ハナカゲ |
影の色はなんだという問いに答えるならば、それは土色だ。
正確には土を暗くした、闇に浮かぶ大地の色。
光を浴びることなどなく、絶えず誰かの背を見上げるだけの存在。
それが影なんだ。そう、結論付けた。
なぜ生きているのか。
問いに対する回答はわずかな笑みで、それを嘲笑と捉えた彼女は再び物を投げる。今度は置時計。瞬きをすることなく飛来する固形を見届ける。
やはりリモコンよりも重くて痛かった。
外れた電池がフローリングを転がって壁にぶつかって止まる音を聞いた。
ぱたぱたと床に広がる斑点の色は、純粋な赤より少し淀んだ色をしていた。
避けなかったことに驚いたのか、血が出てきたことに驚いたのか、その両方なのか。
大きく見開かれた瞳の青に吸い込まれそうになる。
綺麗だと思った。純粋に。場違いに。
それぞれの斑点が1つの池になるころに、2階へと上る音を聞いていた。
花の影は地面に這い蹲り、花は影を見下す。
鮮やかな色合いで空に伸びる。
無彩色なままに地に伏す。
侮蔑と、憎悪と、嫌悪。
隣り合うゆえに生ずる不協和音。
それでも影は花から離れるわけにはいかない。
影のない花は光の中にはない。
光を浴びるということは、影を背負うということと同義だ。
ならば、その影になればいい。
日光を面に浴びて、咲う花を見ることができるのなら。
それだけが影の存在理由なのだろう。
たとえその笑顔の先が、影ではなかろうとも。
鏡の中の少年を見つめる。
上着を脱ぎ捨てた身体の、首から下の面積のほとんどが肌の色ではなかった。
赤と青と紫。まるで抽象画のようだと他人事のように眺めていた。
不自然なほどに痛みはなかった。当然だろう。
影を踏むことに意味はない。影それ自体はこの世界に定着していない。
身寄りもなく、肉親もなく、友もなく。
それでもなおこの世に形を残しているのは、偏に花の存在が故。
首筋と右手の甲、左二の腕に左ふとともと臍の上部。鋭いまでに綺麗な切傷の痕。
そして右前頭部。触れると鈍く痛む。
数多ある傷の中で価値を見出せるのは、きっとこれくらいだろう。
いとおしむように指先でなぞれば、生まれてくる後ろぐらい熱情。
影の死は、花の死。
儚げな花の花影が恐れることは、ただそれだけ。
もう一度鏡を注視する。
紅が糸を引く頬の隣で、昏く輝く瞳の色はこげ茶色。
闇にたゆたう大地の色だった。
あの、一応SHUFFLE!の過去稟+楓です……。いわなきゃわからんですよねー。鬱ネタです。病んでます、稟が。
アニメ(空鍋)の脅威で忘れられがちですが、「自分を恨んで楓がよくなれば」なんてことを“軽い”気持ちで考える段階で、かなり稟は病んでいたと思うの牙無しだけですか?
説明 | ||
サイトに飾ってあったssを引っ張り出してみよう! コレをチョイスした理由はSHUFFLE!の現在の影響力の調査とかもっともらしいことをいってみるよ! 鬱ネタは制限なし……でいいんだよね。というかそもそもコレSHUFFLE!で出していいのかな? 一応流血注意 | ||
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コメント | ||
TETSU様:アニメ改変(改悪)で楓が病みに病んだため見過ごされがちですが、過剰な自己犠牲はそれだけで歪です。秘密が露見することで恐れたのは楓の崩壊ではなく、稟自身の崩壊だったのかもしれません(牙無し) そうか…あんな嘘を貫き通そうとした結果、稟の精神がまともだっていう保障なんて無かったのですね。発狂してないだけでも凄いですが、それでも何処かで病んでたり歪んでたのかもしれません(TETSU) |
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