真・恋姫無双 黒天編 第2章 「緊急三国会議」前編
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真・恋姫無双 黒天編 裏切りの*** 第2章 「緊急三国会議」前編 情報収集

 

 

 

日が傾き、辺りは美しい紅色に染まっている。

 

出店をしている商人は後片付けに追われ、閉店する店も出てくる。

 

飲食店は夜に備えて、薪を割る音などの準備に勤しんでいた。

 

夕暮れ時になっても、町は活気に満ち溢れている。

 

町はいたって平和、三国が目指していた景色がここにあった。

 

そこに、その景色には相応しくない表情をした少女の姿があった。

 

「ご主人様…、どこにおられるのですか・・・」

 

その少女の名は関羽、字は雲長、真名を愛紗という。

 

愛紗は桃香からご主人様がいないらしいという連絡を聞き、昼頃からずっと町を捜している。

 

いつもだったら、“帰ってきたら、お説教ですね”と半分冗談めいたことを言うのだが、

(ほんとに半分だけ)

 

今回に限ってはそうならなかった。

 

桃香も心配している様子だった。

 

いつもと違う・・・

 

心に小さなヒビが入った気がした。

 

愛紗は自分の仕事を放り出して、一刀を捜しに向かった。

 

町を隅から隅まで探し回ったが、見つけることができなかった。

 

「おーい!愛紗!!」

 

愛紗がハッとして呼ばれた方に振り向くと、そこには春蘭がいた。

 

春蘭とは、捜している最中に合流しており、手分けして捜そうということになっていた。

 

「なんだ…、お前か・・・」

 

「なんだとはなんだ!!それより見つかったか?」

 

「いや・・・、西地区をもう一度くまなく捜してはみたんだが・・・」

 

愛紗はがっかりしながら、そうつぶやく。

 

「私の方もだめだ。くそっ!北郷め〜、北郷のくせにナマイキだな」

 

いつもどおり振舞っているつもりなのだが、そこには悲しみのようなものを感じることができる。

 

「これだけの人数で捜しているのに見つからないなんて・・・」

 

愛紗と合流したのは、春蘭だけではない。

 

流琉と季衣、思春、明命、それと捜している途中で出会った星に桔梗、鈴々も一緒に手分けして捜すことになった。

 

そして、夕暮れ時になったら城門前に集まる手はずになっている。

 

また、警備隊にも“見遣い様を発見しだい城へ報告”という通達も出している。

 

「もう夕暮れ時だ。いったん城門前に戻るか」

 

「私はまだ捜せ…、いや、そうだな・・・」

 

春蘭の提案に対し、愛紗は“まだ捜せる!”というつもりだったが、口を噤む。

 

しぶしぶ承諾した愛紗はその場をあとにして、城門前へ向かうのだった。

 

 

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城門前には明命以外の全員が集まっていた。

 

愛紗は彼女らの顔を見て、結果はどうだったかということは分かってしまった。

 

しかし、聞かずにはいられなかった。

 

「どうだった?ご主人様はいたか?」

 

愛紗の問いかけに他の面々が俯いていると、桔梗が口火を切った。

 

「いや、見つからなかった」

 

「お兄ちゃんはどこにいっちゃったのだ?愛紗」

 

鈴々の言葉に、いつもの元気はない。

 

町の子供たちと全力で遊んでいても、疲れた様子を見せない鈴々が今日は萎んで見える。

 

「私たち、町の人たちに兄様を見てないか訊きながら捜したんですけど」

 

「兄ちゃんのこと・・・、誰も見てないって」

 

その様子は、流琉や季衣にもそのまま当てはめる事ができた。

 

この時間になればいつも“流琉〜、おなかがすいたよ〜” “もう、しょうがないな〜”という定番の会話が聞けるはずなのに

 

今日の様子を見ると、その元気な姿を見ることはできないだろう。

 

「おなかがすいたら帰ってくる、といったこともないだろう。主に限ってはな」

 

「こっちもいなかった…。ご主人様・・・・・・」

 

この場に居る全員の不安が一気に膨れ上がる。

 

