真説・恋姫演義 〜北朝伝〜 第四章・第五幕
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 「ちっとばかり、予想外だったな」

 

 「……そうだな」

 

 幽州は遼東郡。その最北端、まもなく長城を望もうかというその地にて。公孫賛と公孫越の姉妹と、李儒、丘力居は、思わぬ事態に遭遇していた。彼女らの背後には、幽州と冀州の連合軍八万が、隊伍を整えて整然と並ぶ。

 

 そして正面。彼女たちから二里(一km)ほど離れた場所に、広く展開しているその軍勢。先頭に掲げられたその旗には『?』の字が。

 

 そう、それは?頓率いる烏丸の軍勢。その数はざっと見、二十万は居るであろう。

 

 

 これより二日ほど前。

 

 烏丸の単于である丘力居とともに、その烏丸の地へと攻め込むべく、北平の地を悠々と出陣した公孫賛たちは、遼東郡へと入り、そしてさらに北を目指して進軍した。だが、漢土と北方の地を隔てている長城に辿り着こうとしたとき、その長城を向こう側から越えて、?頓ら烏丸勢がその姿を見せたのである。

 

 「……まさか、こちら側で遭遇戦になるとは、思いもしていなかったな。……事前の策も何も無い以上、正面から当たる以外に方法は無いな」

 

 「けど姉貴。向こうはどう見ても、こっちの三倍は兵が居るぜ?野戦でこの戦力差は」

 

 「確かにきついのはきついの。……妾たち冀州の兵は、実力が同等以上の者達とは、初めてぶつかるわけだしな」

 

 李儒がその唇を噛みながら、冀州軍の唯一の懸念を、その口にする。

 

 そう。

 

 冀州の兵は、これまで遥かに格下相手の戦しか、経験をしていないのである。黄巾軍しかり、袁紹軍しかり、である。連合戦のときの董卓軍とは、本気で戦ったわけではない。自分たちに死者が出る。そんな戦の経験が、冀州軍には決定的に不足していたのである。

 

 

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 「とはいえ、じゃ。こやつらにもそろそろ、一刀抜きでも自分たちは精強なのだという事を、いい加減自覚してもらわねばならん。これから先、戦の場がさらに広がれば、一刀が居ない状況というのは自然と増えてくるからな」

 

 それだけの、過酷な修練を積んできておるのだからな、と。李儒は自身の後方に居並ぶ三万の冀州兵を見やる。彼らは、一刀発案の”とある”訓練法により、その一人一人が、並みの兵十人に匹敵する力を身につけている。

 

 だからこそ、先の袁紹軍との戦いでは、相手の兵を一人も”殺さず”に、先頭不能にして勝利するという離れ業が出来たのである。……いずれ、彼らに与えられるであろう、”あの部隊名”に恥じぬ実力を、彼らは既に有していると。李儒はそう信じている。

 

 あとは、彼ら自身に、それを自覚させるだけである。

 

 「……それで、公孫賛よ?向こうとはどうぶつかるつもりじゃ?……まさか、本当に無為無策というわけではあるまい?」

 

 「……本当は、向こうに着いてから、やってみたいと思っていたんだけどな。……丘力居どの。あちらに展開している兵。あれはすべて、?頓とやらの子飼いなのか?」

 

 「それはあるまい。きゃつの子飼いはあれの半分も居らんと思うぞ?何しろ、先の乱の折りでさえ、彼奴めは兵の家族を人質にとるなどして、わしに勝ったようなものじゃからな」

 

 そうでなければ、そう簡単にわしが負けなどするものか、と。忌々しそうに、対陣する?の旗をにらみつける丘力居。

 

 「……味方に対し、人質をとっての命の強要か。どっかで聞いた話だの」

 

 「……麗羽のことですね。烏丸では、そういうことはよく行われているので?」

 

 「まあ、往々にしてな。北方では、力がすべて、だ。弱き者は強き者に従うしか、生き残る術はないのだ。我らにしても、匈奴にしても、羌にしてもじゃ」

 

