SEASON 1.不変の季節
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どのくらい眠っていたのだろうか。

全然わかんねぇや。

 

時計見ようにも目が霞んでるし、まだ眠いから寝るかな。

なんか周りがうるさい。

 

でもよく聞こえない。

まあいいか、寝よ。

 

 

そう思いまた俺は瞼を閉じた。

 

 

「久しぶりだね」

 

 

微かに聞こえた懐かしい声が夢の中へ誘った。

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 いつもと変わらない風景の静かな街、俺はこの街で産まれこの街で育った。

 

「はぁ〜、今日は休めばよかったかな」

 

 起きた時にはすでに遅刻確定時刻。両親は高校入学と同時に外国に転勤でいない。今は一人暮らしで自由にはやっている。

 

 ただ面倒なことが増えたのは確かだ。

 

 このまま帰るか帰らないか迷ってる間にも足は学校へと向かっている。もう少し早く起きないとなんて考えているともう学校は目の前だ。

 

「結局ちゃんと来てるんだな、俺」

校門の前でそう呟き大きく息を吐いた。

 

 学校は好きではないが嫌いでもない……それなり友達はいるがあまり居心地のいい場所ではないから

 

 昔は楽しい場所だった。入学しバスケ部に入った。新設校ということもあり伝統も口うるさい先輩もいなくて

「自分達の力で強くしようぜ!」

なんて頑張っていたが膝の故障、チームメイトとの衝突で退部した。

 

 それ以来、居心地は良くなくなってしまった。そしてやりたいことも無くしてしまった。

 

 時間的にはもう3時間目ぐらい、遅刻することは慣れてしまった。

 

 静かな廊下を音をたてながら歩く。この学校は一応進学校らしく、しかも俺らの代が初めての卒業生となるので校律など厳しく勉強などできない奴など差別的に相手にされない。

 

 自分の教室に近づくとでかい声が教室から聞こえてくる。

「神林〜! 神林慶斗! なんだ、また遅刻かあいつは」

神林慶斗(かんばやしけいと)それは俺の名前だ。

 

「おはようございます」

そう挨拶しながら俺は教室に入る。

 

「おはようございますじゃないだろ! 何時だと思ってんだ!」

ヘッドロックをかけられながらほぼ毎日同じ説教を受けている。

 

「いててて、いて〜よ。丸ちゃん勘弁してくれよ」

「だったら遅刻してくるな。もう席に着け」

そう言い俺を解放した。

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 丸ちゃん、いや丸山先生はこの遅刻常習犯を注意するこの学校唯一の教師。

そして生徒みんなから丸ちゃんと呼ばれ人気のある兄貴分な教師。

他の教師なら目を合わさないで終わっている。こんな学校だからこそ熱血教師は人気があるのだろう。

 

 1番後ろの窓側席が俺の席だ。だるそうに座る俺に

「よくもまあ毎日丸ちゃんのヘッドロック受けるわね」

クスクス笑いながら話しかけてきた。

 

 俺の前の席に座っている秋原唯(あきはらゆい)だ。

「うるせぇな。あれはあれで痛いんだぞ!それに毎日じゃない。ほぼ毎日だ」

毎日ではなくほぼ毎日であること強調し反論してやった。

 

「変わんないわよ。痛いなら遅刻しなきゃいいじゃない」

 

「んなことわかってるよ。ってお前に言われたくないな」

 

「あら、私は遅刻してないわよ。それにこのクラスの委員長だから言う権利はあると思うわ」

「くっ……」

自信たっぷり言われ正直ここまで言われて悔しかったが唯の方が正しいので反論できなくなってしまった。

 

「それに……慶がこないと……」

少し照れた様子で話した瞬間……バーン!とすごい音をたて教室のドアが開いた。

 

「すんませ〜ん! 遅れちゃいました。遅れた理由は2度寝の魔力にとりつかれて5度寝したからです! 正直に言ったから

丸ちゃん許して」

両手併せ深々と頭を下げている男がそこに立っていた。

 

 ツカツカと丸ちゃんは男に近づき

「お前も遅刻か! 神林程ではないが多過ぎる。てんば〜つ!」

必殺のヘッドロックが決まっていた。

 

