−真・恋姫無双 魏After−月下の誓い 6
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― 胡蝶Side ―

 

 

 

 

 

 

一通り考え終えたのか彼が口を開き願いがあるという。。

彼の願い、それは

 

「黄蓋の死が歪みなら、その死は俺が肩代わりするよ。元々俺はあの世界の人間じゃないから。

・・・・・・・華琳達ともう会えないのは嫌だけど、寂しいけど・・・・・・・華琳達の住むあの世界を守れるなら」

 

『世界よ、やはり彼を選んだことは間違えではなかったようですよ』

 

私は考える。

死者に命を与えるということ。

出来ない訳ではない。

だけどそれをすればすべてが終わってしまう。

だから私は断った。

 

「それじゃさ、胡蝶さんの力であの世界の、事が起こる前に俺を送ることはできない?」

 

(ふふ、やはり彼は何度見ても飽きませんね)

 

彼はもう一度歴史を改変すると言っているのだ。

過去に送る。

問題なくできる。

だが、問題なくできると言ってもそれは私個人の力だけでは難しい。

そして制約もある。

それなりの代償がいる。

代償を払うのはもちろん彼。

隠す必要もないのでその事を彼に伝える。

 

「代償が何なのかはわからないけど、いくらでも払うよ」

 

彼は迷うことなく代償を差し出すという。

その代償が何かも聞かずに。

これが彼なのだろう。

あの世界が彼を欲しあの世界に住む者達が欲する人間。

彼を愛した者達が口を揃えて皆こう言っていた。

 

『北郷一刀は、お人好しで優し過ぎる』

 

私は此処でこうして彼と向き合ってその言葉の意味を理解していた。

 

(お人好しで優し過ぎるか・・・・・・ふふ、まさしくその通りね)

 

そんな私を尻目に、彼は何かを決したように私を見つめこう漏らした。

 

 

「ありがとう」

 

そして彼の言葉を聴き終えると同時に私は、あの世界のあの場所へと彼を送る。

彼のことだ、どんなことがあろうとも彼女の歴史を変えるのだろう。

その為には命ですら捨てるだろう。

彼は気付いているのだろうか?

彼の追うことになる代償は軽いものではない。

これを聞いた彼はどういう反応をするのだろう。

想像できる気がする。

きっとこう言うだろう。

 

『皆が幸せに暮らせるのなら』

 

私は彼の姿を見送る。

さて、私はもう一つの仕事に取り掛かるとしましょうか。

 

「まったく、あの人は彼のことになるとこちらの都合はお構いなしなんだから・・・・・・」

 

 

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― 一刀Side ―

 

 

俺の願いは単純だった。

歴史上死ぬはずの無い黄蓋が歴史を変えたことで死んだ。

それが歪みに繋がるというのなら俺はその歪みを正すためになんでもする。

安直すぎるかもしれないが黄蓋の死を俺が肩代わりすればいいんじゃないか?

死ぬのは怖い。

華琳達に会えなくなるのは辛い。

でも、華琳達が皆が住むあの世界の平和のためなら我慢できる。

だからそう胡蝶に伝えた。

 

「あの世界の黄蓋は既に死んでいる、そして死んだ者を生き返らせることは易々と行っていいことではない」

 

思った通り、そう簡単にはいかないらしい。

となると、他に手を考えるしかない。

一通り思考を巡らし、そして思いつく。

俺のいた世界から別世界とはいえ過去であるあの世界に行くことができたなら、今ここからあの世界の過去に行くこともできるんじゃないのか?