 弱肉強食。その摂理の中で、われらは生きてきたのだと。丘力居はそう公孫賛に言葉を返した。

 

 

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 「……話が少々それたが、そうか、連中は一枚岩じゃない、か。そういうことなら、付け入る隙はありそうだ」

 

 「本当か、白蓮よ?」

 

 「ええ。……丘力居どの。少しばかり、お力を拝借したいが……構わないか?」

 

 「構わん。で?わしは何をすればよい?」

 

 自身の策を丘力居に語ってみせる公孫賛。それを聞いた丘力居が、次第にその顔を喜色に満ちたものへと変えていく。

 

  

 そして、それからわずか後。

 

 河北連合軍と烏丸軍が、その距離を一理ほどにまで縮めて対峙していた。そして、河北勢からは公孫賛と丘力居が。烏丸勢からは?頓が。それぞれの軍の正面へと進み出る。

 

 「裏切り者の元・単于よ!我ら同胞を捨てたばかりか、漢人の手先となって己が故郷を攻める、その手助けをするとは!貴様は恥というものを知らぬのか?!」

 

 「それを言うならば貴様とて同じことよ!漢朝の真の思惑にも気づかず、味方の兵の家族を人質にし、その言いなりになって戦を起こす!おのれこそ売国の徒の名にふさわしいわ!」

 

 舌戦の口火を切ったのは?頓の方だった。丘力居を、民を捨てた恥さらしの”元”・単于と、痛烈に非難してみせる。しかし丘力居も、もともとの原因は?頓であると、彼の言葉にはまったく動じず言い返して見せた。その姿と言葉に、烏丸の者達の一部にざわめきと動揺が起こる。

 

 (ちっ。単于派の兵士どもめ、この程度のことで動揺なんぞしおって。今は俺が単于なのだぞ?!あんな姿だけ若いくそババアでは無く、この?頓さまが、だ!)

 

 丘力居を烏丸の地から追いやる。その為に、閉じ込めていた牢の監視をわざと甘くし、逃亡する彼女をあえて見逃した。そして、一刀たちにその追撃を邪魔されたのを好機とばかりに、まんまと彼女の地位を奪って、念願だった単于の座に座った。

 

 しかし、それでもいまだに、彼女を慕うものが烏丸の者達の中には多く、?頓は完全には一族を制することができずにいた。一族の悲願である筈の、北部三族−烏丸、匈奴、羌−の統一は、今という機を逃しては、再び遠い彼方のものとなってしまう。だからこそ、漢の朝廷からの援助が途切れないよう、その依頼は聞き続ける必要があるのに。

 

 今、彼の目の前にいるこの女は、それは漢朝の計略だという。そんなことがある筈があるものかと。彼はそう思っていた。漢のみに限らず、これまでの王朝も、そして他の、北方に面する諸侯も、自分達を恐れて常にご機嫌取りをしてきたような、腰抜け揃いではないか。

 

 ?頓はその事を、自身の視界の中にいる、漢人四人のみならず、おのれの兵達にも言い聞かせるように、声を大にして語った。

 

 それに対し、公孫賛と丘力居の後ろに居た仮面の人物が、二人の後ろでこう呟いた。

 

 

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 「……なるほど。だから一刀のやつは、あえて危難の道を選んだわけか」

 

 「命様?」

 

 「李儒どの?」

 

 公孫賛と丘力居の間を割り、その人物−李儒が?頓の前へと進み出る。

 

 「な、何だ、貴様は?!」

 

 「わが名は李儒。”天の御遣い”、北郷一刀が配下の者だ。?頓とやら、確かにおぬしの言うとおり、一部の例外を除けば、漢土の朝廷はおぬしらを恐れてきた。じゃがそれは、それを率いる頭目−時の単于らが優れた者であったからよ。じゃが、ぬしのような小物が単于では、烏丸といえど恐ろしいことなど何も無いわい」

