SEASON 2.始動の季節 |
固く扉が閉められた。いくら叫んでも開くことはなかった。
この扉が開く魔法の言葉があるなら教えてくれ。
「なんなんだよお前ら! 大丈夫だって! 全然できるんだ! 膝なんて痛くないって!」
俺は何度もそう叫んだが開くことはない。
この日から俺は独りになってしまった。
毎日の登下校、仲良く話す人間達、一緒に飯を食う人間達……吐き気がした。
何もないこの檻から出たかったが方法がわからない。
「なんでこんなところに来てるんだろう?」
入学して早々口癖になってしまった言葉。
起きるのが遅くなり誰もいない通学路を歩く。
教師のさえずりと周囲の白い目に迎えられ席に着き、教室に響きわたる子守唄で眠りにつき、終わりを告げる音で来た道を戻る。
こんな毎日がただ流れていた。
惰性のような日々だ。
いつもの通学路、誰もいない通学路。
「はぁ、近くの学校を選んだはずなのにな」
あまりにも遠くに感じている。
「うん? 珍しくこの時間に人がいるな」
校門とそこで立ち尽くしている生徒が見えはじめた。
「見たことない奴だな」
同じ校章の色のバッチをした女の子の隣を通り過ぎた。
「なんでこんなとこに来ちゃったんだろう」
誰かの口癖が女の子から聞こえた。
俺以外にもその言葉を漏らす人間がいるんだと驚いた。
「なんでだろうな」
俺はそう呟く。
この日からいつも日常に新たなイベントが加わった。
校門の前に立ち尽くす女の子の隣を通り過ぎる。
これといって変化があるイベントではない。
ただ同じような人間がいることが嬉しかったのかもしれない。
相変わらず檻から出られない俺ではあったが……
女の子と話すことはなかったが機会はいくらでもある。
しかし、人と接するのが面倒になっていた俺はその機会も流していた。
休み時間に聞こえた楽しそうな話、学校中で噂になっている話もあまり耳に入ってこない。
そんな日常が何日か流れたある日
「あっ!寝過ごした!」
起きた時には放課後。
夕日で染まった生徒のいない教室に独りになっていた。
「どこでも寝れるのも問題だな」
丸めていた体を伸ばしあくびした。
「さて、家帰って寝るかな」
カバンを持ち廊下に出るとクスンクスンと泣いている声がする。
「やばい、これが学校の怪談…気にせず歩くべきかダッシュで駆け抜けるべきか…」
っと考えながら歩いた。
泣き声は2つ隣のクラスからしていた。
「まじかよ、確認するかな〜、しない方がいいかな〜」
っと考えながら教室の中を見た。
そこには夕日に染まった女の子が一人で座って泣いていた。
「おっ、おい」
思わず声をかけていた。
女の子は驚いた顔でこっちを見た。
多分誰もいないと思っていたのだろう。
涙を拭いて顔を上げ笑って
「あはは、すいません。すぐに帰ります」
「いや、俺教師じゃないけど……」
「えっ? 本当だ!ごめんなさい、間違えちゃった」
夕日で染められた頬がさらに紅くなっていた。
「まぁいいけど。泣き声聞こえていたから気になってな」
「そうよね、ごめんね。あれ?最近よく校門ですれ違う人だよね?」
最近? 校門? すれ違う?
そんなイベントがあったような?
女の子に近づき通り過ぎてみた。
その行動に女の子は頭の上に?がでてくるような顔した。
「あ〜!校門のとこで立ち尽くしてる子か」
「そうよ、あなたはその子を通り過ぎる人でしょ?」
「あぁ、そうだよ」
「やっぱり。まさかこんな場所で会うなんて不思議ね」
「不思議だな。校門でしか見たことなかったからな」
「そうよね。不思議ついでになんでさっき通り過ぎてから気づいたの?」
「同じシチュエーションじゃないと思い出せなかったから」
「ぷっ、変な人ね」
「変とは失礼だな!」
「ごめん、じゃあおかしな人だね」
「同じじゃないかよ!」
女の子は笑っていた、つられて俺も笑った。こんなに笑ったのはいつ以来なんだろう。
いつもと変わらない誰もいない通学路を歩く。いや、変わったことはある。
校門で立ち尽くしていた女の子と校門から教室近くまで一緒に歩くことが増えた。
たいした会話もせずただ歩くだけだったが、同じ口癖をもつ女の子といることは苦痛ではなかった。
