真・恋姫†無双〜天より来たりし戦士〜第15話 |
「ふぁ・・・・眠い・・・・」
あくび、トロッとした目。
一刀は今にも寝てしまいそうだ。
しかし、その重い瞼が閉じられることは無い。
「ねぇねぇ、これ何?」
「・・・・ペン。筆記用具だよ」
「わ、スゴイ!墨無しで書けるっ!!!」
「オイ、人の手にラクガキすんな」
一刀が孫策の天幕に到着して数十分。
孫策の好奇心旺盛な少女のようなふるまいが、一刀に休む隙を与えない。
「おもしろ〜い!」
「いい加減にしろ」
「あ!」
一刀は半ば強引に孫策からボールペンを取り上げ、ポケットにしまう。
「ったく・・・・・これ油性なんだぞ」
落書きは擦っても取れることはなく、一刀はため息をついた。
だが、一つ取り上げられたからそれで終わり、なんてことはない。
『天』の道具はどれも孫策の興味をそそり、次から次へといろんな物を取り出しては一刀に問いかける。
眠気で動く気になれないのと、孫策が取り出す物が危険ではないという理由で、一刀もあまり抵抗しない。
「ねぇねぇ一刀。これはなに?」
だが、だからといって全く怒らないわけではない。
「・・・・そいつは大事なモンだからダメだ」
『大事な物』は、すぐに取り上げてしまう。
「えぇ〜!?見せてよ〜!!」
「ダメだ」
「ぶ〜!ケチ!!」
「アンタはガキか」
不満そうに頬を膨らませる孫策を見て、一刀は再びため息をついた。
「あら、冥琳」
「・・・・そこで倒れこんでいるのは北郷か?」
「よぉ・・・・」
周瑜が『一枚の紙』を携えてやって来た。
グタッとした一刀を一瞥した後、コホンと咳払いをして雪蓮に紙を手渡す。
「斥候隊が革命軍を確認したそうよ。場所は宛城」
「へぇ」
「それと・・・・南陽太守の秦頡の軍が全滅したらしいわ。朱儁軍とその他複数の軍が宛城を包囲しているらしいが、どの部隊も大きな被害を受けている、と」
その時、倒れこんでいた一刀がムクッと起き上がった。
「なぁ・・・・革命軍本隊について、他に何か情報ねぇか?」
「情報?」
「ああ。敵の兵力、その宛城とやらの地形や構造。そういった『知りたいこと』を、まだ教えてもらってねぇんだ」
「そうだな・・・・宛城の地図はあるから後で見せよう。それと、敵の兵力は約十万と言われている」
「十万?」
「そうだ。これを率いるのは『張曼成』。配下の将に『趙弘』、それと――――・・・・」
周瑜の言葉に一刀はニヤリと笑みを浮べた。
「な、る、ほ、ど・・・・・ね」
「どうした。やけに嬉しそうだな」
「まぁな」
その後、孫呉軍は行軍を再会。
結局、一刀に安息の時が訪れることはなかった。
日が傾きだした頃、部隊は宛城を目視できる所まで到達した。
そして、眼前の光景に誰もが驚愕した。
「な、何じゃこれは・・・・」
「これは、この世の光景なのか?」
「何がおこったんでしょうか・・・・?」
宛城を中心に、付近一帯をおびただしい数の遺体が取り巻いている。
その死体から数百メートル離れた所で、複数の諸侯軍が城を包囲するように展開している。
「うぅっ!!」
「れ、蓮華さまぁ〜!?」
あまりにも凄惨な光景に、蓮華は耐えることができなかった。
だが、この惨状を目の当たりにしながらも、孫策や周瑜などは平常を保つことができた。
「さて、どうしたものかな」
「う〜ん、このまま正面から突っ込んでも勝てない気がするしねぇ・・・・・」
口元に指を当てて悩む孫策と周瑜の所に、一刀が歩み寄る。
「周瑜、地図を見せてくれ。」
「地図?」
周瑜は言われるままに懐から地図を取り出し、一刀に手渡した。
すると一刀はボールペンを取り出し、自身の服の袖をまくる。
「何をしている?」
「写してんだよ。作戦行動区域は、きっちり覚えねぇと迷子になっちまうからな」
簡素な地図ゆえに、模写はすぐに終わった。
「さて・・・・『孫呉』はあの城をどうしたい?」
「無論、陥落したいに決まっている。他のどの諸侯軍よりも早くな」
「そうか」
周瑜の言葉を聞き、一刀は再び城を見る。
そして、城の周りに散在する死体の山に注目した。
「・・・・いけるな」
「え?」
一刀の呟きが、周囲の者達の耳にも届く。
「孺子、今なんと言った?」
「・・・・孺子って呼ぶな。俺は立派な大人だ」
「大人じゃと?どの辺りが大人なんじゃ??」
「頭のてっぺんからつま先までに決まってんだろ。そうか、アンタ老がn――――」
「も〜!!二人とも止めなさい!」
孫策が黄蓋と一刀の間に割り込んで話を戻す。
黄蓋が先刻のやりとりの仕返しだと言わんばかりに舌を「べー!」と出し、一刀は「チッ!」と舌打ちをして黄蓋から視線を逸らす。
「(どっちも子供じゃない・・・)」
そして周瑜が改めて一刀に質問する。
「北郷よ。『いける』と言っていたが、どういうことだ?」
