DAGGER 戦場の最前点 第04話
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【view of ティスト・レイア】

「この部屋でいいか?」

アイシスを寝かせていた二階の空き部屋、俺の部屋と同じぐらいの広さだし、日当たりも悪くない。

「でも、ちょっとお掃除したほうがいいかもね」

カーテンをあけると、部屋の中を舞う埃が照らされる。

ほとんど使わないから、少し掃除が雑になっていたのは、否定できないな。

「これからしちゃおっか?」

「いいです。掃除ぐらい、自分で出来ますから」

「そだね、アイシスちゃんの部屋だもんね」

「私の…部屋」

慣れない響きというように、アイシスが繰り返す。

その顔は、戸惑いでいっぱいだった。

「じゃあ、お掃除がいいなら、ロアイスまで買い物に行かない?」

「…そうだな」

人が一人増えるなら、それだけ必要な物も増える。

俺の物を使いまわしてもいいが、アイシスのために一通り揃えたほうがいいだろう。

「そういえば…ユイが持ってきてくれたのって、日持ちするのか?」

「うん。この寒さだし、2〜3日は平気だと思う」

「なら、行こうか」

「………」

俺とユイが廊下へ向かおうとしても、アイシスだけは動かない。

その場で俯き、じっとしていた。

「アイシス?」

「私は…いいです」

必要最低限、そう思えるような小さな声で、アイシスが答える。

だけどそれは、俺たちへの明確な拒絶の意思だ。

「でも…」

そこで言葉を区切って、ユイが口をつぐむ。

どう言えば、アイシスに話を聞いてもらえるのか、悩んでいるんだろう。

無理強いをすれば、頑なになる。

だからといって、このままユイと二人で行けば済む問題でもない。

「体調が悪くないのなら、ロアイスまでの道は今日中に覚えておいたほうがいい。

 このあたりの地理は、アイシスも把握しておくべきだしな」

「…わかりました」

賑やかなところは苦手で、そこに行くなら自分を納得させる理由がいる。

相手と少し距離を置くことで、自分にとって安心できる位置が確保できる…か。

昔の自分を意識して考えた説得が通じても、素直に喜べないな。

 

 

 

小屋を覆うように立ち並ぶ木々の間を抜けて、ようやく街道に出る。

眩しく輝く太陽は、もう一番上を過ぎていた。

心地よい風が草原を抜けて、草の波が体を揺らして音を立てる。

「いい風だな」

「うん」

目を細めて笑うユイの横で、アイシスは静かに辺りを見回していた。

「あれが、ロアイスですか?」

「ああ、迷わなくていいだろ」

遠目にロアイスの城壁が見えているのに、歩くと案外距離がある。

この時間からだと、夕方までにつけるかどうか…だな。

「行きはいいが、問題は帰りだ。

 森に入る場所は目印がほとんどないから、覚えておいてくれよ」

「はい」

通ってきた道も、いくつかある獣道の一つにしか見えないから、思ったよりも間違えやすい。

この辺りの森でも、変に深入りして迷うと冗談ではすまないときがあるからな。

「さて、行くか」

いつもは一人で、たまにユイと二人で歩くこの長い街道。

少し離れて歩くアイシスを気にしながら、速度をあわせてゆっくりと歩いた。

 

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第04話です。
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