そういえば名前知らなかったな。
いつも「なあ」とか「ねえ」で会話を始めていたから気にしなかったがたまに呼ぶ時困ってしまう。
聞いといてもいいか。
「なあ、お前の名前聞いてなかった」
また「なあ」から始まっていた。
「私も聞いてなかったね。今までよく話せていたもんだわ」
そう言って笑った。
「俺もそう思ったよ。話すようになると名前知らないときつくなってくる」
「確かにね。それじゃ改めて私、唯。秋原唯。よろしくね」
それからはお互いを苗字で呼び合うようになり、次第に冗談も言える仲になっていった。
だけど少し気になることがある。俺が秋原に会うときは決まって1人でいた。
そういう俺も1人だったが秋原が1人でいるのは不自然に感じる。
たまたまその場面に出くわしているのだろうか。
そんなに考えてもしょうがないか。
気づけばもう放課後。
「さて、帰るか」
帰り道を歩いていると背後から秋原の声が聞こえてきた。
「神林君、待って!」
息を切らせて追いかけてきた。
「どうした? トイレでも行きたいのか?」
「違うわよ! 今度どっか遊びに行かない?」
「誰が?」
「神林君が」
「誰と?」
「私と」
「まじで?」
「まじで」
突然の話に驚いてしまい変な回答をしてしまった。
「別に構わないけど」
「それじゃ今度の日曜は空いてる?」
「空いてるけど」
「じゃあ決まりね。行く場所はどこでもいいかしら?」
「ああ、任せるよ」
「決まったら教えるね」
長く伸びた2つの影が道を歩いている。
「帰り道で一緒になるなんて初めてだね」
「そうだな。初めて会った時は先に帰ったからな」
ちょっと前のことなのにずっと昔の事のようだ。
「そういえば知ってるかしら? この学校に幽霊がでるらしいわよ」
「俺は秋原がそうだと思ったよ」
「まさかあの時?」
「あの時だ」
「私も声かけられた時ビックリしたわよ」
「あの驚き様は面白かったな」
「失礼ね、本当にビックリしたんだから」
「悪い、それで幽霊がどうしたって?」
「なんだったかしら? とりあえずたまに出るって話よ」
「ふ〜ん」
いつの間にか2つの影の間隔が近くなっていた。
これも幽霊の仕業なのだろうか?
「あっ、私こっちだから。バイバイ、また明日ね」
「じゃあな、気をつけてな」
秋原は手を振り駅のほうに向かって歩いていった。
俺はそれに答え小さく手を振り背をむけ歩き始めた。
その途中、俺は気づいた。
「2人っきりで遊ぶのか?」
いつの間にか嬉しさと不安の間で揺れていた。
「やべぇ、緊張してきた」
辺りの風景がいつもと違う感じがする。時間が早く流れているようだ。
ぎくしゃくしながら歩き家に着いたが家の中までもが違う風景に感じる。
緊張のあまり寝るのが遅くなり起きたのも昼過ぎになってしまった。
学校に行くか迷ったが明日は土曜だからどうするか聞けないと思い向かうことにした。
学校に近づくにつれてどんな顔をあわせればいいか迷ってきた。
色々考えていたら教室に向かっていた。
「神林君、ちょっと遅すぎじゃない?」
「へっ?」
勢い良く振り向いた。
っと同時に秋原から笑い声がもれた。
「どうしたの?すごい顔していたわよ」
一体どんな顔をしていたんだ。
「もう来ないかと思ったわよ」
「悪い、寝れなくてな」
「そうなんだ。意外とかわいいとこあるのね」
「何がだよ!」
「なんでもないわ。それでね日曜なんだけど買い物に付き合ってくれない?」
「別にいいけど」
「よかった。それじゃシンシアモール中央の噴水で1時に待ち合わせね」
「わかった。もう授業始まるから行くな」
「うん、じゃあね」
授業に出ようと教室にむかったが秋原に日曜のことを聞いたことで足は家に向かっていた。
家に帰り適当に時間を潰す。いつも寝るまでの時間は退屈でしょうがない。
「日曜はどんな服を着ていくかな」
おもむろにクローゼットを開けた。
「しまった!全然洗濯してなかった!」
クローゼットの中の洗濯物の山を片っ端から洗濯機につっこみ急いで洗って乾かす。
天井が洗濯物で見えなくなってしまった。
そして半渇きの臭いの中寝るはめに。
これからはこまめに洗おうと心に決めた。
約束の日曜日……
時刻は1時半……
遅刻だ!
