空の果ての境界線 |
青、白、赤。見渡せばそこにあるのは、遥か高く地平線の彼方まで広がる広大な空だった。空はいつの時代も俺たち人間を見下ろし、時に暖かく時に冷たく包んでくれていた。草木で俺たちを癒してくれる大地が母だと言うならば、空は父と言っても過言ではないだろう。狭間に立つ俺たちは大地と空の子供と言った所か。もちろんそれは人間に限らず虫も鳥も、あらゆる地球上の生きものは大地と空の子供なのだ。
「詩人なんだね」
「夢見がちな男、って意味の皮肉?」
「まさか」
彼女は手を軽くあげて"やれやれ"といった顔を俺に向けると、俺と同じように空を見上げた。東側は既に薄い紺色に染まりはじめていて、一番星も見える。西側は日が落ちかけていて雲が赤く染まって見えた。彼女の顔も太陽のせいで赤くなって見える。
「太陽が昇らなくなったらどうなるか知ってる?」
「地球上が暗くなるね」
「それだけ?」
「いやまさか。池とかが凍るし発電所だって止まる」
「あとは?」
「そのうち人間を含めた生きものが死ぬ」
「大地と太陽の子供が?」
「そう、だね?」
彼女は意味深に何度か「そっか」と頷いた。質問の意図がわからず俺は疑問符を浮かべていると、それに気付いた彼女は小さく微笑む。
「つまり、私たちは兄弟と一緒に死ぬってことだね」
広い目で見れば、だけれど。確かに俺の持論とその話を合わせれば彼女の言った通り兄弟と一緒に死ぬ事になる。だからといって実際に血の繋がりのない人を兄弟と呼ぶのは違和感が拭えないな。苦笑いしてそういえば「人間の始まりはアダムとイヴなんだから、本当薄れて少ししかないけど血の繋がりはあるよ。ほら、漸近線はどんなに進んでもx軸に触れないのと一緒で、ギリギリのギリギリ、さらにもっとギリギリな所で繋がりがあるんだから」と寡黙な彼女にしては珍しく説明をされた。なるほど、わからん。
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