新訳・恋姫†無双 01 |
風が頬を撫でる。
なんて、格好をつけた表現が似合う状況ではなく。
風が体に叩きつけられる。
といった表現が似合う。そんな状況。
なんて言っても状況を理解してもらうのは難しいだろう。
俺は今、ほとんど人気の無い高級船舶から、「爆弾」を抱えて飛び降りている真っ最中だ。使われている火薬はTNT。……まぁ、いわゆる軍用爆弾で。コレが爆発したら俺は跡形も無く吹き飛ぶに違いない。
ほら。海面が近付いてきた。
ドッボンッ!!!
そんな音を立てて、俺の体は海の中に落ちていく。
海面に叩きつけられた痛みが体に、海の青さが視界いっぱいに広がる。
そして。
ズガン!!!!!!!!!!
感じた痛みは一瞬で。感じた眩しさも一瞬だった。
僕の意識は暗黒の淵へと沈む。
もう、何も見えない。何も分からない。
これですべてが終わる。
心に浮かんだのは安堵だったのだろうか。
最期に思い出したのは、最愛の妹の顔か、それとも爆弾をしかけた敵の顔か。それすらもわからなかった。
ドタドタ
そんな誰かの足音で目が覚めた。
いや、夢落ちではなくてね。
死んで、何故かここにいて、気が付いたらもう小学生くらいで。
何言ってるかわからないかも知れないけど、コレが俺の認識。
「お生まれになりましたぞー!!!! 姫君がお生まれになりましたぞー!!!」
生まれたのは女らしい。
思わず溜息をつく。
この世界はわけがわからない。
「姉」である「孫策」。「双子の姉」である「孫権」。
まぁ、とっくの昔に考える事は放棄したのだけどね。
ドタドタドタドタ
足音が近づいてくる。
率直に言おう。うるさい。俺は別に構わないけど、蓮華が起きるじゃねーか。考えろよ。ッつーか母さんは励みすぎじゃないだろうか?
三人も子供がいるのに。
「蓮音! 蓮華! 起きてる!?」
ガタン!
と、大きな音を立てて扉は開かれ、入って来たのは、姉である孫策。真名――――名前以外につける物でとても大切な物と教えられた――――を雪蓮。
正確な年齢はわからないけど、俺を5歳としたら10歳くらいだろうか。いや、もうちょっと上かな?
ピンクの髪と口元のほくろ、それに年の割には成長した胸が特徴的な人だ。
「俺は起きてるけど……蓮華はまだ寝てるから」
そう言って俺は蓮華……ピンクの髪に碧眼の少女を指差す。
「そう……そんなことより生まれたのよ!」
「うん。知ってる」
「反応薄くないかしら?」
早くも人生に疲れてるからね。
心の中でそう返す。
「赤ちゃん見ても面白くないよ」
「そう? そんな事ないと思うけどなぁ」
人それぞれだよ。
そう。人それぞれ。
この世界が三国志の世界だと信じるのも信じないのも、人それぞれ。
妹の名前は孫尚香で真名は小蓮だそうだ。
小蓮が生まれて7年。12歳。
この時代ならもうすぐ成人といったところ。
と、まぁ、そんなわけで。(何がそんなわけなのか、わからないけど)
俺の賊討伐以外の始めての従軍が昨日決定、今日出発となったそんな日の朝。
ゆさゆさ
と、誰かが俺をゆする。
まぁ、見なくても分かるけど。
「起きてください、蓮音様」
「起きてるよ。起きてるけど、起こしにこなかったから、起き上がらなかっただけ」
「むぅ……なんでそんな意地悪な事言うんですか」
……意地悪だろうか?
いや、そんなことはない。というか、ややこしい言い方なだけで、普通だし。
「起きるから……ゆするの止めて」
いつまでゆすってる気だよ、まったく。
「あ、ああ、あああああ! ごめんなさい!」
「うるさい。わめくな」
「ごめんなさい……」
慌てたと思ったら、シュンとなる。
こういう、感情の起伏が激しい奴は苦手だ。前世からずっと。
なんでかな、感情移入をしてしまいそうになるから……とかかな?