その事を彼女に尋ねると、・・・・できるらしい。

但し、制約があり代償が必要。

代償を払えばいいならいくらでも払ってやるさ。

それで華琳達の幸せを守れるのなら。

色々手段を考えていると大きな問題があることがわかった。

生粋の将である黄蓋に死ぬから降伏しろと言っても聞くはずがないのは目に見えている。

だからといって華琳に殺すなと進言しても「それが将という者よ」とか言って聞くはずもない。

 

おまけに二つある制約というのが少々面倒だった。

一つは在り来たりのこと。

『自分自身に会ってはならない』

少女曰く

 

「一つの歴史の中で君が君と会うことは、君の歴史に矛盾が生じることになる。二人ともそこからはじき出されるだけならまだしも歴史そのものが無かった事になる可能性もある」

 

とのこと。

俗に言うタイムパラドックスが起こるって事なんだろうけど深く追求する必要はないと感じた。

とりあえず自分に会わなければいい事だ。

あの時に自分が何処にいたかぐらい覚えているわけだし。

そしてもう一つ。

 

『俺という存在を周囲に悟られる行為の制限』

 

俺がその場所にいると気付かれるような行為をすることができなくなるらしい。

その言葉だけを聴くとどういった制限がされるのか想像できない。

だけどそこまで気にしなくていいのかもしれない。

俺がそこにいることを周囲に気付かれなければいいということだけ、それさえわかってれば問題ないとは思う。

残るは大きな問題。

 

『黄蓋を止める手段』

 

数多の手段を考えた結果、一つに絞られた。

あまりにも在り来たりであまりにも単純。

それに成功すればあの世界の彼女達との約束は果たせるはずだ。

俺は彼女を見つめ決意を表す。

彼女が手をかざすといつかの月夜のように俺の体が透けていく。

こんな俺にチャンスをくれた彼女に感謝の言葉を伝え俺は闇に溶けていく。

あの世界のことを思いながら。

彼女達を思いながら。

そして一つの悲しみを抱えながら。

 

 

―――――――

 

 

目を開けるとそこは船の上。

見覚えがある。

俺は戻ってきたんだな・・・・・・・。

そして胸が締め付けられる。

 

『覚悟したはずだ』

 

そう言い聞かせ辺りを見回す。

前線の状況を見るに既に黄蓋は投降してきているのだろう。

とりあえずこの服じゃ目立つので武器庫へと向かい間諜用に用意された呉兵の装備を身に着ける。

さぁ、ここからが本番だ。

黄蓋がいる場所はわかっている。

船首へと行き、黄蓋率いる部隊の中にそそくさと紛れ込む。

作戦はこうだ。

戦闘が始まって俺の知っている世界の通りに進めば黄蓋は死を覚悟し最後の口上を述べる。

そうなる前に戦闘中の不利に付け込んでを彼女を守るという名目で彼女を船から突き落とす。

安直だと思う。

だけど、敵からの助けであれば黄蓋は確実にその場から離れず何としても戦おうとするだろう。

だが自分の兵から船外へ投げ出されたのであれば恥をかくかもしれないが逆上して戦闘を続けようとはしないだろうと言うのが俺の作戦。

多少詰めが甘い気がしないわけでもないが何とかするしかない。

時を待ち俺は静かに息を潜めていた。

 

 

 

 

 

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― 胡蝶Side ―

 

 

私は、彼がどう行動するのかを自身の目で確かめるために船に降り立っている。

彼は黄蓋の部隊の中にひっそりと溶け込んでいる。

彼は彼女をどう助けるかは簡単に予想できた。

彼の考えは甘いと言わざるを得ない。

ここは戦場。

そして彼のいる場所はこれから始まるであろう戦いの中心。

もっとも過酷な場所。

彼の思惑通りに行くはずはない。

彼は知らないのだろう。

戦の最中は最も被害が少ないであろう本陣にいたのだ。

最前線の悲惨さを目にしてはいても体感はしていないのだから。

前線の悲惨さを目の当たりにした時、彼はどういう行動を取るのだろう。

そしてその時が訪れた。

辺りが一斉に騒がしくなる。

黄蓋の思惑に反し火矢攻めは失敗に終わる。

そして瞬く間に黄蓋の部隊は窮地に追いやられていった。

その中にまぎれているはずの彼を眼で追う。

意外だった。

血飛沫を浴び多少の戸惑いは感じられたが彼が見ているのは黄蓋ただ一人だった。

徐々に追い詰められていく彼女達。

その時は間近に迫っている。

彼が動いた。

だが舞台の混乱で思うように進めめないのだろう。

彼は声を上げ彼女を逃がそうとする。

彼の顔に一瞬で困惑が走りぬけた。

この世界に来るに当たっての制約。

 

