真説・恋姫演義 〜北朝伝〜 第三章・第四幕
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 「……おのれ、あの小童が!」

 

 バシッ!と。

 

 手に持っていたその書簡を、憎憎しげに床に叩きつけ、王允は興奮でその鼻息を荒くする。

 

 それは、一刀から送られてきた、理由の無い罷免には従う謂れが無いとした、勅命に対する拒否文である。

 

 「……少しは落ち着いてはどうだ?司徒よ」

 

 「これが落ち着いてなどおられますか!天の御遣いなどと名乗っているだけでも、十分に不遜だというのに、勅命まで拒否するとは何たる傲慢さか!」

 

 諭すようにして王允に声をかけたその人物に対し、激昂したまま早口で返す王允。

 

 「勅書に罷免の理由を書かなんだお主も、それはそれでどうかと思うがな」

 

 「理由など必要ありますまい?漢の勅は絶対のものなのです!それを断れる者のほうが、どうかしておるのです!」

 

 漢の命を聞かぬものなど、その威にひれ伏さぬ者など、この世に居ること自体ありえないことだと、王允は本気でそう思っている。彼にとっては漢こそが全てであり、諸侯も民草も、漢無くして安寧とした世など過ごせないと。

 

 心底から、信じて疑っていないのである。

 

 「……ならば、その勅に従うものに任せておけば、それで安心ではないですか。……南皮の袁紹に、ね」

 

 「さ、左様でございますな。はっはっは。まったくもって仰せの通りで」

 

 ……こやつには、己の考えというものが無いのかと。その人物は呆れたその目を、王允に向ける。

 

 (……そろそろ、漕ぎ手を変える時期かもな)

 

 所詮、ただ言われたままに舟を漕ぐ、漕ぎ手頭程度でしかないその老人に、そろそろ見切りをつける時が来ているなと。その人物は王允を冷ややかな目で見ながら、そんなことを頭の中で考えていた。

 

 当の王允はというと、自身がそんな風に思われているなどとは露知らず、一人高笑いを続けていた。……己の残り短いその、人生という川のすぐ近くに、間もなく深い滝が迫っていることなど、想像だにすら出来ずに。

 

 

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 ここから、その場面を冀州へと移す。

 

 

 冀州は基本的に、三つの郡に分かれている。すなわち、

 

 一刀の治める?郡、

 

 袁紹の元々の統治域である、南皮郡、

 

 そして、その間に挟まれた形になっている、平原郡、である。

 

 

 −正史とは、そこがまた違う点である。

 

 正史の冀州は、もっと細かく郡が分かれている。例えば、一刀の居る?の地。この一帯は、正史では魏郡と呼ばれる地域である。正史での曹操が、後に魏公に就任したのも、この地を抑えて領としたのが、その由来だといわれている(諸説あり)。

 

 そのあたりの違いを知ったとき、本当に別世界なんだな、と。一刀は改めてそう思ったものである。

 

 

 それはともかく。

 

 

 今、その?と平原の郡境において、一刀と袁紹が、それぞれに軍を率いて対峙していた。

 

 

 「ご無沙汰ですわね、北郷さん。それにしても、わざわざお引越し前に挨拶にみえるなんて、なかなか礼儀をわきまえていらっしゃいますわね。お〜っほっほっほっほっほ」

 

 「……引越し、ですか。一体誰が、どこに引っ越すと?」

 

 一刀達が目の前に来ている理由を、完全に勘違いして高笑いをする袁紹に、一刀はわざとらしくその首をかしげ、そう問い返した。

 

 「そんなもの決まってますでしょう?貴方が、都に、一人で、じゃないですの。……って、あら?その割には随分大所帯ですわね」

 

 「そりゃそうですよ。俺は別に、引っ越したりするわけじゃないですからね」

 

