真・恋姫無双二次創作 〜盲目の御遣い〜 幕間其之弐 |
全部、失くした。
志を貫く為の剣を折られ、
身を守る為の盾を砕かれ、
それらを握る為の腕をもがれ、
前へ進む為の足を断たれ、
踏みしめる大地すらも崩れ落ちるような、
そんな絶望が、私の心を満たしていた。
『一体いつまで、貴女は逃げ続けるつもりなんですかっ!?』
『―――――私だって、辛かった!!』
『貴女は、何かをした?優秀な仲間がいる事に甘えて、自分の理想を叶えてもらおうとしてはいない?』
何度も反芻される言葉。
何も言い返せなかった。
ただ謝る事しか出来なかった。
知らず知らずの内に……ううん、これもただの言い訳。
自分の未熟さ。
甘え。
悔しくて、後ろめたくて、諦めてしまいそうになる。
でも、だからこそ、私は逃げちゃいけない。
私達は、確かに間違っていた。
それに気付かず、間違いを犯してしまった。
でも、
『私達の力は、まだまだ弱いです。『もっと強ければ』『もっと力があれば』私も、何度もそう思いました。……でも、今の私達の力でも、救える人が居る。そして、その為には貴女の力が必要です』
差し伸べられた、綺麗な手。
『力を、貸してくれますか、劉備さん』
あの掌に、どれだけのものが詰まっていたんだろう。
悔しくて、後ろめたくて、それでもあの人は諦めなかったんだ。
―――――知りたい。
あの人はどうして、自分を諦めずにいられたんだろう。
あの人はどうして、弱い自分を認められたんだろう。
あの人はどうして、それでも前に進めるんだろう。
深夜。
連合軍駐屯地、劉備陣内。
「朱里ちゃん、そろそろ休んだ方がいいんじゃない?」
「ううん、もうちょっと、もうちょっとだけだから」
天上は既に漆黒に塗り潰され、風を受けてパチパチと弾ける火の粉の音だけが、静寂の中に漂っていた。
そんな中、天幕の中に伸びる、決して長くはない二つの人影。
覗き込むようにして問いかける雛里に答えつつも、朱里の視線は木卓の地図に釘付けとなっていた。
その姿には、つい先刻までの危うさや翳りはなく、その瞳には何らかの意志が灯っているようにも窺えた。
「……もう、大丈夫?」
「……うん。御免ね、雛里ちゃん」
「いいよ。だって、友達だもん」
微かに笑いあう二人。
短い会話。
それだけで済んでしまう程の繋がりが、二人の間にはある。
「……北条さん、いい人だったね」
「……うん」
ふいに止まる指先と視線。
思い返す軍議の席。
『私の、自己満足ですよ』
『救えるのに救わなかったら、私は一生後悔し続ける。それが嫌だからです。ただ、それだけなんですよ』
自分が盲目になっていた事を、思い知らされた。
ただ単純に、悔しかった。
それと同時に、
(……羨ましいなぁ)
それは、自分の意志を貫き通せる心根に対してか。
それとも、憧れの姉の傍にいられる立場に対してか。
あるいは、その両方か。
真意を知るは彼女のみだが、羨望の念を抱いている事は間違いなかった。
そして、
(お姉ちゃんに怒られたのも、久し振りだな)
幼い頃から、滅多に怒る人ではなかった。
その分、怒った時の怖さは物凄くて、
でも、それは自分を大切に思ってくれている証でもあって、
なのに、
(私、まだ『あの頃』のままだ……)
悔しかった。
情けなかった。
自分を変えたかったはずなのに。
お姉ちゃんに追い着きたかったはずなのに。
そして、それと同時に、
(お姉ちゃんは、どうして変われたんだろう……?)
女学院に入った理由にも少なからず入っていると思う、あの人の男性恐怖症。
重度ではなかったけれど、お父さん以外の男の人と話している所なんて、見た事がなかった。
だから幼い私は『男の人は怖いものなんだ』なんて勘違いをしてしまった訳で……
(でも、あの人と一緒にいる時のお姉ちゃんは、凄く普通だったというか……)
互いの言葉に自然と耳を傾け、
互いの意志を自然と把握し、
互いの行動を自然と受け容れる。
確かに未だ小さな行き違いはあるようだけれど、もっと深い所で通じ合っているような。
(それに、昔よりも表情が柔らかくなったような気もしたし……)
そう、まるでその事に歓びを感じているような、自ら望んでいるような、そんな何かがあの時のお姉ちゃんからは感じられた。
あの人の為に本気で怒って、
あの人の傍に自然に寄り添って、
―――――お姉ちゃんは、どうしてあの人を選んだんだろう……?
