真・恋姫無双 鈴の音
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第九話「初陣」

 巴郡を出て数日。一刀達は荊州の武陵まで来ていた。

 「武陵まで来てみたけど。どうして賊は出てこないんだろうな?」

 一刀の言う通り。これまで一刀達率いる義勇軍は一度も戦闘をしていない。それどころか、賊の影すら見ていない。

 「それだけ鈴の三人集が恐れられていると言うことじゃない」

 「そうか〜〜」

 「そうよ」

 「なら、江夏辺りに行ってみるか。確かそこには、黄色い布を着けた賊が勢力を拡大にしていると聞くぞ」

 「それは、わたしも聞いたわ。確か首領は張角で、それ以外は謎に包まれた賊でしょう」

 「そうだ。今は官軍までも動いて退治しているそうだが。官軍は連戦連敗だそうだ」

 「フン。鍛錬は疎かにするからそうなるのだ」

 「そうだな。焔耶は俺と思春に負けてから考えながら鍛錬するようになったもんな」

 「か、一刀。それは言わん約束だろう」

 「思春はとっくの昔に知っているよ」

 「!?」

 一刀の言葉を聞いて焔耶はすぐさま思春の方を向いた。

 「焔耶がいつも鍛錬している場所は、私もしている場所だ。焔耶が終わってから私が鍛錬していたということだ」

 思春が少し笑いながら答えると、焔耶は口をパクパクしながら唖然としていた。

 「それじゃ。今日はこの辺で陣を張って、明日にでも江夏へ向うか」

 「そうだな。全員聞け!!今日はここで夜を明かす。ただちに天幕を張れ」

 思春の命令で兵達は天幕を張り食事の準備をした。その間、焔耶は一言も喋らず魂の抜けた抜け殻の状態になっていた。

 翌朝。一刀、思春、焔耶は日課の鍛錬を始めた。まずは一刀対焔耶、次に焔耶対思春、最後に一刀対思春と順に仕合をする。その様子を地図を広げ最短距離で江夏へ行く道を探しながら咲は見ていた。

 「さて、一刀。江夏までの道のりを決めたわ。確認してくれない?」

 「ん!!わかった」

 一刀は琥珀を鞘にしまうと咲の方へ歩み寄った。

 「これの道のりが最短で江夏に行けるわ」

 咲が自分の人差し指で考えたルートをなぞった。

 「・・・これだと劉表の城を近くに通るな」

 「えぇ。しかしこれ以外に道は無いわ」

 「なら、この道を通ろう。俺達は一人でも多くの人を助けなければならないのだから。焔耶、思春、道は決まった。出発しよう」

 「あぁ」

 「わかった」

 一刀の言葉で焔耶と思春はすぐさま兵達に出陣の命令を下した。

 出発してから三刻ほどが経ち一刀達は今劉表のいる城の近くまで来ていた。

 「それじゃ、焔耶。兵達のことは頼む」

 「・・・わかった」

 「すまん」

 「それじゃ、行って来るね」

 一刀達は焔耶を残して劉表のいる城へと向かって行った。

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 「劉表様。北郷と名乗る義勇軍の将が来ておりますが。いかがいたします?」

 「ほんごう?・・・まさか、あの鈴の三人集と言われるあの北郷か?」

 「多分、その者かと」

 「なら、通せ。一度その者の顔を見てみたかったからのう」

 「わかりました」

 侍女はすぐさま玉座を出て一刀達を呼びに言った。

 「(ガチャ)劉表様がお会いになるそうですので、私に付いてきてください」

 「わかりました。思春、咲行くぞ」

 「あぁ」

 「了解」

 一刀達は侍女の人に連れられて、劉表の前まで行った。

 「突然の訪問にもかかわらずお会いしていただきありがとうございます。私の名は北郷。後ろにいるのは家臣の甘寧と軍師の司馬懿です」

 ・・・こやつが北郷か。なかなかいい男だのう

 「それで、おぬし達はどうして私の領地に来たのだ?」

 「はい。最近黄色い布を着けた賊が大陸のあちこちに出てきています。特に長沙周辺で活発になっていると聞き、江夏へ向う所劉表様の領地を通りますゆへ、挨拶をと思いこちらへ赴いたのです」

 「なるほど。しかしおぬし達が向かおうとしている江夏周辺には盧植の爺さんがおるから安心だろう。それより北郷。おぬし私の部下にならないか?おぬしほどの武人ならすぐさま将として迎えるぞ。もちろんおぬしが連れている義勇兵達も私の配下に加えよう。どうだ」

