真・恋姫†無双〜恋と共に〜 #43
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#43

 

 

 

「風さん、華雄さん………何故、このような状況になっているのでしょうか?」

「ほうら、相変わらずのボケボケっぷりですよ。このおにーさんは」

「黙れ、この女こまし。お前には呂布がいたのではなかったのか?クズが」

「えぇと、これは一体………?」

 

 

城壁の上には見張りと弓隊の兵の他に、4人の人物がいた。風は飴を咥えながらいつものように半開きの眼で一刀を見つめる、否、睨み付ける。その隣の華雄は冷めた表情で一刀を見下ろす。そこには軽蔑と、その奥に嫉妬の色が込められていた。一刀は、その2人を前に正座をしている。武力で言えば幾らでも抵抗できるはずが、2人の圧力により動けないでいた。そして最後の1人が、新しく一刀の副官となった紀霊であった。つい先ほど袁紹の大軍を突き抜け、袁術軍の兵士たちを屠っていた恐ろしい男が、そして『天の御遣い』が、2人の女性を前に縮こまっているその光景に、ただ呆気にとられていた。

 

 

「これはまた大人しそうなおねーさんではありませんか。あれですか?おにーさんはあぁ言った性格の女性が好みなのですか?大人しい女を自分好みに染めていくのがいいのですか?とんだ変態さんですね。けっ」

「大人しそうな女性ならば董卓様もいるではないか。それをまた、ついさっき出会ったばかりの女とはな。旅の途中でも、行きずりの女を誑し込んでいたのだろうな、この変態が。けっ」

「いえ、決してそのようなことは―――」

「「うるさい黙れ」」

「………はい」

「えぇと、えぇと………」

 

 

厳しい言葉に反論しようとするも、その鋭い眼光に一刀は何も言えずに黙り込む。それを再び蔑みの眼で見ると、華雄は口を開いた。

 

 

「それで、お前は孫策を抱いたのか?」

「ぶっ!?」

「なんとっ、おにーさんは嘘を吐いていたのですか?」

「孫策が言っていたぞ、昂ぶっているあいつを鎮めたとな。呂布だけでは飽き足らなかいとは、盛った男だな」

「なんという絶倫野郎ですねー。風には手を出さないくせに、孫策さんに手を出すとは………さては巨乳好きですか、あんな脂肪の塊のどこがいいのやら」

「まぁ待て、程cよ。それを言うなら張遼も胸が大きいぞ?見たところ孫策ともあまり変わらないと思うが」

「ではどこがよかったんでしょうかね、この変態さんは」

 

 

真面目な顔でくだらない事を討議し続ける2人に、一刀がついにキレた―――

 

 

「俺は………俺は童貞だっ!!」

 

 

―――やや間違った方向に。

 

 

「………………さて、私は兵の様子でも見てくるとするか」

「風は明日の策でも考えますかねー」

 

 

4人の間になんとも生暖かい風が流れる。風と華雄は眼を逸らし、城壁から降りる為に階段へ向かおうとするが、その2人の肩をがしと掴む手があった。

 

 

「まぁ待てよ、2人とも。人が折角恥ずかしい告白をしたと言うのに、その態度はないんじゃないか、なぁ?もっとこう、突っ込めよ、むしろ笑ってくれよ。でないと、俺が居た堪れない」

「………お、おぉ、そうだな、北郷」

「お、おにーさんがまだでしたら、風が貰ってあげますので………」

 

 

珍しく風も口籠る。2人はガタガタと震えながら、振り返る。果たしてそこには、殺気とはまた違ったオーラを醸し出す一刀。その眼光は鋭い。と、風は勇気を振り絞って華雄に声をかけた。

 

 

「華雄さん、戦略的撤退です!」

「ぉ、応よっ!!」

 

 

合図に華雄は一刀の手を振り切って風を片脇に担ぐと、一目散に階段へと走る。それを追いかける一刀。

 

 

「えぇと、さっきまでたった一人で軍を蹂躙していた人とは思えないですぅ………」

 

 

取り残された紀霊はボソっと零すのであった。

 

 

 

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数分後、一刀が再び城壁の上に姿を現す。その両手に風と華雄を引き摺って。

 

 

「悪いね、変なところを見せつけちゃって」

「いえ………」

「さて、改めて紹介するよ。華雄、風。この娘は紀霊。元袁術軍の兵だが、俺の殺気にも屈さずに袁術を守り通した。なかなかいい眼をしていたんでね。それで、俺の副官として引き抜かせてもらった」

 

 

一刀の言葉に華雄の眼がすっと細まる。一刀の殺気に耐えたというのだから、大したものだ。華雄はじっと紀霊を見つめた。

 

 

「それはなかなか骨のある奴だな。だが………見た所、それほど武があるようには見えないのだが、お前と同じで力を隠すく性質か?」

「いや、その通りだよ。ただ、資質としてはかなりのものを持っている。だから、鍛え上げて俺の片腕にまで昇華させるつもりだ」

「ほぅ、そこまで言うか」

「むー、風はヤキモチですよ」

「えと、えぇと!あたし、そんなに強くないですぅ………」

 

 

一刀の正直な言に、紀霊は顔を真っ赤にし、両手をぶんぶんと振って否定の意を示す。一刀はそんな少女の姿に苦笑しながら、説明した。

 

 

「資質、って言ったろ?俺がこれから鍛え上げてやるから、精進しろ。………というか、最初会った時と性格変わってないか?」

「えぇと、あれは戦場での性格です………隊長はしてましたけど、なにぶん年下なもので、舐められないようにと………」

「なるほどな。だったらさっきの俺も戦場での人格だと割り切ってくれ」

「そういうものなのですか………?」

 

 

いまだよく分からないという顔で首を傾げるその姿は年相応のものに思える。年の頃は14、5だろう。蒼味がかった長い髪を頭の後ろで縛った単純な髪形だが、それだけに均整のとれた顔立ちが映える。

 

 

「さて、君の武器は………三尖刀か。さすが袁術軍の武器だけはある。なかなかにいい物を使ってるな」

「どうも槍とか剣とかが合わなくて………無理を言ってこれを使わせてもらってました………えぇと、変えた方がいいでしょうか?」

「いや、使い慣れているなら、そのままでいいよ………と、まだ2人の紹介がまだだったな」

「そうだぞ、北郷。紀霊よ、我が名は華雄だ。字と真名はない。北郷が片腕にしようというのだ、私も鍛えてやるからな」

「はい………」

「華雄さんは怖がられているのです。その点、風は優しいのでご安心を、紀霊ちゃん。風は程cです。おにーさんの側室第一号をしていますので、よろしくー」

「えぇっ!?えぇと、その………」

「風、嘘はよくないと言っただろう」

「稟ちゃんがいないので、風が遊ぶお相手がいないのです。冗談ですよ、紀霊ちゃん。風はおにーさん付の軍師をしておりますのでー」

「よろしくです………」

 

 

答える紀霊に、風は何かを思いついたらしく、びしっと紀霊を指差した。差された紀霊はびくっとなりながらも、眼で問いかける。

 

 

「ふふふ、風にはわかってしまったのです。紀霊ちゃんの秘密が」

「えぇと、えと…秘密、ですか?」

「なんだ、そんなのあるのか、風?」

「はいー。おにーさんは気づかないのですか?紀霊ちゃんの秘密、それはですねー………口癖が『えぇと』だということです」

 

 

言ってやったぜと言わんばかりの表情で風はその薄い胸を張り、一刀と華雄は呆れの溜息を吐く。

 

 

「えぇと、なんでわかったのですかぁ!?」

 

 

対する紀霊は、何故そのことを、と慌てて真っ赤になる。

 

 

「………おにーさん」

「言うな、風。この娘も純粋なんだろうさ………恋とは違った意味でな」

 

 

そう言っていまだ真っ赤になって、えぇと、えぇと、と言い続ける少女を、3人は慈愛の眼で眺めるのだった。

 

 

 

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暫くの後、城壁の上には一刀と風の2人が残っている。華雄は一刀に何事かを伝えられると、力強く頷いて紀霊を引き摺って下に降りていった。早速鍛錬をするつもりのようだ。一刀からの頼みもあるが、彼女の純粋さを華雄自身も気に入っているらしい。

水関から距離をとって陣を張っている連合を並んで見下ろしながら、一刀と風は話し合う。

 

 

「それにしても、おにーさんはやりすぎです」

「何が?」

「確かに風は前線を一人でやっつけちゃえとは言いましたが、まさか左翼から右翼まで突っ切るとは思いませんでした」

「心配かけたか?」

「いえいえー」

 

 

言葉とは裏腹に、風は一刀の上着の裾をぎゅっと握る。一刀はその事については何も言わず、優しく風の頭を撫でた。

 

 

「(にゅふふ。おにーさんには直接的に言っても駄目ですからねー。こうやって態度で示せば優しくしてくれるのは知っているのですよー)」

「(………なんて事、考えてるんだろうな、どうせ)」

 

 

風の策略は、一刀に読まれていた。

 

 

「それで、どこまで仕込みをしてきたのですか?」

「そうだな。まず、劉備たちに楔を打ってきた」

「楔、ですか?」

「あぁ。俺が大陸の歴史を知っていることは、風も知っているよな?俺の知る歴史では、劉備は仁徳の王として大陸に名を残した。だからつい期待しちゃってね………今はまだまだ甘いけれど、もしかしたら計画に加えることが出来るかもしれない」

「そですかー」

 

 

計画のどの部分に加えるかを言うことはしない。風なら理解できる、むしろ自分よりも上手く計画を動かすことが出来るかもしれないと、一刀は考えるからだ。

 

 

「あるいは、さらにその先に何かあるのかもしれない」

「その先ですか?」

「あぁ………ま、今はこの戦だ。次に、春蘭と話してきた。華琳なら俺がいようといまいと関係なく軍を進めるだろうけどね」

「まぁ、華琳さんですしねー」

「別に素通りしてもよかったんだが、弟子の成長具合を見たくてな。親馬鹿で申し訳ない」

「そんなこと、今に始まったことじゃないのです」

「まぁね。で、本命とも話してきた。今夜会いに行く」

「ならば目的は果たしたということですね………先走り過ぎですけどー」

 