 「じゃ、何のためにここに来ていますの?……あ、もしかして、私に朝廷に許しを請うための協力でも、お申し出になるつもりですの?まあ、お気持ちは良く分かりますわ。”名門”たる私の口添えを欲しがるのは、”庶民”からすれば当然ですもの」

 

 おーっほっほっほ、と。一人で勝手に結論付け、高笑いを周囲に響き渡らせる。その袁紹を見て、はあ〜、と。大きくため息をついて呆れる一刀たち。

 

 「……どうやら、本気で分かってないみたいですね。……袁紹さん、俺たちがここに来た理由はね、貴女方に帰ってもらうためですよ」

 

 「〜っほっほっほ……って、はい?」

 

 その高笑いを中断し、呆気に取られて首をかしげる袁紹。その後ろに立っていた顔良は、小声でこうつぶやいていた。

 

 「……やっぱり」

 

 「斗詩〜。何がやっぱりなんだ?」

 

 「……はあ〜。もう一人、現状が分かってないのが居た……」

 

 「??」

 

 本気で首をひねっている文醜を見つつ、大きく肩を落とす顔良であった。

 

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 「……北郷さん?今のは一体どういう意味ですの?」

 

 「……まだ分かりませんか?ならはっきりと言わせてもらいます。俺は、俺たちは、勅命を断る旨を、都に対して通達しました。なので、貴女に?を、みんなを渡すわけにはいきません」

 

 「え?え?え?」

 

 一刀のその言葉を瞬時には理解できなかったらしく、袁紹はその目を白黒させて、思い切り動揺をその顔に表す。

 

 「……俺たちは、無駄な戦いをしたいとは思っていません。ですから、このまま大人しく、帰ってもらうことは出来ませんか?そして出来うるなら、俺たちと手を取り合って、これからの乱世を」

 

 「……っじゃ、ありません、わ」

 

 「え?」

 

 「冗っ談っっではありませんわ!」

 

 「ッ!!」

 

 ようやく一刀の言葉の意味するところを理解したのか、袁紹は大声を上げて、一刀のその提案を拒否した。……それこそ、夜叉の如き、その形相となって。

 

 「勅命に逆らうですって?!貴方はなんていう不遜な事をなさいますの!?四世に渡り、三公を輩出してきた名門として、漢の臣として、そのようなことは決して認められませんわ!!」

 

 (……本初、おぬし……)

 

 その袁紹の台詞を聞き、度肝を抜かれたというか、以外というか、そんな表情をしている李儒をちらりと見た後、一刀は袁紹にこう問うた。

 

 「……その漢の、威光はすでに、消えかかっているのに、ですか」

 

 「だからこそ!ですわ!私たちが漢の威光を取り戻す、そのお手伝いをすれば良いのですわ!そうすれば、亡き少帝陛下も、喜んでくださいますわ!そして、本初よ良くやったと、私の”罪”を許してくださいますわ!」

 

 (罪……?……元直よ、もしや、あの時の事かの?)

 

 (……多分、そうだと思います。気にはしていたんですね、あれから)

 

 それは、虎牢関での戦いの時のこと。

 

 袁紹は、呂布に対するそのあまりの恐怖から、徐庶を人質にとって、一刀に呂布を討つよう命じるという暴挙に出た。

 

 その事を、戦後に李儒−当時はまだ劉弁と名乗っていた彼女から責められ、意気消沈としたまま南皮へと戻り、”罰”を言い渡されるその日を、戦々恐々として待ち続けていた。

 

 (……私としては、あれだけ脅しておけば十分だと、そう思っていたのだがな。……もっと、はっきりとしておけばよかったやもな)

 

 そして結局、罰が何も言い渡されないまま、劉弁は歴史の表舞台から、その姿を消してしまった。

 

 それを知ったとき、袁紹の心に残ったのは、大きな喪失感と虚無感であった。

 

 そして、彼女はこう思うようになった。

 

 『漢の為に全力を持って働けば、きっと、亡き少帝の怒りも収まる、と』

 

