、キミのとなりで七話
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第3章   酒は飲んでものまれるな

 

 

 

 

 

 

 

 

 雀のさえずりが朝の空気に触る。

 それはまるで小さなオーケストラのようで、俺はそれに耳をすませながらクラシコ前の掃除を俺は掃除を楽しんでいた。

 

 

「武弥さん」

 

 

 一通り掃除を終えると、美雪ちゃんの声に振り向く。

 

――月曜日、今日からまた大学が始まる。

 

ただその前に、俺には仕事が残っていた。

 

バイト先である『クラシコ』前の掃除だ。

 

何故クラシコの掃除をしているのかというと……。

 

 そう、引っ越した初日に、知子さんの言葉を否定できなかったばかりに半強制的に日課として位置づけられた仕事「クラシコ前の掃除」の為であった。

 

 正直「冗談だった」と、掃除をしないという選択へと持って行く事も出来たであろうが、知子さんに掃除していると言ってしまった手前中々後に引けなくなり現在に至るのだ。

 

 もちろん、それだけが理由と言うわけではない。

掃除する事によって、今回の引っ越しの件でもそうだが、それ以外でも日頃お世話になっている美雪ちゃんやその父でもあるクラシコの店長に、何か形としてお礼がしたかったのだ。

 

 そして――

 

 

「美雪ちゃん!

ちょうど今一通り終わった所」

 

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 今日の朝の掃除が終わり、見計らったかのように紺のブレザーに青いリボン、そして青いチェック柄のブリーツスカート姿の美雪ちゃんが顔を出したのだ。

 

 どうやら高校の制服に着替えて出てきたようだ。

 

 

「ホントですか!?

実はですね〜、お父さんが朝食食べてけって……。

良かったら、一緒しませんか?」

 

 

 掃除が終わったと聞くや否やナイスタイミングとばかりに、にっこりと覗くように首を傾げる美雪ちゃん。

 

 食事を誘ってくれる。

 どうやら食事の誘いの用だ。

 

 もちろん俺にとっては断る理由もない。

 むしろ、嬉しい誘いだ。

 

 

「ホントに!?

 じゃー、お言葉に甘えさせてもらっても良いかな?」

 

「もちろんですよ」

 

「そんじゃちょっとまって」

 簡単に掃除道具を倉庫に戻す。

 

 倉庫からも外に繋がっている為鍵さえあれば出入りが可能なのだ。

 

 

「大丈夫ですか?

ではでは行きますか」

 

「おう!」

 

 

 美雪ちゃんは体をクルリと反転しスカートを靡かせると、そのまま自宅へと向かった。

 

 ……あれ、俺着替えてなくね!?

 

 

 

この建物は一階が喫茶店あるクラシコ、そして二階が美雪ちゃん達の住む自宅がある。

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二階の自宅に行くには二通りある。

厨房にある階段を上がるか、外から続く階段を上がるかの二通りだ。

 

美雪ちゃんの案内で外の階段から入る。

リビングへと通された。

 

 リビングにはこじゃれた家具が揃っており。アンティーク調の椅子を初め、イタリアンテイストの置物や時計などが目に溜まった。

 

テーブルには俺が趣味で作ったコースターも置かれている。

 

 

「武弥さん、少し座って待っててください」

 

「あぁ、わかった」

 

 

俺は美雪ちゃんに促されて その椅子に腰を掛けた。

 

 今思えば自宅に上がったのは初めてだ。

 

 店には休憩室もあり、八畳程のしっかりとしたスペースが設けられていたし、何かするにしても店内で事が済んでいたのだ。

 

 それというのも美雪ちゃんの父である朝岡東(あさおか あずま)は全国にイタリアンレストランのチェーン店を構える社長の長男。

 

 それもあって現在喫茶店を経営しているのだが、何せ家族大好きな店長。

 店長権限でやりたい放題の一面があるのだ。

 