「もちろん、あの城を陥とすことができるってことさ」
「ほう。では詳しく聞かせてもらおうか」
「俺があの城に潜入する。そんで『ある物』を回収し、アンタ達に突撃の合図を送る。そんで城を陥とす。まぁこれが概要だ。詳細は――――・・・」
「・・・・・―――ってのが俺の考えだ。どうだ?」
「ふむ・・・・なるほどな。だが、お前だけで行くのか?」
「問題ねぇよ。単独で敵地に潜り込むのは慣れてるからな」
「だが、北郷の実力がわからない以上は信頼することはできない。だから興覇と幼平も潜入させる。」
「てことは、作戦自体には賛成なんだな。まぁ甘寧と周泰についてはアンタ達に任せるよ」
「わかった。では準備に取り掛かろう」
孫策たちはそのまま軍議を開くとのことで、一刀は天幕に戻った。
そして、一刀は束の間の休息を得ることができた。
「Zzz・・・・・」
だが、あくまでそれは『束の間』。
終わりはすぐにやってくる。
「一刀、起きなさい」
「んあ・・・・・?」
蓮華が一刀を呼び起こす。
彼女の声に目を覚ました一刀は、目を軽く擦り、大きくあくびをする。
「そろそろ準備をしなさい。もう陽が沈むわよ」
「そうかい」
一刀は立ち上がって外していた装備を身に付ける。
そんな中、蓮華がポツリと呟いた。
「貴方はすごいわね。危険な任務の前だというのにこうして眠ることができるなんて・・・・」
「?」
蓮華の呟きを聞いた一刀は、ふと蓮華の方を見た。
そして、気がついた。
震えていたのだ。
「もしかして、今回が初陣なのか・・・・?」
「わ、悪い??」
一刀は頭をガシガシと掻き毟ると、蓮華に一つ質問をした。
「蓮華はよぉ、今回の作戦行動中はどこにいるんだ?」
「姉様と祭の突撃部隊を後方から・・・・・」
「後続部隊だな?だったら、城内で合流できるな」
「?」
一刀は蓮華と向き合い、優しく微笑んだ。
「俺が蓮華を護ってやる」
一刀の言葉に、蓮華は少し緊張する。
「ま、まもるって・・・・・/////」
「取り返すモンを取り返したら、蓮華の部隊に急行する。だから、それまでは頑張れるな?」
一刀は中腰になって蓮華の目線と同じ高さに合わせた。
そして、優しく蓮華の頭を撫でる。
「ぜってぇ護ってやるから、な?」
一刀の真っ黒な瞳に、小さな『焔』が宿る。
蓮華はハッとした。
あの時と一緒だ。
一刀に、何と戦うのか?と尋ねたあの時と。
―――俺は、俺の届く範囲だけでも、無為に傷つけられる人達を救う。救うために、護るために、俺は戦う―――
一刀がそう言ったときも、一刀の瞳に『焔』のような輝きを見た。
あの言葉を聞き、あの輝きを見て、私は彼と契約をしたのだ。
不思議と、信頼できたから。
疑う余地もないほどに、彼の『焔』が綺麗だったから。
だから―――――・・・
「・・・・・わかった」
蓮華は顔を俯かせながらも、小さく頷いた。
「よし」
一刀はそのまま蓮華に背を向け、天幕から出ようと歩き出した。
「一刀」
「ん?」
一刀は振り返って蓮華の方を見る。
すると、蓮華の力強い笑みが見えた。
「気をつけてね」
「おう。そんじゃ―――」
「またあとで逢おう」 「またあとで逢いましょう」
説明 | ||
作者の好きな先輩が卒業した。 卒業式の日、先輩に告白したら「ありがとう」とだけ言ってくれた。 久しぶりに泣いた。 ・・・・すいませんね、どーでもいいこと書いちゃって。 ちょっと端折ってます。ごめんなさい。 |
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総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
2481 | 2013 | 20 |
コメント | ||
子供ジャンって雪蓮だけには言われたくないなwwwwwwさて・・・武器は無事に奪還できるのか楽しみです! 恋ですか~・・・僕は女子にはずっと避けられていたので恋愛と言う感情を忘れてしまいましたね〜恋って何なんだろう?(スターダスト) 嗚呼、なんというもどかしさ、あの武器を奪われた悔しさが忘れられない俺としては「じれったい!早く戦って倒してくれー!」と声を大にして叫びたいW(ギミック・パペット ヒトヤ・ドッグ) 恋愛、いいですね〜その頃の私は恋愛に興味がなかったですからね〜いっぱいしたほうがいい思い出になりますね。(運営の犬) 私は2度失恋したことがあります。あれは無常ですね。振られて辛いはずなのに何も感じない。 で、話は変わりますが、続きが気になります。次回の更新楽しみに待っています。できるだけ、早い更新を(聖槍雛里騎士団黒円卓・黒山羊) |
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