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 だからこそ、その後送られてきた”勅命に従い”、当時平原を治めていた劉備を、その首級を挙げるために急襲した。理由などは、関係が無かった。そうして勅命に従って働くことが、漢の威光を取り戻す最善の道だと信じて。

 

 だが結局、劉備を討つ事は叶わなかった。

 

 たまたまその場に居合わせていた、公孫賛の客将という趙子竜という名の武人に阻まれ、劉備を逃がしてしまう羽目になった。

 

 勅命を為すのに失敗した彼女は、何とか汚名を返上したいと思った。その矢先、今度は?の地を一刀から接収し、己の領とするようにという勅が届けられた。

 

 彼女は今度こそ、勅命を果たせると思った。都へ一人出頭する一刀に代わり、ただ、自分たちが駐屯するだけでいいのである。

 

 なのに、いざ出てきてみれば、その一刀は勅命を拒否して?に居座ると言い、自分たちには帰れといっている。しかもこともあろうに、朝廷に逆らった自分たちに協力しろとまで言っている。

 

 −出来るわけが無い。そして、許せるわけが無い。

 

 そんなことをすれば、いつまで経っても亡き少帝の怒りが解けることなど、ありはしないから。

 

 彼女は、自分の後ろにいた顔良と文醜に、命を下した。

 

 「斗詩さん!猪々子さん!全軍に戦闘の準備をさせなさい!目の前にいる”逆賊”を討ち、今度こそ、勅命を成し遂げますわよ!」

 

 『りょ、了解です!』

 

 「袁紹さん!」

 

 「うるさいですわ!もう話すことなど何もありませんわ!逆賊北郷一刀!その首叩き落して、亡き少帝陛下の墓前に捧げて差し上げますわ!全軍!攻撃用意!」

 

 おおーーーーっ!

 

 一刀の呼びかけにはもはや聞く耳を持たず、袁紹は攻撃準備の命を下し、自身は本陣へと下がっていく。

 

 「くそっ!結局やるしかないのか……!輝里!」

 

 「はい!徐晃隊・軽騎兵団、左翼に鋒矢陣で!「応!」姜維隊・軽歩兵団、右翼に衝範陣!「はいよ!」司馬懿隊・弩弓兵団、中央にて三段陣に!「……はい」」

 

 徐晃、姜維、司馬懿と、それぞれへの指示を、一刀の声に応えた徐庶が矢継ぎ早に出していく。それを受けた三隊が、一刀たちの前面へとすばやく動いて陣形を整えていく。

 

 そして。

 

 

 『……放てーーーーっっっ!!』

 

 

 大量の、矢の雨の応酬から、戦端は開かれた。

 

 

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 袁家の兵は、見た目が派手で、数がいるだけ。

 

 そんな風に評したのは、袁紹の友人である曹操である。まあ、曹操本人は、袁紹とは別に腐れ縁なだけで、友人なんかではないとのことではあるが。

 

 それはともかく、その評は適切であった。

 

 

 戦が開始されてから、わずか半刻ほどしか経っていないのであるが、すでにその勝敗は目に見えて明らかだった。むろん、北郷軍が圧倒的に優勢である。

 

 その理由は三つほどある。

 

 一つには、先の評のように、袁紹軍は質より量であったこと。兵一人一人の練度があまりにも違いすぎた。何しろ、袁紹軍には”一人も”、死者が出ていないのである。皆が皆、怪我こそ負って戦闘不能となっているものの、ただの一人として命に関わる程の重傷者は出ていない。全員、北郷軍の兵たちに、”手加減”されていたのである。

 

 命のやり取りをする戦場にあって、相手を殺さずに倒す。それも、将がではなく、一兵士たちが、である。……練度の差の程は、ご理解していただけると思う。

 

 もう一つの理由は、その兵を率いる将にあった。

 

