極楽幻想郷(妖) その4
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「……さっきからなんなのよアンタたちは?」

 

「おいおい霊夢、そう殺気立つなって。危ないなぁ……」

 

イライラとし始めた霊夢に抑えるよう頼む魔理沙だが、これっぽっちも霊夢の耳には届かなかった。

 

霊夢のイライラの原因は、ついさき程から周囲を泳ぐように飛ぶ三人の人影にあった。

 

最も地上から遠く離れた場所の、しかも明らかに空を飛んでいる時点で人間ではないのは一目瞭然なのだが。

 

「さっきから攻撃、はしてこないつもりね。一体何なのかしら?」

 

「でも武器っぽいのは構えてるよ?」

 

「あれは楽器ね。武器ではないわ」

 

周囲をただ飛んでいる三人組を観察しながらアリスがそう呟くとチルノは指を差しながら口を挟むが、アリスの解説に魔理沙はチッチッと指を振りながら帽子を人差し指で上げる。

 

「アリス、世の中にはマシンガンになったり、強化スーツの隠し場所のギターもあってだな……」

 

「そんなギターが存在するもんですか。と言うかあなたは黙ってなさい」

 

魔理沙の言葉を一刀両断するアリスは溜め息を吐きながら霊夢に視線を移す。

 

「で、アンタらは一体なんなのかしら? 場合によっては退治から殲滅に早変わりするわよ」

 

「どちらにしても張り倒すつもりなのは変わらないじゃない……。

そこの三人組、さっさと名乗った方が身のためだと思うわ」

 

腕を組んで三人組を睨みつける霊夢の姿に、三人組の身を案じたアリスは説得する事に決めたのであった。

 

「名を名乗るほどの者ではないけど、あえて言うなら、私が長女のルナサ・プリズムリバー」

 

「私は次女のメルラン・プリズムリバー」

 

「そして私は三女の三波○夫でございまー「「とうっ!!」」ぐはっ……冗談です、リリカ・プリズムリバーです……」

 

二人の姉によるツッコミを喰らってシクシクと涙を流しながら自己紹介をするプリズムリバー三姉妹に霊夢は冷ややかな視線を送る。

 

「で? 漫才はもう間に合ってるんだけど?」

 

「いや私たちはトリオ漫才ではなく楽団なんですが……」

 

「楽団? 三人なのにか?」

 

「気持ちさえあれば、何人でも楽団になるんだよ。まぁ一人だとソロだけどねー……」

 

三姉妹のやり取りが霊夢たちを「レッツゴー三姉妹」と認識している誤解を解いて、ようやくルナサの話が進む。

 

「私たちこれからライブの練習を行うんだけど、良かったら聞いて感想を聞かせて欲しいのよ」

 

「つまり私たちに観客になれってことか?」

 

「そういうことー♪ 話がズレにズレたけどやっと本来の話題に辿り着いたね」

 

リリカが口笛を吹きながら指を鳴らす。元はと言えばあなたのせいでしょと二人から総ツッコミを受けてる間、魔理沙たちは円を描くように集まって相談を始める。

 

「どうする? 私は別に聞いてもいいと思うんだが……」

 

「あたいはライブに興味があるから賛成!」

 

「罠……の可能性は無いわね。まぁ音楽かお笑いかは知らないけれど良いんじゃないかしら?」

 

「……タダなら見るわよ」

 

何とか意見がまとまり、了承の意を三姉妹に伝えると、すぐさま準備にとりかかりこれから始まろうとしていた。

 

「それじゃ、いくわよ。準備は良いわね?」

 

「大丈夫よ、姉さん」「こっちもOkよ」

 

「せーの……「「私たちの曲を聞けーーーーーっ!!」」」

 

「歌じゃないのかよ!」

 

魔理沙のツッコミがかき消されるようにライブが始まる。

 

もう異変解決とか無視ですか、そうですか……。

 

 

 

一方その頃地面に落とされた横島はと言うと―――

 

 

 

「畜生……アイツら置いて行きやがった……! 許さん、絶対に許さ……っえくしょん!」

 

歩きながら横島が呪詛を呟くがくしゃみによって中断される。

 

勿論横島が呪いなんて使える訳も無くただの恨み事でしかない。

 