「落ち込むのはまだ早い!!明命の報告が残っておる。信じて待とうではないか」

 

その空気を感じ取った桔梗は、みんなに活を入れるように大きな声で励ます。

 

しかし、桔梗も内心では不安でたまらない。

 

だが、一番の年長者である彼女が誰よりも早く折れてしまうわけにはいかなかった。

 

「きっと明命が見つけてきよるわ」

 

たしかに、あの真面目が服を着て歩いているような明命が、約束の時間に来ないというのもおかしい

 

きっと、一刀を連れて帰ってきてくれる。

 

 

 

 

 

夜も更けて、あたりは暗くなっている。

 

しかし、この小さな希望が場の雰囲気を少しだけ明るくさせた。

 

「もう日も暮れておる。中に入って飯でも食おうではないか。明命には悪いがな」

 

もちろん、皆に食欲などあるわけがなかった

 

しかし、桔梗に促されるがまま、彼女たちは厨房に向かうのであった。

 

 

 

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夜空には美しい満月が浮かんでいた。星も輝いている。

 

 

 

 

 

厨房に向かっている途中、

 

「あっ、皆さん。こちらにいらっしゃいましたか」

 

駆け足気味で亞莎がこちらに向かってくる。

 

「どうした?まさか、ご主人様から何か連絡があったのか!」

 

愛紗は亞莎の両肩を掴みながら、身体をブンブンと前後に揺さぶる。

 

「ど、どうなのだ!!おい――」

 

「愛紗、ちょっとは落ち着け」

 

星が愛紗と亞莎の間に入り、二人を引き剥がしにかかる。

 

星が割り込んできて、亞莎の状態に気づいた愛紗がすぐに腕を放す。

 

「す、すまん、亞莎。大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫です・・・。はぅ〜〜」

 

大丈夫といいながらも、まだ前後に揺れている。

 

 

 

 

 

愛紗たちは亞莎の状態が元に戻るまでしばらく待つ羽目になった。

 

「もう大丈夫か?」

 

「はい、大丈夫です」

 

「うぅ・・・、すまない・・・」

 

亞莎の答えに対して、申し訳なさそうにまた頭を下げる。

 

「それで、どうしたのだ?亞莎?」

 

鈴々は亞莎が呼びに来たわけを訊ねた。

 

「はい、えっと・・・、今から一刻後に城の王座の間に集まってくださいとのことです」

 

あまりの唐突な招集に一同に少し動揺がはしる。

 

「それはここにいる全員が行けばいいのか?」

 

「そうです」

 

亞莎がコクッと頷きながら答える。

 

こんな夜遅くに、三国武将全員が集まることなんて今まではなかった。

 

しかし、この場に居る全員は“何のために集まるのか”は充分承知していた。

 

「一応、何のために集まるか聞いておこうか」

 

星のこの問いかけに、亞莎はシュンとしながら答える。

 

「それは・・・、『一刀様行方不明』の件です・・・」

 

その答えに“やっぱり”と顔を見合わせる。

 

そして、この招集により分かることが一つある。

 

それは、いまだに一刀が発見されていない、かつ有力な情報すらも得られていないということである。

 

情報が得られたなら、愛紗や春蘭あたりに真っ先にお呼びがかかり、出撃命令が出るはずなのだから

 

彼女たちの間に、今までにない重苦しい空気が立ち込める。

 

「・・・・・・、了解した」

 

「・・・では、私はこれで失礼します・・・。まだ、伝えていない人もいますので」

 

愛紗たちは、亞莎の後姿を見送る。

 

今の彼女たちに、食欲など微塵もなかった。

 

 

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一刻後

 

 

 

 

三国の王とその有力家臣たちが王座の間に集結する。

 

「さて、本国に帰っているものを除けば全員そろったかしら」

 

いつもの三国会議同様、華琳から話し始める。

 

蜀の出席者は、桃香、愛紗、鈴々、朱里、星、桔梗

 

魏は華琳、春蘭、秋蘭、稟、季衣、流琉

 

呉は蓮華、冥琳、思春、亞莎

 