『彼という存在を周囲に悟られる行為の制限』

 

彼は決して出ない声を出そうと必死になりながら混乱している部隊の中を黄蓋目掛けて進んでいく。

もう終わりは直ぐそこ。

弓を構える夏侯淵、最後の口上を上げる黄蓋、彼女の死を阻止しようとする北郷一刀という少年。

そして矢が放たれる。

鈍い音と共に私の視界に写ったのは、こうなるであろうと予測した通りの光景だった。

 

 

 

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― 一刀Side ―

 

始まった。

黄蓋隊は慌しく動き始めあちこちで火の手が上がる。

だが、それは俺自身が進言した策で失敗に終わる。

 

(皮肉なもんだな・・・・)

 

魏軍は着実に黄蓋隊を落とそうと攻め立ててくる。

知識として前線の悲惨さは知っていた。

だがこの悲惨さは、知っていたではすまない。

むせ返るような血の臭い、鳴り響く金属音、そこかしこで聞こえる罵声、怒声、そして悲鳴。

 

(助けてあげられなくてごめん)

 

胡蝶からの話を聞いた後だからそう思うのかもしれない。

俺がこの世界で見ていたものはごく一部でしかなかった。

華琳の望む世界、その世界とその世界に生きる彼女達しか見ていなかったのかもしれない。

 

『華琳の望む世界を作るために死んで逝く人達』

『孫策の望む世界を作るために死んで逝く人達』

『劉備の望む世界を作るために死んで逝く人達』

 

それぞれの国を率いる彼女達に夢を託した人達。

それぞれの国のそれぞれの王はそれぞれの夢のために戦ってくらた人達の思い、そして死んでいった人達の家族達の思いを背負ってこれからも生きて行くのだ。

俺は、初めはただ漠然と人々が笑って暮らせる世界になればいいと思っていた。

俺は自分の愛した人を死なせたくないと思っていた。

俺が見ていたのはこんなにも狭いものだったのかと思った。

 

(甘ったれだな俺は・・・・華琳に言ったら半端ないくらい怒られるだろうな・・・・)

 

そう考えている俺の体にも、それは容赦なく降りかかる。

それに恐怖し、俺の体は言うことを利かなくなりそうだった。

しかし、時間はそれを許すはずも無い。

自らに活を入れ、俺は自身に降りかかる刃や矢を無視し黄蓋のいる方へと急ぐ、・・・・が思うように進めずにいた。

その間にも隊の兵たちは徐々に追い詰められていく。

ふと、後方を確認すると俺の目に写ったのは華琳と秋蘭。

彼女達を目にし目頭が熱くなり頬が緩みそうになる。

それも束の間、急に現実に引き戻されることになる。

黄蓋が口上を上げ始めた。

時間がない。

誰でもいい。

 

『黄蓋殿をお助けせよ!!』

 

そう叫んだ・・・・・・はずだった。

声が出ない。

何度も何度も叫ぶ。

だが俺の喉から音が発せられることはなかった。

そういえば胡蝶が言っていた制約。

俺という存在を周囲に悟られる行為の抑制。

俺という人間を識別できる行為をすることができないということか!!

その最たる行為が俺の声と言うわけか。

 

(ックソ!!)

 

気付けば俺の脚はおもいっきり地面を蹴っていた。

向かう先は黄蓋。

黄蓋の口上が終わる。

間に合え!!

間に合え!!

