敗北
[全1ページ]

 昼休み――Fクラスの教室の前で足を止める。

 もっと明久くんと話をしたい。

 もっと明久くんと同じ空間にいたい。

 そんな気持ちを胸に秘めながらアタシは今、Fクラスの教室の前に立っている。

「よ、よし……行くわよ」

 一つ深呼吸をし、教室のドアを開ける。

 

「あ、明久くんはいるかしら?」

「                 」

 アタシが声をかけた瞬間、教室の中の空気が止まった気がした。

「あ、あの……」

 何? 何でこんな重苦しい空気になってるの!?

 アタシが何かしたっていうの!?

 そんな疑問を抱いていると、一人の覆面を被った生徒が声をあげた。

 

『これより異端審問会を執り行う』

 

 その声に続いて何処から現れたのか、同じ覆面を被った生徒がぞろぞろと出てきて、

「えっ!? ちょっ、僕は――」

 明久くんを囲んで十字架に括りつけた。

 えっと……何で明久くんが十字架に括りつけられてるのかしら?

 もしかしてアタシのせいなのかしら?

『異端者――吉井明久を死刑にする』

「弁護の余地すらないの!?」

『死刑。執行』

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 覆面を被った集団に明久くんがボコボコにされていく。

 あー、これはどうしたらいいのかしら?

 なんとかして助けてあげたいんだけど、さすがにあの中に入っていくのは……ね。

 

 どうしたものかと考えていると、物凄い笑顔の島田さんと姫路さんが近づいてきた。

「え、えっと、何か用かしら?」

「別に用ってほどの事じゃないんですけどぉ〜」

「そうそう、別にたいしたことじゃないんだけど」

 相変わらずの笑顔の二人。

 でも、何でかしらね。笑顔なのに目が全然笑ってないのよね。

 瞳に光彩がないっていうか、目が虚ろというか……でも表情は笑顔なのよね。

 ハッキリ言って怖すぎるわ。

「気のせいかもしれませんけど、さっき明久君の事、名前で呼んでませんでしたか?」

 くいっと可愛く小首を傾げる姫路さん。そして――

「随分、アキと親しそうね……」

 声のトーンを一切変えず、低い声で喋る島田さん。

 何、このホラー。

 何が怖いって、この二人さっきから笑顔のままってところなのよ。

 表情を一切変えずアタシを見つめる二人。

 もしかしてアタシ、地雷でも踏んだのかしら?

 ――って、怯んでる場合じゃないわよね。

 アタシは明久くんに会いにきたわけで、この二人に会いにきたわけじゃないのよ。

 

「アタシは明久くんに用があるから、ちょっと退いてもらっていいかしら?」

 恐怖を振り払うように少し強気で言う。

「ふふふ、ダメですよ」

「そうよ。アキはこれからうちらと、じっくりと話をしないといけないからね♪」

「そうなんですよ。じっくりと……ね♪」

 本気で人を殺せそうな殺気をまき散らす二人。

 これはちょっと、分が悪いかもしれないわね。

 日を改めた方が無難かもしれないわ。

 決して、この二人の殺気にビビったわけじゃないわよ! ただ、その今日は調子が悪い

だけで、本来なら…………

「……帰るわ」

「そうですか♪」

「それはよかったわ♪」

 アタシの言葉に先ほどとは違う笑顔を見せる二人。

 本当に嬉しそうな表情。

 どんだけアタシのこと邪魔だと思ってたのよ。

 ま、まぁ、今回は諦めるけど、アタシはまだ完全に負けたわけじゃないからね。

 次こそは絶対に――

 

『うふふ、明久君。少しお話がありますから、ちょっといいですか?』

『ひ、姫路さん? あの、顔が凄く怖いんだけど……』

『アキ。うちからも大事な話があるのよね』

『み、美波まで!? ふ、二人ともどうしたの!?』

『『問答無用!』』

『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 あの二人から明久くんを取ってみせるんだからね!

 

説明
明久を求めようとすれば、必然的にあの二人が立ちはだかりますよね?
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
4370 4156 8
コメント
優子頑張れ!!明久死んではいけないと思う・・・・・・・・たぶん(VVV計画の被験者)
タグ
バカとテストと召喚獣 二次創作 吉井明久 木下優子 

tanakaさんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com