真・恋姫†無双?歌姫の導き〜
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「みんな大好きーー!」

「てんほーちゃーーーーん!」

 張角の掛け声に、ファンたちはと合いの手を入れる。

「みんなの妹――っ!」

「ちーほーちゃーーーーん!」

 今度は張宝の掛け声に、ファン達は合いの手を入れた。

 

 

――かつて、貧乏旅芸人の三姉妹は、今では大陸全土の民をファンにしてしまうアイドルになっていた。

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だが……。

 

幸せはそう長くは続くことはなく、戦乱へ三国志の始まりへと繋がる。

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第二話

 

『蒼天已死 ?天當立 ?在甲子 天下大吉』

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 北郷と名乗る男に出会ってから、張三姉妹は生活は一変した。

 別に北郷自身はただ知恵を貸しただけに過ぎないが、こうもうまくいくとは三姉妹は予想もしていなかった。

「握手してくれ、天和ちゃん!」

 今日も自分達の歌に魅了された男達が張角達と仲良くならうとやって来る。

 その時。

 ドンッと別の男が握手を求めていた男を突き飛ばす。

「痛っ! テメー何しやがる!?」

 突き飛ばされた男は突き飛ばした男の袖を掴む。その目は殺気に満ち溢れている。

 だが……次の瞬間。

「……あ……」

 掴んでいた男が倒れこむ。腹には短剣が突き刺さっていた。

「人殺しだ―――!」

「に、逃げろ―――っ!」

 なだれ込む人、人、人間……殺した男は微笑みを浮かべ傍にいた張角を見た。

「へへ……一緒に幸せになろうぜ……天和ちゃん」

「……あっ……あああ」

 動けない。気づいた他の妹達が声をかけるが聞こえない。しかも人ごみで近づくことさえできない。

「てんほーちゃーーーーん!」

「いやぁぁぁ――――!!」

 張角の叫び声が響いた。

 だが男はそれ以上近づかなかった。男の後ろの影が止めたから。ただし……止める方法は、殺害という手段で。

「なんで……」

「張角様を殺そうとしていました。だから殺しました」

 影の正体は、北郷が去り際に結成させた親衛隊の部下の一人。

「天和姉さんっ!」

 ようやく事態が落ち着いたためか、二人の妹達も心配して駆けつけて来た。

 三人が無事出会うと男は微笑む。

「安心してください。今後はこのようなことは二度と起こさないよう我々が護衛します。そして、この乱れた大陸を平定してください」

「………」

 張角は思う。

 私は利用されたのだろうか。それともこの世の中がこうさせたのだろうか……と。

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 張三姉妹の歌は漢王朝の皇帝にも耳が届く。

 それが理由なのか、ぜひとも歌を聞かせてほしいという要望が三姉妹へ届いた。張宝、張梁は喜んだ。

「すごいっ! これ皇帝陛下の書状じゃない」

「とうとう皇帝陛下にも私達の歌が認められるのね」

 しかし、二人とは裏腹に張角は浮かない顔をしていた。

「どうしたの? 天和姉さん」

「人和……私、皇帝なんかに会いたくない」

「えっ!?」

 二人は信じられないという顔で張角を見た。皇帝に認められればもっと自分達の生活は楽になるし、もっと望ましい場で歌を歌うことが出来るはずなに、そのキッカケを壊そうとする張角。

 当然、二人は反発した。

 だが……張角は二人に尋ねた。

 

「ねぇ……私達だけが、こんな幸せを得ていいのかな?」

 

 二人の答えは返ってこなかった。

 旅を通してこの世の中を見てきた。もはや朝廷は腐敗し、民は苦しみ、賊が牛耳る時代。ましてや今の漢王朝は悪の十常侍が支配している以上、自分達もそれに飲み込まれるかもしれない。そしてこの前の男の気の狂いよう。あれは時代がうまれさせたのかもしれない。

「もう時代は変わるべきなんだと思うの。私は」

「………変わるって、どうやって変えるの?」

「歌」

 張角は張梁の質問に笑顔で答えた。

 

「私達の歌で、みんなの心を変えて平和に導こうよ」

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―――これが、後の世の『黄巾の乱』の始まりである。

 

 

第三話に続く……

説明
前回のお話
張三姉妹はとても貧乏でその日を生き抜くのがやっとな生活を送っていた。ある日、姉の張角が盗人としようとして北郷という男に捕まってしまう。しかし、北郷は彼女の『体』ではなく『歌』に協力したいと助力するのだった。
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