その他として詠、月

 

以上のようになっている。

 

月は少し前に目を覚ましていた。

 

詠は会議に参加しなくてもいいと言ったが、月がどうしてもというので仕方なく連れてきた。

 

会議全体の雰囲気は、三国統一後初といってもいいくらい重苦しいものだった。

 

華琳には以前のような覇気が戻っていた。

 

しかし、長い付き合いの者には無理をしている様子が見てとれた。

 

「これより、緊急の三国会議を始める。みんなも分かっているとは思うけど、今日の朝から一刀の姿が見当たらないらしいわ。まずは、どこに行ったのか知っている者はいるか聞いてみようかしら」

 

華琳はまず、簡単な質問から入る。

 

これを知っている者がいれば、こんな会議を開くまでもない。

 

しかし、あえてこの質問をした。

 

確実にひとつひとつ可能性をつぶしていくために、あとから言い訳ができないように

 

もちろん誰も発言しない。

 

「まぁ、当然ね。次にいきましょう。城内で怪しい輩を見た者はいない?」

 

蓮華が次の議題に話を進める。

 

「昨日の城の夜回り警備担当者は誰なのかしら?」

 

蓮華が周りを見回しながら問いかける。

 

「私たちだな」「私たち二人ですね」

 

春蘭・秋蘭が同時に発言をする。

 

警備としては最強といっていいだろう。

 

もし、一刀誘拐を企てようものなら、逆にその犯人に合掌せざるをえない

 

「そう、何か変わった事はなかったの」

 

「変わった事があれば、すぐに華琳様に報告する!」

 

蓮華の問いかけに対し、自信満々に春蘭が言い返す

 

「それはそうね。それじゃ、一刀の部屋の前には当然、行ったわよね」

 

「それはもちろんです」

 

秋蘭も自分の記憶違いはありえないといった風に答える。

 

「蝋燭の明かりが扉からもれていたから、見回りに行った時間には北郷はいたと思うぞ」

 

「はい、それはわたしも確認しています。ただ、声を聞いたとかそういうのはなかったのですが」

 

春蘭の言った内容を、秋蘭が念押しとばかりに確認していく。

 

「そうなると、ご主人様は夜にはまだ、お部屋の中にいたことになりますね」

 

朱里は二人の発言を聞いて簡単にだが推理をおこなう。

 

「そういえば、私たちがご主人様を起こしにいった時、蝋燭の蝋が全部溶けてたよね。詠ちゃん」

 

「そうね。それは間違いないわ」

 

蝋燭に関しては確かにメイド二人が今日の朝に、昨日使ったであろう形跡を確認している。

 

「でも、新しい物に代えたはずなんだけどな・・・僕の記憶違いかしら」

 

詠は真剣に前日の昼の掃除の風景を思い出すも記憶があやふやになっている。

 

「もう!軍略とか戦略とかなら絶対忘れないのに・・・」

 

頭をクシャクシャしながら思い出そうと必死になっている。

 

「もういいんじゃないかな〜。詠ちゃん、誰だって忘れちゃうことはあるよ」

 

「まぁ、とにかく一刀の部屋の蝋燭が点いていたなら一刀は昨日の夜まで部屋に居たということは間違いなさそうね・・・。異論はないかしら?」

 

華琳は確認を促し、皆はコクッと一回頷く。

 

「ということは、北郷がいなくなったのは秋蘭たちが一刀の部屋の前を通り過ぎてから、月たちが朝起こしに行くまでの間になるのか」

 

冥琳がいままで出てきた情報の内容を整理し、一刀がいなくなったであろう大体の時間を推察する。

 

「いまのところ、そう考えて間違いなさそうですね」

 

稟も冥琳の考えに同意する。

 

「それじゃ、それらを踏まえて次にいこうかしら」

 

華琳がこの議題について、ひととおり議論し尽くしたと判断したのか次の話に移ろうとしたそのとき・・・・

 

 

 

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「失礼します!楽文謙、ただいま戻りました」

 

「李典、ただいま戻ったで〜」

 

「于禁、今戻ったの〜〜」

 

