ある日の戦線メンバー
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 ゆりっぺによる『死んだ世界戦線』なるものができてから数日が経った。

「みんな昨日はお疲れ様。これで無事、この校長室は我が戦線のモノとなったわ」

 校長椅子に座って脚を組むゆりっぺ。

 もちろん働いたのは俺たちで、ゆりっぺは何もやってない。

 そんなことより、机の上に足乗せたら角度的に見えちまわないか?

「ところで日向くん」

「お、おう。なんだ?」

 もしかしてのぞこうとしたのがバレたか?

「さっきから大山くんの姿が見えないんだけど」

「大山?」

 俺と大山は相部屋だ。

 今朝も元気な姿を見てる。

 俺が寮を出るときに、準備があるから先に行ってて欲しいとは言ってたが……それにしても遅すぎる。

「彼も大事な仲間だもの。一応探してきてもらえる?」

「あいよ」

 

 

「よし、大山。ここの文章読んでみろ」

 英語の時間。

 先生に指され、僕はその場で立ち上がる。

「"He has no features, but that's his feature."」

 英文を読む。

「意味は?」

「えーと……『彼は特徴がない。しかしそれが彼の特徴だ』ですか?」

「正解だ。じゃあ大山」

 座ろうとしたところでまた指される。

「今度はその文章、主語をIに代えて読んでみろ」

「え? どうしてですか?」

「どうしてもだ」

 何か理不尽なものを感じた。

 でも先生の指示だから仕方ないか。

「えーと……"I have no──"」

 ガララララッ!

「大山ぁぁぁっ!!」

 突然日向くんがドアを開けて現れた。

「お前、こんなところで何やってんだよ!」

「日向くんこそどうしたのさ、まだ授業中だよ?」

「昨日ゆりっぺが授業に出るのも危険だって言ってただろ!? お前は聞いてなかったのかよ!!」

「しまった! 忘れてたよ!」

 つい今までの習慣で普通に授業を受けていた。

「ったく、お前ってやつは……みんな待ってんだ、ほら行くぞ」

 日向くんは入ってきた時と同じように、ドアを開けて出ていった。

「あ、待ってよ日向くん!」

 僕は教室を出る直前、先生に一礼をしてから日向くんを追いかけるのだった。

 

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 再び、校長室。

 ゆりっぺは机に肘を乗せて手を組んでいた。

 おお、これはなかなかに司令っぽい!

「……日向くん」

「なんだ、ゆりっぺ?」

「……大山くんはどこ?」

「大山ならさっきトイレに行くって出てったぞ」

「それ30分も前のことよ?」

 あれからもうそんなに経ったのか。

「ならそれだけ大変な事態なんだろうよ」

「…………」

 ゆりっぺからの視線が痛い。

「わかったよ、探してくればいいんだろ!」

「わかってるならさっさといけー!!」

 

 

「ほら走れー! ゆっくり走ってると時間伸ばすぞー!」

 体育の時間。

 今日は校庭で長距離だった。

「よし、今日はここまでー!」

 先生の号令で、みんなが走るのを止める。

「急に止まるなー! 体育委員は用具の片付けを頼む!」

 授業も終わりなので、みんなそれぞれ教室へ戻っていく。

「それと大山!」

 帰ろうとしたところで呼び止められる。

「お前はあと10分走ってろ」

「え? どうしてですか?」

「どうしてもだ」

 何か理不尽なものを感じた。

 でも先生の指示だから仕方ないか。

 僕は再び校庭のトラックへと走っていき──

「大山ぁぁぁっ!!」

 日向くんが全力で追いかけてきた。

「お前、こんなところで何やってんだよ!」

「日向くんこそどうしたのさ、まだ授業中だよ?」

「お前はトイレに行ってたんじゃないのか!? なんで校庭で長距離なんてやってる!? しかも罰ゲームみたいなことまで!!」

「しまった! 忘れてたよ!」

 つい今までの習慣でトイレの後に教室へ帰っていた。

「ったく、お前ってやつは……ゆりっぺも怒ってる、ほら行くぞ」

 日向くんは来た時と同じように、全力で校舎の方へ走っていった。

「あ、待ってよ日向くん!」

 僕はまだ体育着だったので、どこで着替えようか考えながら日向くんを追いかけるのだった。

 