(妖)その3にて、サイキックソーサーの上で器用に跳ねていたところをチルノから横に退かされそのまま地面へと落下し、先程復活して霊夢たちを追いかけている最中である。

 

「……もう俺帰ってもいいんじゃないか……?」

 

ボソッと横島が呟いた一言は彼の脳内を一瞬にして駆け巡る。

 

『目的のメイドさんの姿も見えないし、もう神社に戻って炬燵に入っていた方が良くないか?』

 

『でもチルノとか見捨てられないだろ?』

 

『……人の事を盾にしようとする連中だぞ?』

 

『よし、帰ろう』

 

脳内で天使と悪魔の鬩ぎ合いは悪魔が優勢に立ち、天使が一応の反論を試みるが今までの行動からしてすぐに折れた。

 

「そーだよなー。別に俺必要ないもんなー! よし帰ろう、すぐ帰ろう!」

 

くるりと身体を反転させて後ろに向かって全速前進しようとしたところで一瞬目に映ったのは人影だった。

 

まぁ今までの出会いから碌な事にはならんだろうなーと思い無視しようとしたのだが、ある一部分を横島の目が捉えた。

 

(アレは何だ!? What? Bust? おっぱいっ!!)

 

このクソ寒さだと言うのに薄着……と言うか着物越しでも強調する様にその存在を圧倒的にまで誇示するかのような質量の谷と山に、もう碌な事とかもうそんなの関係ないとばかりに横島はすぐに身体を戻した。

 

ある山男はこう言った「なぜ登るのか? そこに山があるから」と。

 

(なぜ飛び掛かるのか? そこに――おっぱいがあるから!)

 

狙いを定め、目の前の人影――女性との距離を確認し、ゆっくりと身体が動く。

 

「そこのお前さん。悪いんだけど、この辺りにあまりサボ……仕事に来ないからさ、良かったらアタイに道を教えて――って」

 

「生まれる前から愛していました――――ッ!!」

 

もう邪魔な防寒具とかその他諸々(ただしパンツは残す)を脱ぎ捨て、横島は勢いよく飛び掛かった。

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極 楽 幻 想 郷 (妖)

妖々夢編 その4 「死神さんがご用心」

 

 

 

「……何でワイはパンツ一丁でこのクソ寒い中雪の上で正座してるんでしょーか?」

 

「お前さんが勝手に脱いだからだろう……」

 

ボコボコに殴られパンツ一丁の姿のまま正座をさせられ、首筋に鎌を当てられながら横島はさめざめと涙を流した。

 

「堪忍やぁ、仕方なかったんやぁ!

 

ここ最近出会うのが設定年齢不明だけど手を出したら豚箱行きが確実なんばっかで、ついさっき美人さんと出会ってテンション上がったところだったんやぁ!」

 

「いや飛び掛かるお前さんが悪いだろ、そりゃぁ」

 

「その服の上からでも自重しない誇示を続ける二つの幸せがワイを色香に惑わせたんやぁ!!」

 

「あのねぇ人が気にしてる事を……」

 

女性から拳骨を落とされぐへぇと蛙が潰れる様な声を出した横島はすぐに必死な表情で復活した。

 

「スイマセン、マジで謝りますんでこれ以上は首とそこから下がお別れしちゃうんで止めてください」

 

鎌が首筋に当てられていた事を忘れてうっかり下に動いて薄皮一枚切れたことで思い出したからである。

 

「……はぁ。何でアタイこんな事になってんだろ……」

 

横島に当てていた鎌の刃の部分を地面に付けて、女性は溜め息を吐きながら呟いた。

 

うんざりとした表情のままで横島を眺めると、首筋から鎌が離れた事でホッと胸を撫で下ろしたが、女性の持つ鎌に注目する。

 

さっきまで気にしてはいなかったのだが、もしやと思い尋ねて見る事にした。

 

「あのー、もしかして貴女様は……」

 

「ん? あぁ、見ての通り死神さ。通りすがりのね」

 

鎌を持ってるだけで死神……と判断するのもどうかと思うが(でも実際真ゲッ○ー1もデ○サイズも死神っぽいし)、死神と対面した事のある横島は疑問に思った事を口にした。

 

「あのー、死神って骸骨の顔をしてるんじゃないんスか?」

 