 

そう、本命は馬騰、いや馬超だった。彼女が今後の展開の鍵を握る。最初は約も無く夜に忍び込むつもりだったが、一刀は予定を急遽変更して、最右翼へと突撃した。

 

 

「あぁ。黒兎がね、うずうずしていたんだ」

「黒兎馬ちゃんがですか?」

「あぁ、いい馬がいるから競いたいってね。実際、いい騎兵だったよ、人馬共にね」

「その辺りは風には分からないのです。黒兎馬ちゃんもそんなことを考えるのですねー」

「まぁね。本気で競えるのは赤兎馬と霞くらいだったからな。ずっと世話になってるんだ。あれくらいはしてあげたかったのさ」

 

 

一刀は頭の手をずらして、風の柔らかい頬を撫でる。風もそれに抗うことはせず、にゅふふと陽にあたる猫のように気持ちよさそうな声を洩らした。

 

 

「それはいいとして、何故袁紹さんのところにまで突っ込んだのですか?流石にあれはやり過ぎですよ」

「華琳に以前聞いた話だと、名家名家と何かと家柄を鼻にかける人らしいから、ちょっとだけ意地悪をしに」

「相変わらずのイジメっ子なのです、おにーさんは」

「で、最後に袁術だが、雪蓮…孫策と約束をしてたんだよ。彼女たちの独立を応援する、って。まぁ、今は紀霊がいるからこれ以上俺は関わらないけど」

「そですねー。呉は元々豪族の集まりを孫堅さんが統べた国です。自分たちの陣営にいる将ならともかく、他所の人の手を借りての独立だと、微妙な立ち位置になりかねませんからねー」

「ま、かなりの数は減らしたから、あとは彼女たち次第だ。この戦で仕掛けるか、それとも………」

「その辺りは風たちが考えても仕方がないです」

「後は夜になるのを待つだけだが………」

「大丈夫ですよ。あれだけ力の差を見せつけたのだから、少なくとも今日の敵襲はないでしょう」

「風もそう思うか。だったら問題ないな………さて、陽が落ちるまであと二刻くらいか。俺は仮眠をとらせて貰うよ」

「にゅふふ、御供させて頂きますー」

「駄目と言ってもどうせ来るのだろうな」

「よくお分かりでー」

 

 

まぁいいかと一刀は呟き、風の頬から手を放す。彼はもう一度だけ連合を見渡して目標の位置を確かめると、階段に向かった。その後ろを風はついていく。こうして、董卓軍対反董卓連合の戦の初日が終了した。

 

 

 

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袁紹軍・大天幕―――。

 

 

いま、この天幕の中には朝の様に諸侯が集まっていた。しかし、ほとんどすべての将の表情は暗い。例外があるとすれば、華琳と雪蓮くらいだ。前者はかつての友との再会を喜び、後者はさらに仇敵の損害に心を躍らせていた………流石にその感情を全面的に出すことはしないが。

 

 

「それで麗羽、貴女のところの損害は?」

「………1000ほど、兵がやられましたわ」

「割と少ないわね………まぁ、相手がたった1人の男ではね」

 

 

その言葉にも、袁紹は反発しない。まったくその通りだったからだ。舐めていた。20万もの数を集めたというのに、それを嘲笑うかのようにたった1人でそれを突破する。いったい何者だというのだ、あの男は。

 

 

「それで、どうする気、麗羽?」

 

 

誰も口を開かないので、再び代表して華琳が問いかけた。如何にお飾りとはいえ、この連合軍の総大将は袁紹なのだ。彼女の決定には従わなければならない。

 

 

「その前に質問ですわ、華琳さん」

「何かしら?」

「私のところでは文醜さんと顔良さんの2人がかりでも手も足も出ませんでした………」

 

 

その言葉に華琳は眼を丸くする。その内容にではない。あれほど高慢な袁紹が、自軍の恥をこうして曝け出しているのだから。遠目とは言え、それほどの武を目の当たりにして、彼女も何か思うところがあるのだろう。

 

 

「………もし、あの男を討とうとすれば、どれだけの戦力が必要だと思いますの?」

 

 

そして、こうして助言を求めているのだから。それほどまでに、彼の者の武力に恐怖を抱いたということなのだ。もしただの兵卒が討たれただけならば、ここまでは言うまい。自慢の2大将軍が手玉に取られたからこそ、彼女はここまで自分を殺しているのだ。

 

 

「そうね………まず1人では無理ね。孫策、貴女はどう思う?」

「あたしの軍で考えると………どれだけ少なく見積もっても、あたしと祭―黄蓋に甘寧、周泰の4人がかりで1人残ればいい方だわ」

「同意見ね。私のところで考えても、夏候惇と夏侯淵、それに楽進でなんとか相討ちというところかしら」

「そう、ですか………」

 

 

雪蓮と華琳の言葉に天幕が静まりかえる。皆がいま挙げられた名の将を知っていた。それだけの数を費やしても相討ちというのだ。そこに、さらに厳しい現実が突きつけられる。

 

 

「いいかしら?」

「なんですの、華琳さん」

「あの男…北郷は以前うちの客将をしていたの。その時に1人武人の連れがいたのだけれど、その娘も彼と同等の力を有しているわ」

 

 

その言葉に、天幕が騒然とする。あれだけの武を持った者がもう一人いるという。彼らは恐れる。天災とも言えるほどの武を。そしてその武を所有する董卓という者を。しかし、華琳は不適に微笑むと、言葉を続けた。

 

 

「それでなんだけど、おそらく虎牢関には張遼と一緒にその娘―呂布もいるわ。だから、もし彼が虎牢関まで下がり呂布と合わされば、私達の勝ち目は薄くなる。だから、彼を討たなければならない。討てないまでも、何とか傷を負わせるくらいはする必要があるの」

「と、言うと………?」

「私の所からは、先ほど述べた3人を出すわ。孫策、貴女はどれだけ出せる?」

「そうね………今日やりあって分かったけど、華雄はあたし1人で十分よ。恥も外聞も捨てて言えば、勝てるかどうかは正直分からない。ただ、負けることはないわ。という事で、うちからは黄蓋・周泰の2人なら出せるわ」

「そう………他に将を出せる者は?」

 

 

孫策の言葉に満足そうに頷くと、華琳は天幕を見渡した。多くの諸侯が顔を伏せるなか、1つの小さい手が上がる。

 

 

「我々のところからは、趙雲と張飛を出せます」

「しゅ、朱里ちゃん!?」

「桃香様。ここは頷いてください。愛紗さんには彼との闘いで傷を負ってます。それに、敵の将軍が2人であれば、我々の陣もそこまで厚くする必要はありません」

「………わかったよ、朱里ちゃん」

 

 

孔明の発言に、劉備が驚いた声を上げるが、少女は軍師だ。その軍師の説明に、心配と不安が入り混じりながらも、劉備は頷いた。

 

 

「他にはどうかしら?」

「………あたしも出よう」

「お姉様!?あの人すっごい強かったよ?」

「知ってるさ。ただ、皆が将を出すのに、こちらから出さない訳にもいかないだろう?」

「それはそうだけど………」

「という事で、馬家からはこの馬孟起が出る。蒲公英、皆の指示は任せたぞ」

「いい心構えね。………それで、この作戦の本筋だけれど、それは北郷を討つことではないわ」

 

 

さらに馬超と馬岱を加え、華琳は周囲を見回して他に名乗り出る者がいないと確認すると、言葉を紡ぐ。

 

 

「それは、どういうことですの………?」

「えぇ、先に孫策が言ったように、少なく見積もっての話よ。陳留にいた時も、あの男の底が見えたことはないわ。だから本命は彼でも華雄でもなく、水関そのものよ。いま推挙した将たちで彼を抑えて時間を稼ぐ。先ほどは、彼を討たなければとは言ったけれど、可能であればの話ね。その隙に敵の本丸を奪いに行くの」

「………そうね。一刀が敵にいる以上、体裁とか功績とかを考えている余裕はないわ。あたしは賛成よ」

「あたしもそれでいい。奴の武は馬上でしか見ていないが、白兵戦でも相当のものだと分かる。馬家は従うぞ」

「………えぇと、私達も賛成です!」

 

 

次々に賛同の声があがる。将は十分にいる。あとは圧倒的な数を誇る連合軍の物量作戦で行けば、それほど被害が出ないと考える諸侯がほとんどだった。そうして華琳は、最後に袁紹に声をかけた。

 

 

「で、どうするの麗羽?貴女が総大将よ。進むも退くも、貴女が決めなければ意味がないわ」

 

 

華琳の言葉にしばらく沈黙で答えた後、袁紹は伏せていた瞳を上げた。

 

 

「………わかりましたわ。その作戦で行きましょう。目指すは水関そのものですわ!如何にその武が圧倒的なものであっても、これだけの数を相手に水関を守りきることは出来ませんわ!!」

 

 

そこにいつもの高笑いはない。あるのは自慢の部下を弄ばれ、誇りを傷つけられた1人の大将の顔。彼女もまた、無意識のうちに成長を遂げている。

 

 

 

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大天幕外―――。

 

 

軍議も終わり、諸侯は三々五々自陣に戻っていく中、そこに2人の女性の姿があった。1人は先の作戦を立てた華琳。そしてもう1人は最初にその作戦に乗った、雪蓮その人。

 

 

「それで、話って?」

「あら、わかってるくせに」

 

 

呼び止められたのは華琳である。ちょっと話があるからと天幕からそう遠くない場所に留まった彼女は、雪蓮に問いかけた。

 

 

「………一刀のことでしょう?」

「ほら、わかってる。貴女はあぁ言ったけど、あれ、嘘でしょ」

「何の事かしら」

「作戦の本筋は本心でしょうが、貴女の目的は………一刀を手に入れることね」

「えぇ、そうよ。一刀も、そして水関一番乗りの功も私が頂くわ」

「はぁ………やっぱりね」

 

 

華琳の答えに、雪蓮は呆れたように息を吐く。しかしすぐに表情を元に戻すと、それ以上に眼を鋭く細める。

 

