−真・恋姫無双 魏After−月下の誓い 4 |
――――――――。
この何もないただ黒の空間に着いてからどのくらいの時間が経ったのだろう。
何もない。
この場所は唯『黒い』。
例えるならば漆黒の無。
自分自身の輪郭さえもぼやけてしまいそうな空間にいる。
そんな中を永遠と歩き続けている。
「いったい俺はどうすればいいんだ?」
ふと呟いてみる。
自分の発した声が響くわけでもなくただ無の中に霧散していく気がした。
何度、叫んだかわからない。
俺の声は、唯々むなしく響くだけ。
響いているように感じているだけで実際は響いていないのかもしれない。
「流石に、疲れた・・・・」
今がいつで何処で昼なのか夜なのかそれすらもわからない。
このまま歩いていても何処に着くのかも。
自分は何処に行きたいのか。
自分は何故此処に来たのか。
この漆黒の無の中で自分が誰でどうして此処にいるのか、
それすらもわからなくなってきた気がする。
そう、漆黒の無と自身がどうかするような気がして・・・・・・。
気づかぬうちに俺は座り込んでしまっていた。
上も下もわからないこの場所で歩き続けたことが原因か、徐々に意識が遠のいていくことをぼんやりとした思考の中で感じていた。
――――――
どのくらいの時間がたったのかわからない。
たった数分なのかもしれない。
もしかするともう何年もたったのかもしれない。
わからない。
この果てしない闇の中俺は一人座っている。
ここが何処かなんてもうどうでも良くなっていた。
静かに目を瞑る。
瞼の裏に浮かんでくるのは彼女達の笑顔。耳に聞こえてくるのは彼女達の声。
俺は彼女達をはっきりと覚えている。
彼女達に会いたい。
彼女達の声を聞きたい。
彼女達に触れ、そして温もりを感じたい。
「華琳、春蘭、秋蘭、桂花、季衣、流流、霞、凪、真桜、沙和、稟、風、天和、地和、人和」
――――。
「聞こえるわけないよな・・・・・」
わかってはいる。
俺は、もうあの世界にいないことを。
わかってはいる。
わかっては・・・・・・。
「・・・・・・・・あ"あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
俺はもう何度叫んだだろう。
目を瞑り彼女達の面影を思い出しては名を呼び、そして彼女達の横に自分がいないことを嘆き叫ぶ。
気が狂いそうだ。
いや、もう狂ったのかもしれない・・・・・・・。
わかってる。
わかってるさ。彼女達を思うとこんなに苦しい・・・・・俺はまだ狂ってはいないんだ。
狂ってしまえればどれだけ楽だろうか。
自問自答を繰り返しながら俺は目を瞑る。
彼女達が見える。
笑顔だ。
幸せそうだな。
もう戦いは終わったんだっけ?
そっか。
もう皆笑って暮らせるんだな。
笑って。
俺も・・・・・・そこに・・・・・・いたかったなぁ・・・・・・・・。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・。
・・・・。
「・・・・・うわぁぁ・・・・・・・・ぁぁぁ・・・・・・・ぁぁ」
なぁ、なんで泣いてるんだ?。
なぁ、何がそんなに悲しいんだ?
「・・・・・ん」
頭が重い。
俺は寝ていたらしい。
重い瞼を必死にあげる。
「っな・・・・・・・・・」
何が起こっているのか理解できなかった。
わからない。
なんだこれは。
「な・・・・なんだこれ・・・・・・・・」
俺の目に映ったもの。
春蘭が泣いている。
泣き声は聞こえない。
だけど大声をあげて泣いているのであろう春蘭がそこにいる。
わからない。
夢なのか?
これは夢なのか?
それとも俺は狂ったのか?