 

 「な!何だと?!この俺が、小物、だと?!」

 

 「そうじゃ、小物じゃ。目先の餌に釣られて走るしか芸の無い、駄馬以下じゃ。それが証拠に、ほれ見よ」

 

 つい、と。李儒は?頓のその背後を指して見せる。その指先が指し示す、自身のその背後に視線をやる?頓の視界に、(彼からしてみれば)信じられない光景が見られた。

 

 「な!何故だ!?貴様等、何故逃げる!?何故北の地へ戻っていくのだ!?」

 

 そう。

 

 ?頓の背後に居た烏丸の兵士たち。その半数以上が、彼の許しなく、勝手に隊を離脱し、北の自分たちの故郷へと、撤退を開始していたのである。何故、突然に。?頓を始め、残った?頓派の烏丸軍の誰しもが、彼らのその行動を理解できなった。

 

 

 それは、たった一人の兵士が、たった一通の手紙を、舌戦の間にこっそりと、彼らの中に紛れ込んで、丘力居派の、ある一人の兵士に渡した。

 

 『故郷の家族は、おぬし等が戻れば助かる。おぬし等がほうほうの体で”逃げ帰れば”、人質を監視するものたちも、?頓の”敗北”を知るであろう。そしておぬし等がこの地を離れれば、?頓はこの地にて最後を迎える。このわしの手によって。単于』

 

 以上の内容の手紙を、である。

 

 公孫賛が事前に、丘力居に書いてもらったその手紙。それを、舌戦が行われているその隙に、烏丸兵に偽装させた兵を一人、左翼に広がる森を通らせて、彼らの背後へと回りこませて、単于派の兵の一人に手渡した。無論、字の読める者をあらかじめ、丘力居から教えてもらって。

 

 その結果が、こうして現れた。

 

 ほとんど強引に単于の地位に就いた?頓。その彼を、簒奪者としか見ていない者たちが、本当の単于である丘力居の手紙を信じた。

 

 それだけのことで、?頓率いる烏丸勢は、その数を河北軍とほぼ同数にまで減少させたのであった。

 

 

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 「どうじゃ、?頓よ。和睦に応じぬか?無駄に血を流すことなど、必要はあるまい。……とはいえ、貴様のその首だけは、落とさぬわけにはいかぬがな」

 

 ?頓に対し、その命と引き換えに和睦をと、そう持ちかける丘力居。だが、

 

 「……和睦、だと?この俺の首と引き換えに?ふざけるでないわ!たとえ兵が半数以下に減ったとしても、俺の子飼いである、精強なこいつらが残っている!和睦などありえんわ!」

 

 「……仕方無い。公孫賛よ、あれの首はわしが落とす。助力を、頼む」

 

 「心得た。命さま、水蓮。軍の展開を」

 

 『応!!』

  

 公孫賛の指示を受け、それぞれの陣へと急ぐ李儒と公孫越。そして、公孫賛がその腰の剣を抜き放ち、天に向けて高々と掲げた。

 

 「全軍、抜刀せよ!河北の興亡、この一戦にあり!意気を上げろ!勇気を奮え!そしてその手に勝利を掴め!全軍……突撃ぃーーーーーっっっ!!」

 

 うおおおおおおおっっっっっ!!

 

 

 「?頓!そこを動くな!お前のそっ首、単于たるわしの手で落としてくれる!」

 

 「やかましいわ、このくそババア!返り討ちにしてくれる!」

 

 『おうりゃああああっっっっ!!』

 

 時は正午。

 

 河北連合軍八万対、烏丸軍八万五千。

 

 その激闘の幕は、ついに切って落とされた。

 

 

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 戦が始まると同時に、一騎打ちを始めた丘力居と?頓のすぐ横を、公孫賛率いる白馬義従二万が駆け抜け、後方の烏丸兵達に突撃を敢行した。二人の一騎打ちを邪魔させないためである。それと同時に、公孫越の兵三万が左翼へと動き、一斉に矢を射掛ける。そして、李儒が率いる北郷軍3万は右翼に兵を動かす。そのうち半数が”雷弩”を手に烏丸勢の横腹へと突っ込んでいく。