北郷隊の三羽烏が王座の間に入ってきた。

 

「あら、お帰りなさい。ご苦労だったわね」

 

華琳がねぎらいの言葉を三人にかける。

 

「はっ!それにしても隊長がいなくなったというのは本当ですか!?」

 

「ええ、残念だけど、ほんとの事よ・・・」

 

「っ!?私!今からでも隊長を捜してきます!!」

 

楽進こと凪はそういい終わるや否や、すぐに王座の間を飛び出していった。

 

「あっ!コラ、ちょ・・・、ったく、行ってしまったわ」

 

華琳や蓮華は凪を見送るとはぁ〜とため息をつく。

 

桃香は改めて一刀は好かれているのだなぁ〜と感じるのであった。

 

「堪忍したってや、大将。乙女状態の凪は誰にも止められへんからな〜」

 

「凪ちゃんは〜、隊長に“らぶ”なの〜」

 

「はぁ〜、残った二人はこちらに来て座りなさい」

 

華琳は二人を席に着くよう指示する。

 

「凪たちはなぜ、遅れてきたのだ?」

 

愛紗が華琳にそう尋ねると

 

「昨日の昼に珍しい品を扱う商人が私のところにきたのよ。珍しい調味料とかを買えたから、お代とそのお礼として凪たちにその商人の護衛をさせていたのよ」

 

いくら平和になったからといって、安心していられない

 

数自体はかなり減ったものの、まだ山賊などをする輩もいる。

 

その商人は珍しいものばかり持っていたため、山賊から狙われる可能性が高いだろう。

 

そこで、華琳は珍しいものを手に入れた礼として、護衛を提供したのだ。

 

はじめは凪一人だけに任せるつもりだったのだが、真桜、沙和も非番だったため、ついて行くことになったらしい。

 

この三人は商人の荷物を荷馬車に積むところから手伝ったというのだから、商人もとても感謝していたということだ。

 

「それじゃ、続きを開始するわ。昨日の朝は、一刀はちゃんと部屋にいたのよね」

 

メイド二人はその返事に首を縦に振る。

 

「わかったわ。それでは、それ以降に一刀に会った者はいるのかしら?何か報告を受けたとかでもいいわ」

 

次は一刀の目撃情報を募る。

 

「あっ!昨日のお昼くらいに隊長を見たの〜」

 

沙和が、ビシッとまっすぐに手をあげる

 

「どこで見たの!」

 

会議の参加者は沙和のいる方向に身体ごとむける。

 

今までになかった新しい情報が聞けるかもしれない。

 

今はどんな情報でも、どんな手がかりでも欲しかった。

 

「んっとね〜。昨日も天気がよかったから〜、外で日に当たりながら阿蘇阿蘇を読もうと思って東屋に行ったの〜」

 

一同は沙和の言葉を一言一句聞き漏らすまいと真剣に話を聞く。

 

「そしたら、先に隊長がいたの〜。なんかいつもより元気がない感じだったの〜。」

 

「元気がなかった?」

 

「沙和も心配で隊長に話しかけたんだけど、大丈夫だって言ってどこかに行っちゃったの〜。それで、その後に凪ちゃんが護衛に行くって話を聞いたから〜、沙和もついていくことにしたの〜」

 

一刀に元気がなかった

 

“そういわれてみれば…”と心当たりがある者が数人かいた。

 

 

 

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「あの…、こんなときにこんなこと訊くのも何なんですけど…」

 

桃香が心底申し訳なさそうに、言葉を紡いでいく。

 

「ここ数日、誰かご主人様から閨に呼ばれたとか、誘われたとかありましたか?」

 

その言葉に会議参加者は、全員それぞれ違った表情になっていく。

 

「ちょっと!!桃香、こんなときに何てこときくの!?」

 

「桃香様…、今その話題はちょっと・・・」

 

蓮華が顔を真っ赤にしながら大声をあげ、愛紗が“それはちょっと…”といったような顔になる。

 

「私は本気です!!実は最近、ご主人様からお誘いが全然なくて・・・、いつもなら愛紗ちゃんとか〜、鈴々ちゃんとかと三人で…」

 