「あぁ、あれは"外"のだね。顔を見せる様なもんじゃないからね、上の方が面を支給しているんだよ。

 

ちなみにアタイは死神と言っても、まァ……三途の川の船頭さ」

 

「ふーん……三途の川には何度かお世話になってますけど、お姉さんみたいな美人さんには会ったことが無いッスねー」

 

「……面白い人生してるね、お前さん……」

 

困ったような表情をしたまま、通りすがりの死神は横島へと好奇心の視線を向けるのであった……が、すぐに目を背けた。

 

「……と、とりあえず服をさっさと着ておいてくれ。アタイはその辺で見ないでおくから」

 

森の方向を指差し横島が声を掛ける暇も無く、さっさと隠れてしまった通りすがりの死神に横島はさっさと服を着る事にした。

 

着替え終わった横島が死神さんを呼ぶと、死神さんは木陰から顔をこそっと出して一度確認したうえで現れた。

 

「そんなに慎重にならなくても……男の着替えなんて一瞬で終わるもんスよ」

 

「その一瞬で目にも入れたくないような光景を見たくないから確認したんだよ!」

 

言わせるな恥ずかしい!とばかりに横島の頭を叩く死神さん。

 

当の横島は叩かれ損な気もするが、死神さんの可愛らしい反応を見れてちょっと嬉しそうだったりする。

 

「こ、コホン。まぁ自己紹介が遅れた気もするけど、アタイの名前は小野塚小町(おのづかこまち)。役職はさっきの通りさ」

 

「俺は横島忠夫ッス。よろしくお願いします小町さん!」

 

「短い付き合いになると思うけど、とりあえずは……まぁよろしく頼むよ」

 

差し伸べた手を横島からギュッと握られちょっと困ったような表情をする小町。

 

横島はガシッと手を握ってもう掴んだら離さない!という勢いである。

 

「……あの、離してくれると嬉しいんだけど……」

 

「離しません! たとえこの身が滅びようとも貴方を掴んだこの腕だけは!

 

そしてできればそのたわわな胸を掴m「せいっ!!」ぅすかっ!?」

 

思わず口に出した欲望に素直な一言は全てを言う前に小町の拳が横島の顔に減り込んだ。

 

「……頼む人、間違ったかなぁ……」

 

横島の手を離して、額を押さえて酷く後悔の表情に満ちたまま小町はそう呟いた。

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「で、小町さんはどこに行くつもりなんスか?」

 

「うぉっ!? いくらなんでも復活早すぎだよ!?」

 

「はっはっはっ……! 身体が頑丈なのが取り柄なんで。よく肉の壁にされます。

で何処に行くんですか?」

 

傷一つ無い状態のまま無反動で起き上った横島に驚愕を通り越して若干引いた様子を見せる小町だったが、ブンブンと頭を振って意識を変えながら、自分が行く場所を指差しで教える事にした。

 

「……この先にある冥界の屋敷さ」

 

「へぇ、この先にお屋敷……ん? 冥界?」

何となく嫌な単語に恐る恐る小町に確認をとってみるが、小町はただ頷くだけだった。

 

「な、なしてそんな場所に……?」

 

「まぁ、上司からの命令でね。

 

ちょっと幻想郷の"今の状態"について詳しく説教したいそうだ。あの人も仕事熱心だこと……」

 

空を――今も降り続ける雪を指差しながら、小町は愚痴を零すように溜め息を吐いた。

 

「"今の状況"って、この暖冬なんて関係ないくらい寒春ってレベルじゃねぇ季節のことッスか?」

 

「まぁね。どうも、冥界のお屋敷のお嬢様が"春"を奪ってるらしいんだ」

 

「奪うって、どうやってッスか……?」

 

「あー、うん……そりぁ、アレだよアレ。とにかくアレなんだよ、きっと」

 

どーやら小町も知らないらしい。横島は深く突っ込むのは止めた。

 

「奴さんも何か目的あって異変を起こしたみたいだけど。まぁ止めないといけないからねぇ……博麗の巫女も動いてるしね」

 

「アイツって役に立つんスか?」

 

「信じられないかもしれないけど、妖怪退治やら異変解決を今まで承っていたのは あ の 巫女なんだ」

 

