閑話休題 |
# 閑話休題。
時:全国大会、対氷帝戦終了後の青学テニス部一同。
場所:某全国チェーンコーヒーショップにて。
「いやー、あの時はビビったにゃー、本当にやるとは思ってなかったし」
「お前、容赦ねーよな。いくら俺でもあんな真似はできねーぜ。できねーよ」
「……本人だって負けたら坊主になるって宣言してたから、いんじゃないスか別に」
その日は氷帝戦、ボを沢山連呼するアレも真っ青の、試合に負け更に意識の無い跡部に容赦なく毛狩り…もとい毛刈りを行なった越前の衝撃のシングルス1の話題一色のテニス部レギュラー陣。
店内に入るや否や菊丸や桃城達が面白がって越前に一斉放射。
そんな投げかけにも、淡々と憎たらしいくらいにふてぶてしく平然と返す中学1年、青学テニス部期待のルーキー。
「本当、容赦ないよね、越前君。……でも、あんまりハシャいじゃ駄目だよ?……わかるよね?」
菩薩のような穏やかな笑みを湛え、それ自体は天上の花のように可憐な風貌の不二が、にこやかに越前に念を押す。
恐らく越前以外のその場にいた部員たちはその背後に不動明王の如き気配を感じ背筋が凍ったに違いない。
「……ういーっす、」
当の越前と言えば、おののく様子も無く一瞬ペロっと舌を出し不遜に頷く。
それもそのはず、越前は前々から不二と密かに仲の良い跡部の事が青学テニス部員の誰よりも気にくわなかったのだから。
今回の毛刈りは、後の不二の反応を知りつつ是幸いと日頃の恨みを晴らしたようなものだった。
「跡部は基本的に整った顔してるから、どんなヘアスタイルでも似合うけどね。あんなヤンキー崩れにしか見えないのは跡部じゃないの。わかるよねぇ?……僕、あれは好みじゃないんだ。ねぇ、越前クン?」
一方的な論理を展開していく不二。
指摘するのはソコかよ!人としてどうかとかそっちじゃないのか?!と全員同時に心の中でつっこんだが口に出して指摘する者はこの場には誰もいない。
誰も不二を敵にはまわしたくないのだ。
数日後。
所変わって、氷帝学園テニス部部室。
こちらもまた、衝撃のシングルス1の事でもちきりだった。
「いやぁ?、思い出しても恐ろしな?。ほんまにやってまうとはなぁ。末恐ろしい子やでほんま」
「冗談じゃ済まねーよな、あれは……」
「てゆうかさ、何でアイツ、バリカン持参してたわけ? 跡部のアホ宣言を予知してたとか?」
「てか、跡部も結構間抜けな宣言したよな。」
「ほんまやで、正直笑い堪えるの辛かったわ」
「あ、俺も俺も!もー勘弁してって思った!」
忍足・向日・宍戸が口々に衝撃の試合の話題を語り、普段から無口な樺地は別としてさすがに跡部に対してそんな発言したくても出来ない下級生(=鳳・日吉)は黙って聞く側に徹していた。
無論、睡眠中の芥川は問題外である。
「おう、てめーら、何好き勝手言ってやがる、」
そこへ真打ち登場。
勿論、美容室できちんと見られるように整えたので、試合終了直後の無残さは影を潜めている。
不二の言うように基本的に整った容貌の跡部は、どのようなヘアスタイルでも似あう。
ただ見慣れないだけで慣れるまで違和感が付きまとうだけなのだ。
長髪の宍戸が断髪した時のように。
「おー、跡部、元気になったんかいな?」
「んだよ、元気って」
「だって、毛刈りされてちょー落ち込んでたんじゃないのー?」
「そやそや、実の所、えらい事ゆうてもーたわ!て後悔してたんちゃうん」
「うっせーよ、気にしてねーよ、構うんじゃねぇ」
「跡部、ちょっといいか? お前宛に荷物が届いてるぞ」
丁度そこへ滅多に部室に訪れる事のないテニス部顧問、榊太郎が現れた。
その手には跡部宛らしき小包みを携えている。
「あ、どーも……?」
不審に思いつつ小包みを受け取る跡部。
宛先は氷帝学園テニス部で宛名は跡部になっている。
奇妙な小包みだ。
不審に思うと同時に、その見覚えのある筆跡に嫌な予感を覚えずにはいられない跡部。
何が届いたか興味津々の部員達を尻目に、とりあえず中身を確認すべく荷解きをする。
「なんだこれ……、」
中には更にふたつの箱があり、片方を開け、溜め息をつく。
箱の中には、恐らく特注品だろう以前の跡部のヘアスタイルのようなウィッグが入っていた。
こんな事をするのは一人しかいない。
否、むしろ彼しか思いつかない。
「あれ?跡部、なんか封筒落ちたで。あらま不二からやったん、コレ」
ふたつの箱の間に挟めてあったのか封筒がするりと床に落ちた。
それに気付き拾った忍足が、封筒に不二の名を見つけ跡部に手渡す。
「まぁ、こんな事するのはアイツくれーだろ、」
それを受け取りカードのメッセージに目を通す跡部。
『 跡部へ。
髪が元通りになるまで、これを使ってね。
絶対。
……わかるよね?
