DAGGER 戦場の最前点 第02話
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【view of アイシス・リンダント】

 

 

 

「…なに、これ?」

 

自分の目に見えているものが、理解できない。

 

見覚えのない部屋、柔らかい枕、清潔なシーツ、暖かい毛布。

 

夢?

 

だとしたら、最低な夢だ。

 

私の手に届かないものばかりが、ここにある。

 

他には、テーブルが一つあるっきり。

 

ベッドの脇にきちんと並べられていた自分の靴を履き、窓へと歩み寄る。

 

カーテンを開け放った。

 

差し込んでくる日差しが、うっとうしい。

 

それを無視して、窓を覗き込んだ。

 

「………」

 

見下ろした地面が、遠い。

 

ここは、二階みたいだ。

 

見えるのは木ぐらいで、隣の家さえない。

 

森に囲まれてる?

 

ロアイスの街じゃない?

 

どうやってここまで来たのか、それを思い出そうとして、途中でやめる。

 

それがどれだけ無駄なことか、自分が一番よく分かっていた。

 

ここが、私の死に場所。

 

その事実は、変わらない。

 

抵抗するつもりなんてないし、そんなことはしても無駄だ。

 

どうせ、今までと変わらない。

 

それに、最低最悪よりも下なんて、存在しない。

 

カーテンを閉めて、後ろを振り返る。

 

そこにあるのは、ここから出るためのドアだ。

 

「………」

 

外へでようか数秒だけ悩んで、結局、ベッドに戻る。

 

目を覚ましたときと同じ格好で寝ころび、目を閉じた。

 

何をしようと、何も変わらない。

 

なら、私は、何もしない。

 

そう決めたんだ。

 

 

 

 

 

ぼんやりと濁っていた意識に、音が響く。

 

今のは…たぶん、ノックの音だ。

 

無視。

 

相手をする気なんて、ない。

 

もう一度、同じ調子でノックされる。

 

何度やっても同じだ、返事なんてしない。

 

足音が一つ、部屋の中に入ってくる。

 

私の横で、ぴたりと止まった。

 

見られている? 何かされる?

 

考えているうちに、足音が部屋の奥へと向かう。

 

窓のあたりで止まると、今度は迷いなくドアへと向かっていった。

 

何もしないで、出て行くの?

 

「置いておく。食べ終わったら、降りて来てくれ」

 

男の人の声に、目を開ける。

 

既にドアは閉じていて、後ろ姿さえ見えなかった。

 

私が起きていたことに、気づいていた?

 

食べるって? 何を…?

 

そう思って、足音が向かっていた窓の方へと、目を向ける。

 

テーブルの上には、さっきまでなかった料理が、湯気を立てていた。

 

匂いに釣られて、近づいてみる。

 

焼きたてのパンと、皿の底が見えないほど具だくさんのスープ。

 

水さしと、空のグラスまで置いてあった。

 

こんなに豪勢な朝ご飯なんて、見たことない。

 

しかも、食器は全て、この小さな部屋に似合わないくらいに豪奢で…。

 

まったく、わけが分からない。

 

「…っ」

 

美味しそうな匂いに、つばを飲む。

 

そういえば、ここ最近、ろくに食事もしていなかった。

 

知らない人が用意した料理なんて…と思ったところで、自分の馬鹿さ加減がイヤになる。

 

例え、毒が入っていて、それで苦しんでも、たとえ死んでも、何も困らない。

 

だって、ここで殺されても、後で殺されても、変わらないんだから。

 

何も考えず、無心で手を動かす。

 

気が付けば、料理が冷める前に、全て食べ終えていた。

説明
第02話です。
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