虚々・恋姫無双 虚玖之奥之更奥 |
一刀様は瞬間移動というものが出来るらしいです。
一瞬で違う場所に移動できるなんて便利な能力だと思います。
その能力のおかげで、一刀様が喋れるようになったことは、あっという間で魏軍の中に広まりました。
「凪お姉ちゃんたちのところにも行く」
と一刀様ははしゃいでいましたが、長い時間の後正気に戻られた典韋さんは「これ以上はいけない」とか言い出して辞めさせていただきました。
そして暫くしてから思考停止なさっていた曹操さまや他の将の方々が一刀様を探しに一刀様がいる馬車に来られました。
「一刀、先の言葉もう一度言ってみなさい」
「大好き」
「………」
曹操さまはまたその場で固まってしまいました。
「北郷、一体どうやって…」
「結以お姉ちゃんが治る薬くれた」
「何だと!?貴様、北郷に変なものを飲ませたのか!」
「えっ、いいえ、特に毒になるようなものではありませんが…何か問題でも」
「いいや!よくやってくれた!」
「しゅうらん!?」
後の話では夏侯淵さんは鼻血を流していたらしいです。
「南蛮にそんな術があるはずが…」
「南『蛮』というものはあくまで漢皇朝が私たちを侮って呼んだものに過ぎません。我々は我々としての術があるのです」
「じゃ、じゃあ、胸を大きくする薬とかも作れるの?」
「はい?作れますけれど…それがどうか…」
「「「「それを今直ぐよこしなさい!(よこしてください!)」」」」
何だか一部の皆さんがそう訴えましたけど、残念ながら豊乳丸をつくるための材料は持ち込んだものがありません。
と言ったら、「だったら一刀を連れてそれを持ってきなさい」とまでおっしゃったメガネの方は「何を言い出すお前」という他の皆さんの攻撃に口を封じられました。
「あ、あのね、お姉ちゃんたち」
そうやってなんやかんだ騒いでる間、一刀様が皆さんの注目させました。
「ボクね、今までずっと皆に言いたかったことがあったの。書いて言っても良かったんだけど、でもこれだけは自分の口で伝えないときっと伝わらないだろうと思ってたから……ずっと言えなくて悶々としていたの」
一刀様の声は恥ずかしように少し震えていました。
「皆今までありがとう。ボク、今までで皆と一緒に居るこの時が一番幸せだよ」
「一刀……」
ガシッ
曹操さまが一刀様を抱きしめました。
「ありがとう、私もあなたが居てくれて嬉しかったわ」
「…うん、ボクも嬉しかった」
わたくしは曹操さまがどんな方かわかりません。
だけど、曹操さまが一刀様にとって大切な方だということは、よく分かりました。
「孟節、といったわね」
「はい」
曹操さまがわたくしに声をかけました。
わたくしは頭を下げて答えました。
「一刀を治してくれてありがとう。魏の全員を体表として感謝させてもらうわ」
「恐れ入ります。わたくしはただ、このままだと一刀様と話をすることに問題があるだろうと思い軽い気分で作ってしまったことが、こんなに大きい事になるだろうとは思いませんでした」
「何かお礼がしたいのだけれど……」
お礼……ですか?
「何か欲しいものがあれば言ってみなさい」
「欲しいものですか?」
「ええ、今は戦時だから叶えてあげれるものには限りがあるけれど、何なら戦後戻ってからでも構わないわ」
「え?あ、あの…それはなりません」
「ならない?」
わたくしは皆さんと一緒に戻るわけには…
「申し訳ありませんが、わたくしは皆さんとずっと居ることはできません。わたくしは皆さんが孫呉との戦いを終わらせれば、その場で皆さんと離れるように言われています」
「え?ボクたちとずっと一緒に居るんじゃないの?」
一刀様が驚いたような声で言いました。
「はい、わたくしは南蛮の僻地の隠れ者。恩人の恩を返すために今こそここに居ますが、長く居ることにはいきません」
「そんな……」
「そう。完全にこちらに来たわけではないのね」
「もうしわけありません」
そして、わたくしが居ないと一刀様が喋れることも一時的なこと。
今皆さんが先ず心配していることはそれではないでしょうか。
とりあえず、褒美というものはご遠慮させて頂きました。
大体、完全に治療したというわけでもなく、薬茶を飲んだ半日ぐらいの一時的なものだということを説明したら、皆さんもそれで理解したみたいです。
「それにしても凄いことであることに変わりはないな」
「他にはどんなことが出来るのですか?」
典韋さんが聞きましたが、突然そう言われるとそうですね…
「始めての時兵士さんたちを麻痺させたような神経毒とかも作れます。後は薬とか、他にも色々使えますが、副作用がありますのであまり人に対して使うによろしいものではありません」
「それじゃあ、先言ってた胸が大きくなるという品物は…」
「それは…」
あらら?何だか皆さんのあつい視線を感じるのですが…
「それは…少し特殊な材料が必要なのですが、中々手に入るものではありませんので、今は作れません」