「ちょ!ちょっと!?桃香様!?」

 

あまりの突然の暴露に、愛紗がわたわたしている。その横で鈴々が“えへへ〜なのだ”と少し照れている。

 

「そういえば詠ちゃん、この頃、あの・・・、その・・・、見て・・・ないよね。朝・・・」

 

月も少し赤面しながら、詠に話を振る。

 

「え!僕!?そうね・・・、ここ数日は誰かと寝てるところは見てないわね」

 

この詠の発言に、皆のなかで一つの疑問が生じる。

 

あの種馬が誰も誘っていない・・・

 

あの“全自動絡繰性交人形”とか“三国一の種馬”と揶揄されたあの男が?

 

「月、詠、最後に見たのはいつなの?」

 

「えっと・・・、その・・・、十日前くらいだったと思います」

 

月がしぶしぶ華琳の質問に答える

 

「十日前・・・、ああ、春蘭のお仕置きのときね」

 

華琳が淡々と答えるが

 

「いえ・・・、あの・・・、星さんとです・・・」

 

月はさらに小さくなり、恥ずかしそうにしながら、訂正する

 

「ああ、あの時か・・・」

 

星はそっけなく、とぼけたように答える。

 

「ううっ、ご主人様、私たちじゃない人達と“○○(自主規制)”してるよ・・・愛紗ちゃん」

 

「ちょ!!ほんとにどうしたんですか!?桃香様!?」

 

愛紗がさらに一層増してわたわたしている。

(もちろん愛紗もいやいやながらいつも参加している)

 

「そんなん言うてたら、うちらだって凪と沙和と・・・」

 

「だぁ〜〜〜〜、話がそれてきてるわ!!!(私だって・・・姉さまとシャオと・・・)」

 

蓮華がこれ以上ならないぐらいに顔を真っ赤にして、大きな声で話をさえぎる。

 

あとでなんかぶつぶつ言ってはいるが

 

「・・・、とにかく、これはゆゆしき事態よ!ほんとにこのごろ誘われた娘はいないの?」

 

全員が辺りを見回すも、だれも発言しない。

 

「恥ずかしがってる場合じゃないわよ。私はあれから仕事が忙しくなって一刀のところに行く暇がなかったわ」

 

「私も忙しかったからなかったな。祭りの後片付けとかあったしな」

 

「わしもなかったな」

 

華琳に引き続き冥琳、桔梗と後に続く。

 

「私もそれ以来、ないな」

 

星も目撃されているため、何のためらいもなく述べていく。

 

それから、恥ずかしがりながらも“そういう行為”をしたか、していないかを順番に言っていく。

 

その結果、星を最後に会議参加者は誰も閨に招かれていないということが分かった。

 

「一刀がここ数日、誰も抱いてないですって・・・」

 

この事実に皆が驚愕する。

 

あの種馬が、あの種馬が、あの種馬が、十日も・・・

 

かわいい服を見たら飛びついてくる奴が、

 

風邪を引いた娘にも、遠慮なく飛びついていく奴が(若干の勘違いあり)

 

「この事実と、沙和の証言から北郷は本当に元気がなかったんだと思いますね」

 

秋蘭が今までの話をまとめる。

 

「なんで・・・、だれも気づかなかったの?一刀の様子がおかしいって、何で私も気づけなかったのよ・・・」

 

蓮華が机に肘をつき、頭を抱える。

 

なにを大げさなと思うかもしれないが、彼女たちにとっては大きな問題だった。

 

「いくら仕事が忙しかったとはいえ、なぜ気づくことができなかったのだ・・・」

 

それぞれが自己嫌悪状態に入っている。

 

いくら、仕事が忙しかったとはいえ愛する者の異常になぜ気づけなかったのか。

 

なぜ会おうと努力しなかったのか。

 

「いま自分を責めても仕方ないわね。今は少しでも情報が必要よ・・・。続けましょう」

 

いまの話し合いで分かったこと

 

それは一刀がここ最近、元気がなかったらしいということ

 