間にあ・・・・・った・・・・・・。

 

『ッグチュ』

 

その瞬間、自身の背中から鈍い音が聞こえてくる。

目の前には黄蓋の苦悶と困惑の表情。

そんな表情の黄蓋を抱きしめながら俺の視界は天地が反転していく。

そのまま黄蓋と俺は川へと落下した。

水の中で自身の背中から生暖かいものが溢れているのがわかった。

そのまま腕の中にいる黄蓋に目を向ける。

よかった・・・・・黄蓋は大丈夫なようだ。

抱きしめていた腕を解く。

直ぐそこまで呉の船が来ているはずだ。

必ず見つけてもらえるだろう。

 

『これで歪みは消えたのかな?』

 

消え行く意識の中でぼんやりとそんな事を考えていた。

痛みはない。

不安もない。

 

(あ、一つだけあった・・・・・・)

 

華琳と秋蘭に顔見られてない・・・・・・よな?

彼女達には無駄な悲しみを残したくない。

あぁ、でも大丈夫だろう、ずっと黄蓋の顔見てたし・・・・。

 

(心残りは・・・・・・ハハ、ないわけないか)

 

だけど、この戦争が終わった世界の華琳たちは泣かなくて済むだろう。

この世界で俺所為で歪んだ歴史は俺自身で正せたと思う。

だからこの世界の俺は、華琳達を幸せにしてやってくれよ。

 

『後は・・・任せた・・・・・ぞ、北郷一刀!!』

 

 

 

 

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― 黄蓋Side ―

 

 

 

 

 

 

儂は自身の死を覚悟した。

見事に策を看破され手も足も出なかった。

 

(できることなら儂の秘策を看破した者に会って見たかったの)

 

どうせ最初から捨てるつもりだったこの命。

悔いは無い。

そう思いながら最後の口上を延べ、それも今終わる。

さぁ、来い。

儂の死に様をしかと見ろ!!

だがしかし、それは叶わなかった。

目の前にある儂の隊の兵装を身に着ける孺子の顔。

連れて来た者の顔を忘れるはずが無い。

儂とともにこの死地へと赴くものたちの顔。

呉のために命を捨てることも厭わない者達だ。

皆の顔はすべて覚えていたはずだ、その中にこんな孺子はいなかった。

 

(冥琳が密かによこした者か?)

 

いや、彼女がそんな無粋なことをするはずがない。

儂のことを良く知っている彼女だからこそするはずはないのだ。

だが、長々と思考している暇はなかった。

予想だにしてなかった突然の衝撃に驚愕し全身の傷から来る鈍い痛みが駆け巡る。

その衝撃を受けたまま孺子に抱かれ船の外へと放り出されていく自分の体。

落ちる最中少年の唇が動いた。

音は聞こえない。

 

(ごめんなさい)

 

だが、そう聞こえた気がした。

 

(貴方は生きなきゃいけない)

 

そう聞こえた気がした。

水中に投げ出された後も少年の腕は儂を抱きしめている。

孺子の背から生暖かい物があふれ出しているのがわかった。

その背には夏侯淵の放った矢が刺さっているのだと直ぐに理解した。

儂の意識がある事を確認したからなのだろうか、孺子は優しく微笑みその腕をゆっくりと解いていった。

孺子は沈んでいく。

何故か悲しそうな笑顔を浮かべながら。

儂の心は怒りでいっぱいだった。

儂の死に場所を奪った孺子。

この孺子のおかげで生き恥を晒す羽目になってしまった。

儂を生かして自分が死を迎えて何の得がある?

何故儂を死なせてくれなかった?

どうして儂を助けた?