 現在、この場で戦の指揮を取っているのは、袁紹の腹心ともいえる顔良と文醜の二人である。その内、顔良に関していえば、文醜よりはまだ、兵をよく操ってはいる。だが、あくまでも、文醜よりは、である。相手をしているのは徐晃であるが、その彼女の相手としては、あまりにも不足すぎた。

 

 徐晃は自身の率いる軽騎兵を、縦横無尽に戦場を駆け巡らせ、徹底的に顔良隊をを揺さぶった。絶対に立ち止まることなく、常に移動し続け、相手の兵たちを翻弄。無理に倒そうとすることもなく、相手の戦意を落とすことだけを考えての用兵をとった。

 

 そんなことを続けているうちに、顔良隊の兵たちはいつどこから襲われるかわからない状況で、完全に恐慌状態に陥った。兵の士気が落ち、戦闘の継続が難しくなったと判断した顔良は、部隊に撤退を命じて、本隊へと合流していった。

 

 一方、文醜のほうはもっとあっさりと片がついていた。

 

 姜維の部隊と当たった彼女は、相手とぶつかったその瞬間に、すぐさま姜維に一騎打ちを仕掛けてきたのである。部隊の指揮もへったくれもなしに、である。

 

 そんな彼女に対し、姜維は適当に十合ほど武器を交わした後、さっさと逃げ出したのである。で、当然そうとなれば、文醜は勢いに乗ったままその彼女を追った。……罠の可能性など、まったく考えずに。

 

 気がつけば、周囲を完全に包囲されて、文醜はその逃げ道をふさがれた。味方は、五十人ほどの一般兵のみ。終わったなと。本人もそう覚悟を決めたのであるが、その五十人ほどの一般兵が、後方の手薄な部分に突撃を敢行し、彼女の逃げ道を作ったのである。

 

 文醜は逃げるのを良しとしなかったが、彼女の乗っていた馬の尻を、兵の一人が思い切り引っぱたいたことで、その馬が猛然と駆け出した。……その、開いている逃げ道へと。そうして、文醜はどうにかこうにか、本隊との合流に成功した。

 

 ……ちなみに、彼女を逃がした兵たちは、全員が”無事”に捕らえられた。後々、その彼らが大事な役目を果たすことになるのだが、それはまたその時にお話したいと思う。

 

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 そして、最後の三つ目の理由であるが。

 

 まあ、いわずもがな、というやつであろう。総大将である袁紹、その人が理由である。

 

 本人としては、自分と同様に、兵たちも勅命をこなすことに必死になってくれると、そう思っていた。いや、思い込んでいた。

 

 だが実際には、兵たちにはそんな義理などまったくなかった。……先の黄巾の乱以降、いや、それよりも前から、世の中は荒れ始めていた。それは何故か?

 

 朝廷には、漢王朝にはもはや、求心力というものが全く無くなっていたから。

 

 それが、大多数の民たちの共通した意識であった。では、自分たちは今後、何を信じ、何を頼れば良いのか?もっとも身近なのは、その土地を治めている太守や領主である。だが、その太守が、自分たちが信じられなくなっている朝廷を信じ、そのために命を懸けろといっている。

 

 太守のことが信じられるのであれば、彼らはそれに従い、その身を賭したかも知れない。だが、袁紹はそこまでの、命を賭けるほどの人物かといわれると、まあ、ほとんどの者が否、と答えるであろう。

 

 袁紹は、人目を引く派手な政策には積極的に投資をし、その資金を惜しみはしないのであるが、人目につきにくい、地味な政策−農業とか福祉とかには、ほとんどその興味を示さない。それでも何とかやってこれたのは、”以前”、袁紹の配下に居た荀ェという人物のおかげである。

 

 その荀ェが、袁紹をあの手この手で何とか説き伏せ、僅かながらもそういった方面への投資を行っていたのであるが、その荀ェがある日、突然隠居するといって南皮を去ったのである。そうなれば当然、投資は完全に停止するか、僅かに、細々とした捨扶持程度が、支給されてくるのみ。