 いやいや丸ちゃん、比較に俺を出さないでくれ。それにそのヘッドロック、天罰じゃなく人誅だと思うぞ。

 

「うわ〜! 丸ちゃんギブギブ!」

もうすでに泣きが入ってる。

 

「たくっ! 五十嵐も早く席に着け」

 

「うぃっす!」

 

「なんだ! まだ反省が足りなさそうだな! もう1発いくか?」

 

「勘弁してくださ〜い」

恐れをなした声を出しダッシュで俺の隣の席についた。

 

「おっはよう、慶ちん、唯」

満面の笑みで声をかけてきた。

 

 こいつの名前は五十嵐拓郎(いがらしたくろう)

お調子者で楽天的、天然というか単なるバカなのかわからないがからかいがいがあるやつだ。

 

「何? 慶ちんも遅刻? 毎日あれ受けてるの大変だね」

 

「だから毎日じゃなくてほぼ毎日だ」

またしても反論してやった。

 

「だからの意味がわからないよ」

 

「すまんすまん。さっき唯にも言われたからさ」

 

「耳ほじりながら言われても悪いと思ってるとは思わないんすけど!」

ちょっと怒った顔をこっちに向けてきた。

 

「そういえば唯、拓郎が入ってくる前になんか言わなかったか?」

 

「えっ? なんでもないわよ。気のせいじゃない?」

 

「そっか、気のせいか。疲れてんのかな?さて、寝るか」

少し赤い顔をしていたが机にむたれかかり目を閉じた。隣から無視しないで〜と聞こえたのは言うまでもない。

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「おい! 慶斗起きろ!」

 

 まだ寝ぼけてる俺は

「う……う〜ん」

そう答えることしかできなかった。

 

「早く起きろよ! 早く学食行かないと混みまくりだろうがよ」

 

 まだ完全に目覚めてない俺を引きずりながら学食を目指すこの男……いつも頭にはバンダナを巻いて、首にはネックレスをつけている明るくとても変な奴だ。

 

「んだよ、もうちょっと寝てたかったのに」

不機嫌に俺はそいつに話しかけた。

「そうだな、やっぱ昼飯はラーメンに限るっしょ」

……はぁ

毎度のことだがちゃんと話を聞いてない。

 

 こいつの名前は橋爪竜祈(はしづめりゅうき)

俺や拓郎、唯とはクラスは違うがいつもうちのクラスに来て休み時間が終わると自分のクラスに戻っていく。

自分のクラスにいるのはあまり好きじゃないらしい。

確かにクラスで楽しそうにしているところをあまり見たことはなかった。

 

その理由はなんとなくわかるが……

 

「なぁ慶斗、今日の放課後何してんだ?」

竜祈が尋ねてきた。

 

「相変わらず何もないよ。やりたいことないし、家帰ってぼ〜としてるさ」

 

「んじゃ俺も相変わらずお前ん家でぼ〜とするかな。拓郎は?」

 

「ん? 僕も慶ちんとこでぼ〜とするかな。唯は?」

 

「そうね、慶のとこの漫画全部読んでなかったからお邪魔するわ」

 

「お前らまたうちで暇つぶしかよ! 他になんかないのかよ?」

 

「ねぇいわよ」

 

同時に言われたがそれぞれないことがはっきりとわかる。

 

「ったく、まぁいいか」

 

2年になってからの放課後の恒例行事

 

<俺の家で何かをする>

 

 他にも何か面白いことがあるような気がするがやることがないのでよしとしている。

俺は部活を退部しているからただ家に帰っているだけなのだが……

 

 竜祈は家に帰ると気が滅入るらしく寝に帰っているだけらしい。

 

 拓郎は親が離婚し新たな父親とうまがあわず祖父母のとこで厄介になっているが気をつかって疲れてしまうらしく寝静まるまでは帰らない。

 

 唯は2人と違って両親と仲が良くちゃんと家に帰っているが高校に入ってからは自分の意思で行動し色んなことを学べと言われ注意を受けることはなく俺とつるんでるのが楽しいらしく共に行動していた。