寝る前に緊張し始めて寝れなくなってしまった。寝たのは朝方。この時間に起きれたのが奇跡に近い。
待ち合わせはシンシアモール中央にある噴水。
シンシアモールはこの辺の町の人が買い物に集まるなんでも揃っているショッピングモールだ。人が多くて苦手だ。
何よりこの急いでいるのに走りづらい。
やっと噴水が見えてきた。
ベンチの方に目を向けると秋原が暗い顔をして座っていた。
「今日も遅刻なんだね」
「悪い、急いできたんだけど遅れちまったな」
「予想通りなのが笑えるけどね」
「予想通りなのかよ」
「だっていつもじゃない?予想できるわよ。疲れてるみたいだからここでちょっと休んでから行きましょ」
暫くベンチに座って話をした。
何が好きなのか、何が嫌いなのか、昨日見たテレビの話。
たわいもない世間話だけどとても新鮮に思えた。
それに学校では見たことがない笑顔が咲いていた。
「そろそろ行きましょ」
立ちあがりモール内を探索。
欲しいものがあるわけでもなく目についたものを手に取ったりお互いの服を見合ったりしながら歩き続けた。
「これ可愛くない?」
「どれ? へ〜可愛いっていうよりかっこいいな」
「絶対可愛いよ!」
「いやかっこいいだろ!」
睨み合う2人
「う〜ん、どっちにしてもいいわよねこれ」
「いいと思うよ」
「買っちゃおうかしら?」
秋原は気に入った靴を手に微笑んでいた。
「いらっしゃいませ〜、よかったら履いてみて下さい」
店員の必殺の一言が出た。
椅子に座り靴を履き始めた。
「やっぱりいいわね。神林君どう?」
「そうだな、ちょっと立ってみてくれよ」
立ちあがった姿を見たが何かが足りない。
「ちょっとポーズとって」
「恥ずかしいんだけど……」
「いいからやってみてくれ」
恥ずかしそうに秋原はポーズをとった。
確かに靴屋でポーズをとるのは見ていても恥ずかしい。
「彼氏さん、どうですか?」
店員が絶妙なタイミングで入ってきた。
「いや、自分彼氏とかじゃないんすけど」
「ふふっ、彼氏に見えてるみたいね。どうだった?」
「いいと思うよ。似合ってるよ」
「じゃあ買っちゃおう。すみません、これ下さい」
「有難うございま〜す」
俺は先に店を出て待つことにした。
「お待たせ」
大事そうに箱を抱えて出てきた。
本当に満足した笑顔、まるで子供のようだ。
「よかったな、嬉しさ隠せてないな」
「そんなに出てる?気に入ったものを買った時ってすごい嬉しいのよね」
「わからないでもないな」
「記念品になるかもね。あまり汚したくないから履かないでいるかな」
「買った意味なくなるな。履いてやれよ」
「嘘よ。でも大切に履くわね。なんか大事な時にとか」
「勝負靴になるのか?」
「なんか表現悪いわね。でもそういうことにしときましょ」
大事な時に履く靴か。
昔に俺も同じようなことをした気がする。
「美味しいね、これ」
「ああ、結構いけるな」
帰る前に夕飯を食べようとレストランに入った。
家に帰っても飯はないから調度良かった。
「ふ〜、ごちそうさん」
腹が減っていたので一気に食べ食後のお茶タイムに突入。
「神林君ってすごい食べるのね。それに早いし」
「腹減ってたからな。男ならこれぐらいは食べるだろ」
「そうなんだ。1つ勉強になったかな」
「それにしてもなんで俺を誘ったんだ」
「うん?」
「だからなんで今日俺を誘ったんだ?」
「友達なら普通じゃない。嫌だったかしら?」
「そういうわけじゃないけど俺以外にもいるだろうに」
「う……うん。まあね。でも神林君と遊んでみたかったからかな」
なんとなく納得できなかった。声の様子がおかしく感じたからだ。
「今日はありがとう。楽しかったわ。また明日ね」
「じゃあな、また明日」
秋原と別れ家に向かう。
さすがに今日は疲れた。
人ごみの中をずっと歩き回り女の子と一緒にいるという慣れない環境。
全てがいつもと違っていて疲れてしまったがここ最近にない充実した1日になったな。
明日はどんな1日になるのだろうか、またつまらない惰性のような日々が続いてしまうのだろうか。
そう思ったらまた毎日がつまらなく感じてきた。
久しぶりに2時間目に間に合う時間に校門ついた。
「なんでこんなところにきたんだろう?」
またいつもの口癖が聞こえてきた。
「なんでだろうな」
「神林君、おはよう」
「ああ。さっきのは口癖か?」
「えっ? 何? 私何か言ってた?」
「ああ、なんでこんなところにきたんだろうってな」
「そんなこと言ってたんだ。全然気づかなかったわ」
「俺と違って学校に友達ぐらいいるだろ?」
「いるって言えばいるけどいないって言えばいないかしら。ごめん。先急ぐね」
そう言い残して秋原は走っていった。
俺は外を見ながら考えていた。
――― 秋原唯 ―――
何故あいつは校門の前で立ち尽くしているんだ。
何故あの口癖があるんだ。
あいつは俺より明るく優しい性格なんだから友達だっているはずだ。
はっきり言って美人だと思う。だからかなりもてるほうだと思う。
それなのに俺なんかと仲良くなっている。
不思議なやつだ。
「ん?もう昼休みか」
考え事している間に時間がたっていたようだ。
「今日は何にするかな」
俺は1人で学食に向かう。
その途中、秋原のクラスをチラリと見た風景はそこには机をくっつけて昼飯を食べ笑い声が響く輪から外れて1人で昼飯を食べているあいつの姿だった。
あまりにも衝撃的な風景だった。あんな明るい顔で笑うあいつがあんな暗い顔で1人で飯を食ってるなんてどういうことなんだろう。
そういう気分なのか。それならいいがあんな顔をみるのは教室で泣いてる姿を見て以来だ。
あとは笑ってるところしか見ていない。
俺は気になり声をかけようと思ったが今度合った時にでも聞けばいいやと思い学食へ向かった。
ドン!
