敗北 |
昼休み――Fクラスの教室の前で足を止める。
もっと明久くんと話をしたい。
もっと明久くんと同じ空間にいたい。
そんな気持ちを胸に秘めながらアタシは今、Fクラスの教室の前に立っている。
「よ、よし……行くわよ」
一つ深呼吸をし、教室のドアを開ける。
「あ、明久くんはいるかしら?」
「 」
アタシが声をかけた瞬間、教室の中の空気が止まった気がした。
「あ、あの……」
何? 何でこんな重苦しい空気になってるの!?
アタシが何かしたっていうの!?
そんな疑問を抱いていると、一人の覆面を被った生徒が声をあげた。
『これより異端審問会を執り行う』
その声に続いて何処から現れたのか、同じ覆面を被った生徒がぞろぞろと出てきて、
「えっ!? ちょっ、僕は――」
明久くんを囲んで十字架に括りつけた。
えっと……何で明久くんが十字架に括りつけられてるのかしら?
もしかしてアタシのせいなのかしら?
『異端者――吉井明久を死刑にする』
「弁護の余地すらないの!?」
『死刑。執行』
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
覆面を被った集団に明久くんがボコボコにされていく。
あー、これはどうしたらいいのかしら?
なんとかして助けてあげたいんだけど、さすがにあの中に入っていくのは……ね。
どうしたものかと考えていると、物凄い笑顔の島田さんと姫路さんが近づいてきた。
「え、えっと、何か用かしら?」
「別に用ってほどの事じゃないんですけどぉ〜」
「そうそう、別にたいしたことじゃないんだけど」
相変わらずの笑顔の二人。
でも、何でかしらね。笑顔なのに目が全然笑ってないのよね。
瞳に光彩がないっていうか、目が虚ろというか……でも表情は笑顔なのよね。
ハッキリ言って怖すぎるわ。
「気のせいかもしれませんけど、さっき明久君の事、名前で呼んでませんでしたか?」
くいっと可愛く小首を傾げる姫路さん。そして――
「随分、アキと親しそうね……」
声のトーンを一切変えず、低い声で喋る島田さん。
何、このホラー。
何が怖いって、この二人さっきから笑顔のままってところなのよ。
表情を一切変えずアタシを見つめる二人。
もしかしてアタシ、地雷でも踏んだのかしら?
――って、怯んでる場合じゃないわよね。
アタシは明久くんに会いにきたわけで、この二人に会いにきたわけじゃないのよ。
「アタシは明久くんに用があるから、ちょっと退いてもらっていいかしら?」
恐怖を振り払うように少し強気で言う。
「ふふふ、ダメですよ」
「そうよ。アキはこれからうちらと、じっくりと話をしないといけないからね♪」
「そうなんですよ。じっくりと……ね♪」
本気で人を殺せそうな殺気をまき散らす二人。
これはちょっと、分が悪いかもしれないわね。
日を改めた方が無難かもしれないわ。
決して、この二人の殺気にビビったわけじゃないわよ! ただ、その今日は調子が悪い
だけで、本来なら…………
「……帰るわ」
「そうですか♪」
「それはよかったわ♪」
アタシの言葉に先ほどとは違う笑顔を見せる二人。
本当に嬉しそうな表情。
どんだけアタシのこと邪魔だと思ってたのよ。
ま、まぁ、今回は諦めるけど、アタシはまだ完全に負けたわけじゃないからね。
次こそは絶対に――
『うふふ、明久君。少しお話がありますから、ちょっといいですか?』
『ひ、姫路さん? あの、顔が凄く怖いんだけど……』
『アキ。うちからも大事な話があるのよね』
『み、美波まで!? ふ、二人ともどうしたの!?』
『『問答無用!』』
『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
あの二人から明久くんを取ってみせるんだからね!
説明 | ||
明久を求めようとすれば、必然的にあの二人が立ちはだかりますよね? | ||
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コメント | ||
優子頑張れ!!明久死んではいけないと思う・・・・・・・・たぶん(VVV計画の被験者) | ||
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