 

 俺らはいつも4人でいる。学校の奴らは勉強ばっかりで面白くなく真面目な奴らだ。

しかも遅刻常習犯2名、服装違反1名。ちょっとしたつまはじき扱い。

 

 唯に関しては昔に変な噂をたてられ孤立していた。

 

 1年の時はみんなクラスはバラバラだったがある事件をきっかけに集まり今に至るようになった。

そんなことから俺達は不良4人組と言われている。学校内でも有名らしい。

かと言って反論するつもりもさらさらない。

遅刻常習犯、服装違反、それに混じる女子。

周りから見たらそうなのだろうと4人共納得しているから。

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「そういえば拓郎知ってたか?」

 

「うぶ? ばびぼ?」

 

焼きそばを口いっぱいにほうばる拓郎に俺は話しかけた。

「焼きそばにマヨネーズかけるとうまいらしいぞ」

目の前にある焼きそばに大量にマヨネーズをかけてやった。

 

「あ〜!」

悲鳴をあげた。

焼きそばを乗せていた皿は輝かしくマヨネーズで覆われた。

 

「いや、ケチャップだろ」

竜祈がその上にケチャップを振り撒いた。

焼きそばを乗っけていた皿は日本の国旗とかす。

 

「やっぱり焼きそばならソースじゃない?」

さらにソースをトッピング

もはや食べ物には見えない。

 

 青ざめた顔し涙目の拓郎が固まって座っている。それを見て3人が笑う。

 

「僕の焼きそば…焼きそばが…」

やっと言葉を発した。

 

「くっ……上手そう! 上手そうっすよ〜!」

皿を持ち上げ一気に平らげた。

唖然とする3人の前にマヨネーズ、ケチャップ、ソースが顔中ついた拓郎があらわれまた爆笑した。

拓郎をいじる、からかうも恒例行事となっていた。

 

「う〜、きぼちわるい〜」

学食から帰ってきた拓郎が机で寝ている。

 

「あんなもの食べるからだろ」

 

「そうよ、バカじゃないの?」

 

「あんたたちがかけたんでしょ! 僕の焼きそばが……焼きそばが……ううぅ……」

拓郎にとって焼きそばは恋人のようなものなか?

 

「うるさいわね、じゃあ今日の晩ご飯は焼きそばでいいわね?」

 

「まじで!? やった〜!」

お前はそんなに焼きそばが好きなのかと突っ込みたいが面倒なことになりそうなのでやめた。

 

「慶もいい?」

 

「あぁ、いつも悪いな」

 

「材料買っていくわね。洗剤とかもなくなりそうだったよね?ついでに買ってくわ」

 

「助かるよ。ありがとう」

 

「いいわよ礼なんて。好きでやってるんだし私達の仲じゃない」

 

 唯は嬉しそうに笑っている。俺はいつもそんな唯に甘えてる。

うちに来る時には飯を作ってくれたり家事全般をしてくれる。本当に助かる存在である。

 

 

授業終了のチャイムが学校中に響きわたると帰宅するもの、部活にいくものそれぞれの声で賑やかになる。

 

「慶ちん帰ろうぜ」

ワクワクを抑え切れない子供のような拓郎。

 

「あぁ」

 

「買い物して後から行くわね」

世話をやくのが好きな姉さん的な唯。

 

「あぁ、気をつけてな」

 

「おい!お前ら早く行こうぜ!」

先頭にたって何かをし始める鉄砲玉のような竜祈。

 

 

 たまに唯がいない時があるがいつも変わらない会話を交わしいつもと変わらない帰り道を変わらない友達と歩きいつも集まる部屋にいる。

 

「おまたせ〜、さあ食べよ」

 

「やっほ〜!焼きそばだ!」

 

「拓郎知ってたか?焼きそばにマヨネーズを…」

 

「何もかけなくていいよ!」

みんなで夕飯を食べるのもいつものこと

 

<いつものこと>

 

 

それは俺にとって大切な居場所なんだと思う。

説明
笑いあえる・・・楽しい日々・・・それがずっと続くのだと信じている。
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