 その為私情で店を休む事ですら珍しくない。

 今のご時世良く店がやっていけるなと思うばかりだ。

 

 

「お待たせです、コーヒーで良かったですよね?」

 

 

 キッチンからコーヒーとお店で売っているパニーニをお盆に載せ運んで来る。

 どうやら店の売り物を朝食として運んできたようだ。

 

 更に良く見ると店のパニーニのトッピングは、朝の時間は決まったトッピングなのだが、ソレとは異なっていた。

 

 美雪ちゃんの計らいでトッピングをアレンジしてくれたようだ。

 

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「私がトッピング、適当に選んできちゃいました」

「美雪ちゃん特製か〜!? ありがとう」

 

 

 俺はそのままパニーニを受け取り、特製のトッピングへと目を移す。

 

 アボガド・ワサビ・タマネギ・モッツァレラチーズ・生ハムが朝のトッピングメニューなのだが、アボガドをポテトサラダと合わせ、玉ねぎはトマトに、生ハムがカツレツへと姿を変えていた。

ありがたい事にかなりのボリュームだ。

 

 

「仕事の後ですし、しっかり食べなくちゃですよ!」

 

 

 テーブルを挟み俺の前座る美雪ちゃん。

 どうやらこのまま学校へと向かう俺の為にボリュームあるトッピングにしてくれたようで、掃除していたのは、10分ぐらいだが、やはり身体を動かすと腹は減る……。

 

「お、解ってるねぇ〜やっぱこの組み合わせが一番うまいんだよねぇ」

 

 

俺は普通に販売されるモノより厚くなったパニーニを頬張る。

 

 実は賄いでよくパニーニが出る。

 その時に、色々な組み合わせを試みては旨い物を開発しているのだ。

 しかし、やはり、この組み合わせが一番だ。

 

 このモッチリとした自家製パニーニにサクっと揚がったジューシーなカツレツ……、そしてポテトサラダとアボガドの濃厚でクリーミーな味わいが合わさりなんとも言えないハーモーニーを醸しだす、そしてさらにトマトの酸味がそよ風ように……。

 

 

「この前スモークサーモンとメンチカツをピザソースとゴマだれで食べてましたもんね。」

 

 

 特製パニーニに舌鼓を打っていると、美雪ちゃんはその横で思い出すように口元に手を添えクスクスと嬉しそうに笑っていた。

 

 

「ついでにスライスしたリンゴも挟んだからね。」

 

 

 笑う美雪ちゃんに対し左手の親指を立て答える。

 

 

「あれは流石にやりすぎです」

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 困ったように笑う美雪ちゃん。

 

 

「ですよねー……、あっ! でもメンチとリンゴだけなら案外いけたかも!!」

 

 

 リンゴとメンチの部分だけがたまたま口に入った際の味は、悪くは無かった。

 

 

「そういうデザートもありますからね」

 

「えっそうなの!?」

 

「知らないんですか!?

実はですね〜、カツとリンゴでアイスとかを挟んで食べると美味しいのです!!」

自慢げに話す美雪ちゃん。

 

 

「実はトンカツパフェが私の高校で今流行ってるんですよ!!」

 

 

 そう言いながら美雪ちゃんは自慢げに小さく胸を張った。

さらには今度お店の食材で作ってみようかなと、思いふけっているようだ。

 

 

「よし、じゃー今度パフェ対決でもしちゃう!?」

 

 

 美雪ちゃんの反応に対し、俺は特製パニーニを食べ終え残り少しとなったコーヒーを飲み干すと、好奇心と遊び心で勝負を持ちかけた。

 

 それに対し美雪ちゃんは……。

 

 

「あっ良いですね!