バッサリと一刀両断する小町に、横島はそうなんスかと悟ったように頷いた。

 

「と言う訳で、そろそろ遊びは止めましょうって訳だ。

 

私がここにサボ……仕事しにきたのはよく分かったかい?」

 

「いや、まぁ何となくは……。死神って色々と丁稚みたいなものなんスね……」

 

「え。あ、あぁ。忙しいんだよ死神は。

 

ここ最近、迎えに行った奴かの話だと大量らしくてね、お陰で三途の川の船頭も休む暇も無しなんだよ。

 

おっと、ところで横島。アンタは空を……飛べる訳ないね。

 

やー残念だ、折角早く終わらせようと思ったんだけど、同行者が空を飛べないんだったらアタイが合わせるしかないなー」

 

このままだと仕事に関して深く突っ込まれそうな気がして、小町は露骨……と言うか急に話を掏り替えようとする。

 

一方の横島はと言うと。

 

「俺に合わせてくれる……? こ、小町しゃぁぁん!? それはまさか、愛の告白と受け取って良いんですね!?」

 

「なんでそうなるの!?」

 

壮絶な方向に勘違いし、そのまま小町に飛び掛かって迎撃されるのであった。

 

「あーもぅ、白玉楼に着く前にアタイの貞操が奪われてないか心配だよ……奪わせるつもりは毛頭ないけど!」

 

「堪忍やぁ、仕方なかったんやぁ! あの流れで言ったらイケる! と思ったんやぁ……!!」

 

「男がそんなに泣くんじゃないよ……そもそも泣きたいのはこっちの方なのに、なんでこうなったかなぁ……」

 

小町は、「サボらずに仕事しとけば良かったかなー」と微塵にも思ってもいない事を呟きつつも、未だに嘆き続けている横島の首根っこを掴んで引き摺りながら、雪道を歩き始めるのであった。

 

 

 

つづく。

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あ と が き

 

遅くなりましたがあけましておめでとうございます。

 

え? MH3をやってて遅れた?

 

いやだなぁ、してませんよ。

 

スパロボとシレン、そして怪獣バスターズですよ(ぉぃ

 

それでは今年もどうかよろしくお願い致します。

-5ページ-

 

ここから先おまけ。

 

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お ま け

 

阿求「皆さん初めまして。『極楽トゥナイト』のお時間となりました」

 

霖之助「このコーナーでは、極楽幻想郷でのキャラ紹介など色々な事を取り扱うつもりです」

 

阿求「メインパーソナリティは私こと、稗田阿求(ひえだのあきゅう)と」

 

霖之助「スポンサー兼ADの森近霖之助(もりちかりんのすけ)でお送りするよ」

 

阿求「では時間も限られているので早速キャラ紹介といきましょう」

 

霖之助「今回は霊夢だね。皆の知っての通り、霊夢は「東方project」における主人公(自機)だ。

 

作者は最初、霊夢の二次創作的イメージから美神令子に似てるかな、と思った事から極楽幻想郷の構想が始まったんだ」

 

阿求「それ以外にも色々とありますけどね。主に動画や他のSS的に」

 

霖之助「まぁその辺は置いておこう。

 

極楽幻想郷での立ち位置は『主役』ではあるが、『主人公』ではないんだ。あくまでも横島君が主人公だしね」

 

阿求「横島さん視点の「東方project」のストーリーを追う、と言うのが作者の目標です。

 

また原作通りに進まない、キャラがおかしい場合もありますが、その辺りは二次創作としてご了承ください。

 

……と言う所でお時間がきてしまいました。

 

このコーナーは作者の気まぐれで随時更新いたします。ご要望・ブーイング、その他色々……何かあればコメントをお願いします。

 

それでは皆様、短い間でしたが『極楽トゥナイト』をお送りいたしました。お相手は稗田阿求と」

 

霖之助「森近霖之助でした」

 

二人「「次回もあれば宜しくお願いします」」

説明
あけましておめでと……あれ?もう遅い?
と、とにかく今年もどうかよろしくお願いします!
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コメント
更新速度がなぁ・・・、ま、ちゃんと続いている分ましですね。失踪したのかと思ったけど。此れからもぼちぼち、頑張って下さい。(zendoukou)
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