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 再び、校長室。

 ゆりっぺはチャーの作った拳銃をいじっていた。

 どうやらバラして組み直すくらいはお手の物らしい。

「……日向くん」

「なんだ、ゆりっぺ?」

「……大山くんはどこ?」

「大山なら教室に着替えを取りに行くって出てったぞ」

「それ何分前のことか、覚えてる?」

「……さあ?」

「…………私もよ。それくらいならすぐだろうと思って時計を見てなかったわ」

 ゆりっぺから言葉にない圧力を感じる。

「……着替えに時間がかかってるとか?」

 ぱんっ!

「悪かった、大至急探してくる」

 校長室から出るとき、俺がいた場所の後ろの壁を確認した。

 壁には小さな風穴が空いていた。

 

 

「いいですか、一文字一文字に魂を込めて書いてください」

 書道の時間。

 今日の文字は『個性』だった。

「あら、貴方……」

 先生が僕のところで足を止める。

「……これは難しいわね」

 僕の書いた『個性』の字を見て悩む。

「普通の目で見れば個性ではないけれど、書道の目で見ると個性的ね……」

 なぜか僕が個性的と褒められた!

「ねえ、貴方……大山くん」

「は、はい!」

「なんで書道の文字をゴシック体で書こうとしたの?」

「え? いや、普通に書いたらこうなりました」

「そう、じゃあ0点ね」

 何か理不尽なものを感じた。

 でも先生の指示だから仕方ないか。

 ガララララッ!

「大山ぁぁぁっ!!」

 突然日向くんがドアを開けて現れた。

「お前、こんなところで何やってんだよ!」

「日向くんこそどうしたのさ、まだ授業中だよ?」

「お前は制服を取りにいってたんじゃないのか!? なんでこんなところで……ゴシック体? なんか書いてるんだ!!」

「しまった! 忘れてたよ!」

 つい今までの習慣でそのまま授業を受けていた。

「急げ! ゆりっぺはもうキレる寸前だ!!」

 日向くんは入ってきた時よりも激しくドアを開け、そのまま走っていった。

「あ、待ってよ日向くん!」

 僕は教室を出る前に、墨汁だけは片付けてから日向くんを追いかけるのだった。

 

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 再び、校長室。

 ゆりっぺはなぜか札束の枚数を数えていた。

 どこから手に入れたのか、きっと聞かない方が身のためだ。

「やっぱ諭吉はいいわー」

 全部一万円札かよ……。

 机に積まれた束だけでも数百万はあるんじゃないだろうか。

「なによ、ジロジロ見て。あげないわよ」

「別にいらねえよ」

 ……怪しい、怪しすぎる。何なんだあの金は。

「ねえ、日向くん」

「なんだ、ゆりっぺ?」

「今度からその時いないメンバーのことは無視しようかと思うの」

「……いいんじゃないか? そっちの方が円滑に進みそうだ」

 校長室の中に大山の姿はない。

 さすがの俺も、もう大山を探すのに疲れた。

「そう、じゃあ次のミッションね。これは大山くんと日向くんの2人でやってもらいたかったんだけど仕方ないわ。日向くん1人でよろしく」

「ちょっと待て、2人分の仕事を1人でやらなきゃならないのかよ!?」

「無視した方が円滑に進むって言ったのは貴方でしょ? がんばりなさい」

 まったく、なんて顔してやがる。

 まるで悪戯が成功して喜ぶ子供の顔だ。

 今日も変わらず、事はゆりっぺの思い通りに進む。

説明
とりあえず簡単に書いたのを1つ上げてみました。Angel Beats!のパロディとなります。時間軸としては-Track Zero-のちょっと後ですね。麻枝准お得意の天丼ネタをどこまで再現できたか……自信ない。
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AngelBeats! 大山 日向 sss 

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