絶対負けませんけどね。」

 

 と自信満々に答える。

 実はこの手の遊びは、『恒例』だったりする。

 

 それというのも、店長が月に一回『試作研究会』と銘打って美雪ちゃんはもちろん、俺を含めた暇なバイトを捕まえて月一ぐらいで行っているからだ。

 

 さらにいえばノリの良い店長だ。確実に『第一回“クラシコ”パフェ創作料理対決』が開催されるに違いない。

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 何より美雪ちゃんの頼みとならば断るはずがない。

 

 

「あっ……」

 

 

 どのようなパフェを作ろうかとすでにやる気満々な俺だったが、美雪ちゃんの声に現実に戻る。

 

 

「あ、そろそろ時間ですね……?」

「え、もう八時前か!? 」

 

 

 俺は壁架け時計の針がそろそろ八時前を指す事に気付いた。

 

 美雪ちゃんの笑顔は徐々に曇り始め、気がつけば眉をハの字したやや残念そうな顔をしていた。

 

 

「だね……よし、じゃーこれかたしとくよ」

 

 

 コーヒーのカップを持ち立ちあげる。

 

 

「あっ、良いんですか?

では、厨房の方によろしくです」

 

 

「おぅ、お安いご用さ!」

 

 

 隣の椅子に置いていたカバンを持ちながら悪戯っぽく笑う美雪ちゃん。

 

 

「では行きましょうか……。」

 

 

 どうやら学校へ行く準備は万端なようだ。

 いつものブレザー姿でグレーで可愛らしい小物が付いたスクールバックを肩に掛けていた。

 

 そんな美雪ちゃんを玄関まで送ると、俺は厨房へと向かった。

 

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 家につくなり俺は急いで大学の支度を始める。

 と言ってもすでに教科書はカバンに入っているため、入れ忘れは無いか確認するくらいだ。

 

 

「よし、大丈夫そうだな……?」

 

 

 実際支度はすぐに支度は済んだ。

 

 すでに部屋に戻る時には八時を回っていた。

 このアパートから大学まで歩いて20分、今家を出た所で早く大学に付いてしまうのだが……、遅刻するよりいいだろう。

 俺は「行くか……」と独り言を呟くと、顔を叩き気合をいれながら部屋を出る事にした。

 

 

 

ガチャッ――

 

 

「じゃ行ってきますよっと」

 

 

呟くように部屋を出る。

 

 

「行ってらっしゃい」

「っ!?」

 

 

 誰もいない部屋に呟いたのだが、返事が返って来る。

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らいれんの鼻水が滴るあとがきペェジもとい編集後記。

 

 なんというか、非常にスミマセンでしたぁぁぁぁッ!!

 

 前回、ちゃんと一週間で投稿するなんて言っておきながら、二週間かかってしまうと言う暴挙を果たしてしまったKADEN@でざ〜との片割れのらいれんです。

 

 今回も年度末と言う事でKADENさんは忙しくてお休みです。

 

 それは兎も角今日も言い訳をしたいと思いますw

 それはですね、二つの大きなアクシデントが起こってしまったのです。

 

 一つめ、キーボードが全滅!?

 

 これはですね、まぁタイトル通りですわw

 メインのキーボードの(N)と(M)そして(、)(。)のキーが効かなくなってしまったのです。しかもサブのPS/2のキーボードもなにやら調子が悪くなってしまい、KADENさんから送られた原稿を編集することが出来なかったのです……。

 

 そして二つ目、花粉症です……。

 

 今年、マジやばいです。

 花粉症で、死人が出たら多分それはらいれんですw

 

 くしゃみが止まらない、目が非常に痒い!

 いまも、くしゃみが止まらず、汚い話ですが、ディスプレイにらいれん汁が飛びまくってwwwwwうぇうぇうぇw

 

(書き終わったらPC周りの大掃除がはじまりますw)

 

 目もこすりすぎて多分真っ赤になっているでしょうw 

 

 正直限界です、それではさいなら〜ノシ

 

説明
非常にすみません!
投稿にか〜な〜り時間が掛かってしまいました!
詳しくは、あとがきにて……。
それでは第七話をお送りいたします!
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