 

 ちなみに”雷弩”とは、一刀発案の新装備である。名前こそ大層だが、実際には従来の弩に片刃の剣を取り付けただけのもの。銃剣の銃を弩に変えた。それだけのことである。

 

 雷弩騎兵と名付けられた彼らは、烏丸勢に接近しつつ、矢を射掛けていく。そして矢が撃った後は、弩に装着された剣でもって接近戦を行いつつ、再び相手と距離をとって、再び矢を射掛けては接近戦をする。一撃離脱戦に特化した部隊。それが雷弩騎兵の用兵思想である。

 

 公孫越の部隊が烏丸兵を牽制し、北郷軍がさらに彼らをかき乱す。そして公孫賛の部隊が更なる追い討ちをかけ、烏丸の兵たちを次々と蹴散らしていく。

 

 戦場には無数の死体が転がり、血の臭いが当たり一帯に充満する。……その犠牲者の中には、河北側の兵たちも、烏丸の者たちとともに、少数ながらも含まれて居た。

 

 味方に出た初めての犠牲。

 

 それが北郷軍の兵達に、どのような心境の変化をもたらすか。それは、彼らを指揮する李儒にも分からなかった。

 

 「自分たちの精強さとともに、けして不死身ではないという事も、彼らにはよく知ってもらえたと思う」

 

 李儒は後日、一刀に対してそう言ったという。

 

 

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 それはともかく。

 

 烏丸の者たちにとって不幸だったのは、彼らの指揮官である?頓が、丘力居との一騎打ちに集中してしまったことだった。もちろん、彼の代わりに兵を率いる部隊長が居なかったわけではない。だが、将である公孫賛たちと、彼ら部隊長クラスの者では、その能力に大きな隔たりがありすぎた。

 

 「いいかお前たち!逃げるやつは無理に追うな!正面をふさぐものだけを蹴散らせ!」

 

 自軍の兵達にそう指示を出しつつ、その手に持った剣を振るう。肉をえぐる感触、その身に浴びる返り血。もはや慣れてしまったそれらであっても、やはりいい気分のするものではない。だが、戦場に立てば嫌でもそれらと対峙しなければいけない。そして、奪った命をその背に背負って、これからを生きるものたちを、自分は生涯支えていく。

 

 それが、自分に出来る、贖罪という名の自己満足。公孫伯珪という人間の生きていく道。自分が自分であり続けるために、彼女はその手の剣を振るい続ける。

 

 「どうしたどうした、烏丸の者達よ!幽州牧、公孫伯珪はここにあるぞ!我こそと思うものはかかって来い!」

 

 彼女は叫ぶ。

 

 未来(あす)へと時代を、繋ぐため。己を白い修羅と変えて。

 

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 戦場の凄惨な光景。

 

 それを見るのは、何も今が初めてではない。だが、彼女は今日、初めて本物の戦というものを知ったかもしれなかった。

 

 人を殺し、自らもその危険に、常にその身をさらす。剣戟と怒号が広くこだまし、豪雨の如く矢の雨が飛び交う。その場に漂よってくる死臭に、思わず吐き気をもよおしながらも、李儒は戦場を見つめ続け、その目にしっかりと焼き付けていた。

 

 「……妾の命で、時に奪い、時に奪われ、大勢の命が失われていく。戦とは、かほどに重いものなのだな。……これほどの重荷を、一刀や、他の諸侯は常に背負っておるわけか」

 

 これほどの重荷を背負い続けたまま、己を慕うものたちを守り続ける。そのために、あまたの命を断つこともある。そんな相反することを繰り返しながら、人はなお生きていく。生きるために。未来を繋ぐために。そんな”お題目”を掲げて。

 