しかし、死に場所を奪われた将として憎むべき対象であるはずの孺子から離れていく自身の体は思わぬ反応を示す。

沈み逝く孺子の手を取り自身の身の内に抱き寄せる。

儂は薄れ逝く意識の中、川の流れに身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

― あの人達Side ―

 

 

「だぁりん、こっちにも息がある者が流れ着いておるぞ」

 

「わかった、こっちが終わったら直ぐに治療に向かう」

 

「さて、さっさと引き上げてだぁりんの近くにいくかのぉ。ほれ、貂蝉!!ボーっとしとらんでさっさと手伝わぬか!!」

 

「・・・・・あーらん?どうしてぇこんな所にぃ、魏にいるはずのご主人様が流れてきてるのかしらぁ?」

 

「なんじゃと? ぬぅ!!この女子・・・・・なんとうらやましぃ!!」

 

「どうした?ん?いかん!! 二人とも、早くその人達を引き上げるんだ!手遅れになるぞ」

 

「それは困るわぁん!! 急いで引き上げるからぁ、華佗ちゃんおねがいねぇ!!」

 

「任せろ!! 絶対助けてみせる!!

はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

・・・・・見えた!! 必察必治癒・・・・病魔覆滅!!!!

げ・ん・き・に・なぁれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!!!!」

 

「華佗・・・・・ちゃん?」

 

「・・・・・ふぅ。これで二人とも大丈夫だ」

 

「ありがとぉう、華佗ちゃぁん、これはぁ、お礼の気もちよぉぉん!!ちゅぅぅぅぅぅぅ・・・・・」

 

「いや、気にするな。それじゃその人たちは頼んだぞ。俺は次の兵達のところに行く」

 

「あぁ〜ら、つれないわねぇ」

 

「むぅ!!! 貂蝉、きさまなんとうらやま・・・・むぅ!?何奴!!」

 

「あらぁん? どうしてぇ、あなたがこんな所にいるのかしらぁん?」

 

「それはこちらの台詞です。そこに寝ている彼、こちらに渡していただきませんか?」

 

「はい、そうですかぁ・・・・・なぁんて言うとでもおもうぅ?」

 

「よく言った貂蝉!! 理由も聞かず渡すわけなかろう!!」

 

「歪みの修正・・・・・と言えばわかってもらえますか?」

 

「ふぅぅむ、なるほどねぇん・・・・・ご主人様のぉ、この様子を見る限りぃ、どうせ小難しいこといったんでしょぅ?」

 

「私は事実を伝えただけです」

 

「胡蝶、ぶつぶつ何を言っておるのだ? まぁ、それはどうでもいいが。ここに貂蝉のご主人様がいるということはだ、この世界にはご主人様が二人いることになるのか?」

 

「そう言う事になります。ですので連れ戻させていただきます」

 

「勿体な・・・・・じゃなくてぇ、口惜しいけどぉ、そう言う事なら仕方ないわねん」

 

「むぅ、貂蝉、そう易々渡してよいのか?」

 

「いいのよん、胡蝶ちゃんならぁ、悪いようにはしないはずょん」

 

「まぁ、確かにのぉ」

 

「それじゃ、この彼は連れて行きます」

 

「ご主人様のこと頼んだわよぉ!!」

 

「ご期待に沿えるかどうかわかりかねます」

 

「ぬうぅふっふ〜」

 

「でわ、失礼します」

 

「・・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

「胡蝶ちゃんも損な性格ねん。嫌な役回りなんてしなくてもご主人様ならわかってくれる筈なのにぃ」

 

「そうじゃのぉ。しかし、あの調子では、良い男など捕まえることはできんな」

 

「そうよねぇ。さぁてとぉ、わたしも、行こうかしら、やらなきゃいけない事できちゃったし」

 

「そうか行くのか。それじゃ、私はだぁりんのところに戻るとするかのぉ」

 

「卑弥呼、華佗ちゃんをよろしくねぇん」

 

「まかせろ! べっ、別にうぬのためではないのだからな! だぁりんをほっておけないないだけで、うぬに頼まれたからではないのだからなっ!」

 

「ぬっふっふぅ〜」

 

「う、うるさいうるさい!その妖しい笑いもやめぃ」

 

・・・・・・・

・・・・・・

・・・・・

 

これは歴史に残ることの無い会話。

これは空白を埋める会話。

唯それだけ。

 

