うと扉が壊されんばかりの勢いで開かれた。

 

 「たたたたた大変一刀!太守ちゃんからお呼び出しが届いて焔耶様に書状を受けたの!!」

 「とりあえず落ち着け」

 

 尋常じゃ無い位慌てた思春が部屋に飛び込み、その後ろから「甘寧様っ、お待ちをっ〜!!」と侍女の情けない声が聞こえる。

 

 「はい思春様、深呼吸ですよ。吐いてー、吸ってー」

 「深呼吸だね!ふぅー、っげほっ!ごほっ!」

 「先ず吐かせちゃ駄目だろ……」

 

 咽る思春にお茶を差し出し、やれやれと見守る一刀。

 

 「あら、間違えましたね。思春様、ひっひっふー、ひっひっふーです」

 「それお産の時だろ……。思春もやらなくて良いから!」

 

 ひっ、と息を吐いた思春を止める一刀。

 ニヤニヤと笑う紫苑を見て一刀は、こりゃだめだと内心ため息を吐いた。

  

 「さて、落ち着きましたね思春様。それでは慌てて来た理由をお話し願えますか?」

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 「さて、落ち着きましたね思春様。それでは慌てて来た理由をお話し願えますか?」

 

 無論、紫苑がからかっていただけだと分かっている一刀はジト目で紫苑を睨む。

 しかしすっかり計算尽くの行動だと信じてしまった思春は紫苑に尊敬のまなざしを送っている。

 

 そんな視線達をさらりと受け流した紫苑は、ようやく落ち着いた思春に声を掛ける。

 本題を思い出し、またもや慌てた思春は急いで一刀に向き直ると、

 

 「えっとね、えっと、そう!焔耶ちゃんから私たち当てに書状が届いたの!」

 「良かったじゃん。それで?」

 「その先が凄いの!焔耶ちゃんってば太守様のお弟子さんだったみたいでね」

 「へぇ…焔耶って偉かったんだな。ずずっ……ふぅ」

 

 茶で一息入れた一刀は、視線で思春に続きを促す。

 

 「それでね、興味を持ったらしい太守様から私たちに直々に会いたいって言われたらしいの!」

 

 ブバッ!と一刀がお茶を噴出した。無論正面に居た思春は甚大な被害を受けた訳で。

 

 「ちょっと一刀!汚いってば!」

 「そりゃ驚きもするって……太守様からお呼び出しが直々にかかるなんて言われたら、ねぇ」

 「で、どうするの?」

 「どうする、って……呼ばれた以上出向かない訳にはいかないしなぁ……紫苑はどう思う、…紫苑?」

 

 紫苑は驚きのあまり停止していた。

 どうやら思春の言葉が紫苑の処理速度を超えたらしい。

 

 「……っあ、ど、どうされましたか一刀様?」

 

 

 一瞬遠くを彷徨っていた紫苑が帰ってくる。

 話は聞いて無かったようで、慌てた様子で一刀に尋ねてきた。

 

 「だから、この書状の事どう思うかって」

 「えっと、それならば一応ご主人様に話してみるのが良いかと」

 「やっぱりかー…、あんまり気が乗らないけど、間接的には焔耶の頼みだしなぁ……」

 「そうだよ一刀、焔耶ちゃんにも会えるんだし」

 「じゃあ話してみるよ。紫苑、助言ありがとね!」

 

 そう言って、一刀は思春を連れ、事の内容を父に報告した。

 

 『…って事があって、それで太守様に……』

 

 一刀が報告すると、最初こそ父は驚きの表情を浮かべたものの、

 直ぐに喜びを顔いっぱいに浮かべ、らしくないくらいに歓喜の声をあげた。

 

 自慢の優秀な一人息子。

 そんな一刀が、太守様より直々に書状を承ったのだ。

 それを喜ばない親が居るだろうか、いや、居る筈がない。

 

 話は直ぐに邑じゅうに広まり、その日の晩には北家主催の盛大な酒宴が開かれるほどだった。

 その席でも当事者の一刀と思春には邑中の人たちから祝辞の言葉や挨拶が送られ、期待を一身に受けた。

 

 そして翌朝、昨晩の騒ぎが抜けきらぬ様子の父や家の者に見送られ、一刀と思春、お供に紫苑が連れ添い邑を出発したのだった。

 

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 回想終わり。

 そして現在に至る。 

 

 

 

 「済みません、書状を受けて来たのですが……」

 

 紫苑が書状を手に、門兵へ声を掛ける。

 

 「どれどれ、あー、これは厳顔様の書状だな」

 「え、太守様の印が押してあるように見えますが……]

 

 紫苑が不思議そうにそう尋ねると、門兵は慌てた様子で訂正をした。

 

 「あ、スマンね。大差無いから気にしないでくれ。お招きする部屋が変わるくらいだからさ」

 

 そう言うと、門兵は扉を開き一行を招き入れた。

 

 

 

 

 「厳顔様、北郷様が到着しました。」

 「ご苦労。この部屋へ通せ」

 

 はっ、と敬礼し、兵士は部屋の外へと下がる。

 そして彼と入れ替わりに、先ず十代前半であろう少年と少女、続いて従者らしき女性が部屋へ入る。

 

 「失礼します」

 

 一刀と思春は拝礼の姿勢をとると、厳顔に向き直った。

 