悲痛な面持ちで声を張り上げてなく春蘭を唯呆然と見つめながら思考をめぐらせる。
いくら考えても答えなんか見つかりはしない。
いてもたってもいられず俺は駆け寄って春蘭を抱きしめた。
・・・・・・・・・
そう・・・・・抱きしめたはずだった。
いくら抱きしめようとしても彼女に触れることができなかった。
理解できない。
理解できないが春蘭が目の前で泣いている。
そこにいるのに触れることができない。
「春蘭、どうしたんだよ!!泣かないでくれよ・・・・・・・」
届くはずもない叫び。
彼女はここに居るはずがない。
それでも俺は叫ばずにはいられなかった。
どうしようもできずにただ春蘭の横に座り込むことしかできない。
泣き顔を見ることしかできない。
涙が溢れている自分がいることに気付く。
何もできないことが悔しくて、情けなくて。
そんな俺の横を何かが通り過ぎた。
「・・・・・・・姉者」
そう言ってるだと秋蘭の口の動きから見て取れる。
もう言葉も出なかった。
どういうことなんだ?
「秋蘭!!」
一筋の涙を流しながら春蘭を抱き寄せる秋蘭。
名前を呼ぶ俺の方に見向きもしない。
なんなんだこれは!!
いったいなんなんだ!!
わからない。
わからない。
わからない。
わからない。
目の前で起こっている現象に対して思考をフル回転させる。
そして導き出された答え。
わからない。
もう何もわからない。
そして俺は目の前で抱き合い泣いている姉妹から目を背ける。
もう見ていられなかった。
だが反らした先の視界に写る物に変わりはなかった。
上を向き悲痛な面持ちの霞。
何処かを見つめ涙を流している凪、真桜、沙和。
向かい合い泣きそうな顔の季衣、流流。
泣きそうな笑顔の天和、沈んだ顔で何かを訴える地和、人和。
何かを見つめ悲しそうな瞳で喋っている稟、それに答えるように表情が暗くなる風。
怒りを隠せずに必死に地面に向かって手を動かしている桂花。
そして・・・・・膝を突き何かを叫ぶように涙を流している華琳。
「なんなんだよ。これは・・・・・・・・・なんなんだよ!!!!!」
俺は本当に狂ったのかもしれない。
どこを見ても彼女達。
目を瞑ると笑っていた彼女達。
寂しくないといえば嘘になる。
でも目を瞑ると彼女達の笑顔を見れた。
でも今はどうだ?
目の前にいる彼女達は笑っていない。
目を瞑ってみる。
そこにはもう笑顔の彼女達はいなかった。
瞼に写るのは彼女達の涙、悲痛な顔、怒り。
必死に彼女達の笑顔を取り戻そうとしても浮かんでくるのは目を開けた先にいる彼女達。
「やめてくれ・・・・・・・もう・・・・・・・・やめてくれよ」
もう俺の中から笑顔の彼女達は去っていった。
俺が見たかったのは目の前にいる彼女達じゃない!!
「うあ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
俺はもう、叫ぶことしかできなかった。
そして、また意識が闇へと沈んでいくのを感じていた。
――――――――。
「・・・・っんん」
瞼を閉じているはずなのに光を感じる。
まだ意識がハッキリしない。
俺は、ハッキリしない意識のままその光をの原因を探ろうと無理やり瞼を上げた。
なんだこれは・・・・・。
その光景を目にした俺は何が起こっているのか全く理解できなかった。
何もなかったはずの闇に包まれた空間。
その空間の中にぽっかりと浮かんでいる音の無い映像。
例えるのなら映画館のスクリーンに映し出された映画のよう。
その映像の中に写るのは・・・・・
『笑っている俺と、華琳、孫策、劉備。そしてその周りには魏、呉、蜀の面々』
混乱している俺をよそにその映像は次々と切り替わる。
『子供に囲まれて大変そうなうれしそうな顔の俺と、その後ろで見守る呉の将達』
そして見たことのある風景。
そして、あの『満月の夜』
「どう言う・・・・ことなんだ・・・・・」
俺はその映像をただ呆然と見続けていた。
そう、見続けることしかできなかった。
「わけがわからない」
言葉にすると唯この一言。
自分自身の記憶を手繰り寄せるが何処にもその映像は浮かんでこない。
浮かんでくるのは魏の愛する彼女達との思い出だけ。
しかし自分の眼に移るものは何処からどう見ても自分自身。
