ギロチン |
泣くことができたなら
やっぱり人生は違ってた
ギロチンは刃物で何かをばっさりやるのが仕事
ギロチンの刃物は特別性だから
ばっさりやった後には、
悔いとか、憎しみとか、ざんげが残る
朝から晩までばっさりやる
訪れる人は多い
幾人もいる
ばっさりやりながら、やんでるな、とギロチンは想う
やっぱりやんでるな。って。
ある日ギロチンのもと、一人の青年が訪ねてきた
ばっさりやってください、私の過去を
ざんげします、私は妻と子供を捨てました
すぐに分かった
それはギロチンのパパだった
ギロチンは手にひそかに汗をかきながら
ばっさりやるんですか、と聞いた
もう苦しむのはいやです
あのこの泣き声がずっと聞こえるのです
ギロチンはおろおろしながら
なぜか唇、勝手に動いて
では僕の言うことを聞いてください
まず僕をだっこしてください
軽いギロチンの体を青年は抱いた
あのときから年をとらないギロチンは
何にも食べてなかったから
何キログラムも足りなかった
青年の肩に、ふんわりのった
これからどうしますか
青年は聞く
では僕の背中をぽんぽんしてください、
あと僕のベッドまで連れて行ってください
青年はおかしなこともあるもんだと、首をかしげたけど
素直にしたがった
ばっさりやるにはそれなりに準備ってもんもいるのだろう
反面ギロチンはどきどきだ
心臓がぴくぴくいって、青年に聞こえないかとはらはらしたもんだ
青年がベッドにギロチンをおろすと、
ギロチンはもうどうしていいか分からなくなって
とりあえず一緒に寝てください、ってそういった
これはなんでもさすがにおかしいって、青年は想った
どうしてですか?私はばっさりやりにきたのに
でもそれがとても必要なことなんです
そんなに必要なことなんですか
必要なことなんです
青年は結局はおれて、一緒に寝てくれた
ギロチンは青年がひそやかに息を吐く下で、
今までにない幸せを感じていた
幸せで幸せで涙がでそうになった
ああ、そうか、ずっとずっと
ずっとずっと
こうしたかった
小さな声で、お父さんと言ってみた
青年はもう深い眠りに入っていたから
ギロチンの声なんて、聞こえなかった
次の日ギロチンは青年よりも早く起きて、
刃物をしゃこしゃこ研いで見た
いつもより黒光りして、とってもよく切れそうだった
すいません、といいながら、青年が起きる
シャツをなおしながら、ギロチンに聞く
もうばっさりやれますか
ギロチンはじっと青年を見た
ではそこに座ってくださいと言った
青年が座る
その背にギロチンは刃物を構えた
5分待ってもばっさりやる気配はなかった
10分待ってもばっさりやる気配はなかった
青年が振り向いた
涙をこらえて必死になってるギロチンがいた
とたんにもうどうにもならぬほど、せきをきって、涙があふれた、
ギロチンは大声で泣き出したんだよ
おとうさんはきっちゃいやだ
きっちゃいやだ
ぼくのこときっちゃいやだ
わすれちゃいやだよ
あーーあああーーあああー
青年は驚いて、ギロチンを見ていた
ずっとギロチンは泣いていたよ
それからどうなったかは知らない、
ただもうあの森の深いところにギロチンは居ない、
そうだね、うわさで、
街にくすくす笑いながら、1組の親子がうつりすんだって
そう聞いたね
説明 | ||
ギロチンという不幸な子供の話。ハッピーエンドです。 | ||
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ファンタジー 子供 捨て子 | ||
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