 

 農業は廃り、福祉は質が落ち、その影響で人も減り、流通も滞り始める。それなのに、袁紹は勅命をこなす為といって、軍備をどんどん増強し、兵を徴していく。

 

 −もう、南皮の人々は、彼女についていく気を、完全に無くしつつあった。

 

 そこに、どう見ても、筋は向こうのほうが完全に通っている相手との戦である。しかも、その相手は”天の御遣い”と噂される人。太守としての評判も高く、人望もあり、配下の将にも恵まれていて、兵の練度は段違い。

 

 そんな状況で士気など揚がるはずも無く、兵たちは次々と逃げ出し始めた。

 

 残ったのは、彼らをむなしく鼓舞する、袁紹の声のみ。

 

 戦闘開始から、一刻。その趨勢は決したのであった。

 

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 「な〜んで、皆さん戦おうとしないんですの!?これは勅命ですわよ!勅命に従わなければ、私たちは」

 

 輿の上で、逃散していく兵たちを見ながら、彼らの行動が全く理解できず、袁紹はそう叫んだ。

 

 「麗羽さま〜、もう無理ですよ〜。兵隊さんたち、戦う気力なんか、これっぽちも残ってません〜」

 

 「み〜んな、逃げちまったな〜。ま、しゃーないか。姫の下じゃあ、これ以上付き合う義理は無いもんな〜」

 

 「ちょっと、猪々子さん?!それ、どういう意味ですの?!」

 

 ぎろ、と。

 

 頭の後ろで腕組みをしながら、そんなことをポツリとつぶやいた文醜を、袁紹がものすごい形相でにらみつける。

 

 「文ちゃんのことはともかく、これからどうするんですか、麗羽さま?もう、ここじゃこれ以上戦えませんよ?」

 

 「うぬぬぬぬ……っ!!し、仕方ありませんわ、この場は退却して、南皮に戻って態勢を立て直しますわ!斗詩さん?平原においてきた沙耶さんと狭霧さんに、私たちが撤退する時間稼ぎをするよう、お伝えなさいな!」

 

 「ええっ!?そ、そんな、無茶ですよ!沙耶さんたちは五百しか兵を連れていないんですよ?!そんなこと、死ねといっているようなものじゃ」

 

 「私のために死ねるんなら、あの二人も本望ですわよ!ええ、そうですとも!そう思ってくれるに決まってますわ!!」

 

 殿(しんがり)というより、ただの壁。

 

 それを、現在平原の街に残って事後処理をしている、張?と高覧の二人にさせるよう、袁紹は顔良に伝令を出させた。そして、自身は一目散に、本拠である南皮へと撤退していった。

 

 その袁紹軍の様子を見た、一刀たち北郷軍の陣では。

 

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 「……追撃をしろ、と?」

 

 「はい。……このまま捨て置けば、またいつか、袁紹さんはこちらを攻めて来るでしょう。……その為に、残り少ない若者たちを無理にかき集め、更なる負担を民たちにかけて、です。……それは、一刀さんの望むところではないでしょう?」

 

 「……」

 

 撤退する袁紹軍を追い、南皮まで攻め落とすべきだと、徐庶は一刀にそう具申した。……普段、朗らかで穏やかな彼女ではあるが、こういう時だけはその感情を封印し、冷静に戦況を判断して、冷徹にその場で最適な策を献策してくる。

 

 だからこそ、彼女が名参謀といわれる所以であり、一刀が彼女を一番に信頼している、理由である。

 

 「……わかった。けど、その前に、平原にだけは寄っておきたい。……いいね?輝里」

 

 「はい。……そう言うと思ってましたよ。……あ、でもその前に後一つだけ、オハナシしておきたいことがあるんですが」

 

 に〜っこりと、これ以上無いくらいの笑顔を見せ、一刀にそれを向ける徐庶。

 

 「……な、ナンデショウカ?カガリさん?」

 