 「戦をせずとも良い世。一刀の居た天の世界は、そんな所が普通にあると。それが全てではないにしても、それが当たり前と思っている者たちが、多数を占めていると」

 

 それは、理想。

 

 彼女がかつて夢見た、皇帝としての夢。

 

 しかし。

 

 (自分はそれを、肉親大事さに捨ててしまった)

 

 皇帝であることよりも、今現在その地位に居る妹の安泰。それを彼女は選び、名も過去も捨てて、一刀の臣下である事を選んだ。

 

 「……だからこそ、今は後悔よりも、ただ前を見つめ続けねば。……一刀が創ってくれる、新たな世こそ、いまの妾の夢。妾の全てだから」

 

 李儒は強く拳を握り、その手の扇子をいっぱいに広げ、更なる突撃の命を下す。いつか、戦をせずともいい日が来るのを、強く信じて。

 

 

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 ?頓を部隊から引き離す。

 

 それが公孫賛から頼まれた、丘力居の最低限為すべき事。しかし、彼女はそれだけで済ますつもりなど、毛頭も無かった。

 

 その手で?頓を討つ。

 

 それが、単于としての自分の役割であり、責任であると。自然にその手に篭る力。手のひらには大量の汗がにじむ。

 

 −かつて、自身が愛した男だからこそ。

 

 「……貴様はわしの手で殺してくれる!先に冥府に行けぃ!?頓!!」

 

 「ほざけ!お前の細腕で、この俺が討てると思うな!ぬあああああ!!」

 

 十合、二十合と。

 

 丘力居の戟と?頓の大刀が激しくぶつかる。受けてはいなし、いなしては繰り出す。そしてまた受け止めていなす。

 

 傍目には互角に見える両者の戦い。だが、わずかばかり丘力居が押されていた。その原因は体格差。?頓が、その身の丈およそ六尺(約180cm)を超えるのに対し、丘力居は五尺(約150cm)に満たない背丈しかなかった。膂力も?頓がわずかに上。

 

 勝敗を決したのは、その体格差だった。

 

 「くおっ!?」

 

 ?頓のその力に押され、丘力居がわずかに体勢を崩した。

 

 「もらった!!」

 

 ここを好機とばかりに、体勢を崩し、馬から落ちようとしている丘力居に、思い切り馬を駆けさせ、?頓がその大刀を横に思い切り薙いだ。

 

 「!!」

 

 その、落馬しかけた体勢を、無理に直そうとせず、丘力居は、馬の背に寝転がった。

 

 「何?!」

 

 「ああああっっっ!!」

 

 そして、その体勢のまま、すれ違おうとしていた?頓の腹に、腕の力だけで、その戟を振るった。

 

 ……体が小さいゆえ、馬の背に寝転がれた丘力居と、体が大きいがゆえに、とっさの動作がわずかに遅れた?頓。

 

 たったそれだけの違いが、両者の生死を分けた。?頓はその馬の勢いのまま、丘力居が振るった戟を避ける事も出来ず、腹にそれを食い込ませて、馬から落ちた。

 

 

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 「かはっ!……まさか、このような討たれ方をしようとは、な」

 

 「……言い残すことは、あるか?」

 

 地に伏せ、腹からおびただしい量の血を流して、息も絶え絶えの?頓の傍に、丘力居がやって来てそう問いかける。顔に浮かぶ表情は、哀れみ。

 

 「……ふ。自身に叛乱をしたものに、そんな哀れみの目を向ける、か。……甘すぎる、な」

 

 「……かも知れぬ。じゃが、そんな”甘さ”も持たぬ者には、人を、ましてや、一族を率いることなど出来はせん。……おぬしは、そこをわかっておらなんだ」

 

 「……そう、か。ふ、ふふ」

 

 くははははははは!