「そ、そうなの」
「桂花お姉ちゃんは胸小さくてもいい」
「あんた殺すわよ!」
「胸が大きい桂花お姉ちゃんなんて要らない!」
「なっ!?」
荀ケさんが何だか凄いジレンマに陥られたようです。
「それより、バカが治る薬はないか?!」
「頭を清くする薬なら作れますが…頭を良くすることには己の努力が大事かと……」
「そうか……むむむ」
怖そうな方だと思っていましたが、何だか自分のことを頭が悪いと思っているのでしょうか。
「あのー、鼻血を止める薬とかはありませんかー」
「ああ、それはあったら便利そうね」
「一人限定にですけどね」
「ちょっ、どうして皆私を見るのです」
「だって稟お姉ちゃんのアレは病気並みでしょ?」
「むむむ……」
「なーにがむむむだ!」
「春蘭、あなたに言われたくありません!」
「鼻血に効く薬でしたら…」
「いやいや、ねえさん鼻血に効くじゃない。鼻血が出なく薬だよ」
「あの、そちらの殿方はどちらさまですか?」
「話を紛らわしくしないで、風!」
こんなに多くの人たちと一緒に話すことは久しぶりなので少し混乱します。
「鼻血を出なくする薬ですか…その鼻血はどんな原因で出るのですか?」
「見てみますか?稟ちゃん、華琳さまの靴下」
「華琳さまの靴下……」
「風、幾ら何でもそれは…」
「ぶはっ!」
「うわぁ……(どん引き)」
「稟、貴様……」
なるほどですね。
「……それなら作ることができます」
「おー」
「ほんほへふは?(ほんとですか?)」
「ただ、どのような方法でも欲望を放出することは必要ですので、鼻血ではなく他の何かが出てしまうかもしれません」
「他の何かって」
暫く沈黙が走りました。
「鼻血でいいんじゃないの」
「そ、そうね」
「鼻血で良かったな、ねえさん」
「よくありません!」
「鼻血他って鼻水が出るの?それは確かに嫌だね」
「うむ、北郷はそう理解してて構わない」
「うん?鼻水のことではなかったのか?」
「ああ、姉者もそれで理解してくれて構わん」
「ねぇ、流琉、鼻血の他って何?」
「さ、さあ………」
ここに居る皆さんの性質が大体分かった気がします。
ガタガタガタ
馬車が動き始めました。
「皆さん、面白い方々でした」
「そうよね。皆いい人たちだよ」
一刀様とわたくしは同じ馬車の中でカタガタと揺れる感覚を感じながら話をしていました。
他の皆さんは皆帰ったようです。
「ありがとう、結以お姉ちゃん」
「それは先も聞きました。それに、完全に治ったわけでもありませんし」
「何度ありがとうと言っても足りないよ。ボク、もうこれからまた一生話せなくなっても良い。ボクが言いたいことは今日全部言えたから」
「……そうですか」
……
「わたくしも」
「?」
「わたくしも、もしほんの一瞬だけこの目がまた見えるようになったら、見たいものがあります」
「何?」
「わたくしには妹が一人居ます。幼い時に離れてしまいましたが、彼女の成長した姿をこの目で見たら嬉しいと思っています」
「結以お姉ちゃんの薬で目は……治せないよね」
「はい…残念ながら…なくなった目をまた生やすことはできません」
「うん、そうだよね…」
そしたら一刀様は少し黙り込みました。
「あ、あの、一刀様?」
「うん?」
人が側に居るのに何も話さないと、わたくしは少し不安になってしまいます。
それは目の前の人を見ることすらできない私にとって、耳が世界を受け入れる唯一の通路であるからだと思います。
「ごめん、ちょっと、申し訳なさそうに思っちゃって?」
「え?」
「ボクは結以お姉ちゃんのおかげでこうして話せるのに、ボクは結以お姉ちゃんに何もできないから」
「一刀様……」
一刀様は、わたくしが思った以上に優しい方ですのね。
「一刀様は優しいですのね」
思わず口にしてしまうほどに。
「え?そう思う?」
「はい」
「うぅん………」
あれ?良い意味で言ったつもりなのに、何故か一刀様を困らせてしまったようです。
ですが、こんなやり合いと大切にしたいと思っています。
短い間ですが、一刀様とご一緒に居られることが、わたくしに吉になればいいとわたくしは思っています。
孫呉の領地までは、日頃後僅かです。
場所は変わってここは紗江たちが西に向かっている部隊。
夜天幕を張って陣取っている中、紗江の部屋では……
「ぐぅ……参った」
「おつかれさまでした
「うぅぅ……誰じゃー!象棋に紗江も入れようと言ったヤツは!」
「霞さまです」「お姉さまなの」「姐さんや」
「うぅぅ……ガクッ」
紗江と霞さん、そして警備隊の三人で広がれた象棋リーグ戦は紗江の全勝で幕を閉じたのでありました。
ちなみに全敗した真桜は今日不寝番である。
「ないわ…ウチも象棋には自身あったけどこりゃないわ……」
「王しか残っていないの」
「これはひどい」
「紗江様もお人が悪いです」
「いいえ、これはなんと言いますか……戦線の弱いところを突いていたらこんな風に……」