 

「ま、あたしもそのつもりだけどね」

「あら、正直ね」

「隠してもしょうがないしね。他の諸侯も狙ってるわよ。将軍2人はあいつらが抑える。だからその隙に………ってね」

「そうね。そんなことを考えていないのは劉備と公孫賛くらいかしら?とんだ甘ちゃんだわ」

「まぁ、隣の孔明ちゃんはそうでもないみたいだけどね………まぁいいわ。言いたいのはそれだけよ」

「そう」

 

 

雪蓮の言葉に、華琳は短い返事をして背を向ける。何気ない会話のようだが、彼女の頭の中は翌日実行しうる戦略で満たされていた。いくつもの仮定を想定し、一刀ならどう動くかを推測する。様々な策を考え、それを打ち消し、そして再び計算する。その眼は妖しく光り、口元には薄く笑みが残っていた。

 

 

「あらあら、よっぽど入れ込んでるのね。覇気がだだ漏れじゃない………って、あたしも人のことは言えないわね。冥琳と相談しないと」

 

 

立ち去る華琳の背中を見送った雪蓮は独り呟く。彼女の眼もまた鋭く光っていた。

 

 

 

 

 

 

 

劉備陣―――

 

 

「そうですか…明日は星と鈴々が………」

「うん。愛紗ちゃんは怪我をしているから、明日は朱里ちゃんと雛里ちゃんと一緒に本陣の警護でお願いね」

「………はい」

 

 

劉備軍の陣の天幕には、軍の上位司令官たちが集まっていた。劉備本人から先の軍議で決まった事を伝えると、関羽は瞳を伏して頷いた。その様子を天幕の入り口にもたれ掛っていた趙雲は目にし、口を開いた。

 

 

「やけに大人しいな、愛紗よ。普段のお前なら、怪我などものともせずに前線へ行きたがると思っておったのだが………」

 

 

彼女の言う通りである。通常の関羽であれば、たとえ劉備の命令であっても、少なくとも形だけは前線へ行く意思を見せていた。だが、今夜はそれがない。不審に思い、からかい半分に言葉をかけたのだが、彼女の反応は意外なものであった。

 

 

「そう、だな………」

「あ、愛紗ちゃん?」

 

 

ただ一言答えたきり、すっと俯く。その様子に、いよいよ趙雲だけでなく、劉備も張飛も、そして軍師の二人の少女も怪訝に思う。それぞれが疑問と心配の声をかけるが、関羽は答えない。そうして天幕を気まずい雰囲気が包むなか、関羽がようやく口を開いた。

 

 

「桃香様、お話があります………あぁ、皆も聞いて欲しい」

「え…なに、かな?」

「あの男………『天の御遣い』に言われました。桃香様の望みは何か、と」

「うん、愛紗ちゃんも知ってる通り、大陸の人々を笑顔にしたい。そう思ってここまで来たんだよね」

「はい、私もそう答えました………」

 

 

とつとつと語り始めたかと思うと、彼女は片腕をぎゅっと抑えて黙り込む。誰も、張飛ですらも口を挟まず、関羽が話を続けるのを待った。

 

 

「私は答えました。洛陽で苦しんでいる者たちがいるのなら、それを助けに行く、と。そこで、言われました。私達が洛陽まで進めば結果として笑顔はある。しかし、その過程で、いま私達が戦っている数万の董卓軍の兵の命を奪い、彼らの家族の笑顔をも奪うことになる、と………」

「それは………」

 

 

関羽の話に、劉備は言葉を詰まらせる。傍で聞いていた諸葛亮や鳳統も瞳を伏せ、いつも飄々としている趙雲ですら真剣な目つきで関羽を見つめていた。

 

 

「正直に申します。私は、そのような事を考えたこともありませんでした。賊に襲われている邑があれば助けに行き、こうして暴政に虐げられている民がいれば救いに行く。そこになんの迷いも、そして疑いもありませんでした。………私は、恐ろしくなったのです」

 

 

腕を握る手に力がこもる。少しでも気を抜けば、その震えは全身を襲い出しそうで、彼女は一層強く腕を握った。

 

 

「桃香様……我々は本当に正しいことをしているのでしょうか。この戦に、義はあるのでしょうか。いえ、この戦だけではありません。これまで私達が討った賊にも、もしかしたら家族がいたのではないでしょうか。私たちは人々の笑顔を求めながら、その一方で、多くの笑顔を殺していたのではないでしょうか」

「愛紗ちゃん………」

「その可能性を突き付けられ、私は動くことも、反論することも出来ませんでした………桃香様、答えてください。私たちは………私たちは正しいと、天に胸を張って言えるのでしょうか?」

 

 

 

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その問いかけに劉備は答えられない。もし、直前の説明がなければ、彼女は是と答えたろう。これまでは、自分たちが戦えばその結果、そこには笑顔があったのだから。だが、いま関羽が述べたような可能性を考慮したことがあっただろうか。ただ目の前の苦しんでいる人々を救い、笑顔で礼を言われ、笑顔で別れ―――。その繰り返し。

じっと自分を見つめる瞳を、劉備は見つめ返すことが出来なかった。諸葛亮も鳳統も口を挟まない。智将であるが故に、少女たちは初めからその可能性は考慮していた。それでも劉備の言葉に、その理想に希望を見出した。だからこそこうして共にある。そしてだからこそ、少女たちは助言をしてはいけない。これは、劉備自身が考えなければならないことなのだ。

その光景を少し離れて見ていた趙雲は、ふっと息を吐くと劉備に声をかけた。

 

 

「愛紗よ、そのような問いは答え難い類の問いだ。少し、考える時間を差し上げてもいいのではないか?」

「星……」

「朱里、雛里よ。お前達なら、何をすればよいか分かるだろう?桃香様の相談に乗ってやってくれ」

「「………はい」」

「鈴々は……そうだな、鈴々も、そろそろそう言ったことを考える時期になったのかもな。よかったら此処に残るがいい」

「………鈴々も愛紗と一緒にいる。星が意地悪な事を言わないように見張ってるのだ!」

 

 

果たしてその言葉は意図したものか、天然か。だが、重苦しい雰囲気を和らげることには成功したようだ。趙雲がそうだな、と笑うと、つられて劉備と関羽も困ったように笑う。軍師の2人も眉を下げて苦笑するのであった。

 

2人の少女が主を連れて天幕を出て行った。残るは地面に敷いた茣蓙に座る関羽と、張飛・趙雲であった。さて、と趙雲は呟くと、関羽の正面に腰を下ろす。それを見た張飛も、2人の間に座り込んだ。

 

「愛紗よ。私はその場にいなかったから、あの男とどのような会話をしたのか分からない。だからその時の内容を教えて貰えないだろうか。少なからず愛紗の手助けにはなると思うが?」

「星は…星はあの男の問いに答えられるのか?」

「そう急くな。まず、今の質問に関して言えば、是だ。例えあのような事を言われても、私は胸を張って私自身の答えを示すさ。だがな、愛紗よ。その答えを聞こうと思うな。この問いは、お主自身が見つけ、至らなければならない。だから、話してはくれないだろうか」

「………わかった」

「頼む。鈴々も、まずはしっかり聞いておいてくれ」

「にゃ、わかったのだ」

 

 

星に言われ、関羽はその時の情景を思い出しながら、言葉を紡ぐ。蹴り飛ばされた場面では、思わず腹部が痛んだが、それを堪えながら言葉を続けた。

 

 

「―――そこで、鈴々が助けに来てくれてな」

「だが、鈴々はすぐにこちらに投げ飛ばされてきたぞ。まだ続きがあるのだろう?全部話せ」

「あ、あぁ………」

 

 

そして更に続ける。張飛が助けに来たこと、義妹の方が分かっているという言葉、主への言伝―――。

 

 

「………それで?」

「全部話したとは思うが………」

「まだ桃香様への伝言までだろう。別れ際には何か言ってこなかったのか?」

「別れ際………」

 

 

目の前の言葉に関羽は最後の場面を思い出す。彼がかけた言葉は劉備に期待しているという事。そして――――――。それを思い出した途端、関羽は顔を真っ赤にする。それに気づかぬふりをするほど趙雲も優しくはなかった。そして張飛も。

 

 

「にゃにゃっ!?姉者が真っ赤なのだ!」

「そうだな。愛紗よ、愛の言葉でも囁かれたか?」

「なっ!ち、違うっ!」

「ならば惚れたか?」

「そんな訳ないだろう!!………どうしても話さなければ駄目か?」

 

 

上目遣いで関羽は見つめるが、それが通じるのは異性だけである。趙雲は一言駄目だと伝えると、視線で先を促した。

 

 

 

「………わかった。話す」

 

 

そうして関羽は再び思い出す。彼の最後の言葉を。

 

 

『これでも劉備には期待しているんだ。失望させないでくれよ?それと………示威行動とはいえ、髪を掴むような真似をしてごめんな。こんなに綺麗な黒髪なのに』

『なっ―――』

 

 

「………惚れたな」

「惚れたのだ」

「ばっ、そんな訳あるかぁ!!」

 

 

趙雲と張飛のからかいに、関羽は傍に置いてあった青龍偃月刀を振るう。趙雲はからからと笑いながらそれを弾くと、愛紗の肩に手を置いた。

 

 

「なかなかいい男ではないか。女に対する気遣いを忘れぬとはな。ふむ……その男の言葉を使うならば、桃香様だけでなく、愛紗にも期待をしているということではないだろうか。だからこそ敢えて厳しい言葉をかけたのだろうよ」

「そ、そうなのだろうか………」

「さてな。だが、本当にお主を蔑視するのならば、斬って捨てていたか、あるいはそのような優しい言葉は残さなかっただろうさ。それを見逃したのだ。十分可能性はある」

「そう、か………」

 

 

目の前の女性の言葉に、関羽は黙り込む。その時の様子を思い出しているのだろうか。しかし、趙雲はそれを遮るように口を開いた。

 

 