何かにぶつかった。前を見ると背の高い男子生徒。
「いってな〜、おいてめぇ!どこ見て…おっと、悪いなケガとかないか?俺の前方不注意だな」
明らかにキレそうな顔、無理して抑えてるみたいだが顔にあらわれてる。
拳は握られているのも見えた。
こいつ…やばいのか?
なんか迫力あるし怖い。
「うん? なんだ? 俺の顔になんかついてるか?」
ガンをとばされてる。
怖いって……
「いや、こっちこそ悪かったな。すまん」
謝っとけば大丈夫だろ。
「いいんだ、気にするな!んじゃな!」
叩かれた肩が痛い。
肩をさすりながら学食に向かった。相変わらず賑やかな声に学食はうまっていた。
今の俺には雑音、いや騒音にしか聞こえない。居心地の悪いとこではあるが空腹には勝てない。
「何にするかな? 今日の気分は……」
「やっきっそば! やっきっそば!」
後ろから焼きそばが大好きな男が来たみたいだ。
「やっきっそば! やっきっそば!」
気付くとその声しか聞こえなくなっていた。あれだけ騒がしかったのに何故だろう?
「お兄さんは何するんだい?」
学食のおばちゃんに呼ばれ現実に戻った。
「じゃあ、焼きそばで」
どうやら後ろの奴の影響を受けてしまったようだ。
「あいよ。おまたせ!」
「どうも」
座るところ探すために辺り見渡した。
っとその時
「え〜! なんで? 本当に〜?」
やたらとでかい声が聞こえてきた。
「ごめんね。さっきのお兄さんで最後だったの」
「僕の焼きそばが……焼きそばが……」
そんなに食べたかったのか。
焼きそばを連呼していたぐらいだしな。
それにしてもすごい落ち込みようだ。
膝と手をついてうなだれてるのなんてテレビでしかみたことがない。
「ううっ、焼きそば…」
「おい!俺のやるから金くれ」
可哀相だからやることにした。
なんだ、こいつ、頭が眩しい。この学校にこんな髪の色をした奴いたのか?
「まじで?ラッキー!ほいお金」
そいつは俺に金を渡し焼きそばを受け取ると猛ダッシュで席に着いていた。
俺は渡された金で飯を買いそいつとは違う席に着いた。
気付くと騒音が戻りそいつはいなくなっていた。
「あいつとなんか関係があるのか?」
今日は色んなことがあったなぁ。
俺は家のベッドで横になりながら今日の出来事を思い出していた。
暗い顔した秋原。
廊下でぶつかったキレるのを抑えるのに必死な男。
焼きそばが大好きな男。
1日で思い出せることが3つもあるなんて久しぶりだ。
「つまらない人生を送ってるんだな、俺って」
呟いたはいいが虚しくなった。
ついでに腹もへってきた。
「晩飯でも買いにいくか」
晩飯を買いに向かうことにした。
近くのコンビニまで歩いて向かう。
人通りの少ない道を選びながら歩いている。
地元の人間に会うのが嫌だったからだ。
「バスケまだやってんだろ?調子どうだ?」
なんて聞かれそうで嫌だったからだ。
少し歩いていると自販機の光に照らされた柄の悪い集団が見えはじめた。
絡まれたら面倒だなっと思い反対側に渡りコンビニへ向かう。
買い物を済ませ同じ道を歩き家に戻る。
1人飯を食いながら柄の悪い集団の話していた話を朧げながら思い出していた。
いつもと同じ時間に登校。誰もいない通学路。
「ふぁ〜眠い」
フラフラしながら歩いていた。
「おはよう、神林君」
振り返って後ろを見ると眩しいくらいの笑顔の秋原が立っていた。
あの暗い顔が想像できないくらいだ。
「おはよう、秋原」
「校門以外で会うのは初めてだね。珍しいこともあるわね」
「あぁ、そうだな」
昨日見たことを話していいか迷っていた。
触れてはいけないことのような気がしたからだ。
「どうしたの?なんか具合悪そうじゃない。悩んでるんだったら聞かせて。解決できるかわからないけど相談相手になるわよ。私達の仲じゃない」
俺の様子がおかしかったせいか心配した顔で聞いてきた。
「んじゃ、聞いていいかな?」
「うん、いいわよ」
「昨日お前が1人で飯食ってるとこを見たんだ。暗い顔して…」
「あっ、ええっと……」
顔が曇ったのがすぐにわかった。
やっぱり触れてはいけなかったのだろう。
「あはは、ほらたまには1人になりたい時ってあるじゃない?それにちょっと具合悪かったのよね」
笑顔で答えていたが俺には痛々しく感じた。
「本当なのか?」
「本当よ!」
「嘘つくなよ、俺達の仲なんだろ?」
「嘘じゃ……ないわよ」
曇った顔がさらに雲っていた。
「そうか、わかったよ」
これ以上は言わない方がいいだろうと思い突っ込むのはやめた。