確かに紗江の勝ち方は相手に対しての礼儀というものが欠けている気がした。
「ウチが甘かった……これは桂花たち並みやんか」
「申し訳ありません」
「いや、別に謝るこっちゃないんやけど……」
紗江が頭をさげたら、霞さんが逆に困った顔をする。
「聞く話では紗江さまは、かの有名な水鏡女学院の第一門下生だったとか…」
「うおっ、なにそれこわい。劉備軍の諸葛亮と同門っちゅうわけやろ?そらウチなんて勝ち目ねーや」
「そんなに大した話では……」
「いや、紗江ちゃんはあまり自分のことを卑しくみる癖があるで。それを見てあまりあまく接すると痛い目に合うんや」
「でも、でも、紗江ちゃんを見て無視していける人なんていないの」
「せやな。沙和の手出しで魅力を十倍上げたこの妖艶な姿を見て振り向かない人なんていないよなー」
「お二方はまたどうしてそんな話に……」
紗江はあの服装を変えて華琳さまに食べられた(?)事件以来、元の姿に戻ろうとしました。(というかあんなの一人でできません)
まぁ、あれ以来毎日沙和と真桜が紗江の着替えところに侵入してあの時のあの服装に変えていますけれど。この二人の努力には素で関心します。
「その働き振りの一割でも警邏の任務にまわせ」
「あ、あははははは」「あ、あはは……なの」
「……ふふっ」
少し微笑んだ紗江だったが、直ぐにその顔を戻して外に向かった。
外は今すっかり夜。
いつもなら紗江は寝てる筈の時間であったけど、最近の紗江は夜遅くまで寝ようとしない。
「うん、どこいくん?」
「ちょっと風を浴びに……そうですね。霞さま、少しお付き合い頂けるでしょうか」
「うん?……ええよ」
思わぬ場面で呼ばれた霞さんは少しキョトンとしましたが、今自分と紗江の立場について気づいたのか立ち上がりました。
「凪たちも今日はもう帰な。真桜ちゃんは今日の当番よろしくー」
「わかりました」
「えー、もうちょっと遊びたいの」
「誰だよ…象棋で当番決めようとしたのは」
「お前だ」「真桜ちゃんなの」
「よよよー(TдT)」
「そうですね。もし少女が帰ってきた時ここに残っていらっしゃる方がいらっしゃれば…その方は少女の仕事を夜を徹して手伝ってくださるという意味で受け入れましょう」
「おやすみなのー!」
「ウチもまたあした」
「……それでは私も……」
三人とも早くも部屋を出ていってしまった。
「……仕方のない方々です」
「んで、どうするん?ウチはここで話してもええんやけど」
「いいえ、お外で話すことにしましょう。外より内の方が、案外聞く耳が多いものですから」
「……大事な話なん?」
「……」
紗江は何も言わずに、先に天幕を出た。
霞さんもその後を追って外へ向いました。
没になったシーン
<<春蘭さん、莫迦は病気ではありません>>
「それより、バカが治る薬はないか?!」
「馬鹿が治る薬……ですか。いいえ、それはございません」
「ふん!貴様も何だ大したことないじゃないか!」
「申し訳ありません。わたくしが未熟なもので、夏侯惇さまの悩みを解くことができませんでした。でも安心してください。南蛮ではこんな話があります」
「何だ?」
「莫迦は病気ではない、と」
「……それは、どういう意味だ?」
「え?ですから、莫迦は病気ではない……わけです」
「つまり治せないということだね。よかったね、春蘭お姉ちゃん」
「よくなーーーーーーい!!!」
没の理由:莫迦は病気じゃない(不治)。でも自分が莫迦だと認識できないのは病気(難治)
ガンバレシュンラン、チョーガンバレ
説明 | ||
ちょっと残った話がありましたのでこうなります。 上中下にした方が良いのですけどね…… あまりにも無計画なものでして… 次回からは孫呉に着くだろうと思います。 いつもの話ながらこの物語は真面目な戦闘シーンなんてありゃしません。本当にごめんなさい。不勉強なものでして…… |
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コメント | ||
これから参考にするために呉√の孫策死亡シーンまで観に行きます。あまり何度も見たい場面ではないですけどね・・・カタガタブルブル(TAPEt) ちょっといきなりギャグやってまずかったでしょうかね・・次回からは自重します。(TAPEt) この魏軍は駄目駄目だなぁw(きの) 色々と悩みの多い魏軍でありましたとさめでたしめでたし。「「「「「「「「「めでたしじゃなーい」」」」」」」」」(VVV計画の被験者) これは短編だったらあるように仕込んだのですけど、あまりギャグしちゃうと今重要なところなのに戻ってくるのが難しいので・・・(TAPEt) 皆さん色々悩みを持ってますね。(山県阿波守景勝) |
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