「話は戻るが、鈴々の方がわかっている、と言われたのだったな」

「あ、あぁ。そう言われた」

「鈴々は、その時なんて言ったか覚えているか?」

「んーと、えーと、確か『どんな理由があっても、姉者を泣かせる奴は絶対に許さないのだ』って言ったと思うのだ。あと、『お前が天の御遣いだか知らないけど、お前は鈴々が倒してやるのだ!』って言ったのだ」

「あぁ………そうだったな。あれは嬉しかったぞ」

「にゃー、愛紗が優しいのだ」

 

 

義妹の言葉に、関羽は少女の頭を優しく撫でる。少女の言葉を思い出し、少し涙腺が緩んだことは秘密だ。絶対にからかわれる。その様子を見ながら趙雲は少し考えると、ぽんと手を打った。

 

 

「確かに、その男の言う通りだな。少なくとも、鈴々の方が理解している」

「どういう事だ?」

「これは………怒らないで聞いて欲しいのだが、彼の言う通り愛紗の信念は薄い………というより脆い。だから言葉で言われた程度で崩れてしまったのだろうよ」

「ぐ…それは昼間にも言われているからな………もう怒る気にもならないさ」

「そうか。なんというか、桃香様は理想を語り過ぎていると私は思うのだ」

「理想の、何がいけない」

「理想は大切だ。何よりも尊い。だが、そこにばかり目をやっていては、目の前の現実と向き合えない。これまでは賊という分かりやすい悪が存在してくれたから、それでもやっていけたが、この戦ばかりは違う。簡単に言えば、勢力間の抗争だ」

 

 

関羽は口を挟まず先を促す。

 

 

「そうさなぁ……愛紗は桃香様を妄信し過ぎている。確かにあの御方を信頼し、忠誠を誓うのはよいことだ。もちろん、私も同じと思ってくれ。だがな、仮に主が間違った時にこそ、それを正し、誠の道へと連れ戻すのも、臣の役目とは思わぬか」

「それは…その通りだと思う」

「だが、愛紗はそうではなかった。なまじ主を信じ過ぎるが故に、その理想とはかけ離れた現実を突き付けられ、動揺してしまったのさ」

「だが、彼の言うことももっともな事ではないのか?」

「あぁ。だが、それを示す根拠はない。もしかしたらこちらの動揺を誘う為に嘘を吐いたのかもしれない。勿論それが真実である可能性もあるのだがな」

「そうか………それで、先の鈴々の言葉とどう繋がる?」

「鈴々はな、愛紗よ。純粋なのさ」

 

 

そう言って、趙雲も隣で大人しく話を聞いている少女の頭を撫でる。珍しく優しい面を見せる友に、少女は顔を綻ばせた。

 

 

「鈴々があの男に立ち向かった理由は唯一つ。大切な義姉が傷つけられたからだ。そこに理由などいらない。ただ大切な者を守る為に、敵に立ち向かう。だから揺らがない。その信念は崩れない」

「………………」

「これ以上は自分で考えろ。此処から先は、自分で見つけなければならない事だ」

「そうか………ありがとう」

 

 

そう言って瞳を伏せる。しかし、その表情は僅かに強さを取り戻していた。趙雲は満足げに頷くと、張飛を連れて天幕を出て行く。後は関羽自身の問題だ。こればかりは、人から教わるようなものではない。と、天幕の入り口のところで立ち止まると、振り返る。

 

 

「そうそう、桃香様への言伝だが、私が伝えておこう。流石に今日は顔を合わせ難いだろう」

 

 

そう微笑む彼女の顔は、いつもの悪戯っぽいものとはまったく別の顔だった。関羽はその背を見送りながら、深く頭を下げた。

 

 

 

-7ページ-

 

 

 

天幕から離れた所で、劉備と彼女の軍師、諸葛亮と鳳統は向かい合っていた。少女たちは口を開かない。まず、主の話を聞きたかったのだ。しばらくの沈黙の後、劉備はおずおずと口を開いた。

 

 

「朱里ちゃん、雛里ちゃん………私、間違っているのかな」

「………桃香様」

「これまではさ、野盗とか山賊をやっつければ、皆笑顔になってたよね………でも、この戦は、本当に正しいことなのかな」

「………桃香様、少々厳しい事を言う事をお許しください」

 

 

主の言葉に、諸葛亮が代表して口を開いた。その眼は普段のおどおどしたものとは違い、軍議の時に見せる、鋭いものだった。

 

 

「桃香様は、理想を大切にし過ぎています。そして愛紗さんも。だから、あのような事を言われて揺らいでしまうのです」

「理想………大切にしちゃいけないの?」

「そのような事ありません。愛紗さんも鈴々ちゃんも星さんも、そして私達も、その理想に共感したからこそ、こうしてここにいるのですから………しかし、理想と現実は異なります。すべての物事には、正の面と負の面が必ず存在します。賊の討伐と言えば聞こえはいいですが、言ってしまえば弱い者たちを力で捻じ伏せ、その命を奪っているだけです」

「………………」

「この戦もそうです。我々は洛陽で苦しむ民がいるからとこの連合に参加しましたが、その噂が嘘である可能性もあるのです。洛陽で権力を持った董卓さんに嫉妬した諸侯の集まり。この連合はそういう風にもとれるのです」

「じゃぁ、連合に参加するべきじゃなかったのかな?」

「しかし、実際に噂通りの可能性もあります。連合が発足し、こうして戦線が開かれた以上、我々はそれを確かめる術を放棄しました。仮に我々が連合を抜けて董卓連合につき、戦に勝利したとします。そうすると、何が起こるかわかりますか?先の私の言葉をしっかりと考えてお答えください」

「………物事にはいい面と悪い面があるんだよね。だったら………洛陽の人々の穏やかな暮らしが守られるという可能性と、噂通りに、董卓さんの暴政が続く可能性、でいいのかな?」

「はい、その通りです。それは結果を見るまでわかりません」

 

 

正解です、と諸葛亮は微笑む。本当に僅かではあるが、主の成長をその眼で見ているのだから。そして、今度は隣で見ていた鳳統が口を開いた。

 

 

「それでは、愛紗さんの問いに関してですが、桃香様ならどのように答えますか?」

「………………」

「愛紗さんが『天の御遣い』さんから言われた通り、この戦に勝てば、数万の兵士の命を奪い、彼らの家族の笑顔を奪うことになるかもしれません。勿論、董卓さんの暴政から解放されて、そこに笑顔が出来る可能性もあります」

 

 

その問いかけに、劉備は瞳を伏せ考える。自分がしていることは正しいのか。それとも自分たちこそが悪ではないのか。このまま戦を続けるべきか。それとも戦を止めるべきか………。

黙って見ていた少女たちは、劉備の肩が僅かに震えている事に気がついた。言い過ぎたのだろうか。いまだ成長途中の彼女に、この問いは酷なものだったのだろうか。2人は困ったように顔を見合わせる。と―――

 

 

「………ふ、ふふ。あははは!」

「と、桃香様!?」

 

 

―――劉備は、状況に似つかわしくないほど明るい声で笑い出した。2人の軍師がおろおろとする中、劉備の笑い声が響く。その眼にはうっすらと涙すら浮かんでいた。そしてしばらく笑うと、劉備は困ったように口を開いた。

 

 

「………ごめんね、朱里ちゃん、雛里ちゃん。私ね、思ったの………私、ってやっぱり馬鹿なんだな、って。愛紗ちゃん達のように強くもないし、2人のように頭もよくない。じゃぁ、私が持っているものって何?って考えてたらね、結局、皆を笑顔にしたいっていう理想しか残らなかったんだ」

「桃香様………」

「それに気づいたら、おかしくなっちゃってね………それでね、さっきの質問の答えなんだけど」

「………はい」

 

 

劉備の言葉に、諸葛亮も鳳統も思わず姿勢を正す。劉備は2人の眼を順番に見つめると、言葉を出した。

 

 

「私はね、馬鹿でいい。何もないなら、馬鹿を貫く。もしかしたら『天の御遣い』さんの言う通り、この噂が嘘かも知れない。でも、本当に洛陽で苦しんでいる人がいるのかもしれない。だったら、私自身の眼でそれを確かめる。私は、私の理想の為にたとえ敵を殺すことになっても、自分を、皆を信じて進む………結局ね、それだけなんだよ」

「「………………………」」

「だからね、もし私が『天の御遣い』さんに同じ質問をされても、私は迷わない。もし私達が戦を続ける事で苦しむ人がいたとしても、私はそれを受け止める。この気持ちは理屈じゃない。だから、胸を張って主張できる。

理想ってね、確かに現実とは違うけど………だからこそ、絶対に消えたりしないんだよ。私に出来るのは、私達が正しいと信じて突き進むことだけ。いつかはそこに笑顔があると信じて、進むだけ………………これで、どうかな?」

 

 

劉備は言葉を切ると、2人を見つめた。甘い。これだけ考えても甘い。しかし、甘い理想ではあっても、そこに甘えはない。一刀が言いたかったのはこの事なのだ。理想を持つことを否定はしない。ただ、理想に逃げる事は許されない。理想を語るなら、何が起きようとその信念を曲げない事を彼は望んだ。そして、劉備はその問いに答えて見せた。

正義など、それこそ人それぞれだ。たとえ間違っていたとしても、己の正義を信じて、それでも進む。その信念があれば、人は強くなれる。現に、劉備の眼はこれまでのおどおどとしたものではなく、確かに強さがあった。劉備はだから、と口を開く。

 

 

「これからは、ちゃんと全部話すようにしてね、朱里ちゃん、雛里ちゃん」

 

 

そう言ってほほ笑む劉備に、はわわ、あわわと少女たちは慌てるのであった。

 

 

 

 

 

「その様子では、答えを見つけたようですな、桃香様」

「星ちゃん!」

 

 

しばらく雑談をしていると、突如暗闇から声がかかる。振り返ると、そこには張飛と共に、趙雲が立っていた。

 

 

「うん、私なりの答えを見つけたよ。もしかしたら、もっといい答えがあるのかもしれない。でも、私はもう迷わない、って決めたんだ。だから、これからもよろしくね、星ちゃん、鈴々ちゃん」

「御意。朱里と雛里もご苦労だったな」

「あわわっ」

 

 