「おっ、唯じゃねぇか!」
誰かが話しかけてきた。
「竜祈……おはよう」
竜祈という男らしい。
「おう! あれ、そっちの奴は……昨日ぶつかった奴だよな? 悪かったな!」
昨日とは違い笑顔だった。
「あぁ、別にいいよ。俺も悪かったし。でも最後に叩かれた肩は痛かったぞ」
「いや、叩いてねぇぞ。優しく肩に手を置いただけじゃねぇか」
「それでも痛かったんだよ」
「それは悪い! 気をつけるよ」
昨日のぶつかった人間と同じ人間なのかと疑ってしまうぐらいの態度だった。
「えっ? 2人知り合いだったの?」
不思議そうな顔で聞いてきた
「あぁ、もうマブダチだぜ! なぁ相棒?」
「昨日ぶつかっただけだろ。お前のことは何も知らない」
竜祈という男はぶつかっただけでマブダチになれる奴らしい。
「ほらな、こんなに仲がいいんだぜ」
そういい俺の体を強く引き寄せてアピールした。
こいつ話聞いてたのか…
「神林君、竜祈のこと本当に知らないの?」
「あぁ、まったくな」
「ひでぇ言い方だな、相棒!」
「相棒じゃないって!」
こいつ話を本当に聞いてないんだな。
「それじゃあ私から紹介しとくわね。この人橋爪竜祈、同じ中学だったの」
「よろしくな相棒! 呼ぶ時は竜ちゃんでいいぞ」
「そのでかい体で竜ちゃんはないだろ。適当に呼ばさせてもらうよ。それに相棒じゃない」
「こっちが神林慶斗君。私の遅刻仲間って感じね」
「よろしくな」
「よろしくな、慶斗。仲良くなれそうだな」
「どうだろうな」
「じゃあ俺先に行くな。あんま一緒にいるのもあれだからな」
一瞬竜祈の顔が暗くなったような気がした。
「唯を頼むな」
そう俺に呟いて去っていった
「竜祈のこと本当に知らないの?」
改めて秋原に聞かれた。
「今名前を知ったぐらいだ。なんかあるのか?」
「ううん、別にないわよ。さあもう行こうか」
「そうだな、眠いし行くか」
また2人で学校に向かう。
「あとは拓郎か……」
「ん? 何?」
「何でもないわよ。独り言」
「そうか」
こいつは何かを隠しているのがわかる。
突っ込むのをやめようと思っていたが気になり始めた。
秋原と別れ自分の教室に着き早速寝ることにした。
夢の中なのか現実なのかわからないが昨日聞いた話が聞こえてきた。
「この学校に…来てる…隣の隣の町…すごい有名…暴れまくった…不良…すぐキレる…友達…やられるかも…」
ちゃんと聞いてないし覚えていないからどういう意味だかはわからない。
起きた時にはすでに昼休みとなっていた。
「俺の睡眠能力は素晴らしいものがあるな。さて学食でも行くか」
学食に行くため廊下に出る。
秋原の事が気になりまたクラスを覗いた。
昨日見た風景がまたそこに広がっていた。
「おい、秋原」
気付くと俺は教室に入り秋原に声をかけていた。
「えっ?あっ、神林君、どうしたの?」
「今日も1人で食べたい気分なのか?具合悪いのか?」
「う、うん。そうよ。だから1人にしてくれない?」
「なんか嘘くさいな」
「いいから、早く」
何か隠してる感じだった。
遠くの方から気になることが聞こえてきた。
「あれが噂の遠くの町からきた不良?」
「違うわよ! 入学してちょっとぐらいにこの教室にきた大きい人よ」
「じゃああの人はその下の人かしら?」
「どうなんだろう?それって金髪の人でしょ。でもそうならあの人にも関わるのは危ないわね」
まったくと言って嫌な話だ。
知らない奴に関わらない方がいいなんて言われたくない。
でもあの人にもってどういう意味……
「神林君、ごめん! 私と仲良くしない方がいいわ。これからは話しかけないしかけないで。あなたに迷惑かけたくないから」
そういい俺の手を引き廊下に連れだし教室に戻って言った。
「なんなんだ? あいつ」
無性に腹がたったが腹が減ったので学食に向かった。
昼休みも終わりの方ということもあり学食は閑散としていた。
「あいよ、お兄さん何にする?」
「そうだな、今日は……」
「おばちゃん! 焼きそばちょうだい!」
この声……
焼きそば……
金に輝く眩しい頭……
「お前は昨日の焼きそば男!」
「そう! 何を隠そう僕はヤキソ○ン! って古いじゃん!」
「ヤキ○バンなんて一言も言ってないだろ」
「そうだよね。めんごちゃん!」
なんだこいつは……
「そういうあんたは焼きそば譲ってくれた人じゃないか!元気?」
「まぁ元気だけど……」
「そっか。よかったら一緒に食べない?」
「構わないけど……」
「じゃあ席とっとくね」
そいつは焼きそばを受け取ると猛ダッシュで場所をとっていた。