 

 

 

― 胡蝶Side ―

 

 

「むぅ!!貂蝉、きさまなんとうらやま・・・・むぅ!?何奴!!」

「あらぁん?どうしてぇ、あなたがこんな所にいるのかしらぁん?」

「それはこちらの台詞です。そこに寝ている彼を返していただきます」

 

また面倒な人たちに出会ってしまったと思った。

この人たちが関わると面倒なことになるのは目に見えている。

 

「はい、そうですかぁ・・・・・なぁんて言うとでもおもうぅ?」

「よく言った貂蝉!!理由も聞かず渡すわけなかろう!!」

「歴史の修正・・・・・と言えばわかってもらえますか?」

 

やはりと言うかなんと言うか。

その場に倒れている彼を見られてしまったのだ。

彼女達(彼達)、特に貂蝉は彼に関しては鋭い嗅覚を持っているのだ。

ごまかしても貂蝉から追求が来ることはわかりきったこと。

 

「ふぅぅむ、なるほどねぇん・・・・・ご主人様のぉ、この様子を見る限りぃ、どうせ小難しいこといったんでしょぅ?」

「私は事実を伝えただけです」

 

これは彼からの願いであって私が強制したことではない。

ただ真実を語っただけに過ぎない。

打算はあったのかもしれない。

彼ならば・・・・・・・。

この世界が愛した彼ならば。

 

「胡蝶、ぶつぶつ何を言っておるのだ? まぁ、それはどうでもいいが。ここに貂蝉のご主人様がいるということはだ、この世界にはご主人様が二人いることになるのか?」

「そう言う事になります。ですので連れ戻させていただきます」

「勿体な・・・・・じゃなくてぇ、口惜しいけどぉ、そう言う事なら仕方ないわねん」

 

卑弥呼は無駄な所で勘がいい。

私が話したほんの少しの情報だけで良くここまで見抜けるものだ。

さすが変態。

 

「むぅ、貂蝉、そう易々渡してよいのか?」

「いいのよん、胡蝶ちゃんならぁ、悪いようにはしないはずよん」

「まぁ、確かにのぉ」

 

私は、貂蝉がやけに素直に応じたことに驚いたが表には出さないようにした。

大人しく渡してくれるのなら追求する必要はない。

此処でこの二人ともめることだけは遠慮したいので早々に立ちさろう。

 

「それじゃ、この彼は連れて行きます」

「ご主人様のことぉ頼んだわよぉん!!」

「ご期待に沿えるかどうかわかりかねますが善処しましょう」

「ぬうぅふっふ〜」

「でわ、失礼します」

 

私は横たわっている彼を連れて彼女等(彼等)の元を急いで立ち去った。

あの笑いは何かたくらんでいる笑いだ。

どうして彼女達に出会ってしまったのだろう。

どうしてこの二人は彼女等(彼等)に拾われたのだろう。

運が悪いというかなんと言うか・・・・・・。

 

「はぁ・・・・・・やはりどう考えても貂蝉の仕業よね・・・・・・・・」

 

ため息しか出なかった。

 

 

 

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あとがきっぽいもの

 

10度目まして獅子丸です。

第5話のコメント読ませていただきました。

そうです。

屁理屈なんです。

理不尽なんです。

一刀の都合なんてそっちのけです。

一刀には『あの世界での過ごし方』的なマニュアルがあったわけでも自分で望んできたわけでもないと獅子丸は思います。

あの世界に勝手に呼ばれてあの世界に勝手に弾かれる。

だけど、一刀だからこそあの世界は理不尽を付き付けたと獅子丸は解釈しています。

 

ただし!!

問題は獅子丸の表現力です。

これが一番の問題です。

5話以降の話は獅子丸ではうまく表現できていないかと思われます。

 

ですので、毎度の一言

 

生温い目でお読みいただければ幸いです。

説明
第6話です。

生温い目でお読みください。
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