そう言って雛里の帽子をぽんと押さえた。雛里は帽子のつばを抑えて抵抗する。その様子にくつくつと笑う趙雲の眼には、いつもの悪戯な光が宿っていた。

 

 

「それと、『天の御遣い』から桃香様に言伝があるようです」

「え、私に!?」

「はい、『真実は唯一つであるが故に、唯一足り得ない』とのことです。朱里、雛里。お主らならば、この言葉の意味はわかるであろう?」

「はい。でも、同じようなことは、先ほど桃香様にお伝えしました」

「なんと。私も無粋な事をしてしまったようだな………では、先の答えは、その言葉も踏まえたうえで、と取ってよろしいのか?」

「うん!しっかりと覚えたよ、『天の御遣い』様の言葉」

「おやおや、『様』ときたか。これは愛紗だけではなく、桃香様も何かしら思うところがおありのようだ」

「え、えぇっ!?」

「はわわっ!愛紗さんが!?」

「あわわ、桃香様もなのですか!?」

 

 

慌てた様子の劉備に軍師たち。その様子にさらに笑いを大きくしながら趙雲は言葉を続けた。

 

 

「何もおかしい所はなかろう。適度に虐めた後に優しくすれば、女は男に惚れやすいと雛里の愛読する本にも書いてあったではないか」

「あ、あわわ、読んだのですか、星さん!?」

「以前書を何冊か借りた時にそこに紛れこんでおってな。女の落とし方や、落とした後の睦み事についても書いてあったな、確か。安心しろ、誰にも言ってはおらぬ」

「いま言っちゃってるじゃないですかぁ………」

 

 

真っ赤になった顔を帽子で隠す雛里を見て、趙雲は笑い続け、諸葛亮も劉備も顔を真っ赤にする。

 

 

「よく分からないのだ」

 

 

張飛だけは純粋なままのようであった。

 

 

 

-8ページ-

 

 

 

曹操軍・天幕―――。

 

 

「という事で、明日は春蘭と秋蘭、そして凪に出張って貰うわ。一刀を止めるのは並大抵なことではないけれど、なんとか頑張って頂戴」

「「「御意っ!」」」

 

 

軍議で決まった事を、天幕に集った重鎮に伝えると、華琳は軍師の2人に向き直った。

 

 

「北郷に関しては3人に任せるわ。貴女達には別の作戦を考えてもらう」

「はい、水関を落とす方法ですね」

「それだけではないでしょう。可能であれば、一刀殿をこちらに引き込むおつもりですね、華琳様?」

 

 

華琳の言葉に、荀ケが答え、稟が訂正する。男嫌いの彼女の事だ。無理矢理その可能性を無視したのだろうが、流石にそういう訳にはいかない。

 

 

「えぇ、その通りよ。軍議では数に任せて水関を落とすとは言ったけれど、それも簡単にはいかないでしょう」

「はい。一刀殿が水関にいるということは………」

「風もいるということね」

 

 

一刀だけではなく、風もいるという事実に、稟と荀ケの表情は険しくなる。荀ケは将棋では負け続け、稟は将棋での戦績はほぼ互角ではあるが、実戦でその智を競った事はない。あの奇策を用いる軍師・程cに、これから立ち向かわなければならないのだ。それは2対1だからと安心できるものではない。逆に、そこに生まれ得る隙につけ込む可能性すらある。

 

 

「そうね。だから、これから徹底的に風が取り得る策を話し合うわよ。この曹操の軍師というのならば、必ず読み切り、討ち砕いて見せなさい」

「「御意」」

 

 

主の命に、荀ケは頭を下げ、稟は眼鏡を軽く抑えて肯定の意を示す。しかし、と荀ケは思う。今日は一刀が武に徹していた為にその対策を華琳は講じたようだが、本当に風だけを念頭に置いてよいのだろうか。なるほど、風の実力ならば、1人で連合を相手取ることも出来るかもしれない。だが、かの北郷は、その智も突出する人間である。彼が風を自分付の軍師に据えるほど信頼しているとはいえ、本当に彼女だけに任せるのだろうか。

翌日の策を討議しながらも、荀ケは嫌な予感を拭えないでいた。

 

 

 

 

 

 

 

孫策陣・天幕―――。

 

 

「という訳で、明日は祭と明命に頑張って貰うから、よろしくね」

「応、任せろ。久しぶりに一刀と戦えると思うと、胸が躍るわい。それに夏候の妹も弓の名手と聞く。其奴と競うのも一興というものじゃ」

「それはいいが、明日も闘いを控えているのだから、酒はやめてくれないか、雪蓮?」

 

 

天幕の中には雪蓮とその妹・孫権、そして家臣たちが集合していた。その中で、雪蓮と祭は酒を酌み交わす。冥琳の苦言を呈するも、雪蓮はいいじゃないと、新たに杯を満たした。

 

 

「しかし、1人に対して8人ですか………些か卑怯な気もしますが」

「あら、蓮華はこの作戦に気乗りしない?」

「いえ、そういう訳ではないのですが………」

「まぁ、貴女ならそう言うかもね」

 

 

そこに言葉を挟んだのが孫権だった。王である雪蓮が決めたことだ。他の者は意見出来ない。しかし、孫権は妹であるからこそ、口を開くことが出来る。

 

 

「でも、貴女は一刀の武を知らない。正直言って、8人でも足りないかもしれないわ。それについては祭も同意見よね?」

「そうですぞ、蓮華様。彼の者はそれは恐ろしい奴じゃった。儂と策殿が2人がかりでかかっても手も足も出なかったからの」

「そ、そんなに!?」

「うむ。儂らとてあれから鍛錬は積んだが、それでも………のぅ」

 

 

宿将であり、自分の武の師でもある祭の言葉に、孫権は今度こそ眼を丸くする。遠目に見てはいたが、彼女のいる右翼から見えたのは、袁紹軍と袁術軍の兵士を軽々と葬り去る姿だけである。それくらいなら、姉である雪蓮は勿論、祭も周泰も、自分の後ろに控えている甘寧にも可能だ。甘く見ているという訳ではないが、かつて出会ったことのないほどの武に、孫権は黙り込んだ。

 

 

「ま、それはいいとして。明日は蓮華にも出て貰うわよ?私は華雄の相手をするし、祭と明命も一刀の相手をしなければならない」

「は、はいっ!頑張ります!」

 

 

元気よく返事をしたのは、今名前を上げられた周泰。長刀を背負った背をピンと伸ばす。

 

 

「でも、私達だって、言われた事だけをする訳ではない。ね、冥琳」

「あぁ。本陣の指揮は私がします。蓮華様には、思春と共に水関を落として頂きます。数で押すという話ですが、それでも水関一番乗りの功名は手に入れたい」

「そういう事。護衛は思春がしてくれるから、貴女には関に進んで欲しいの」

「………はい、蓮華様は私がお守りします」

 

 

そう答える甘寧を目でみやり、孫権は考える。これまで少数の賊の討伐くらいなら率いたことはあった。しかし、このような大舞台は初めてだ。それも軍の為に功を得なければならない。しばらく黙考した後、孫権は顔を上げ、姉の眼をまっすぐと見据えた。

 

 

「わかりました。孫武の名にかけて、その功、必ずやとってみせます!」

「………いい返事だわ、蓮華。それじゃぁ、あとは明日の動きね。冥琳、任せたわよ」

「あぁ。それではまず―――」

 

 

その後も話し合いは続く。妹の成長を久しぶりに間近で見る事ができ、雪蓮は上機嫌だった。酒も進む。

 

 

「雪蓮、そろそろ酒を控えろ。いい加減怒るぞ」

 

 

いや、進まなかった。

 

 

 

-9ページ-

 

 

 

馬超陣・天幕―――。

 

 

天幕にて、馬超と馬岱は座って酒を酌み交わしていた。西涼の馬乳酒は強いが、遠く離れた故郷の味だ。2人とも量は多くないが、しっかりと味わっている。と、天幕の外に人の気配が現れ、そして声がかかる。

 

 

「馬超様、少々よろしいでしょうか」

「どうした?」

 

 

入って来たのは初めて見る青年兵だった。新参の兵だろうか。

 

 

「はっ!馬たちの番をしていたのですが、不審な人影を見かけましたので報告を、と。馬を暴れさせるわけにはいきませんので、今はそれとなく残りの兵が気をやっております」

「わかった。行くぞ、蒲公英」

「うん」

 

 

しかし2人はその兵が誰か等とは気にしない。いま問題となっているのは、その不審者だ。それぞれ槍を手に取ると、兵の案内に従って馬たちのいる方へと向かった。

馬家は騎馬の名家である。その数も当然他より多い。対抗出来るのは、現時点では公孫賛の白馬義従くらいだろう。その為、馬を休ませる場所もかなりの広さが必要となり、陣からは少し離れていた。そして到着した2人が見たものは―――。

 

 

「………お姉様、これって」

「…あぁ」

 

 

―――倒れている見張りの兵達。皆息をしているようだが、眼を覚ましそうな気配はない。だが、おかしな事に、馬たちが興奮している様子もない。2人が訝しがっていると、そこに声がかかった。

 

 

「動くな」

「えっ―――」

「お前もだ、馬超」

 

 

そこに殺気はない。しかし、馬岱の首筋にも短刀があてられ、声に反応して武器を持つ手に力を込める前に釘をさされた馬超は、首だけで振り返った。

そこにいたのは、先ほど天幕に来た馬の見張り兵。

 

 

「まずは、その殺気を収めてくれるか、馬超」

「お前は………?」

「昼に話しただろう?夜に会いに行く、って」

「ということは、『天の御遣い』か」

「あぁ」

 

 

馬超が気を抜くと、男―北郷も刀を下した。途端に馬岱は地面に座り込む。

 

 

「だらしがないぞ、蒲公英」

「だって、お姉様。この人まったく気配がなかったんだよ!?」

「それはそうだが………それより、いまはあの面を付けないのだな?」

「あれはただの飾りだよ。まぁ、此処に入る時も、顔は知られてないから、簡単に侵入できたけどね。さて、あまり時間もないし、話を始めてもいいか?君たちもあまり長いこと天幕を離れていると疑われてしまう」