俺も注文したものを受け取り向かえに座った。
「それでさ〜……んでね……そしたらさ……」
ベラベラよく喋る。無人島でずっと暮らしていたのかと思わせるぐらいの話しぶりだ。
「なあ、食べるか話すかどっちかにしてくれないか?口から麺がとんでくるんだけど」
「めんごちゃん! いや〜誰かとご飯食べるの久しぶりだからさ、楽しくてね」
「そのはけ口が俺か……」
「えっ? 何?」
「なんでもない」
「そっか、そういえば名前聞いてなかったよね? 僕、五十嵐拓郎っていうだ。拓郎でいいよ」
今日は自己紹介DAYなのか。
「俺、神林慶斗」
「へぇ〜、慶ちんか。よろしくね」
最初から馴れ馴れしい奴だな。
拓郎……なんか聞いたことがある。
「拓郎っていったっけ?秋原唯って知ってるか?」
その名前を聞くとさっきまでマシンガンだった口が静かになった。
「知ってるよ。同じ中学だったし」
「竜祈ってやつもか?」
「竜祈も知ってるんだ」
「まあな、聞きたい事があるんだけど秋原が昼飯1人でたべ……」
「ごめん、先に戻るね」
そういい残し颯爽と去っていった。
一体あの3人はなんなんだろう。
秋原と同じ中学なのにあいつを避けている感じがする。
秋原が嫌われているのかとも思ったが今朝竜祈の方から話しかけてきたからそんな訳ではなさそうだ。
「迷惑がかかるから」
どういう意味なんだろうか。
「ってなんでそんなこと考えなきゃいけないんだ!」
家中に声が響き渡った。もう寝よ。考えたってしょうがない。明日聞けばいいか。
…
……
………
「寝れない」
「結局気になって寝れなかったな」
何故かあの3人に睡眠時間を削られていた。
校門の所には秋原の姿が見えた。
「よう、秋原」
声をかけないでと言われたがかけてみた。
スタスタ歩いていってしまった。
「おい、ちょっと待てよ」
声が聞こえてないのか聞こえないふりをしているか反応してくれることはなかった。
それから1週間……声をかけても無視されるだけだった。
さらに1週間後……秋原は学校に来なくなった。
それに竜祈と拓郎も無視するようになっていた。さすがにムカついてきた。
もう無理やりでも話すしかないと思い引き止めることにした。
「おい! 竜祈!」
相変わらず無視して通り過ぎようとしていた。
「ちょっと待てよ。いい加減シカトこいてんじゃねえよ!」
竜祈の腕を掴み止めた。
辺りがものすごい勢いでざわめき始めた。
「わかった、全部話すからここじゃまずい。あっちに行くぞ」
竜祈に連れられ空き教室に向かった。
どっしりと座っていたが竜祈の顔はこわばっていた。
「それで何が聞きたいんだ?」
「秋原のことだよ。なんであいつは1人で飯食ってたんだよ? あいつなら友達は作れるだろ! なんで学校に来なくなった? 唯を頼むってどういう意味だよ!」
今までたまっていたことを全てぶちまいてやった。
「そんなに一気にいうな。俺の頭じゃ理解しきれねぇ。順をおって話してやる。お前……俺の事しらねぇって言ってたよな?」
「知らなかったね。そんなことどうでもいいだろ。質問に答えろ」
「慌てんな。それにどうでもいいことじゃねぇんだ。ちょっと関係あるんだ」
「そっか悪いな。話してくれ」
「あぁ、この学校に遠くの町からすげぇ不良が来てるっていう噂聞いた事ないか? かなり有名な噂らしいが」
「朧げながらだけどな」
「お前ぐらいだよ、真相を知らないのは……その不良ってのは俺のことなんだ」
「俺は中2の時荒れていたんだ。そりゃ中1とかの時はまともな学生だったぜ。まあそれはいいとして、荒れてた俺は目があうやつ、気にいらないやつ、連れにちょっかいを出すやつ、そんなやつらを片っ端から潰して回っていった」
「お前そんなだったんだ」
「あぁ、そんなことばっかりやってたら連れもお前にはついていけねぇって離れていったよ。笑えるよな。連れのためにやったこともあるのについていけねぇってな」
「ひどいやつらだな」
「いい教訓でもあったがな。本当の仲間じゃなかったら離れてくってわかったよ。それから俺は独りになった。はっきり言って寂しかった。だから余計に暴れ回ったんだよ」
「逆効果だと思うけどな」
「まだガキだったからわからなかったんだよ! でもな俺は独りじゃなかったんだよ」
「独りじゃなかった?」
「あぁ、俺が気づかなかっただけで近くにいたんだよ」
「竜祈〜ここにいたのか。あっ、慶ちん……」
汗だくの拓郎がドアの所に立っていた。
「拓郎、お前も中に入れよ。昔の話をしてたんだ」
