新生・恋姫無双 プロローグ
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薄暗い影の中で立ち尽くす一人の男

 

 

 

彼の名は北郷一刀

 

 

 

剣鬼と呼ばれた祖父(北郷 正宗)を持ち

 

 

剣聖と謳われた父を持つ少年である

 

 

その一刀は今、祖父や共に学ぶ門下生に囲まれ深い森の中にいた。

 

 

 

「良いか、一刀。我が北郷流の動き、とくと見せてみよ。」

 

 

 

−−−−コクッ

 

 

祖父の言葉に頷く一刀

 

その時、彼からとんでもない威圧感が生まれ辺りを支配した。

 

 

−−−−ゴクッ

 

 

今の息呑みは誰のモノなのか?

 

 

それほどまでに辺りを包む空気は緊張している。

 

 

 

 

−−−−パキッ

 

 

 

 

辺りを支配する重苦しい空気に耐え切れなくなった一人が足を一歩引いたとき、地面に転がっていた一本の小枝を踏み折った音がその切欠となった。

 

 

−−−−キンッ・・・・・ゴォッ・・・・・・ドォンッ!!

 

 

静止していた一刀の姿がぶれたのち、甲高い音と重圧の音が辺りに木霊する。

 

 

−−−−ギッ・・・・ギギギギ・・・・・ドォォォンッ!!

 

 

痛々しい音と共に一刀の周りに生えていた木々が折れた。

 

 

一本は鋭い何かに断たれ、また一本は粉砕され、また一本は地面に落ちた途端に粉々になって散った。

 

 

「見事なり。斬・拳・勁 この三位一体の技が基本であり奥義の要ともなる。皆も良く見たな?」

 

 

−−−−コクッ

 

 

正宗の言葉に門下生一同が頷く。

 

「お前達もすでに一刀と同じ領域にいる。一刀は【拳・蹴・武・氣】を十年の年月をかけて磨いたが、お前達はそれぞれにあった能力を重点的に磨き、今やその力は一刀をも超えているだろう。」

 

 

 

−−−−ゴクッ

 

 

 

正宗の言葉に誰かが息をのむ。

 

今見せた一刀の武の位を超える位置に自分達はいる。

 

今まで師範に鍛えられては来たが、自分ではその言葉を信じられないからだ。

 

 

「これからのお前達に必要な物は、自分自身を信じるという自信だ!よってこの場にてお前達に課題を与える。」

 

 

正宗はそういうと得意な武ごとに分けた列の先頭者に書状を渡す。

 

「師匠、これは?」

 

【武】の先頭者が代表し正宗に質問をする。

 

「これはこれから半年をかけてお前達に達成してもらう試練だ。お前達にはそれぞれ元となる基本は全て教え込んできた。よってこれからの半年は本堂に顔を見せる必要はない。そこに書かれている課題を達成したら戻って来るが良い。その時こそ、今の自分の殻を破るキッカケになるだろう。」

 

正宗はそう言うとその場で瞑想に入る。

 

正宗が瞑想に入ると、各列の先頭者達は自分の列の者達に課題の内容を話していく。

 

 

 

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「各人、課題の内容は理解したな?」

 

 

「「「「「はいっ!!」」」」」

 

正宗の質問に門下生一同が力強く返事をする。

 

「ならば本日はこれにて解散。諸君らとの再会を楽しみにしている。」

 

「「「「ありがとうございましたっ!!」」」」

 

正宗との話も終わり、門下生達はみな決意の篭った目でその場から立ち去っていった。

 

 

 

「一刀よ、お前は課題をどうする?」

 

門下生達が立ち去ると、正宗は一刀に話しかける。

 

「もちろんやるさ、俺はまだ先輩達に届かないし。それに学校も休みに入る。何時もの一式を持って山にでも篭るよ。」

 

一刀はそう言うと、呼吸を整えつつ自分の切り倒した木を持ち上げ、元の切り株の上に置く。

 

すると切り口がピッタリと塞がり元の一本の木に戻った。

 

「戻し斬りか。だいぶ腕を上げたようだな?」

 

「そうでもないよ。霧崎先輩なら【拳】でも【勁】でも復元させられるだろうけど、今の俺の力じゃ【斬】ででしかこれはできない。まだまだ修行が足りないよ。」

 

正宗の評価でも溜息を吐く一刀。

 

「そうか。では、皆と同様さらに成長したお前を見るのを楽しみにしているぞ。」

 

正宗はそう言うとその場から立ち去っていった。

 

「俺はじいちゃんや父さんに勝つのが今の目標だからね。必ず今よりも強くなってやるさ。」

 

一刀はそう決意を胸に帰路についた。

 

 

 

 

後日、一刀は学校が終わると同時に寮に外泊許可を申請し、許可が下りると同時に大きなリュックと一包みの袋を持って旅立って行った。

 

 

 

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〜どこかにある樹海の中〜

 

 

 

一刀は今、北郷道場の中でも指折りの者しか来ない樹海の中でキャンプを張っていた。

 

目的は勿論自身の力を高めるためだ。

 

しかし当の一刀は樹海の中に隠れるように洞窟の中に日夜篭り瞑想に耽っている。

 

 

 

 

・・・・・一日が過ぎ

 

 

 

・・・・・・・・・二日が過ぎ

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・三日が過ぎた

 

 

 

 

しかし一刀は【食料を探す・飲み水になる物を探す】など必要最低限のことでしかその場を動かない。

 

 

いったい彼は何を思い、何を考えて瞑想しているのだろう。

 

それは北郷一刀本人にしかわからない。

 

 

 

 

一刀が樹海に篭ってから早一週間が過ぎたある日の昼下がり、今日もただ瞑想に耽っていた一刀が何かに導かれるように歩き出した。

 

 

 

一刀が赴いた場所は、樹海の中でも更に奥深く、夜に入り込んだら迷うことは間違いのないほど入り組んだ先にある薄暗い洞窟であった。

 

何の躊躇もなく洞窟に入っていくと、その中は地下へと続く螺旋状の通路であった。

 

 

只管通路を進んで行く一刀。

 

 

いく時ばかりか進んでいくと、地下深くには似つかわしくない光を放つ泉。

 

そしてその泉の奥には異彩な輝きを放つ鏡が祭られていた。

 

 

「・・・・この鏡は?」

 

 

一刀は吸い込まれるかのように鏡に手を伸ばす。

 

 

 

しかし、その瞬間

 

 

 

−−−−カッ!!

 

 

 

鏡がいきなり眩い輝きを放つ。

 

 

 

一刀が覚えているのはそこまでであった。

 

 

 

次に目覚めたとき、一刀は何処かも知らぬ荒野にいた。

 

 

 

この時より乱世に羽ばたく北郷一刀の物語が幕を開いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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