「そうだったな。頼む」

 

 

一刀の言葉に、馬岱も立ち上がり、服についた土埃を手で払う。怖かったぁと零すが、それを馬超も注意したりはしない。2人の準備を確認すると、一刀は話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

数日前、洛陽玉座の間―――。

 

 

細作からの情報をいま一度整理し、将たちに伝えると、詠は月へと向き直る。

 

 

「さて、これで今分かっている情報は全部よ。月、この戦の指針を決めて貰えるかしら?」

「うん、詠ちゃん………まず、私たちの勝利条件ですが、連合軍を討ち払うことではありません」

「なんやて!月、本気なんか!?」

 

 

いきなり予想外の発言に、霞が反応する。それも当然である。たった今、共に闘うと宣言した主が、まったく逆の発言をしたからだ。詠が止めようともさらに食って掛かる霞だったが、それを止める手があった。

 

 

「待て、張遼」

「………華雄?」

「我らが大将はまだそのすべてを語ってはおられない。最後まで話を聞いてからでも反論は遅くないだろう?」

「………せやな。すまんかった、月っち。詠もな」

「ふん、別に気にしないわ」

「いいんです、霞さん………私は先ほど言いました。『真実を謳い続ける』と。一刀さんに恋さん、風ちゃんも加わってくれました。数倍の敵とはいえ、私達にも勝てる目はあると思います。ですが、それではいけないと思ったんです」

 

 

再び月は話し始める。今度こそ誰も口を挟まない。みな粛々と主の話を聞いていた。

 

 

「仮に私達が勝利したとして、その結果は多くの敵を残したままになるでしょう………それこそすべての将と兵を討たない限り。でも、それでは駄目なんです。戦は怨恨を呼び、怨恨はさらなる戦を生む。その繰り返しです。だから、私が提示する私達の勝利とは、連合をこの洛陽まで呼び込み、真実を知ってもらうことです。噂では私が暴政を敷いている。そして民が苦しんでいる。そのことを大義名分に彼らは連合を組みました。しかし、実際に眼にしてみれば、そこには平穏に暮らす洛陽の民………どうですか?最高の意趣返しとは思いませんか?」

 

 

その言葉に全員が黙り込む。これまでただ優しいだけだった少女が、不敵に微笑んでいる。彼女はこのような性格だっただろうか?否、そのような事は決してない。それどころか、唯の言葉がなければ、ただ不安に夜も眠れない日々を続けるだけだったであろう。その彼女が、ここまで言うのだ。その原因はもちろん―――。

 

 

「アンタの影響よ、一刀」

「俺か?」

「そうよ。天水に居た頃は、唯だけじゃなくて月にも色々教えてたじゃない。絶対アンタの意地の悪さがうつったのよ、この馬鹿」

「ひどい言い草だな」

 

 

しかし、彼はそれを否定することはしない。何故なら、彼女はこの軍の指針、柱なのだ。彼女が決めたのならば、それを軸に作戦を決定していく。誰も異論を挟まなかった。それどころか、霞などは笑っている。

 

 

「あっはっはっはっは!ええやないか、詠!これまでの月からは考えもつかん変化や。素直に喜んでやりぃ!それに………ウチは気に入ったで?弱い者虐めみたいに大勢でやってくる奴らに、一泡噴かせようやないか」

「そうだな。董卓様、先ほども仰ったとおり、貴女が我々の指針です。貴女がお決めになったのならば、我々はそれに従うまで」

「そうですぞ!月殿が決めたのならば、あとは軍師である我々がその為の作戦を考え出すまでなのです!」

「アンタは見習いでしょ」

「う、うるさいのです!折角人がやる気になっているのに………」

 

 

わーわー騒ぐ陳宮に苦笑しながら、一刀は月に向き直り、声をかける。

 

 

「だが、それだけではまだ半分だな。仮にその策を成功させたとしても、奴らが月に恨みを抱かないとは限らない。むしろ、恥をかかされるんだ。こぞって恨んでくるだろうな」

「へぅ………駄目、でしたか?」

「俺はなかなか面白いと思うぞ。それに半分だと言っただろう?あと半分をこれから話し合うんじゃないか」

「………はい!」

 

 

憧れの男に褒められ、月は頬を赤く染めながらも元気よく返事をした。

 

 

 

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「確かにおにーさんの言う通りですねー。下手をしたら、帝を助ける為にとこの城まで踏み込んでくる可能性もあります。あるいは、暗殺という手に出ることもあるかもしれません」

「せやな。ま、ウチらがおれば暗殺なんて卑怯な真似はさせんけどな」

「しかし、常に武将の誰かが一緒にいれるわけではありません。ですので、風は洛陽から脱出することをお勧めします」

 

 

最初に発言したのは風だった。最悪の可能性を最初に提示する当たり、彼女らしい。その上で、その為の対策を提示する。

 

 

「でも、脱出、って言っても何処に行く気?」

「天水に戻るのはどうなのですか?」

「それだと時間がかかり過ぎて、途中で強襲される可能性もありますよ、陳宮ちゃん」

「うぐっ」

「他に、どこかいい場所はありますでしょうかー」

「ならば、長安などはどうじゃ?」

 

 

突如かかる声に、月をはじめとする董卓軍の古参の者たちは硬直する。一刀や風、恋は、初めて聞く声に振り返った。

 

 

「あそこならば此処洛陽からもそう遠くはなく、また歴史もあり大きい街じゃ。丁度よかろう」

「君は?」

「ばっ、馬鹿者!一刀、この御方は現帝の劉協様だぞ!」

 

 

一刀の発言に華雄が慌てて説明し、その頭を掴んで下げさせようとする。見れば、月や詠たちも頭を下げ、また風も傅いている。動きを見せないのは一刀と恋くらいであった。

 

 

「よいよい、華雄よ。その者は『天の御遣い』なのじゃろう?天から遣わされたものならば、頭を下げる必要なぞない」

「わ、わかりました………差し出がましい真似を」

「よい。董卓も他の者も頭を上げるがよい。そなたらは朕の恩人じゃ。そこまでされると少し寂しくなるぞ?」

 

 

劉協の許可が降り、皆顔を上げる。そこにいるのは豪奢な着物を纏った黒髪の幼い少女。その顔は幼いが、流石は帝である。そこには他の誰にもない風格があった。

 

 

「それで、長安はどうじゃ?何、不適なれば別の策を講じろ。朕はそれくらいでは気分を害したりはせぬからの」

「どうだ、詠、風?俺はなかなかいい案だと思うが」

「そですねー。風は賛成ですよ?ただ、それでも追いかけてくる可能性は捨てきれませんですが」

「そうね。ボクも同意見ね。じゃぁ、ボク達は長安に居を移すということでどうかしら、月?」

「うん、私もいいよ」

「ね、ねねを無視するなー、なのです!」

 

 

どんどんと進む話に、陳宮が両腕を上げて抗議する。はいはいと一刀は軽くいなしながら、話を続けた。

 

 

「だが、風の言う通りだ。最悪の可能性を考慮すべきだろう」

「そうね………」

 

 

詠は一刀の言葉に黙り込む。大方の方針は決定したが、その先を詰まらせてしまう。長安まで攻め込まれてしまえば、そこで詰みだ。と、ここで再び劉協が口を開いた。

 

 

「董卓よ、そなたは涼州の出身じゃったな」

「はい………」

「なれば、同じ涼州の馬騰に匿わせるのはどうじゃ?母上の下に参じていたのはよく目にしておったが、あやつの漢への忠臣具合は相当のものであったし、信に厚いとも記憶しておるが」

「………残念ながら、馬騰さんもこの連合に参加しているとのことです。その……帝を傀儡にしていると言われれば、それに逆らうことは出来ませんので………」

「そうか………」

 

 

月の返事に、劉協も口を噤む。なかなかいい案じゃったと思うがの、と呟くが、誰もそれに返事をしない。しばらくの沈黙の後で、一刀が口を開いた。

 

 

「詠。馬家との交流はあったのか?」

「えぇ、あったわ。真名も許しあう仲よ。ただ、それもこんな状況じゃぁ………」

「だったら俺が直接交渉しよう。劉協の言もあるんだ。無下に断ったりはしないだろう。取りつく島もなければ諦めるが、試す価値はあると思う」

「直接って………どうやって!?」

「何、これだけの戦だ。一日二日で終わるものでもない。夜闇に紛れて話してくるよ。という訳で、水関の配置は俺と華雄、そして風。虎牢関には霞と恋、そして陣宮だ。異論は?」

 

 

一刀が案を提示する。不安が無いわけではない。しかし、その場にいる帝と陣宮以外の全ての者が知っていた。一刀の強さを。彼ならばやり切るだろう。そしてそれを元に配置をつける。誰も口を開かないなか、風がすっと手を上げた。

 

 

「おにーさんと恋ちゃんの配置はいいと思います。華雄さんと霞さんの配置の理由は?」

「あぁ、居を移すと言っても、すぐに出来ることではない。だから、霞の騎馬隊と恋の赤兎でその移動の護衛をしてもらう。俺たちは………そうだな、少なくとも5日は稼ぐ。その間に必要な手配をすべて終わらせて、長安への移動を開始してくれ。そして水関から虎牢関まで連合の移動期間は………」

「最低でも3日くらいね」

「という訳で、最短の猶予期間は8日だ。可能な限り伸ばす努力はするけどな。その間の護衛を霞と恋に任せる。万が一間に合いそうでなければ恋と陣宮だけ虎牢関に戻ってくればいい。霞は護衛の任に専念してくれ」

「ウチかて戦いたいで、一刀」

「何言ってるんだ。劉協の護衛も兼ねるんだぞ?気を抜くなよ」

「へーい」

 

 

劉協は少しだけ驚く。かつての仲間である月や詠を気遣うのはわかるが、そこに当然のように自分も組み込んでいるのだ。その淀みない答えに、劉協の受けた印象は色濃くなる。

 

 

「………月」

「うん。それでは大筋は今決めた通りです。水関に一刀さん、華雄さん、そして風ちゃんを。虎牢関には霞さん、恋さん、そしてねねちゃんを。その間に詠ちゃんと唯さんを筆頭に、遷都の手配を済ませます………………皆さん、どうか御無事で」