昨日、一刀を見たのは月、詠のメイド二人と沙和だけだということ

 

「最後に確認するわ。最後に一刀に会ったのは、沙和ということで間違いないのかしら・・・」

 

参加者一同、昨日の昼以降も一刀を見ていないと言う。

 

「間違いないと思うの〜」

 

最後に、沙和が間違いないとそう答える。

 

「そう・・・、分かったわ。昨日の一刀の行動に関して、現状の私たちで分かるのはこのぐらいかしら」

 

華琳が話に一区切りつける。

 

 

 

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しばらく、王座の間が静寂に包まれた後

 

 

 

「それにしても、一刀様はどうやってこの城から姿を消したのでしょうか」

 

亞莎はここで皆が不思議に思っていたことを切り出す。

 

昨日の夜の警備の者はだれも御遣い様は見ていないと証言している。

 

城門の門番、町の門番も同様である。

 

しかし、城内も町も今日一日かけて捜索したが、それでも見つかっていない。

 

ならば、一刀は今どこにいるのか。

 

どのようにして姿を消したのか。

 

「この城に限って、誘拐とかはないと思うの。怪しい者の目撃情報もなかったし」

 

三国の重鎮たちが一堂に集まっているこの城の警備は、完璧といってもいい。

 

なにせ、そこ彼処に将軍たちや歴戦を潜り抜けてきた親衛隊が配置されている。

 

普通の誘拐犯やら犯罪者ならまず侵入しようとも思わないだろう。

 

この城の城門以外から侵入しようものなら、即刻捕えられるのは目に見えている

 

「でも、何かに変装して堂々と城門から侵入しているかもしれませんよ」

 

朱里が一応考えられる可能性を提示する。

 

「しかし、夜の一般人の入城は禁止している。昨日もその報告はなかった。あまり考えられないんじゃないか?」

 

商人や一般人が夜に城に入ることは制限されている。

 

なにか特別なことがあれば、門番が報告することになっている。

 

また、昼に入城する場合でも城門で名前の記名を求められる。

 

そして、真桜が開発した“かめら”でその人物を隠れて撮影するという徹底振りである。

 

「まぁ、とにかく昼夜問わず確かめてみてもいいかもしれないわ。誰かある!」

 

華琳は兵士を呼び、昨日の朝から今日の日暮れまでの入城者記名表を持ってくるよう指示する。

 

少しした後、兵士が持ってきたものを皆で確認する。

 

「昨日の入城者は1組と3人か」

 

愛紗が確認するようにそう呟く。

 

内容は以下のとおり

 

 

 

 

昨日の朝方に陳情書を届けに来た使いの者が一人

 

昼ごろに商人が一人、荷馬車も供に通過。その後、楽進将軍、李典将軍、于禁将軍とともに出城。

 

その少し後に、洛陽酒造の親方とその弟子たちで一組。おおきな樽を持っていた。

 

そして、今日の朝方に生活雑貨を届けに来た商人が一人。牛車も供に通過

 

 

 

 

 

 

「陳情書は蜀地方の人たちだったので、私が受け取りました」

 

「昼ごろの商人というのは先ほど話に出てきた珍しい物を売っていたという者だな」

 

「生活雑貨は月さんや詠さんがいつものところにいなかったらしいので、私が代わりに受け取りました」

 

「僕もその時、流琉と一緒にいたから間違いないです」

 

朱里、冥琳、流琉、季衣の順番でどのような理由で城に来て、どのように対応したかを話していく。

 

そしてその後、それぞれが見送りもしたので城で“おかしなこと”をする時間はないだろう。

 

「この洛陽酒造とはなんだ?星か桔梗が頼んだのか?」

 

愛紗がこの面子なら「酒」といえば星か桔梗だろうと推察した

 

「いえ、私の用事よ」

 

そこで、酒豪二人が答える前に華琳が答える。

 

「私の趣味でお酒を作っているのは知っているでしょう?それに使っている酒樽が一つ壊れちゃってね。代わりを持ってこさせたのよ。あと壊れたものの引取りね。交換が終わった後は、すぐに壊れたものを持って帰っていったわ」