P.S. いつまでもキングでいて欲しいので、
キングバージョンも同梱しました。
(こっちもオススメvv)
周助 』
短い文言に込められた無言の脅迫。
無残に刈られた毛先を整え、意外に坊主も似あうじゃねーか、と自画自賛をしていた所へ、釘を刺すタイミングでのこのメッセージ。
どうやら不二的には非常にお気に召さないようである。
追伸に目を通し、キングって何だと思った後ろで向日のけたたましい笑い声が部室に轟いた。
「不二?!ちょーウケる!なんだコレ?!」
向日の手にはブロンドの横カール……まさにトランプの絵札(キング)のようなウィッグが燦然と輝いている。
既製品ではあまり見かけないそれも、恐らく特注品であろう。
無駄に凝ってるとはこの事だ。
「不二って、不二だよな……良くも悪くも不二だよな」
氷帝唯一の常識人、宍戸はこれで更に不二のなんたるかがわからなくなったようだ。
「いやぁ?、ごっつ愛されたはるなぁ、跡部。ええなぁ、羨ましーわ」
「……お前、本気で思ってるのか? 脅迫だぞコレ……俺の意志抹殺されてるんだぞ?」
「そんなんえーやないか、あーもう、不二、かいらしなぁ。でも、不二の好みがはっきりわかったやん。ボウズはアウトやて、大変やなー」
「なにが?」
「王子様みたいなんが好みやったら、跡部やばいで。それでいったら蔵ノ介は不二のストライクゾーンや。佐伯と同系統の顔やし、こら本格的にやばいでぇ」
跡部はシングルス3を観戦してて確かに嫌な予感は((過|よぎ))った。
不二が本気でプレイした事や紙一重と言えども負けた事、恐らく不二は白石の事を気に入ったに違いない。
「育毛剤((使|つこ))て早よ伸ばさななー」
「大きなお世話だ」
「なーなー折角だからコレ被れよ、跡部!」
「うわ!おい、岳人なにす……」
『ぴろりろーん。パシャ!』
「写メ 送しーん!」
後ろから唐突に王様ウィッグを跡部に被せた向日と、その瞬間を逃す事無く正面からカメラで捉えた日吉の連携プレイによって氷帝キング・跡部の写真は間髪入れずに不二へと送信された。
程なく不二から『グッジョブ!』との返信と王様ウィッグはおまけなので氷帝テニス部で好きなように使ってくれて構わないという旨の内容が送られてきた。
それ以降、王様ウィッグは氷帝テニス部レギュラー専用部室の備品として代々受け継がれていく事になるのだが、それはまた別の話。
無論、跡部は髪が元の長さに伸びるまで(不二に会う時は常に)ウィッグを着用した事は言うまでもない。
END.
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2007.11
自分的にはかなり衝撃的だった毛刈り。
最近漸く受け入れ?られるようになったので毛刈りネタ。
オチが無いのが物悲しく…(苦笑
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テニスの王子様:跡不二?…衝撃だった跡部の毛狩りネタ | ||
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