 

 

詠に促され、月が締め括る。最後の言葉は、やはり彼女の本来持つ優しさだろう。応、という返事が玉座の間に響き渡る。こうして洛陽防衛戦の方針は決定された。

 

皆が出て行くなか、劉協は一刀に声をかける。

 

 

「北郷、と言ったな。少し話をせぬか?」

「………あぁ、何処で話す?」

「朕の部屋へ来い。何、ただの戯れと思ってくれればいい」

「わかったよ」

 

 

帝の誘いというのに、一刀の言葉遣いは変わらない。その嬉しさを隠しながら、劉協は背を向けて歩き出す。一刀は恋と風の頭を軽く撫でると、また後で、と一言残し、彼女の後についていった。

 

 

 

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「―――と、いう訳だ」

「そうか………」

 

 

説明も終わり、一刀は言葉を切る。あとは返事を待つのみだ。馬超はじっと考え、馬岱も黙って従姉の言葉を待つ。しかし、彼女の口から出てきたのは、是でも非でもなく、予想外のものだった。

 

 

「なんていうか………月も成長したんだな」

「………へ?」

「いやさ、最初に会った時は母親の影に隠れておどおどとしていてな。あたしが話しかけても顔を真っ赤にしてさらに隠れてしまう、そんな子だったんだ。それが、立派に軍の大将をやってる、って聞いて………な」

「蒲公英、覚えてないよ?」

「あの頃はお前もまだまだ子供だったからさ。それで、返事だけれど………条件による」

「条件とは?」

「あぁ、お前の話を疑う訳ではない。元々月とは友達だしな。だが、事の真相を確かめて来いとの母様の言もある。だから、もしお前が言うように洛陽まであたし達を呼び込むというのなら、洛陽の様子を見て決めさせてもらう」

「そうか………」

「ま、あたしは月を信じている。だから、おそらくお前達の作戦通りになると思うけどな」

 

 

条件付きではあるが、馬超の約を受け、一刀は一安心する。こんなことなら帝の印でも貰ってくればよかったかな、と冗談交じりに零すと、馬超が反応した。

 

 

「いらないさ、そんなもの。言っただろう?あたしは月を信じている。それに、お前のこともな」

「え、俺も!?」

「あぁ、私達は騎馬民族だ。だから、人と共に馬も見る。あれほどの良馬だ。お前が嘘を吐くような奴なら、黒兎馬がお前に懐くはずがない」

「………そうか、ありがとう。遅くなったが、姓は北郷、名は一刀だ。字と真名はない。好きに呼んでくれ」

「あぁ。あたしは馬孟起。真名は翠だ。我が友とお前の眼、そしてお前の相棒を信頼し、真名を預ける」

「………謹んで拝領する」

「蒲公英は馬岱!真名は蒲公英ね」

「あぁ、ありがとう。だが、戦では手加減をする訳にはいかなから、気は抜くなよ?」

 

 

真名すらも交換し、一刀は策の第一手の成功を確信する。と、ここで馬超は困ったように笑いながら驚愕の事実を伝えた。

 

 

「あぁ、あたしも武人だ。そのような事はしない………そうだ、あたしの友が友のままである事を教えてくれた礼に、お前にも一つ教えておいてやる。先の軍議で決まったことなのだが、明日はお前を狙いに8人の将軍が向けられるぞ?」

「………マジ?」

「あぁ、曹操のところから夏候姉妹と楽進、孫策のところからは黄蓋と周泰、劉備軍から趙雲と張飛が送られ、そしてうちからはあたしが出る。精々生き伸びろよ」

「………きっついなぁ。じゃぁ、そこまで教えてくれたお礼に。明日は時間を稼がせて貰うよ。おそらく討って出ることはしないから、適度に休んでいてくれ」

「お前もおかしな男だな。それをあたしが連合に伝えるとは思わないのか?」

「伝えたら翠が疑われるだろ?今日はあれだけの威力偵察をしたけど、華雄の兵にも少なからず損害はあるのさ」

「そうだな。じゃぁ、また明後日、か?まぁ、再び戦場に見える時は、こっちも楽しませてもらうさ」

「あぁ」

 

 

短い返事をすると、一刀は姿を消した、と思ったら、再び2人の前に現れる。

 

 

「言い忘れていたよ。見張りの兵達だけれど、眠って貰っているだけだから、あと1刻もすれば眼を覚ますだろう………怒ってやるなよ?」

「はいはい」

「あと、この服は適当に返しておく。それじゃぁな」

 

今度こそ一刀は姿を消した。どこにも気配はない。しばらく視界の中で眠る馬たちを眺めながら、翠は口を開いた。

 

 

「それにしても、すごい武人だな、一刀は。全盛期の母様にも並ぶぞ」

「そんなに!?」

「あぁ。気づかなかったのか?話しながらも常に周囲に気をやっていた。どこにも隙がなかったよ」

「うへぇ、おば様なら10人くらい将軍級の武人がいても手玉にとれそうだもんね………大丈夫、お姉様?」

「さてな……ま、なるようになるさ。蒲公英、ここから先は、友を救う為の戦だ。しっかり気張れよ?」

「あの人と戦わなくて済むなら頑張るよ………」

「やっぱり、あたしの代わりに蒲公英な」

「お姉様っ!?」

 

 

蒲公英の悲痛な叫びは夜の闇に吸い込まれていく。様々な思いが交錯する中、戦の初日は終わりを迎える。

 

 

 

-12ページ-

 

 

 

否、終わってはいなかった。

 

 

「さて、これくらいにしておこうか」

「ぜぇ…ぜぇ……ありがとう、ございました………」

 

 

水関の反対側の大地に2人の人影があった。一人は大戦斧を軽々と担ぐ女性。そしてもう一人は三尖刀の柄を掴みながらも地面に倒れ伏す少女。もう動けないと言わんばかりに、彼女は意識を手放そうとする。しかし、そこで別の声がかかった。

 

 

「お疲れ、華雄」

「北郷か。あぁ、私の分は終わったぞ。それにしても………お前も鬼だな」

「か、華雄さんの、分………?」

「あぁ、起きろ、紀霊。次は俺の番だ」

「………………え?」

 

 

その声に、紀霊は言葉を失う。半日近く鍛錬を続けていて、すでに体力も気力も底を尽きかけている。そこに、突き刺さる無慈悲な言葉。

 

 

「そうだ、紀霊よ。私がお前を城壁の上から降ろす時に、一刀が何か言っていただろう?私は言われたのだよ、『2日で化け物を育てあげろ』とな。化け物とはお前自身だ。これまでやってきてわかったが、やはりお前には資質がある。その資質を2日で開花させる」

「そ…そんな………」

 

 

息も絶え絶えに少女は返事をするが、返ってくるのは、さらに非情な言葉だった。

 

 

「厭ならそこで倒れていろ。だがな、お前が立ち上がらなければ、これから袁術の首をとりに行く。止めたくば従え。お前は俺の副官になることを了承した。ならば上司である俺の言葉を裏切れば、それ相応の罰が必要だよな」

「―――っ!」

 

 

その言葉を受け、紀霊は硬直する。かつての主を守る為にここにいるのだ。それを、目の前の男は………。

 

 

「………やらせ、ません!」

 

 

尽きていたと思っていた気力が蘇る。ふつふつと湧き上がる怒りを抑えながら、紀霊は武器を構えた。強くなれと言っているのだ。彼の武は昼間にも見た通り。彼に稽古をつけて貰えば、その成長は未知数。ならば、その意図を見事裏切って見せる。

 

 

「………やはり、いい眼をしているな。北郷、それでは私は戻るぞ」

「あぁ………行くぞ。日の出と共に夜の稽古を終了とする。それまで生き残れ」

「………………来いっ!!」

 

 

彼らの夜は続く。関に遮られ、音は連合軍まで届かない。しかし、そこには確かに数えきれない剣戟の音が鳴り続けていた。

 

 

 

-13ページ-

 

 

 

おまけ

 

オリキャラ 紀霊 

袁術軍の将軍で、演義では関羽とも互角にやり合ったとかほにゃらら。

武器は三尖刀。

見た目は、青っぽい長い髪(色は七乃さん的な)をうしろで結んでいる。

オールバックではない。

普段はおどおどしてるが、闘いになると雰囲気を変えるんじゃないっすかねぇ(←適当www

まぁ、頑張って強くなって頂きたいものです

 

 

 

 