自分は魏にいて魏の将達を愛し魏の未来のためにあの世界で生きた。
これは誰がなんと言おうと変わることの無い事実だ。
それだけは断言できる。
しかし、いくら否定しようと目の前に流れる映像はそれがあたかも事実であるように流れ続けている。
「どういうことなんだよ!! いったいどうなってるんだ・・・・・・・」
なぜか叫ばずにはいられなかった。
でもどれだけ叫ぼうが此処には誰もいないし何もない。
わかっている、自分がしでかした過ちなんてとっくに自覚している。
「俺は・・・・・・・どうすればいいんだよ」
誰も答えてくれないとわかっていてもつい口に出してしまう。
だが、自分以外の音しかなかった空間に突如響いた声に静寂が破られることになる。
「・・・・・・・答えてあげましょうか?」
――――――――
???Side
今、漆黒の闇の中で一人の少年を見つけた。
一人何かを呟きそして途方にくれている少年を。
私は考える。
私が何故この少年がここにいるのか。
私は彼があの世界で何をしたのか見守ってきた。
彼があの世界で何を成したかも知っている。
だけどあの世界が望んだ行く末にはたどり着けなかった。
だから彼は此処にいる。
だけど何故彼がこうやって此処で座り込んでいるのか・・・・・・。
私は思考をめぐらせる。
(なるほど、そういうことですか・・・・・・。余計なことしてくれますね)
私が思考している間に彼は疲れ果てて眠りに落ちてしまった。
(さて、どうしましょうかね・・・・・・・)
もう少し寝ていてもらうことにしましょう。
彼がどのような行動に出るか、どのような答えを出すか。
見極めてからでも遅くは無いでしょうし。
私は彼を背に準備を始めようとその場を後にした。
―――――
彼は目覚めた。
私の用意した映像を呆然と見ている。
彼は、あの映像を見て自分の過ちに気付くことができるのだろうか。
いや、出来ないと思う。
彼がここに来る事に繋がる道を選んだのだから。
ふと、彼を見ていると思うことがある。
『彼はどうして自ら気づけなかったのか』
しかしそれを考えても仕方が無いこと。
彼に特殊な力があるわけではない。
彼はあの世界に呼ばれ、しかしあの世界が望んだ結末に至れなかっただけ。
彼は過ちを犯し世界が望まない方向へ至った為にあの世界から弾かれた。
傍から見ると一方的な言い分かもしれない。
しかし世界は彼を望んだ。
そして弾かれた。
あの世界に悪意があるわけではない。
むしろ彼に導いて欲しかっただけだろう。
そんな世界を私は見てきた。
私は唯の傍観者。
私は唯の調律者。
私は存在しない者。
私は・・・・・。
突然、彼が声を上げた。
私は思考の海に沈んでいた意識を無理やり引き戻して彼の後ろへ舞い降りこう言葉を発した。
「・・・・・・・答えてあげましょうか?」
さて、彼はどんな答えを出すのかな・・・・・・・・。
あとがきっぽいもの
6度目まして獅子丸です。
えーと、今回はページ数をわざと多くしてあります。
何故かは読者様ご自身で考えてもらえるとありがたく思います。
なんせ、獅子丸が考え出したしょうも無い文章ですので多分直ぐわかるはず・・・・orz
−真・恋姫無双 魏After−残された者 前編
でいただいたコメント読ませていただきました。
正直言ってかなり嬉しかったです。
獅子丸のつたない文章で伝えられるかどうかかなり不安でした。
それを読み取っていただいてコメントまでいただけて感激しました!!
今までって言っても投稿数は少ないですがコメントして頂いた皆様本当にありがとうございます。
励みにがんばりますb
さて、後編ですが、何せ急に思いついて修正しているもので、なかなかうまく纏まってくれないです。
だけども必死に書いていますので待っていて頂けるのであればもう少々お待ちください。
さて、毎度の一言。
生温い目でお読み頂ければ幸いです。
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第4話です。 生温い目でお読みください。 |
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