苗木君の誕生日(後編) |
デパート手芸コーナーにて
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(じーーーーー)」
買い物帰りの主婦や裁縫好きの中高生などが和気藹々と毛糸や裁縫用の布などを吟味している中、
明らかにそのような空気とは無縁の、既にオーラともいうべき雰囲気を纏った女がリボンコーナーを凝視している光景はもはや場違いな事この上なかったが、本人は頗る真剣である。
「(・・・・リボンと偏にいっても色々あるわよね・・・・・色だけにしても何色がいいのかしら・・・?
プレゼントに使われる色としては赤が一般的・・・?
だけど苗木君は男の子だから青とかの方がいいのかしら?それにこっちは・・・・
は、半透明!?いやこれじゃ全部丸見えじゃないっ!?
何を考えてこんな・・・いやリボンなんだから別にいいのか・・・そうよね、普通は箱とかに
するものだし、私みたいに自分の身体に・・・・・・
て、ちょっとまって?私今、何気にプレゼントする時、は、裸にリボンで考えてた・・!?
な、何を考えてるの響子!何も裸になる必要はないでしょ!
そんなの普通に服の上からでいいのよ!?・・・・・で、でも舞園さんには負けたくないし、いやプレゼントに勝ち負けはないのだけども・・・・・・・そ、それに自分をプレゼントするってことは、結局はその後な、苗木君のす、好きに出来るというわけで・・・・////////)」
「ママー、あのおねいちゃん何かすっごいブツブツ言ってるー?」
「しっ!見ちゃいけません」
「はっ・・・・・・・!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私は一体何をしてるのだろうか。あのコーナーを出てからの記憶が少し曖昧だ。
私は苗木君のプレゼントを買いにデパートに来たはずなのに何故自分をプレゼント等という考えになったのだろう・・・
まあ、間違いなく全てはあの本が原因だ。あんな馬鹿な記事に本気になってしまうなんて・・・・
「そうよね・・・普通に考えてあんなプレゼントがあるわけ無いじゃない。」
自分でも気付かなかったが私は意外に逆境に弱いのだろうか?普段はそんな事はないと思うのだが・・・なんだか解らないけど苗木君の所為ね。
苗木君と出会うまではこんな事は一度もなかった。きっと苗木君の普段のあの弱弱しい物腰が移ってしまったのだ。
まあ・・・・時々、自分には出来ない事や出来なかった事を平気でしてしまう彼は少し・・・・・・た、頼もしかったりもするのだけども・・・・///
「ま、まあでも、リボンはどのみち必要よね。最終的にプレゼントに使うには間違いないのだから・・・っ」
頭に浮かんだ恥ずかしさを振り払うように自分にそう言い聞かせ、目の前のリボンを手に取ろうと手を伸ばしたが、その際にいつの間にか隣に来ていた人と手をぶつけてしまった。すぐに謝ろうと隣の人を見てみるとそこには・・・・・
「あっ、すいません・・・・・・て、舞園さん!?」
「こちらこそスイマセン!急いでいた・・・もので・・・・・・って霧切さん!?」
昼の件からここまで一向に顔を合わせなかった舞園さんがいた。確か彼女はあの後、今日はこれから仕事があると学校から仕事場に行った筈なのに・・・。
「・・・・・・・仕事はどうしたの、舞園さん? それともあれはただのサボりの口実だったのかしら?」
「人聞きの悪いこと言わないで下さい、ちゃんと頑張って終わらせてきましたよ? 何といっても明日は『大切な』日ですから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
彼女と少しの間にらみ合うように無言で見詰め合っていたが、こんな事をしていても時間の無駄だと視線を逸らした。
何しろまだプレゼントの内容すら決まってないのだ。こんなところで時間を取られている場合ではない。
そう思い早くこの場を去ろうと踵を返したが、その時ふと彼女が手に持っていた雑誌が目に飛び込んできた。あれは・・・・・!
「あ、あなたそれは・・・あのコーナーにあった!!?」
「え?・・・こ、これはその・・・・ちょっと参考にしただけですよ?・・・・・そ、それが何か!?」
彼女はそれがどうしましたか?と惚けるが私は見逃さなかった。
何故なら彼女が今後ろに隠すように持っている雑誌を指で抑えてるページは間違いなく・・・・あの『プレゼント』が書かれていたページなのだから!
しかもそれを示すかのようにココはリボン売り場!!ここから導かれる答えは一つ!
・・・・・・・・・・ここまでいえば解かるわね?響子!!
『それは違うわ!』
「なっ!?」
「あなた・・・そんなことして恥ずかしくないの!?じ、自分にリボンを巻いてプレゼントなんて!!」
「な、なんでそれを・・・////!まさか・・・・霧切さんもこの雑誌をっ!?・・・・・・ってそれを知っていてココにいるってことは霧切さんだって考えたんじゃないですか!!」
「わ、私はそんな事考えてないわ(思いとどまったし!)///!貴方と一緒にしないでちょうだい!」
「どうでしょうね!実際ここにいたわけですしっ?・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、そうですか、解かりましたよ。霧切さんが止めた理由・・・」
「・・・・・・・・・なんですって?」
私の言葉にすぐ反論してきた舞園さんだったが、急に止まったかと思うと謎は解けたとばかりに落ち着きを取り戻し、いきなり変な事を言い出した。
私が止めた理由ですって・・・・?
私が訝しんでいると彼女は私の身体(特に胸の辺りを重点に)見て黒い笑顔でこう呟いた。
「・・・・霧切さんの体型じゃあ・・・・・苗木君・・・・がっかりするかもしれませんもんね?(にこ)」
ブチッッッッッッ!!!!!!!!!!!
「なん・・・・・ですっ・・・・て・・・・・・・!?」
「ごめんなさい、私ったらそうも知らず変に思い込んで・・・・・・あ、でも大丈夫です。ちゃんとこのプレゼントは私が用意しますから♪」
あまりの暴言に言葉を失う私を無視して舞園さんは勝手に自己完結をしだした。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・いいわ、舞園さん。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・げる」
「えっ?」
「私だと苗木君が喜ばないかどうか・・・・試してあげるっって言ったのよ・・・!?」
そう言い切る私に舞園さんは少し驚いた表情をするが直ぐにまるで私がこうする事を解かっていたかのように
不適な笑みを浮かべる。
「!?・・・・・・・・そうですか、やっぱり・・・・・・・・・最初からそう言えばいいんですよ。自分も『コレ』をしようとしてたって!
・・・・でも、そうですね。勝負は公平であるべきだと思います・・・・・・だけど私・・・・・・負けませんから!」
「ええ、奇遇ね・・・私も・・・・負けるつもりはないわ・・・・・・・!」
そう宣言しあうと私は赤い半透明のリボンを、彼女は青い半透明のリボンを掴んでレジに向かった・・・・・。
翌日・・・・・大会を予定より早く終え帰ってきた朝比奈さんと大神さんに、まさに完全武装で踏み込まんとしていた所を見つかり(空き教室に苗木君は誘い済)
こっぴどく叱られたのは言うまでもなかった。ああこれも・・・・
「・・・二人ともなんでこんな所で正座させられてるの?」
「・・・苗木君の所為ね」
「・・・苗木くんがにぶいせいです」
「僕!?」
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