「一つ聞きたいことがあるんだが、かまわないだろうか？」

友人からの連絡は妙にせっぱ詰まったような、困ったようなものだった。

っていうかなにがあったと身構える光子郎に、異世界の友人・クロノは情けなさそうな顔でこう聞いてきた。

「なぜ、僕は、この世界のオンナノコ３人から菓子を貰っているんだ？」

別に誕生日でも何でもないはずなんだがと真剣に聞いてくる彼はおそらく、なんの他意もない。

きっと勢いで受け取ったものの、なぜと聞き返せなかったのだろう。無意味なプライドかなにかに負けて。

それでこちらにお鉢がすっ飛んできた、と。

（迷惑な）

内心だけで本音を吐き、光子郎はそれでも戸惑う彼にレクチャーを決める。

「今日は２月１４日。この世界、正しくはキリスト教という宗教においての祝日です」

「あぁ。そちらはいくつもの宗教が成立してる世界だったか。でもそれがなんで菓子につながるんだ？」

「それはこの国の菓子業界の戦略ですが、順を追ってはなしますね。

祝日の由来は聖人の殉職です。いわば命日･･･法事なんですが、その聖人の名が聖ヴァレンタイン（聖バレンティヌス）という方です」

「ますますわからないぞ、光子郎。しかも殉職ということがいったいどういう風にコレにつながるんだ？」

「ですよね。彼のそもそも殉職、処刑の理由は、当時の情勢によります。その頃は志気に関わるとして、兵士は出兵が決まると結婚をすることができませんでした」

「そういうものなのか？すまん、続けてくれ」

「いえ、そう思うと思いますよ、比較的誰でも。

実際その法を疑問視した聖バレンタインはそんな禁じられた恋を認めるという当時の方針の真逆をとった人です」

「それが原因で処刑？」

「あきれたものでしょう。ともかく彼は彼の信念を持って、恋人たちを祝福し続けました。

そして彼に祝福された恋人たちが、その死を悼み、冥福を祈り、そのついでに自分たちが祝福された恋人であることを感謝し互いに贈り物を贈りあったという流れがあります。

その流れからなぜか日本では女の子が好きな人や日頃感謝する異性にチョコレートをはじめとする贈り物をする日となったんですよ」

「すまん。つまりはとあるお人好しの死に乗じて恋に興じる日なのか？」

「はい。その通りです」

・・・・・

「理解できないんだが」

「理解してませんから、大半の日本人は間違いなく。

まぁチョコレートをもらったということは嫌われていないと言うこと、来月お返しを用意しておいた方がいいということくらいでしょうか」

「おかえし？」

なにそれ。

「そのままです。３月１４日には２月にもらったお返しをするんです。ホワイトディといいます。

これこそ製菓業界の陰謀そのものですが、一応三倍返しが王道とされていますね」

「さ、三倍！？」

「だから女性の中には先物投資という表現をする方もいますが」

「彼女たちはどういうつもりなのかな？」

「さぁ？そこまでは。まぁ基本的にはお祭みたいなものなので、そんな深く考えていないと思いますよ。

それから某Ａ県ＪＡの陰謀で４月にはオレンジデーというのも存在します」

「・・・・・・・・・・・まぁ、聞かせてくれ」

「これはまぁコイビトとして関係が成立した男女が互いの愛を確かめ合った証拠として、オレンジを贈り合う、もしくはオレンジ色のものを贈り合うというイベントですが、平行してブラックディという、カップル不成立だった男性が集まり、黒い服で黒いあんかけ麺を食べるという、まぁコレは別の国のイベントですが、浸透していないという意味ではどっこいどっこいですね」

「そうなのか」

「つまりなにがいいたいかというと、あまり気にしないことです。

とりあえずそれでもお返しくらいは配慮していいんじゃないですか？

うちのリーダー班もいつもそれで困っていらっしゃいますけど」

「あぁ、たくさん貰いそうだな、あの二人なら」

「えぇ。僕らも処理係に借り出されますよ」

「そういう君もけっこう貰いそうだが」

「いただかないわけじゃないんですけど、ね」

「つまり貰うこと自体は嬉しいことなのか？」

「まぁ男のステータスだと考える人もいるようですが。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・よっぽどのことがなければ。いかんせん食べ物ですからね」

「なるほど。捉え方ということか。

とりあえず色々教えてくれてありがとう。つまり、来月彼女たちに何か返せばいいんだな」

「はい、まぁそういうことです」

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因みに５ｔｈの前なのでフェレットはデジ組とは関わりがありません

（関わってるシーンすらまだ出てないけどな）

んで聞く相手がいないフェレットはオロオロしてればいいよ

・・・・・・けど小動物ってチョコレート毒だよな？（にやり