桜舞う季節の中で
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ときめきメモリアル外伝 

 

桜舞う季節の中で

 

桜舞う季節。

それは別れの季節であり、出会いの季節でもある。

それはいつの時代でも変わらず繰り返される。

 

「伝説の樹と呼ばれるあの樹の下で、卒業式の日に女の子からの告白で結ばれた恋人同士は永遠に幸せになれる」

 

私立高校「きらめき高校」で脈々と受け継がれている伝統だ。

 

卒業式の今日、二人の男女がきらめき高校を訪れていた。

 

 

「懐かしいね・・・、4年ぶりだね。」

 

「そうだな、ここにくると高校時代を思い出すよ。みんな元気かな?」

 

その言葉を聞いて少し拗ねた顔で女性が男性を睨む。

 

「え?え?な なんでいきなり機嫌悪くなってるの?」

 

「ふーんだ 知りません。」

 

そっぽを向いた女性は男性の一歩前に出る。

 

「あ おい ちょっと待てよ」

 

その後ろを追いかける。

ふと風が二人を包み込む。

懐かしい風、それに乗ってたくさんの声が聞こえてくる。

卒業式・・。必ず訪れる別れの季節であり次の出会いの季節でもある。

 

二人はその場に立ち止まると風の吹いてきた方を見つめる。

 

「今日、卒業式だったんだね・・。」

 

「ああ・・・。」

 

女性は学生達を眩しそうに見つめた。仲間で肩を組んで笑ってる子もいれば

抱き合って泣いてる子もいる。それはきっとどこでも見られる光景、でもだからこそ尊い光景。

女性が男性の目を見つめる。

 

「ねえ?伝説・・ 今でも残ってるのかな?」

 

「多分な・・。」

 

「ねぇ・・。私行きたいな。」

 

女性はそっと男性の手を握ると学校の敷地内にある一本の大樹を見る。

男性は優しく微笑みながら女性の手を握り返し同じように大樹を見上げる。

 

「そうだな、あそこは俺達の始まりの場所だしな・・・。 行こうか。」

 

そう言って二人一緒に歩き出す。

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二人が大樹の元へたどり着いたときそこには先客がいた。

学生服を来た二人、胸元には卒業生である証のリボンをつけている。

女の子が顔を真っ赤にして目の前にいる男の子に告白していた。

 

「私、貴方の事が好きです。私と付き合ってください。」

 

「あ・・・・うん、俺も君が好きだ。」

 

そこにいた先客の告白の言葉を聞いたとき、脳裏にあの日の光景が浮かび上がる。

 

(一刀くん、貴方が好きです。幼馴染じゃなくてこれからは恋人として貴方の隣に居させてください。)

 

先客に見つからないように隠れている二人が小さな声で話をする。

 

『初々しくて感動するね。』

 

『だな、俺は詩織にここで告白されたときのことを思い出してたよ。』

 

告白に成功した二人は恥ずかしそうに手を繋ぐと大樹から離れていく。

それを見た二人はそっと大樹の下へ出てくる。

 

「やっぱり伝説は残ってるんだね。」

 

「ああ、この木の下で女の子から告白してうまくいったカップルは一生幸せになれる・・だったな。」

 

詩織はうれしそうに頷く

 

「うん 私達もだね♪」

 

そう言った詩織は大樹にそっと触れてこちらに背を向けている。

 

「ここは・・・俺達にとってとても大切な場所だ。」

 

一刀の言葉に詩織が顔だけ振り向く。

 

「一刀くん?」

 

その顔は微笑んでおり、見ようによっては過度の緊張で固まってるようにも見える

 

「だから俺は今日という日にここを選んだんだ。」

 

詩織には一刀が何を考えているのか判らない、ただ真面目な話をしようとしている。

それだけは一刀の態度から伺えた。

 

「一刀くん・・・。」

 

詩織は一刀と向き合う。

 

「俺は、高校に入ったときも大学へ入ってからもただひたすらに詩織とともに歩くことだけを考えてきた。」

 

ぽつりぽつりと話し出す一刀

 

「綺麗で、頭も良くて、スポーツも万能で・・・。「一刀くん、それは!」詩織・・・ 最後まで聞いてくれ」

 

詩織の反論を封じこめ話を続ける一刀。詩織はそんな一刀に口を閉ざす。

 