なんて、そんなハズないけど。
バッ
と、起き上がり、少女の方を向く。
肩まで伸びた金髪のセミロングをそのままに。眼はパッチリで鼻と口は小さめ、眉は整っていて、体は同世代の少女と比べると小柄なほう……だと思う。
んで、まぁ、名前は凌統。真名を愛梨。
俺のお付きというか、従者というか。そんな立ち位置の娘だ。
「おはよう、愛梨」
「え、あ、はいおはようございます」
朝食を手早く済ませ、身支度を整えて、兵舎へ向かう途中。
「……なに?」
「お兄様、行っちゃやなのぉ!」
やなのぉって、言われてもな。
「何でやなのぉ、なんだよ?」
「うぅぅぅ、だってだってやなのぉ!」
要領を得ない。だから、子供は好きじゃないんだ。
妹だから許すけど。
「いいかげん、服を離してくれないか、小蓮?」
「やだやだやだ!」
「小蓮。蓮音が困っているでしょう?」
蓮華登場。
「蓮華」
「やだぁ!!」
はぁ。
と、思わず溜息を吐く。
子供をあやした事なんてないから、扱い方が分からない。
「もう一回聞くけど、なんで嫌なんだ」
「だって、だって! やなんだもん!」
「あのなぁ、小蓮。怒るぞ?」
「やだやだ!!!」
「蓮音も。そんな顔しないの。お兄ちゃんでしょう」
と、蓮華が言う。
お前は俺の母親か。ガキを宥めるような言い方をするな。
「あ、あの蓮音様。小蓮様は私が宥めておきますから」
……いたんだね、愛梨。
「ん、まかせる」
と、だけ答え、歩き出す。
「蓮音。気をつけて」「お気をつけて」
二人の声に、軽く片手を上げて返した。
江夏。黄祖。逃走。追撃。違和感。
要約するとこんなところだろうか。
まぁ、つまり、江夏に陣を張っていた、黄祖を襲撃。黄祖は応戦してきたが、俺と母さんの軍の挟み撃ちで、あえなく逃走。そして俺と母さんはさらに追撃をかけた。
というわけ。
ここまでは良かった。
だけど。深く深く追撃するにつれて違和感は深まっていく。
何度も伏兵の可能性を考えたが、斥候の情報ではいないとの事。
ならば斥候が裏切っている可能性も考えたが、黄祖と孫堅。どちらに使えたほうが後々得なのかは猿でもわかる……と思う。
なら、なんだ?
爆弾?
そんなわけあるか。
自分の考えを自分で否定する。
横目でチラリと母さんを見るが、違和感を感じている様子は無い。
でも。
その姿はまるで。
死神に誘われているかのような――。
ふと、俺の視線に気づいたのか、母さんがコチラを見る。
「どうしたの? 蓮音」
「別に……」
ぞんな短い言葉を交わした瞬間だった。
ドドドドドドド!!!!
突然、土砂が俺たちを飲み込んだ。
「うわぁ!!」
自分が出した大声で眼が覚めた。
視界に入ってくる、俺の知らない天井。壁。風景。匂い。
「ああ、夢じゃなかった……」
そう呟く。
「この世界」に来てから何度夢であることを願っただろう。今日寝て、明日起きたら夢だと、何度信じただろう。目が覚めたら、最愛の妹が俺の顔をのぞきこんでいる、そんな状況を何度思い描いただろう。
夢であれと思いながら。
この世界で生きることを認めていた。
前世を恋しく思いながら、今を愛しく思っていた。
それが。
それがいけなかった。
どちらかを捨て切れなかった……。
だから母さんは……。
「クソったれ……。ああ、畜生。何だってんだよッ!」
自分が吐きだした声は、驚くほど掠れていて。
流されたときに怪我をしたのか、左の脇腹が僅かに痛んだ。
「なんや元気そうやん」「よく見たら結構イケメンなのぉ〜」
「こらお前たち。見世物じゃないぞ」
ッ!?
気がつくと、扉の外に三人の女の子がいた。
この距離で気付かなかったとは……ね。
「ウチは李典。んでこっちが于禁と楽進や」
「……俺は孫翊。字は叔弼」
「孫翊……聞いたことあるような……」
聞いたことあるようなって……俺の名前は結構通ってるぞ?
まぁいいけど。
「なんでもええやん! 村長さんとこ案内するからついてきぃ」
そう言って、ビキニっぽい服に身を包んだ関西弁少女が俺の手をひっぱる。
「痛い痛い!」
傷口が!
ってアレ?
今更ながら、手当されている。包帯巻かれてるし。
「あ〜ごめんごめん。……動けへんとなると……凪が担ぐしかないなぁ」
「いや、動けるから」
君の引っ張り方が悪かっただけで。
「案内してくれればいい」
そう言って、そっと立ち上がり、体を確認。
そしてゆっくりと一歩目を踏み出した――。
〜あとがき〜
えっと……ここまで読んでくださってありがとうございます。
何となくで書いた作品なので、伝わりにくかったり、自己満足になってたりするところがあったと思います。
すいません<m(__)m>
続くかどうかわかりませんが、これからもよろしくお願いします(@_@;)
説明 | ||
はじめまして。 neoといいます。 この作品は処女作となります。 いたらない所も多々あるとは思いますが、どうか生温かい目で見守ってやってください。 |
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コメント | ||
成程……。難しいですね。 アドバイスありがとうございます( ..)φメモメモ(neo) 主人公は孫家の三つ目の子に環生したのでしょうか…後ちょっと愚痴を言っていただけますと、初盤からあまり多くキャラを並べてしまうと見難くなっちゃうところがありますので、そこんところ宜しくおねがいします…(TAPEt) |
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