本日はすれ違い注意報 part3
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キーンコーンカーンという放送音が校内に響き、今日も学校の終わりを知らせる。

 

今日は図書委員の担当日ではないので早く帰れる。

 

ユズはバレー部に入っているので一緒には帰れない。

 

靴を履き替えて校庭に出ると諸部活動をしている部員たちの声が聞こえてくる。

 

あと、二か月したら春の高校総体がある。

 

それまでに、レギュラー争いをしつつ、新入生の対応もしなければならない。

 

 

 

校門を出て歩いていると、田んぼ道で陸上部の部員たちが前から走ってきた。

 

使い込んだトレーナを着た上級生の後を真新しいダボダボのトレーナを着た新入生が必死で追いか

 

けていく。

 

 

「門倉も大変なのかな…。」

 

 

門倉はキャプテンだから部員と新入生どちらも両立させなければならないのか。

 

だったら…

 

 

 

 

「ふはははははは、せいぜい苦しめ門倉よ!日頃の天罰じゃー!!」

 

 

 

声高らかにそう言いながら鞄をぶんぶん振りまわす。

 

 

 

ガシッ

 

 

 

突然、後ろから手を掴まれ鞄の回転が止まる。

 

 

「誰が苦しめって?」

 

 

やばい…。

 

頭の中でサイレンが鳴り響く。

 

本能が告げる、振り返ってはいけないと。

 

ただ、ひたすら田んぼがえんえんと続く道をまっすぐ見据える。

 

 

「ほう、無視とはいい度胸だな。」

 

 

ギュウ――――――

 

 

「いだだだだだだだだ!!」

 

 

腕を振り払おうと後ろを向いた。

 

門倉は笑っている。

 

目は笑ってないが。

 

 

「で、誰が苦しめって?」

 

 

にこりと笑いながら問いかけてくる。

 

これは…怒っていらっしゃる!

 

くっ、この危機を乗り切るにはあの作戦しかない。

 

 

「やあ、門倉君こんにちは。部活は大丈夫なの?」

 

「やあ、こんにちわ、夏川さん。部活なら今日は顧問がいないから休みなんだよ。で、さっきの質

 

問に答え「あ!あんなところに門倉のお母さんが!」

 

 

門倉の手を掴む力がゆるんだ。

 

今だっ!

 

あとは全力で逃げれば逃げられる。

 

大きく一歩踏み出して…。

 

 

グイッ

 

 

「こんな古い手に引っ掛かるかよ。」

 

「ぐえええええええ!!」

 

 

シャツの襟を掴まれて引き戻される。

 

こ、殺す気か、こいつ!

 

 

「…おまえ、もうちょっと女らしい声でないのか?」

 

 

ふっ、私に女らしさを求めるなんてへそが茶を沸かしちゃうね。

 

だけど、その憐れむような顔はやめて。

 

 

「女らしくなくて悪かったね。」

 

「別に。今に始まったことじゃないだろ。」

 

 

…知ってるなら聞くなよ!

 

逃げるのをあきらめて、いまだシャツの襟を掴まれたまま大人しくしていると…

 

 

「おい、さっさと帰るぞ。」

 

「…はい?」

 

 

帰る?門倉と?

 

え―――――――!?

 

まさか、門倉は私のことが…。

 

や、やばい。

 

鳥肌が!

 

 

「か、門倉、私にそんな気持ちがあったの!?」

 

「…おい、なんか勘違いしてないか?」

 

 

門倉はものすごく怪訝そうな表情をしている。

 

私こそ怪訝な表情したいんだが。

 

 

「まだ、明るいけど、今の世の中、なにが起こるかわからないだろ。それに帰り道一緒だしな。」

 

 

はあーと溜息を門倉がつく。

 

 

「言い訳はいいよ。」

 

「言い訳じゃねえ!事実だろ!!」

 

 

お前といるといつもより疲れる、とか言っているがこの際総スルーする。

 

二人で田んぼ道を歩く。

 

子供のころよく二人で泥だけになって歩いていた道だ。

 

空が少し赤くなっている。

 

 

「おい、どこ行くつもりだ。」

 

 

いつのまにか家の前に来ていたらしい。

 

 

「あ、ぼーとしてた。」

 

「いつものことだろ。」

 

 

コイツ…!

 

いちいち、腹立つことを!

 

でも、どこかこのふざけた会話のキャッチボールを楽しんでいる自分がいる。

 

まあ、話すことは楽しいからね。

 

 

「じゃあ、また、明日ー。」

 

「おう、また明日な。」

 

 

空を見ると真っ赤に染まっていた。

 

今日も一日が終わる。

 

 

 

説明
本日はすれ違い注意報part3です。
すれ違う少女と少年をシリーズで書きたいと思っています。
今のところ切ない&甘い傾向皆無です(泣)
こんな小説で恋愛のタグを入れていていいのか…。
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