トリノコシティ
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「なんで・・・どうして?・・・あんたが?・・・。」

 

静かに・・・赤い水面が揺らぐ・・・。

彼女の瞳に映るのは数分前まで人だった“モノ”。

彼女の叫びは瞳に映る者には届かない。

 

見えない身体が宙を駆け彼に駆け寄る。

しかしそこから振り下ろされる彼女の手が彼にあたることはなかった・・・。

 

零時零分零秒彼女の人生は終わりを告げた。

 

「アナタノナマエハ?」

 

聞いたことのないような言葉が聞こえる。

知っているわけがないのになぜか彼女には言葉が分かった。

彼女はただ淡々と答えた。

 

「絵峰縁」

 

彼女は自分が既に死んだというどうしようもない現実を前にただ何をすることも出来ずに死んだ場所で自分の既に“モノ”と成り果てた私を見つめて呆然としている。

 

「アナタハイキタイ?」

 

「・・・・・・・!!!!!」

 

彼女は言葉に出来ない叫びを上げた。

ついさっき・・・ついさっき彼女は死んだ。

いうならば彼女の目の前で。

そしてその現実は今もまだ彼女の前に動かない現実としてそこに存在しているのだ。

 

「イキテアナタハナニヲシタイノ?」

 

「彼を・・・。」

 

その先は言葉に出来なかった・・・。

言葉にすればその現実を肯定してしまう気がして。

彼女の認めたく無い現実を。

 

「知りたい・・・。理由を・・・。本当を・・・。」

 

声の主は笑った気がした。

姿が見えているわけでもこが聞こえたわけでもない。

しかし彼女にはそう聴こえたのだ。

 

明日は過去になった。

 

そして昨日は未来へとつながる。

夜が明ける。

 

「貴方ニハ知ル権利がアル。理由モアル。デモソレハ“ドウシヨウモナイ現実”知ッタトコロデ何モカワラナイカモシレナイ。ソレデモ貴方ハ・・・。」

 

「知りたい!。」

 

今度ははっきりと見える。

朝日を遮るような漆黒ともいえる黒髪と朝日の光に逆らうかのごとく黒く光るネックレスが印象に残る少女は囁いた。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

彼女は向かう。

取り残された世界に。

音もない。色もない。匂いもない。その世界に彼女は再び足を踏み入れる。

そこにはただ現実が転がっている・・・。

 

昼と夜が交わろうとする。

絵峰縁はその家族はまだ何も知らない。

これから起きる事もその終わりも。

彼女だけが知っているこれから起きる現実を。

 

「貴方は真実を知るためにここに来た。その貴方は干渉することは出来ない。」

 

彼女はここに来るまでの間に少女にそういわれた。

実際ここに来て声を上げても、逃げてと叫んでも何一つ気づかれることはなかった。

彼女にはただ待つことしか出来ない。

この先にある現実を。

彼女は耐えた。怒りを、悲しみを、苦しみを叫ぶのはここではないと手を握り締めて。

 

そのときが近づいてきた。

彼も“私”もあのときのすべてがそこにある。

怒りで悲しみで苦しみで胸が締め付けられ息が苦しくなる。

逃げる事のできない現実というなの閉鎖空間の中で“私”はまだ生きている。

 

崩壊は既に予兆を見せる。

彼女は私とシンクロする。

彼に対する喜びの感情も怒りの感情も悲しみの感情も全てをこの一瞬にこめて。

 

景色は再びゆがんだ。

世界の時間だけがいつも通り進んでいく中で1秒ごとに崩れ去っていく現実。

私の真実ではない。

本当の真実を求めて彼女はその崩れ行く現実と、世界と向き合う。

 

 

 

 

そして彼女は捉えた。

本当の現実を。

私であったときには気がつくことのできなかった現実を。

 

自分を殺した犯人の正体を。

 

彼・・・いや兄は犯人ではなかった。

薄れて逝く私の目に最後に映った兄の姿に私は血のついた何かを見た。

 

それを見た私は兄が殺したと思った。

 

しかし現実は違った。

兄は家族を襲った人物を殺したのだ。

 

しかし死んだ彼女の時間は動くことはない。

その瞳には兄以外の人物は入らなかった。

進むことも戻る事も叶わない死と言う現実に彼女は一人取り残されていた。

 

しかし彼女はようやく死から進むことが出来たのだ。

取り残した真実は彼女の世界に色をつける。

 

そして彼女は少女にしてもらったように世界に取り残されたものに手を差し伸べる。

どうしようもない現実に真実を教えるために。

説明
ボーかロイド初音ミクが歌っている『トリノコシティ』と言う曲を題材に作ってみました。
(初音ミクが出てきたりするわけではありません)
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