漢乃章 孔融伝
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「ゆうさん・・貴方のご先祖様のお名前いってみてごらんなさい」

私を膝に座らせながら、母様が私に問題を出してきた。

 

「孔子様です〜」

『孔子様』・・私の家で誰よりも口にされる事が多い、その名を答えるのは容易だった。

 

「正解、偉いわね」

母様が微笑みながら私の頭をナデナデしてくれる。

 

「くすぐったいです〜母様」

 

「嫌?」

母様が手の動きを止める。

 

「ふぇ〜?い、いやじゃないです〜は、母様続けてください〜」

母様の手は柔らかく非常に気持ちよかった。

 

「あらあら、ゆうさんは甘えん坊ね」

母様が悪戯をした子供を見つけたような微笑を私に向ける。

 

「ご、ごめんなさいです」

私は我儘を言ったと思い母様に謝る。

 

「ふっふふ・・いいのよ子供なんだから〜少しぐらい甘えても」

だが、そういいながら母様は再びを頭をナデナデしてくれる。

 

「ふぇ〜」

やっぱり・・母様の手は気持ちいい。

私はいつまでも続けてほしいと思っていた。

 

だが・・。

「でもね・・ゆうさん」

 

母様の声が若干変化し、ナデナデも止まる。

「あなたには孔子様が流れている・・」

 

「・・」

この声は母様が私を諭す時の声・・私は母様の言葉を聞き逃さぬよう集中する。

 

「孔子様は、素晴らしい教えをつくり、そしてその教えは国の礎になってる」

 

「いしずえ?」

私は聴きなれない言葉を母様に尋ねる。

 

「漢の国の基本という事よ」

 

「漢の国の基本・・孔子様すごいです〜」

 

「そうね・・だから、ゆうさん貴女もご先祖様の名を汚さぬよう、国の礎になるよう生きないといけない」

 

母様がそう微笑み、元の優しい声に戻り言葉を続ける。

「だから・・甘えてばかりでは駄目よ」

 

「はい!母様!!」

私は、その母様の微笑を裏切らないよう精一杯の声で答えた。

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そう・・私はいつも母にそういわれて育ってきた。

祖先の名を汚さぬように、「孔」一族として国の礎になるように・・。

 

あれから日から数年たった・・私はその役割にふさわしい人間になるため修練を続けていた。

そんな最中、私が16のころ、兄様(孔褒)のご友人である張倹様が邸宅にきた。

 

張倹様の様子はおかしく、私は不審に思い張倹様を説得し理由を尋ねた。

 

『罪人として追われている、匿って欲しい』

要約すればそういう事であった。

 

張倹様は数年前に有力宦官侯覧の一族の不正を告発した事があり、そのため侯覧に憎まれ復讐の機会を伺われていた。

そしてついに侯覧により捏造された罪を負わされ逃亡する身になった。

 

 

当時において・・罪人を匿うのは「家」の破滅すら覚悟しなければならないほどの重罪。

「家」に関わる大事、この事を決めるのは家長である兄様の役割だ。

 

しかし、その時兄様は留守・・本来なら兄様の帰宅を待ち判断を仰ぐべきだった。

だが追っ手は迫っており、早急に決断すべきであった。

 

そして私は張倹様を匿うことを決めた。

張倹様は兄様の友人であるし、なによりも真の罪人ではない・・なら匿うべきであった。

 

今はいない兄様も居ればそう判断するであろう、実際帰宅した兄様も張倹様を匿った。

 

 

後日・・匿ったことが露見する。

張倹様は事前に逃したが、私と兄様は捕縛された。

 

そこで私は死ぬはずだった・・張倹様を罪人を匿った張本人として。

 

 

だが・・。

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「母様・・なぜ?なぜ兄様なのですか?」

私は咎めを受けず牢獄から開放され・・家に戻っていた。

 

「ゆうさん・・」

 

「張倹様を庇ったのは、わたしです・・兄上でなく私が死罪になるのが当然です」

 

「家の不始末は、家長がとるのです・・襃さんもそれが分かっていました・・だから罪を認めた」

 

 

『張倹は僕を頼ってきました、妹には罪がありませんので僕を罰してください』

兄様は、そういって私の罪をかぶり・・死んだ。

 

 

「そんなっ!兄様には罪など!!」

 

「お黙りなさい!!家長が襃さんが決め、国が漢が認めた事です!!異を唱えてはいけません!!」

 

「つっ!!・・・こんな不条理な事が、ご先祖様の教え・・漢のなのですか!!」

 

「そうですわ・・」

 

「不条理な!!そのような不条理な事認めてたまるものですか!!!」

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夢から覚めた私の目から涙が流れていた。

 

 

「・・・・・・・」

目の前には無骨な石の天井が広がる。

 

 

国の礎のため・・。

兄上の死は、国の礎の教えに則っるため必要であった・・。

国の為に、必要であった。

 

そうでなければ、兄上の死はなんであったのか・・。

そうでなければ、兄上の死により守られたこの命の意味はあるのか!!

 

わたしは・・国の礎を守らねばならない。

だから・・。

 

「おい・・出ろ、そろそろ執行だ」

鉄格子越しに看守が私に告げる。

 

「そうですか・・」

 

それから数分後、私は久々に太陽の光を全身に浴びる。

その眩しい光で私は一瞬視界を失うが、数秒後目が光に慣れたのか・・目の前が開けてくる。

そこには物々しく武装した兵と野次馬の群集がいた。

 

 

「孔融!お前を丞相誹謗中傷をした罪で処刑する・・最後にいいたい事はあるか!」

曹操の兵がそう告げる。

 

「曹操殿!この国の礎は儒教!!それを軽視してはこの国は持ちませんぞ!!!!」

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『蒼天航路』で明確な敵役である、孔融をssにしてみました。

孔融が儒教的偏執的な拘りをみせたのも兄の死・・これが理由かも。

まあ・・拘ってたのかどうかも疑問な所ですが。

 

他の様々な孔融の逸話を見ると、孔子=儒教に無理に咬ませて見よとするこのssや蒼天航路での孔融像は限界がありそうですね。

そんな、うすぺらい人じゃなさそうですから。

説明
孔融を恋姫風に・・ssです。

珍しく自信あり?
まあ・・低いレベルでですが。

注意・・バットエンド?です。
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コメント
おおー、中々考えさせる話ですねー。法案を作る事は出来たのに、実行力が無かったらしいですが、青州黄巾党に荒されまくった土地では、大変だったろうなー。てか、部下が三国志演義の武安国しか思い浮かばないし(汗)(zanetta)
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