 

 すでに息をするのも楽でないであろうその体で、心底から愉快そうに笑う?頓。

 

 「げほっ!げほっ!……ふ……。本当に、残念、だ」

 

 「……何がじゃ?」

 

 「……もう一度、お前を、この手、で」

 

 がくり、と。

 

 ?頓は、言葉のその途中で息絶えた。

 

 「……馬鹿たれが。……簒奪者、?頓!この烏丸が”単于”、丘力居が討ち取った!!」

 

 息絶えた?頓に、小さな声でつぶやいた後、彼女は声高く宣言した。

 

 その瞬間、公孫賛らと戦っていた烏丸の者たちは、その手の武器を捨てて戦闘を停止した。

 

 戦いは終わった。

 

 烏丸勢の被害はおよそ三万。河北勢の方は、幽州組が五千ほど死傷。冀州組も、それとほぼ同数の被害者を出して。

 

 そして、彼女たちはその後、改めて烏丸の地に入り、?頓派の兵たちを捕縛。単于派の兵たちの家族も無事解放され、烏丸の内乱は終結した。

 

 

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 同じ頃。

 

 

 并州に入った一刀たちも、その戦いを始めようとしていた。

 

 

 劉豹という名の、その恐怖を相手に……。

 

 

 

                                   〜続く〜

説明
はいはい、北朝伝、四章・五幕のアップです〜。

今回は難産だった〜。

思わずラウンジで愚痴るほどにw

というわけで、

まずは白蓮と命たち河北勢の戦の模様です。

それでは。
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コメント
東方武神さま、小説では姜維のお父さんでしたねーw・・・くす^^。(狭乃 狼)
劉豹か・・・小説版では哀れな親父キャラだったが、ここではどんな奴になるのやら・・・?(東方武神)
村主さま、彼はただ、越え方を間違えたんですね。 10p目のあの一言、何を言おうとしたのかは、ご想像にお任せして置きますね。 最後の所は・・・う゛ふふwww (狭乃 狼)
トウ頓からすれば形は違えど丘カ居を越えたかったが故に出来た心の隙を諫言で増幅された上での反乱だったのでしょうかね・・・ 決して誉められ葉はしませんが10p目の末期の一言に何かしら悲しみがあった気がします そして最後の一文・・・尻もといシリアス、または紐パンおさげクラスのカヲスなのかw(村主7)
mokiti1976−2010さま、白蓮だってやればできる子なんですw 烏丸とはこれで決着です。後日談ぐらいはありますが。 (狭乃 狼)
poyyさま、さあ、その輝きは持続するのか?!(笑。(狭乃 狼)
よーぜふさま、きゅーたんw祭さんとか桔梗さん辺りと同年代設定なんですが、たん・・・ぷふっ「・・・何が可笑しい?」あ。(狭乃 狼)
白蓮さんなかなかかっこいいですね。一応烏丸とはこれで決着ということでしょうか?次は一刀が劉豹さんの恐怖とどう接していくのか楽しみにしています。(mokiti1976-2010)
白蓮の輝きはもはや普通とは言えないほどだなぁ。(poyy)
ふむ、きゅーたんおつかれさまでした・・・ そして次回は一刀の馬っぷりが発揮されるんですね(よーぜふ)
無双さま、ご指摘どうもですwたった今直しました。(狭乃 狼)
4Pの6行目の「視遣い」じゃなくて「御遣い」だと思います。(無双)
はりまえさま、一体何の話をされているんでしょう?w一刀今回出てきてないはずなんだけど?wおかしいなー?うらやましい状況なんてないはずなんだがwww(狭乃 狼)
時々思うんです。いつか民衆に刺されやしないかと、常々思うんです、もげて、アッーな状況になれと・・・・・だってうらやましいんだもん!!(黄昏☆ハリマエ)
hokuhinさま、まあ、その御年はじゅk・・・程度ですがねw 策についてのお褒めいただきどうもですw 次回もお楽しみにww(狭乃 狼)
丘力居はロリババアだったのかw内部から軍を崩壊させる手立てはよかったです。次回の劉豹戦も楽しみにしてます。(hokuhin)
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