「いいのかよ、竜祈。唯に止められてるじゃないか」
「秋原に止められてる……?」
「それについても話してやる。話を続けるぞ」
「独りじゃないってのは拓郎、唯がいてくれたんだ。なんで拓郎が金髪にしてるか知ってるか?」
「いや、知らない」
「こいつはな、俺の為にやったんだ。俺は不良と罵られていた。まわりから白い目で見られていたんだ。そしたらな、こいつお前ばかり注目集めやがって! これで僕も注目の的だ! とか言ってな」
「本当にお前の為なのか? 目立ちたかっただけじゃ」
「んじゃお前は目立ちたいからってやるか?」
「多分やらないな。教師とかうるさいからな」
「そうだろ。実際拓郎は結構怒られたし陰口も叩かれてたからな」
「まあね!」
「もし、そうだったとしても俺は嬉しかったし俺の為だって思える」
「懐かしい過去だね〜」
「そして、もう1人……唯だ。あいつはあの性格だし、あの容姿だろ。かなりの人気者、俺とは正反対。なのにあいつはなんでみんな離れていったんだろうね。竜祈の中身を知らないからかな。私は知っているから今でも友達だって思えるってな」
「僕もそれ感動した」
「口だけなら言えるんじゃないか」
「確かにな。俺もそう思った。後から聞いた話だが荒れ始めてからもずっと話しかけていたんだとさ。ただ俺が聞いてなかっただけなんだ。でもあいつは諦めずにずっと話しかけていたんだ。俺は2人のおかげで独りじゃないってやっと気付いたんだ」
「それが今回とどう関係あるんだ?」
「暴れ回ったおかげで名前が知れ渡っていたんだ。たまたま俺達は同じ学校に入学した。俺のクラスの奴は名前を聞いた途端誰も話してこなくなったよ」
「僕の場合はこの髪でひかれたかな」
「それもあるが俺の連れだってのも知れ渡ってたみたいだぞ」
「あっ、そうなんだ」
「俺は拓郎は竜祈の下だって聞いたぞ」
「僕は子分だったんだ〜」
「下も上もねぇよ。クラスにいれなくなった俺達は唯のクラスに行ったんだ。そしたらな、あいつのクラスでも知ってる奴はいた。結果、馴染み始めていた唯から友達を俺が奪ってしまった。独りになることがどれだけ寂しいかわかっている俺が奪ってしまった。だから俺はこれ以上2人から友達をとらないように距離をあけた。2人の性格なら仲良くなれるだろうからな」
「でも事態は変わってないな」
「そうなんだ。でも、俺はどうすればいいのかわからない」
「なんで秋原は俺に話すのを止めたんだ?」
「簡単な話だ。お前までそんな目に合わせたくないんだろ」
「そんな気をつかわなくていいのに」
「あいつは自分が友達だと思った奴が嫌なめにあうのがいやだと思う奴だからな。どんな状態だろうと友達だと思い続けるしな。俺がいい例だろ」
「確かにいい例だ」
「そんな優しい奴なのに僕等の事で独りにさせちゃったんだもんね。悪い事しちゃったよ」
「いや、拓郎。お前も俺の犠牲者だよ。本当すまねぇ」
竜祈の目に涙が溜まっているように見えた。
「何言ってるんだよ。気にするなよ。僕は好きでやってるんだから。竜祈や唯と話せないのが辛いけど」
「友達だと思ってる奴と話せないのは辛いよな。……もしかして、お前達いつから秋原とそうなった?」
拓郎と竜祈は顔を見合わせる
「確か、入学してちょっとしてからだな」
「その前までクラスから離れ始めても楽しそうじゃなかったか?」
「楽しそうだったけど……」
「やっぱり……そうか……」
あれから3日後
俺は秋原の家の前に来ていた。そう学校に連れ出す為に。
インターホンを押す。
「は〜い、神林君?」
「久しぶりだな」
「そうだね。よく家わかったわね」
「竜祈に教えてもらったんだよ。さあ、学校に行こう」
「ううん、もうあそこには……クラスには私の居場所……無いから」
「いいから行くぞ! 無理矢理でも連れ出してやるから。そのパジャマ姿でいいなら今すぐ連れ出すぞ」
「ちょっと、待ってよ。行くなんて私言ってないわよ」
「10……9……8……7……」
「わかったわよ、今用意するから待ちなさいよ」
バタバタと秋原は2階に上がっていった。
「まずは第1段階はOK」
しばらくすると久しぶりにみる制服姿の秋原が出てきた。
「さあ、早く行くわよ」
かなりの不機嫌ぶりだ。
久しぶりの学校に戸惑っている様子だ。それもそのはずだ。
自分の居場所がないと思っている場所から長く離れていたんだから。
「さあ、行こうか」
「そう……だね」
秋原のクラスに着いた。
来るまでに色んな奴にチラチラ見られていたが今までとは違う様子だった。