 「……大した事じゃないですよ。……”これ以上”は、赦しませんから。……ワカリマシタネ?」

 

 「………………ハイ」

 

 

 

 「……の、仲達よ?」

 

 「……なんでしょう」

 

 「元直は、”いつも”あんな感じなのか?」

 

 「……大体は。……ま、頑張って下さい」

 

 「は、はは、は……。と、とんでもない恋敵じゃの……」

 

 

 と、にっこり微笑む徐庶の隣で、蛇ににらまれた蛙の様になっている一刀を、その頬を引きつらせつつ見ている李儒であった。

 

 

                                  〜続く〜

 

 

説明
北朝伝、三章・四幕でふ。

漢と袂を分かつ事にした一刀たち。

?の地を接収に来た、袁紹軍とついに対峙します。

戦いの幕が上がることとなるのか、それとも・・・?

では。
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コメント
一刀がそんな約束守れるわけないじゃないかww(きの)
一刀!その助言、絶対まもれよ!ぜっっっったいだぞ!!(aki)
ふむ、まあそゆ世の中ですから仕方ないっちゃ仕方ないんでしょうね、こやつらの思想は。 そして増える種馬の餌食、そして増える修羅場・・・お仕置き・・・にやにやw(よーぜふ)
精神的暴力恐るべし・・・・・・(黄昏☆ハリマエ)
kabutoさま、そう考えるように伝えときますw 麗羽は・・・さて?(狭乃 狼)
紫電さま、続きはしばらくお待ちくださいね。・・・ちょっと暇がなさそうです。(狭乃 狼)
M.N.Fさま、さあ、どうでしょうね? 命がどう絡むのかも、お楽しみにです。(狭乃 狼)
タケダムさま、それだけ想いが深いんですよ。(狭乃 狼)
下ネタさま、ですよねーw (狭乃 狼)
mokiti1976−2010さま、そりゃもちろん。あの能力はデフォですからw(狭乃 狼)
namenekoさま、はい、遅いですねー。確実ですねーww(狭乃 狼)
ロンロンさま、そーなんですよねー。二人は確実に参加しますからねー。さてさて、戦もそうですが、恋の行方もどうなっていくやらw(狭乃 狼)
輝里さん、あきらめなさい。もう増やさないことより一番になることを考えれば・・・。麗羽は改心するんですよね?(kabuto)
ああ、一刀側には劉弁がいるんだった。 (連投すいません)(M.N.F.)
最終的には本初本人はともかく顔良・文醜のどっちかは参入してくるんじゃないんですか? ・・・いや、わからんけど(M.N.F.)
輝里は意外と嫉妬深いww(タケダム)
輝里さん、多分一刀にそれを求める方が無理というもの。もはや一刀の能力にはデフォルトで種馬が備わっているのだろうし。(mokiti1976-2010)
輝里が念を押してももぅ遅いな。確実に二人は増えるな(VVV計画の被験者)
最後の最後でシリアス破壊。だが輝里よ。残念だが少なくとも二人の参入が決まっている!!(龍々)
hokuhinさま、はい、嫉妬に燃えたあの娘は恐いですw 麗羽はそうですね。だからまあ、救いを上げる気ではいますがwwこの章の終幕をお待ちくださいませw(狭乃 狼)
村主さま、両方とも確かに哀れですわな。しかも王允には救いが伸びることは無いという・・・。麗羽は、さて、どうなるでしょうね?(狭乃 狼)
輝里さんが怖すぎるwしかし麗羽様もある意味被害者だな、白亜への忠誠心が高いために利用されて・・・(hokuhin)
なんかもう哀れとしか言い様の無いですなw<王允と名族 「漢の威光」という名の盲目に囚われていると解ってはいたものの・・・ 1p目にて既に自分の首に死神の鎌が掛かってる事に、まあ最後まで気付かないのでしょうな ああ無情w(村主7)
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