 「書状を承りました北郷です。」

 「お、同じく甘寧です」

 

 「ふむ、わざわざ遠路ご苦労だった。楽に構えよ」

 「はっ」

 

 恭しく頭を垂れると、一歩下がり再び向き直る。

 

 「それで、本日はどのような用件でお呼び出しを受けたのでしょうか?」

 

 一刀が疑問を口にする。

 

 「はっは、そう急かすでない。女子に持てぬぞ?」

 「厳顔様、私はその様な戯言を聞く為に呼ばれたのでしょうか?」

 

 一刀の表情が厳しいものに変わり、その様子に厳顔はほぅ、と声を漏らす。

 

 「ふむ、中々これで度胸があるではないか。……さて、それでは本題に入ろうか」

 

 コクリ、と思春から唾を呑む音が聞こえる。

 静まり返った部屋には、やけにその音が響く。

 

 「魏延……いや、焔耶と言った方が良いかの。書状にもあったように、あ奴は儂の一番弟子なのじゃ。…此処まで言えばおのずと話は見えてくるのではないか?」

 「それは存じておりますが、それと今回の件がどうつながるのでしょうか?」

 

 桔梗は一刀の態度に聊か失望を感じると、スクッと立ちあがり前に立つ。

 

 「……ふむ、お主シラを切るつもりか?」

 「切るシラが解らない以上、切る切らない以前の問題と存じ上げます」

 

 先ほどと打って変わって威圧的な桔梗に、一刀は一瞬たじろぐも直ぐ持ち直すと桔梗に挑戦的な目を向けた。

 そんな二人を横目に、あわわはわわと慌てる思春。

 

 「ふむ、よかろう。ならば我が弟子への非礼その身で償うと良い!」

 

 桔梗はその腰に掛けていた剣を抜くと、目にも止まらぬ速さで一刀に切りつけた。

 風を切る音が一刀に迫る。控える二人が、次の瞬間おこるであろう惨劇に息を呑み──

 

 

 桔梗の剣の切っ先は、一刀の頬寸前で止まった。

 

 

 「……お主、何故避けなんだ?」

 「…はっ。私如き、武官でも無い者が厳顔様の切っ先など避けられる筈無く、無様な様を晒してまで天命に抗おうとは思わなかった故に」

 「本心を言えぃ!」

 

 拝礼の姿勢をとり答える一刀を桔梗は怒鳴りつけた。

 何故なら、切られるその瞬間まで一刀は、一瞬たりとも眼をそらさず桔梗を睨み続けていたからだ。

 桔梗も、若くとも一介の将。その将に殺気を当てられ、それに微動だにしない小童。

 

 それは尋常では無い事。

 桔梗も、一刀が殺気に当てられへたり込む等年相応な無様な様をする、と想像していただけに、なおさら驚き内心舌を巻かされた。

 

 「……俺が抵抗しても、ロクなことは起こらないだろ。それで思春や紫苑が危機に晒される位ならと思っただけだ」

 

 ぶっきらぼうに、桔梗を睨みつけたまま生意気な口調で答える一刀。

 

 「っく、はっはっは!お主、字は何と言う?」

 「はっ。興斗と申します」

 

 途端に態度を改めると、最高の礼で切っ先を向けたままの桔梗に答える一刀。

 

 「ふむ、お主「あーっ!! 桔梗様も一刀も何やってるんですかっ!?」

 

 緊迫した空気を打ち消すように、けたたましく焔耶が部屋に飛び込んできた。

 

 「焔耶ちゃんっ!」

 

 思春が嬉しそうに飛び付き、直ぐ困ったような表情になる。

 

 「ん、思春どうしたんだ?」

 「実は……」

 

 

説明
第参話投下です 第参話と繋がっているので、あまり桔梗様に怒らないでください&もし好きなキャラへの扱いで気分を害された方が居たらごめんなさいorz
 
相変わらず一部だれてめぇですがご容赦を
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コメント
嘘を付かない純粋な焔耶だからこそ? そのまま信じてしまった桔梗の勘違いに、お、、姉心w 桔梗の持ち味でてると思います!(テス)
桔梗さん落ち着けwwwそれにしても一瞬赤くて三倍の人が見えた気が・・・。(kabuto)
先ずはよく人の話を聞きましょうよ・・・。太守なんだからさ、桔梗さん。(西湘カモメ)
桔梗さん、さすがにこれは一方的過ぎるでしょう……ボロクソ言われても仕方ないレベル(よしお)
本気なら轟天砲使うだろうから試しただけでしょう。そして桔梗好きですが無問題。(O-kawa)
1p10行目 「ー個の様な行いを……」→「ーこの様な行いを……」 別に謝る場面までいってないだけではないのでは?下のお三方。 それはさておき・・・思春・・・かわいっ(よーぜふ)
皆がぼろくそ言ってる・・・・・・・よく言葉の理解を聞かなきゃそこからいろいろと問題がでるよなぁ・・・・・(黄昏☆ハリマエ)
そうだね謝ろう加齢臭(赤字)
ヒトヤ・・いいすぎだよ♪っね!オ バ サ ン!☆(運営の犬)
誤解解けたら謝ろうねクソババァ(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
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恋姫 思春 一刀 桔梗 焔耶 紫苑 オリ設定 

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