再び浮上する、しかし今度は後ろめたさを含まない、純粋な疑問。
生まれた欲求に混迷を隠しきれない朱里であった。
(続)
後書きです、ハイ。
大変長らくお待たせいたしました、『盲目の御遣い』久々の更新です。
期末試験期間の山場を越えたので、リフレッシュを兼ねて執筆してしまいました。
いやぁ、長かった……年末年始にPCが入院なされ、その後は実験レポートやプレゼン発表に追われ、それが終わったかと思えば驚きの事実が発覚しまして、
……え〜っと、早い話が、ダブりが決定しましたwwwww
HAHAHAHAHAHAHAHAHA!!笑えよ、笑えばいいだろ!!
……親には本当に申し訳ない事をしてしまいました。結構講義も真面目に受けてましたし、試験も頑張ってたんですけどね。
就職活動も全部おじゃんに。まぁ、本格的に進路が定まっていなかったというか、色々と迷ってたので『いい機会かなぁ』とかポジティブに捉えようと必死です。
まぁそんな訳で、今後の更新期間が早くなるかもです。人はこれを『現実逃避』という。
さて、
以前から告知していた通り、これからは暫く『盲目』の更新が中心になると思います。
最近はリレー小説やら『蒼穹』の集中更新が続いてましたからね、そろそろ書かないと忘れられそうですしwwww
今回は蜀陣営の二人にスポットを当てましたが、いよいよその他の勢力との絡みが本格化します。
宵の深まる水関。
弔いに向かう白夜の前に現れる影とは?
雪蓮達の企みとは?
そして、そんな彼の姿を目にした他勢力の者が?
次話『魂魄』でお会いしましょう。
でわでわノシ
…………肉体改造も始めてみようかな?
説明 | ||
投稿48作品目になりました。 『盲目』久々の更新です。 まだ試験期間中なので次の更新はもうしばらくお待ちください。 拙い作品ではありますが、いつものように感想意見その他諸々、一言だけでも書きこんでくれると嬉しいです。 では、どうぞ。 |
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コメント | ||
退助さん、コメント有難うございます。お待たせしてしまいまして……本当にスイマセンでしたorz もう少しで試験期間も終わりますので、今しばらくお待ちくださいませ。(峠崎丈二) うれしいです・・久々のアップ・・待っておりました・・感激の涙が流れ出ております!!(退助さん) ZEROさん、コメント有難うございます。もうすぐ期末試験期間も終わりますので、もうしばらくお待ちください。(峠崎丈二) ドンマイですジョージさん。こんなのにも負けず、めげずにがんばってください。(ZERO&ファルサ) mokiti1976-2010さん、コメント有難うございます。ええ、そう思おうと必死ですwwww(峠崎丈二) 後々の人生の肥やしになると思えばそれも良しかと。更新楽しみに待ってます。(mokiti1976-2010) ヒトヤ犬さん、コメント有難うございます。グヒャヒャヒャヒャヒャヒャwHAHAHAHAHAHAHAwYA―――――――――――――HA―――――――――――!!!!!!(峠崎丈二) おやっと?さん、コメント有難うございます。氷河期なんて言われてますしね……こないだ行ってきた就活イベントで新聞社から『このご時世についてどう思いますか?』って取材まで受けましたし。(峠崎丈二) 鬼間聡さん、コメント有難うございます。頑張らせていただきますです、ハイ。(峠崎丈二) 村主さん、コメント有難うございます。えぇ、前向きに捉えようと必死ですよ(大事な事なのでry)頑張ります、ハイ。(峠崎丈二) それではお言葉に甘えて、スゥ〜・・・・・ゲヒャヒャヒャヒャWフヒーヒヒヒヒヒWHAHAHAHAHAW(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ) まぁ私もダブリましたけど、今のご時勢そんなにきにしなくていいかと。卒業さえすれば全然おkですよw更新は周りが落ち着いてから、期待してます。(おやっと?) 頑張ってください。更新楽しみにしてます。(鬼間聡) あー、ドンマイですw 前向きに捉えられおられるみたいなので・・・こんなご時世ですし 焦ってもですかねw 頑張りましょう(村主7) |
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