 「・・・お断りします。自分にはやるべき事がありますので」

 「そうか・・・なら、一つだけ聞かせてくれ。おぬしは私の事をどう思う?」

 「そうですね・・・・しいて言うなら狸でしょうか。裏表のはっきりとしない人だと見た瞬間思いました」

 「ははは。そうか、狸か。あの爺さんと同じ事を言うか、おぬしも。くく。わかった、もう行って構わんぞ」

「でわ、失礼します」

 一刀達はそのまま玉座を出て行った。一刀達が出て行った後劉表は高々と笑った。

 「どうかしましたか、劉表様?」

 「いや。私の事を狸と言うた奴があの爺さん以外で二人目がいたとは」

 「一人目は確か・・・曹嵩様の所の娘さんでしたっけ?」

 「そうだ。あの娘も私の事を狸と言いよった。今は確か陳留の刺使だったかのう?」

 「確かそうのはずですですが」

 「面白くなったのう」

 「劉表様。また、悪い癖が」

 

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 城を出た一刀達はすぐさま江夏向けて出発した。

 「それで。劉表はどうだった?」

 「どうだったと聞かれても、ただの狸としか言いようが無いよ」

 「狸??」

 「何時も何考えているかわからない人って事」

 「そうか・・・・って、なに納得しているんだ。ワタシは」

 その反応に一刀が大笑いすると、焔耶は一刀の胸を軽く殴っていた。

 「・・・ねぇ、思春」

 「なんだ?」

 「後ろで夫婦漫才しているけど。いいの?」

 「何時もの事だ。気にするな」

 「へぇ〜〜そうなんだ。じゃなくて!!一刀と焔耶が仲良くしていて貴方は嫉妬しないの?」

 「する必要が無いだろ。それとも咲は焔耶に嫉妬しているのか?」

 「だ、誰が一刀と焔耶あんな事しているから嫉妬しているですって!!」

 「別にそこまで言っていないだろう。それに、そこまで言うと自分は一刀に『恋しています』と相手に言っているようなもんだぞ」

 「(カァァァァァ)」

 咲は思春に言われてから、恥ずかしくなり。段々と顔を紅くしていった。そうとは知らず一刀は咲の隣にやって来た。

 「どうした、咲?顔が真っ赤だぞ」

 「!?・・なんでもないわよ!!」

 「そうか。けど、無理はするなよ」

 「わかって「北郷様。大変です!!」」

 「どうした」

 「この先にある邑が賊に襲われています」

 「なに!!数は?」

 「約一万ほど・・・・」

 「一万か。俺らの倍かだな・・・」

 「それ位ワタシ達がいれば何も問題ない」

 「そうだぞ、一刀。私達はこの為に武を磨いて来たのだからな」

 「それと、五千で一万に勝ったら兵達にもいい影響になるわ。自分達は強いって言う感情が持てるはずだから」

 「そうだな。邑を助けに行くぞ」

 「「「はっ!!」」」

 一刀達は駆け足で邑の方へ向った。

 

 「ははは。奪え。欲しい物は全て奪ってしまえ」

 「さすがアニキ。金目の物に関しては天下一」

 「ははは。そう褒めるなよ、チビ。褒めても何も出ないぞ」

 「いやいや。アニキほどでは」

 「アニキ。大変なんだな」

 「どうした、デブ。そんなに慌てて?」

 「こっちに向ってくる軍勢がいるんだな」

 「なんだと!!」

 「ヒィィィィ。ご、ごめんよ。アニキ」

 「別に怒ってないよ、デブ。チビ!!今すぐ鐘を鳴らせ。こっちに突っ込んでくる莫迦共に俺達の力を見せ付けるぞ」

 「了解だぜ。アニキ」

 チビと呼ばれる賊は力いっぱい鐘を鳴らして仲間に戦闘態勢の合図を送った。

 一刀達は邑から約五里の所で一時停止していた。

 「皆聞け!!今この邑に罪も無い民を殺している賊がいる。俺達は賊から民を守る為に今から戦闘を行う。これは俺達にとって初戦だ。この初戦を勝利という美で治めようじゃないか」

 「「「「オォォォォォォォォ」」」」

 「行くぞ。全員抜刀・・・・突撃!!」

 一刀の合図で、一刀を先頭に焔耶、思春と三千の義勇兵が邑へと突撃する。残りの兵達は咲の指示の元生き残った民を助けに行った。

 「大将はどこだ。この魏延が相手になるぞ」

 焔耶は大将を討つべく邑を駆け回っていた。

 「全く焔耶は・・・いいか、絶対に一人で戦うな。一人の相手に三人でかかれ。一刀。そっちは大丈夫か?」

 左翼にいる思春は右翼にいる焔耶の行動に呆れながら中央にいる一刀の方を見た。

 「こっちは大丈夫だ。けど、焔耶には後で御説教だな」

 一刀は焔耶の行動に溜息を吐きながら翡翠で賊を倒していった。 

 「大将はどこだ〜〜〜」

 「俺だ。貴様らか。俺の仲間を次々と倒していくのは?」

 「それがどうした。貴様らは罪無き民を苦しめる悪。だからワタシはその悪をこの鈍砕骨で叩き潰す」

 「フン。ただの娘に何が出来る。俺様の剣捌きで鉄の錆となれ。ハァァァァァ!!」

 ガチン!!