 

こうしてすべての入城者の確認が済む。

 

「とりあえず変装して城に侵入した後、おかしなことをする時間はなかったと思って間違いなさそうですね」

 

稟がこの議題についてまとめていく。

 

「そう・・・、まぁ、一刀誘拐という線は薄そうね」

 

華琳も今の段階ではそう結論つけざるを得ない

 

「それでは、一刀様はどうして・・・、なぜいなくなったのでしょう」

 

そう、結局この疑問に帰ってくるのだ。

 

会議の場に静けさが戻ってくる

 

「あの・・・、考えたくもないし、ホンマやったらメッチャ嫌やねんけど、もしかしたら・・・」

 

真桜が何か言おうとしたその時、王座の間の扉がバンッと勢いよく開け放たれる。

 

「失礼します!」

 

大きな声で明命が飛び込んできた。

 

しかし、その顔には血の気がなく、顔面蒼白という言葉がぴたりと当てはまる状態だった。

 

「今帰ったのか。ご苦労だった。――――どうしたのだ?」

 

「じ、実は・・・・」

 

明命からいつもの元気が感じられない。

 

「こ、これを・・・」

 

明命は蓮華の傍まで行き、震える手で持っている物を蓮華に手渡した。

 

「これは・・・」

 

 

 

 

 

場の空気が一気に冷えていった。

 

 

 

 

END

 

 

-8ページ-

 

あとがき

 

どうもです。

 

ご覧頂ありがとうございます。

 

いかがだったでしょうか?

 

同時に多くの人を話させることの難しさを痛感いたしました。

 

もし、これを恋姫達全員でやろうものならきっと混乱するでしょうね・・・

 

そんなことができる人を本当に尊敬します。

 

あと、この会議に参加していない人たちは五胡守備隊として派遣されていたり、各地の視察、本国へ帰っているなどの理由で城にはいません。

 

後々に登場します。

 

 

 

 

 

それでは、次回予告を少し

 

 

 

明命が持ってきた物により、場の空気は騒然とする。

 

そして、真桜の切り出そうとした話の内容とは何なのか

 

次回 真・恋姫無双 黒天編 第2章 「緊急三国会議」後編 最悪の想定

 

 

 

サブタイトル暗いのばっかだなぁ

 

いつかきっと明るくなっていくと思います

 

では、これで失礼します。

 

―――

 

説明
どうもです。2章 前編です。

お楽しみいただけたら幸いです。

あらすじ
メイドの二人は三国の王に確認にいったが誰も行方が分からなかった。
この連絡を聞き、蓮華と冥琳は改めて三国の王に確認に向かう。
謎の人物二人に夜空から見下ろされながら
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コメント
ヒトヤ犬様>それが一刀の物だと分かって持ってきちゃった明命って・・・、なんか愛を感じますね(salfa)
gotou様>あまり話すとネタバレになってしまうのでほどほどにですが、現時点で誘拐の線は薄いと結論付けています。これで勘弁してください・・・(salfa)
kurei様>ありがとうございます。さすがにベタベタすぎましたかw(salfa)
アカツキ様>少々お待ちくださいね〜。(salfa)
poyy様>ちょうど中間地点だったんです・・・(salfa)
鬼頭様>ありがとうございます。がんばって書きます!(salfa)
はりまえ様>お楽しみにしていてください〜(salfa)
カズト様>続きをすぐに書きます!少々お待ちを〜(salfa)
最後のはまさかチ〇コが落ちてたとか、一刀不能に!?(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
なぜ誘拐の線が消せるんだ? 樽だの牛車だのあるじゃないか(gotou)
ぐはぁ・・・サスペンスやミステリー等ではベタベタな引っ張り・・・気になってしょうがないです><;(kurei)
ツヅキ、ハヤク、プリーズ。(アカツキ)
なんてところで止めるんですか!!(poyy)
・・・・・・・・わくわく(黄昏☆ハリマエ)
やべ(;_;)続きが気になって眠れないじゃないか!(スーシャン)
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