「いつだって俺の前にいる憧れの幼馴染だった。」

 

一刀はこちらを見つめる詩織との距離を一歩縮めると自分のポケットを探り出す。

 

「でも・・、わかったんだ。いやずっと傍にいて知ることができたんだ。」

 

詩織は一刀の眼を見つめる。

 

「詩織は確かになんでも出来るけど、それは努力を怠らないからなんだって・・。」

 

一刀のポケットから出てきた手には一個の小箱が乗っていた。

 

「あの卒業式の日、詩織の勇気のおかげで俺達は幼馴染から恋人になれた。」

 

だから・・と一刀は続ける。

 

「今度は俺が勇気を出す番だ」

 

一刀はそっと箱の蓋を開ける、そこには小さい指輪が入っていた。

 

「詩織、大学も卒業したばかりでまだ何も出来ない俺だけど。これから先もずっと俺の傍に居てほ

しい。」

 

その言葉を聞いた詩織の眼から涙が零れる。意味を理解できない詩織ではない・・。だけど・・。

 

「一刀くん、それじゃ・・わからないよ・・・。もっとはっきり言ってほしい・・。」

 

真っ赤になった一刀は手で自分の髪をくしゃっとする、詩織が好きな一刀の仕草の一つだ。

 

「あーー もう・・! 詩織! 俺と結婚してくれ!この先ずっと俺の傍で詩織の笑顔を見せてくれ!」

 

さっきより少し大きな声で一刀ははっきりと願いを口にする。

その言葉に詩織は泣き笑いの顔で即答する、

 

「はい・・。私を貴方のお嫁さんにしてください。幼いころからの私のたった一つの夢を叶えてください・・。」

 

考える必要なんてない。悩む必要もない。

今一刀が言ったセリフを詩織はずっと・・幼い頃からずっと待ち続けていたのだから。

 

「一刀くん、指輪・・・はめてくれる?」

 

白く綺麗な手を一刀に差し出す詩織。

一刀はその手を取って指輪をはめる。

 

「必ず幸せにするなんて言えない、だから二人で幸せになろう。詩織」

 

幸せそうに指輪のはめられた自分の手をみる詩織

 

「一刀くん私嬉しいよ。」

 

その時だった、突然木陰から歓声が上がる。

 

「おめでとうございます」

「おめでとうございます!!」

「これって新しい伝説の誕生じゃね?」

「きゃー 私プロポーズの現場って初めて見ちゃった。」

 

口々に祝福の言葉が上がる。

 

眼を丸くして驚く二人・・。

どこに隠れていたのかという数の学生達が口々に祝福の言葉をあげて出てくる。

 

「え?え?え? えぇぇぇぇ!!」

 

「って ぐはぁ は・・恥ずかしすぎる!」

 

顔を真っ赤にした二人を尻目に盛り上がる学生達。

祝福の拍手と言葉が桜吹雪のように降ってくる。

その中で一刀は詩織の手をしっかりと握る。

 

 

「詩織・・。」

 

「うん 一刀くん。」

 

「「一緒に幸せになろう」ね」

 

そういって見詰め合う。その顔は誰よりも幸せそうで、嬉しそうだった。

 

桜舞う季節で結ばれた二人は。

桜舞う季節で新たな絆を結ぶ。

伝説は新たな絆を産み、新しい伝説を産む。

 

この校内プロポーズ事件より数年後。

 

「伝説の樹と呼ばれる樹の下で、卒業式の日に女の子からの告白で結ばれた恋人同士は永遠に幸せになれる」

 

長らく伝えられてきたこの伝説はこの件をきっかけに少しだけ変わることになる。

 

「伝説の樹と呼ばれる樹の下で、卒業式の日に結ばれた恋人同士は永遠に幸せになれる」

 

と・・。数年後伝説の事を親戚の子に聞かれた二人はただ、ただ返答に困ることとなる

しかしそれはまた別のお話である。

 

 

説明
ときめきメモリアル
詩織と主人公のその後のお話として書きました。
なんで今更って声が聞こえてきそうですが。
自分として初めてやった恋愛ゲームなのでついつい・・。
ついでに4への絡みもこっそりいれてあったりするのは
ご愛嬌ということでお願いします。
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タグ
ときめきメモリアル 藤崎詩織 伝説の樹 

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