 ・・・遅い。こんなの一刀や思春と比べれば

 「ハァァァァァァァ」

 ドス!

 「うっ!!」

 バタン

 「敵大将、鈴の三人集の一人魏延が討ち取った。まだ戦いたい奴はいるか?いるならこの魏延が相手になるぞ」

 「ア、アニキが遣られて」

 「もう、お仕舞いなんだな」

 「「「「ウワァァァァァァァァ」」」」

 大将を亡くした賊は大慌てで邑から出て行った。一刀達は追撃をせず邑の復興作業の手伝いをした。

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 「それで、どうして自分の兵を置いて大将に頸を取りにいったんだ」

 「それは・・・・」

 復興作業がほぼ終わり一刀は焔耶呼びつけて説教を始めた。無論そこには思春と咲も同席させて行われた。

 「焔耶。今の焔耶はどういう立場かわかっている?」

 「義勇軍の副将であること」

 「そうだ。もし、焔耶に何かあったら兵の士気は下がり勝てる戦も勝てなくなる。それだけじゃない、俺と思春がどれだけ悲しむかわかるか」

 「・・・・・」

 「頼むから、これからは自分の立場と行動に気をつけてくれ。じゃないと俺は安心して焔耶に背中を預けられない」

 「・・・すまん」

 「わかってくれたのならいいよ」

 一刀は残りの作業をしに兵達の所へ合流しに行った。残された焔耶達は少し重い空気の中にいたが、思春が焔耶に声をかけた。

 「次は突撃するなよ」

 「あぁ・・・・」

 「一刀はああ言ったが、本当はお前に背中を預けてもいいと思っている」

 それだけ言い残すと思春も作業をしに行った。

 「わたしは、あなた達と出会って日が浅いけど。軍師としてこれだけははっきりと言える。今回の行動は行き過ぎている。確かにわたし達は今日が初戦で、勝利と言う文字が必要だったわ。だけど、この文字の本当の意味を将であるあなたが判っていなかった。一刀は義勇軍の大将なんかで終わるような人じゃない。もっと上にいける器を持っている。だから、あなたにもそれだけの考えを持って欲しい。わたしから言える事はこれぐらいね」

 その言葉を言い残すと咲も一刀達と合流しに行った。残された焔耶は暗くなりかかる夕日の空に顔を上げた。

 ・・・何をしているのだ、ワタシは。ワタシは一刀の心の支えになるとあの時誓ったばかりじゃないか。それなのに、ワタシは一刀に心配させて。明日からは・・いや、今からワタシは変わろう。絶対一刀を守りぬいてみせる。そして一刀を愛している

 焔耶は心の中で自分の気持ちを再度確認して、気持ちを切り替える事にした。こうして一刀達の初めての戦いは被害が少ない大勝という形で幕を得た。

               第九話 完

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 「第九話終了。皆さんお久しぶりです」

 「本当に久しぶりだな」

 「今まで何していた?」

 「遊んでいたとか言わないだろうな」

 「み、皆さん。己の得物なんか持って顔が怖いよ。笑顔なのに顔が怖いよ」

 「そんなのはどうだっていい!!それで、今まで何をしていた。答えろ」

 「が、学生なのでテスト勉強を・・・」

 「それならしかたがないな」

 「勉学は毎日するのが普通だろう」

 「「・・・・・・」」

 「な、なんだ。ワタシが言ってはいけないのか」

 「いや・・」

 「しかし・・」

 「焔耶が言うと説得力無いと二人は心の中でいっています」

 「「!?」」

 「どうしてわかった」

 「それは、あれですよ。作者の特権ですね」

 「・・・・」

 「ふん。いらぬ能力など付けよって」

 「・・・・」

 「そんなことより、焔耶をほっておいていいのですか?そろそろ獣になりますよ」

 「「!?」」

 「ガァ〜〜〜!!」

 「「う!!うわぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」」

 「それでは、一刀と思春が喰われかかっているのでここらでお開きにしたいと思います。それでは皆さんまた会う日まで・・・BY」

 「「たすけてくれ〜〜〜〜〜〜」」

 「カァ〜〜〜〜〜!!」

 「・・・自業自得だろ」

説明
義勇軍を結成した一刀達。そして黄巾の賊との戦いが始まる。
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コメント
狸と言う事は劉表のモデルは徳川家康?なんですか?なんとなく名前の後にもつけてみた(VVV計画の被験者)
一度その者の顔を見てまたかったからのう=一度その者の顔を見てみたかったからのう、では?(黄昏☆ハリマエ)
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