「お、おはよう秋原さん」
「えっ? あっ? あのっ、おはよう」
クラスメートにかけられた挨拶に困惑していた。
教室に入っていく秋原に数人の生徒が少しではあったが声をかけている。
「んじゃ昼休みにまた来るからな」
「うん」
何故か照れながら答えてきた。
昼休み
俺は秋原の教室に向かった。
「よう、よかったな。クラスに居場所できたみたいだな。これで学校これるな」
「うん。まあね」
「まだ嘘をつくんだな。もう竜祈達から話は聞いたよ。クラスでの居場所もそうだけど本当の居場所……友達だと思ってる奴の側にいられなくなったからだろ」
「………うん………」
「ちょっとついて来て」
空き教室に移動しあいつらを呼んだ。
「竜祈、拓郎!」
2人がひょこっと出てきた
「久しぶりだな、唯」
「久しぶり〜、唯」
「竜祈……拓郎……」
「唯、今まで悪かった。お前の気持ちもわかんないで……」
竜祈が土下座をして謝っていた。
「ごめん、唯」
一緒に拓郎も土下座していた。
「やだっ、ちょっと止めてよ」
「俺達は慶斗に言われるまで気づかなかった。俺はお前に救ってもらっといてお前から逃げたんだ。本当なら一緒に戦ってやるべきだったんだ」
「そんな逃げたなんて言わないで……2人の気持ちはわかってたから……わかってたけど……私……辛くて……」
もう、うまく話せなくなってしまっている。
「秋原、もういいよ。これからはこいつらと前みたいにつるんでいられるよ。こいつら全クラス回ってお前のことを話したみたいなんだ。秋原はいい奴なんだって。俺達のことは関係なく見てくれ、絶対いい友達になれるからってな。みんなが納得したかはわからないがここまでお前の為にできる奴らなんだ。最高の友達じゃないか?」
「……うん……竜祈…拓郎……これからもよろしくね」
「あぁ、よろしくな」
「よろじぐぅぅ、唯」
拓郎泣きすぎ……
それから日が暮れるまで空き教室で話し続けた。
これが本来の3人の在り方なんだと実感した
「そういえば神林君も相当友達思いだよね」
「そうだな。俺達なんかより唯の気持ちに気付いてるんだもんな」
「僕、ジェラシー!」
「神林君の言葉を借りるならそこまで私の為に動いたんだからもう友達だよね?」
「おっ! そうだな! これで俺達はマブダチだ、よろしく相棒!」
「僕、ジェラシー!」
「俺はお前らのことよく知らないからなんとも言えないし、相棒じゃない!」
「つめてぇこと言うなよ」
「お互い知らないことばかりなんだから今から知っていけばいいじゃない。それに私の事引きずりだした責任はとってもらうわよ!」
「わかったよ」
「確か神林君の家近いんだよね。今からみんなで行こ」
「ちょっ、まっ……」
「よし、行こうぜ!」
「慶ちんの家にレッツゴー!」
「いや、お前ら」
「神林君っていう長いから……そうだな〜、あっ!慶って呼ぶわね。私のこと唯でいいから」
「もう、なんでもいいよ」
「じゃあ、行きますか!拓郎行こうぜ!」
「レッツゴー!」
2人は俺の家の場所も知らずに教室を出ていった。
「やっぱり失敗だったかな」
「私達と仲良くなったこと?」
「まあな」
「私は慶に会えてよかったわよ。また笑えそう。本当にありがとう」
俺の頬に唯の唇が押し当てられた
「今回だけだからね。勘違いしないでよ。さぁ行こう」
それからというものこいつらといる。
たむろうようになった。
「やっぱり唯の作る飯はうめぇな」
「慶ちん、お茶〜」
「自分でとってくれよ」
「お皿洗いじゃんけんするわよ!」
「じゃ〜んけ〜んほいっ!」
「慶ちん、よく負けるね」
「慶斗弱すぎ!」
「慶、水出しっぱなしはダメよ!」
いつも負けるのは俺だったりする。
台所に立ちふと考えた。
こいつらに会ったことは失敗だったのか……いや、出会えて本当に良かった。
自分の居場所もできたしな。毎日楽しいよ。こんな毎日が続いてほしい。
さっさと洗ってみんなのとこに戻るか。
「慶ちん、お茶〜!」
「自分でとれ!」
説明 | ||
1年前に起きた出来事・・・これがこいつらとの出逢い。 |
||
総閲覧数 | 閲覧ユーザー | 支援 |
232 | 228 | 2 |
タグ | ||
SEASON ライトノベル 学園 オリジナル | ||
にゃぱさんの作品一覧 |
MY メニュー |
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。 |
(c)2018 - tinamini.com |