説明
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コメント
キレイ さん がんばれー(qisheng)
>>LifeMaker様 紀霊ちゃんはいじられキャラですのでw(一郎太)
紀霊ちゃんがんばれ!(LifeMaker)
>>M.N.F.様 作者も台湾のテレビで知ってびっくりしました。どうか皆様や皆様のご家族や友人の方々が無事でありますように。(一郎太)
>>氷屋様 気をつけろ!出てはいけないwww(一郎太)
みんな大丈夫か!? こんな地震初めてだ・・・(M.N.F.)
誰が腹黒くしたんだろう(笑)、おや誰か来たようだ。(氷屋)
>>はりまえ様 恋さん以外にも純粋な娘がいいですw 月もなかなか腹黒くなってしまったのでorz(一郎太)
いまさらながら、紀霊の定位置はギャップ萌え?(黄昏☆ハリマエ)
>>カイ様 それを言ったら原作ですらツッコミどころが満載ですw ギャグパートに関してはそういう無茶設定もありかなという個人的な主張ですのでご容赦を(一郎太)
脂肪て言葉は、この時代あったの?(カイ)
>>M.N.F.様 ありがとうございます!作者はぶっちゃけinstrumentalがカッコいいと思う。(一郎太)
>>こるど犬 ついてた!びっくりだ(一郎太)
おお、王冠が。おめでとうございますですよ^_^ 関係ないけどアートコアっていう音楽ジャンルかっこいいと思う。(M.N.F.)
あっ!王冠がついてる!(運営の犬)
>>sai様 ありがとうございます!DTの彼も、いつかは卒業してくれるのではないでしょうかwww 綺麗ちゃんは新たな萌え要素になってくれるとありがたいw(一郎太)
>>M.N.F.様 チートって便利な言葉ですよねwww なんだかんだで負けず嫌いなんだと思いますw(一郎太)
>>PON様 強くなるというよりは………(ネタバレの為伏せ字)って感じです。次回を待って頂けるとありがたいorz(一郎太)
一郎太さん王冠おめでとうございます!一刀、いろいろとあったけどまぁドンマイww紀霊の純粋さがかわいかったですw(sai)
最初罵倒されるがままだった一刀が気が付けば形勢逆転してるあたり、このSSにおける一刀は一味違うなぁ。(M.N.F.)
例えば技術や身体能力はすでに身についている、でも戦場だと萎縮しちゃって実力を発揮できないとかなら1日でもまだ説得力あると思うんですけどね。精神と時の部屋にでも入らない限り2日で劇的に成長というのは違和感が拭えないと思います。桃香については納得です。ところで某ガン×ソードの名台詞が…(PON)
>>名無し様 ここの一刀君は純粋なんですwww(一郎太)
>>ヒトヤ犬 さて、お姉さんはどう思う?その辺りは今後に描いていくつもりなんで、心を広くひてまっていてくれw(一郎太)
>>320i様 ありがとうございます!さて、どうなることやら………www(一郎太)
>>0916takuya様 ありがとうございます!次回もコメントよろしくです(一郎太)
>>td_tk様 あざっす。次回も読んでください!(一郎太)
>>雅様 おぉ、ありがとうございます!いい教材になればいいのですがwww(一郎太)
>>クラスター様 ナイスアシストです!長すぎれば弾かれるのは知ってたけど、そこまでは知らなんだ(一郎太)
>>はりまえ様 流石にそこまでは難しいかもですね。ただ、その短い期間で急成長させるという意味では化物じみた存在、という感じでしょうか(一郎太)
>>東方武神様 それはあると思いますね。どんな組織でも、自分で考えるような状況だと成長も促進されると思います。まぁ、現代社会だと、上が無能では舌が苦労するだけですが………orz(一郎太)
>>NSZ THR様 至極個人的な意見ですが、成長は本当に余程の事が無い限り、少しずつ進んでいくものと思っています。ですので、この外史の住人達も、少しずつ成長してくれたら、という願望も少なからず入っているので、今回はこのようになりました。今後も成長させていければと考えてますぜ(一郎太)
>>砂のお城様 何を言っているか分からないw とりあえず落ち着けwww(一郎太)
やっぱり一刀君の種馬スキルは健在ということですね。……それにしても、まだDTだったとは(名無し)
戦で苦しむ人がいても、それを受け止める・・・・・具体的にどう受け止める気なのだろうか桃香は(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ)
次回楽しみです。(0916takuya)
2日で急成長はちょっと……まぁそれはともかく、桃香の答え、大変よろしい。でもね、きちんと情報の正否も確かめないまま理想を語るとただの侵略者になるってことだけは追加で覚えてもらいたいね。洛陽の暴政がホントかどうかなんて確かめるのはそんなに難しいことじゃないだろう、と。(PON)
面白かったです。次回が楽しみ♪(たけちゃんS)
一郎太さんの小説を読み、とても面白いです!この小説を読み勉強させてもらっています。これからもがんばってください!(雅)
>NSZ THRさん 長文コメの常連の俺が、助言を送ろう。一度に投稿可能なコメの文章量は、約三行半分が限度。それ以上は許容量オーバーなのか、カキコが弾かれる。大体、下にある俺のコメの文章量が、一回分の限界と考えれば良い。 それと、一作品への連投コメは二回が限度。三回目以降は、やはり弾かれる。再起動でもすれば、話は別だが。 (クラスター・ジャドウ)
最近の歴史ではゲームのほうがわかりやすいんじゃねえ?と思うはりまえです。二日で化け物にするとか、第二の呂布でも作るきかねぇ・・・・・次回はいよいよバトルかどんな幕を開けるやら。(黄昏☆ハリマエ)
総大将は多少無能の方がいい。まぁ周りに優秀な臣下がいる場合だが。何故なら多少無能の方が臣下達にとってはやり易い環境だからだ。完璧超人の下では優秀な臣下の本領が発揮されることは少なくなってしまうからでもある。この場合、月、桃香等がそれに当てはまるだろう。(東方武神)
ps なぜか全文を書こうとしてもかけなかったので続きを 個人的には人の上に立つ者は部下が行ったことに対し責任持つものと考えており、覚悟という点では描写がなかったのでそこもまた書かれるのか?それともこのまま間接的に人を殺していることに気づかないまま道を進むのか気になるところです(NSZ THR)
>>kashin様 麗羽様だって、教養はあるはずなんです。だから、彼女も頑張ったっていいと思う!(一郎太)
>>2828様 仕方がない、だってDTだからwww(一郎太)
>>NSZ THR様 はじめましてですね。コメントありがとうございます。ここの劉備は、理想を追い求めながらも、理想と現実が異なることを理解しているので、まずは成長の第一歩かな、って感じです(一郎太)
一刀さんDTだったかー かわいそかわいそなのです(・∀・)ニヤニヤ きれいな麗羽?いいじゃない!(kashin)
違う方向に切れるなw(2828)
 恋姫の2次の多くでは劉備アンチですが、それは子供のように夢を語り現実を見てないというキャラのせいかと。(NSZ THR)
はじめまして。 ここの一刀はいいな、かっちょよくて。恋一筋で、ハーレムもいいけど純愛も好きです。(NSZ THR)
>>M.N.F.様 いやいや、そもそも5人目が加わるかもわからないんですぜ?www(一郎太)
>>O-kawa様 作者も言われて思い出した。そう言えば第一話で言ってた気がするwww そして誤字指摘ありがとうございます。作者も書いててなんか変だなと思ったけど、そのままにしてしまいましたorz 直しておきますぜ(一郎太)
>>柾棟さま いやいや、十分短いですよ。部隊長から、少なくとも将軍とやり合えるくらいにはならないといけにんだから。元々時間稼ぎが目的だし、籠城をしっかりしてれば2日くらい余裕で稼げると思うぜ(一郎太)
>>氷屋様 お仕置きしかされてないと思いますよ?その内容は………gkbr www(一郎太)
おまけ適当すぎるwww みんな確実に成長してますなぁ。 5人目翠だと思ってるが、ここにきてまさかの愛紗!?(M.N.F.)
「陳宮」が「陣宮」になってますよ。 童貞宣言でガン×ソードのヴァンが・・・。 しかし一刀、陣営に参加してない劉備まで成長させるとは正にチートすなぁ。(O-kawa)
二日で成長させるってまた悠長ななことをwwwww。  二日でといわず一日でやってみせないと、まだ開戦一日目が終わっただけでこれからが正面場なんですよwww一刀くん  そして極めつけは虎牢関での戦いで一刀くん&恋ちゃんのレッツ無双パーーリーーーショーーーだwwwwwww!?  (劉邦柾棟)
連続失礼、童貞だ宣言でポリスアカデミーって昔のコメディ映画思い出した、「おれは童貞だ!」と叫んでしまって部屋の中が一瞬静かになったシーンをw(氷屋)
そういや恋とはキスしかしてないんでしたな、童貞宣言の後の風と華雄は何されたことやらw、そして関羽に対してさらりと口説き文句の無自覚種馬スキルがw(氷屋)
>>よーぜふ様 たぶん、ギャップ萌え担当になると思うんだ………ちなみにオチ担当は恋ちゃんでwww(一郎太)
>>nanashi様 どこまで成長してくれるかが作者も楽しみですw(一郎太)
>>poyy様 言い切る辺りがかっこいいですねw(一郎太)
>>クラスター様 そう、まだ初日なのですwww とりあえず二日目は籠城ですので物足りなくなるかも。そしてぶっちゃけてしまえば、書いてて袁術は別にあのままでいいかな、って思って書かなかった(一郎太)
>>yosi様 そんな処刑された人の名前ださないでwww しっかり強くさせていきますよー。一刀君も今後にかかわると言っていましたしねw(一郎太)
>>森羅様 お久しぶりですぜ。いやいや、馬騰より強いとは書いてないですよwww 比べてみたいですけどね。(一郎太)
>>nameneko様 こうご期待です。ただ、期待された分だけ長くなるので、投稿が遅れますwww(一郎太)
>>こるどいぬ まぁ、任せろorz(一郎太)
>>TK様頑張りますよー。次の更新は9日にできればいいかなー(一郎太)
>>きのすけ様 迷惑な話ですwww(一郎太)
だれもそんなこと聞いてないよ一刀さんw そして紀霊さん・・・かわういのぉw そして他の皆さんも成長しているようで・・・ほんと駄目なままだったら嫌悪抱いてつぶせ、とか言っちゃいそうですからよかったですww(よーぜふ)
紀霊は一刀と華雄の二人に扱かれると 恋と霞がいなかったことが救いだったな(nanashi)
俺は童貞だ!!名言ですなwww(poyy)
ギャグとシリアスが、程よくミックスされていて良い感じ…って、まだ開戦初日ィ!?…様々な人物が成長の片鱗を見せた、実に密度の濃い一日だったな。まさか、あの袁紹まで成長するとは、流石に予想外だったが。反面、袁術軍は描写一切無しだが、どうしたのやら…?…いや、良く考えれば、袁術軍の様子は想像が付くな 。これは、作者の温情と思うべきだろう。(クラスター・ジャドウ)
ロベスピエール一刀「私は 童貞だ」   蜀メンツの成長がちゃんとあってよかったね。(yosi)
全盛期の馬騰さん一刀より強いのかww是非出してほしかったですな(・ω・`)www  それと王冠おめです。(>▼<)これからも応援してるぜ!!(森羅)
おもしろくなってきた。次回期待(VVV計画の被験者)
やっぱり、優しい人ほど、怒らすと怖いんだね・・・(運営の犬)
更新乙です!バイト頑張ってください^^(TK)
ここの一刀は童貞だったっけか。忘れてた。イメージって怖いなw(きの)
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真・恋姫†無双  一刀 董卓軍 反董卓連合 『恋と共に』 

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